カテゴリー別アーカイブ: 抗血栓療法

JPAD2試験 アスピリンに心血管疾患一次予防効果はない

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial
Circulation. 2017;135:659-670.

《要約》
背景
2型糖尿病での心血管イベント一次予防に対する低容量アスピリンの長期の安全性・有効性に関しては、結論が出ていない。

方法
JPAD試験(Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis
With Aspirin for Diabetes)は、無作為化、オープンラベル、標準治療を対照群においた試験である。2539例の2型糖尿病の日本人を対象に、低容量アスピリンの有効性・安全性を評価した。アスピリン群(81mgまたは100mg)とアスピリン非投与群に無作為に割り付けた。2008年の試験終了後、2015年までフォローアップし割り付けられた治療は継続した。主要評価項目は、心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患である。安全性については、消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血を解析した。主要評価項目はper-protocol解析を行い、出血イベントと感度分析はITT解析を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.3年で、1621例(64%)が試験を通してフォローアップされた。2160例(85%)で、割り付けられた治療を維持した。per-protocol解析では、アスピリン群とアスピリン非投与群で、心血管イベントに差はなかった(HR:1.14、95%CI:0.91-1.42)。年齢、性別、血糖コントロール、腎機能、喫煙の有無、高血圧、高脂血症で調整した多変量COX比例ハザードモデルでも似たような結果で(HR1.04、95%CI:0.83-1.30)、サブグループ解析でも結果の異質性はなかった(interaction P<0.05)。感度分析の結果も一貫していた(HR:1.01、95%CI:0.82-1.25)。消化管出血はアスピリン投与群で25例(2%)、非投与群で12例(0.9%)と差があり(P=0.03)、出血性脳卒中に群間差はなかった。

結論
心血管疾患のない2型糖尿病では、低容量アスピリンは心血管イベントのリスクに影響がなく、消化管出血は増大させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患のない2型糖尿病の日本人
I:アスピリン81mgまたは100mgの内服
C:アスピリンの内服なし
O:心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患

nclusion criteria:30−85歳
exclusion criteria:心電図の虚血性変化(ST変化、Q波など)、心血管疾患の既往(冠動脈造影で診断されている、TIA・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の既往、薬物療法を要するPAD)、心房細動、妊娠、抗血小板薬・抗凝固薬の内服

◇baselineは同等か

(本文から引用)
年齢、血圧、喫煙率、HbA1c、Cr、Hbでいずれもわずかであるが、有意な群間差がある。

◇試験の概要
地域:日本
登録期間:2002年〜2005年
観察期間:10.3年(中央値)
無作為化:乱数表を用いる。層別化はされていない。
盲検化:密封された封筒法
必要症例数:1年あたり主要評価項目が52/1000例発生し、低容量アスピリンにより30%の相対リスク低下があると仮定。αlevel0.05、power0.95、フォローアップ期間は3年間として、必要症例数は2450例と算出されている。
症例数:2539例(アスピリン群1262例、アスピリン非投与群1277例)
追跡率:試験早期中止と追跡不能が、アスピリン群480/1262例(38.0%)、アスピリン非投与群438/1277例(34.2%)と多いのは、10年のフォローアップのデータなので致し方ないか。クロスオーバーはアスピリン群270/1262例(21.3%)、アスピリン非投与群109/1277例(8.5%)であった。
解析:Per-Protocol解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
解析はper-protocol。

(本文から引用)

・出血イベント(アスピリン群vsアスピリン非投与群)
全出血  6% vs 5%、P=0.2
消化管出血 2% vs 0.9%、P=0.03
出血性脳卒中 0.9% vs 1.2%、P=0.4

◇批判的吟味
・数少ない日本人でのアスピリンによる心血管疾患一次予防の長期データ。
・追跡率は低い。
・クロスオーバーを除いたper-protocol解析で、アスピリンの効果を強め、有害事象は減らす方向に働くと思われる(アスピリン群では低リスクなら投与中止され、非投与群ではリスクが高い症例ならアスピリンが処方されている可能性がある)が、それでもprimary endpointで有意差なし。
・アスピリンにより、消化管出血は有意に増える。

◇感想
このJPAD2試験では、2型糖尿病で罹病期間が7年ぐらい、高血圧・高脂血症の人がそれぞれ50%以上いて、喫煙者が20%と、結構リスクがある人が対象になっている。それでもアスピリンの心血管疾患一次予防の効果は示せなかった。

欧米人でもアスピリンの心血管一次予防効果は限定的なので、欧米人に比べ心血管イベントリスクは低い日本人なら、なおさらだろう。JPPPの結果と合わせて考えると、日本人ではアスピリンを心血管疾患一次予防目的で使用することのnet clinical benefitはないと考えていいだろう。

ワルファリンによるカルシフィラキシス

Warfarin-Associated Nonuremic Calciphylaxis
JAMA Dermatol. 2017 Jan 11. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
腎不全に関連した古典的なカルシフィラキシスは、生命を脅かす疾患である。腎不全がないワルファリン関連カルシフィラキシスは報告されていたが、それが古典的カルシフィラキシスの一種なのか、別の存在なのかは不明であった。我々は、1例のワルファリン関連カルシフィラキシス、我々の施設での別の2例、そして文献から得られたすべてのワルファリン関連カルシフィラキシスのレビューを報告する。我々のレビューは、ワルファリン関連カルシフィラキシスは古典的カルシフィラキシスとは、臨床的、病理生理学的に異なったものであることを示している。

目的
ワルファリン関連カルシフィラキシスのレビューと古典的カルシフィラキシスとの関連を明らかにすること。

デザイン、セッティング、患者
MEDLINEで、”calciphylaxis and warfarin”, “non-uremic calciphylaxis”, “nonuremic calciphylaxis”で検索した。非尿毒性カルシフィラキシスは、高度な腎疾患(血清Cr<3mg/dl、eGFR>15ml/min、透析を必要とする急性腎不全、腎移植)がない病理組織学的なカルシフィラキシスと定義した。

暴露
すべての患者はカルシフィラキシス発症以前にワルファリンを内服していた。

アウトカム
患者のデータは、公表された報告より要約した。患者の医療情報は可能であれば取り寄せ、レビューした。

結果
18例の非尿毒性カルシフィラキシスを確認し、うち15例は文献からで、3例は自施設のものであった。患者は女性が多く(15/18例、83%)、年齢は19−86歳であった。カルシフィラキシス発症以前のワルファリンの内服期間は32ヶ月であった。病変は大抵下腿であった(12/18例、67%)。リン酸カルシウムの上昇は報告がなかった。石灰化がもっとも多かったのは中膜(8/18例、44%)、血管内腔と内皮(7/18例、39%)であった。主要な治療は、ヘパリンまたは低分子ヘパリンの置換(13/18%、72%)、チオ硫酸ナトリウムの静注(9/18例、50%)、高圧酸素療法(3/18例、17%)であった。退院時生存率は高く、15例(83%)で全治、3例が死亡した。

結論
ワルファリン関連カルシフィラキシスは古典的カルシフィラキシスとは、病理組織、経過、特に転帰が異なる。これらの所見はこの疾患の臨床的なマネージメントや治療に影響を与える。

症例は、60歳代の女性で、高脂血症、関節リウマチ、糖尿病、心房細動があり、2年前からワルファリンを内服していた。1年前から下腿に網状皮斑があり、紫斑が新たに出現した。腎疾患なし。血清Cr、Ca、P正常で、副甲状腺機能も正常。

生検すると、10日後に潰瘍を形成してしまった。


(本文より引用)

抗凝固療法をリバロキサバンに変え、チオ硫酸ナトリウムなどでよくなった。

◇感想
カルシフィラキシス自体、初めて知りました。

腎不全でみられるカルシフィラキシスとワルファリン関連カルシフィラキシスとの違いは、前者が体幹・下肢近位に多く、脂肪と関連があるのに対し、ワルファリン関連カルシフィラキシスは下腿に多いということと、前者で死亡率が高いということ(50−80%)。

ワルファリン関連カルシフィラキシスは、血管の石灰化が背景にあるようです。

治療はワルファリンの中止。チオ硫酸ナトリウム静注は、腎不全によるカルシフィラキシスでは創傷治癒を促し効果があるようですが、ワルファリン関連カルシフィラキシスでも効果があるかは不明。ビタミンKが有効かもしれない。

【総説】深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症 Lancet

Deep vein thrombosis and pulmonary embolism
Lancet. 2016 Jun 30. [Epub ahead of print]

深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)、それは集合的に静脈血栓塞栓症(VTE)と言われ、世界的にみられる疾患である。DVTとPEの診断に役立つ検査は、臨床の決定のルールとDダイマー測定である。VTEらしくないDダイマーが陰性の患者では、画像と抗凝固療法を安全に差し控えることができる。それ以外の患者では、DVTを疑う場合は下肢静脈エコーを、PEを疑う場合にはCTを行うべきである。直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は、ワルファリンより出血が少なく使用法も簡便であり、VTEに対する治療の第一選択薬である。血栓溶解療法は、血行動態が不安定なPEにのみ限定すべきである。抗凝固療法は、再発予防のために少なくとも3ヶ月は継続すべきで、VTEの原因が不明な場合や持続する要因による二次性の場合は、3ヶ月以上の抗凝固療法を考慮すべきである。

◇疫学
・世界中で年間1000万件
・血管疾患では、心筋梗塞、脳梗塞に続く3番目の多さ
・経済的負担は、米国では年間70−100億ドル
・年齢とともに増加し、80歳以上では100人に1人
・発症率 黒人>白人>アジア人
・リスクに男女差なし(妊娠とエストロゲン療法を除けば、男性は女性の2倍起こしやすい)
・VTEの30%は10年以内に再発する
・DVTの20−50%が血栓後症候群に、PEの0.1−4.0%が慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に
・VTEの1/3−1/2は原因不明
・強力なリスクファクターは手術、不動、悪性腫瘍
・大きな整形外科手術では、予防していても1%でVTEを発症する
・全VTE患者のうち、20%が悪性腫瘍、不動と手術は15%ずつ
・最も頻度が高い遺伝子変異は、第Ⅴ因子Leiden変異とプロトロンビン遺伝子変異(日本人にはみられない)

◇診断
臨床症状
・突然の呼吸困難、呼吸困難の増悪、胸痛、失神、めまい、頻脈、頻呼吸
・症状だけで診断は無理
・胸部レントゲン、心電図、血ガスでは特異的な所見なし
・症候性PEの70%にDVTあり
・症候性DVTの1/3に無症候性PEあり

臨床的なそれっぽさとDダイマー
このスコアがよく用いられる

・Wells’ score for deep vein thrombosis
  3点以上 ⇨ DVTらしい

・Wells’ score for pulmonary embolism
  original:5点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:2点以上 ⇨ PEらしい

・Revised Geneva score for pulmonary embolism
  original:11点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:5点以上 ⇨ PEらしい

・これだとVTEの除外には使えないので、Dダイマーも測定すること
・これらのスコアが低く、Dダイマーが正常値なら、その後の3ヶ月間でVTEを発症する確率は1%未満

・年齢とともにDダイマーは上昇する
・50歳以上の域値は、年齢×10μg/L
・500μg/Lを域値にしたときと比べ、同等の感度で特異度は高くなる

DVTの画像診断
・圧迫法による下肢静脈エコーがゴールドスタンダード
・鼠径から下腿まで描出し、全体を評価
・さらに鼠径と膝窩の圧迫法を行う
・1週間後に下腿のDVTが進展していないか再度エコーを行う
・骨盤内やIVCの血栓はCTもしくはMRIで評価する

PEの画像診断
・CT肺動脈造影がゴールドスタンダード
・腎機能障害、造影剤アレルギー、妊婦では肺換気血流シンチを

◇治療
抗凝固療法
・治療期間を3つに分ける
  急性期:発症5−10日まで
  維持期:3−6ヶ月まで
  延長期:それ以上
・急性期に使用できるのは、低分子ヘパリン、フォンダパリヌクス、未分画ヘパリン、経口Xa阻害薬(リバロキサバン、アピキサバン)
・未分画ヘパリンはAPTTをみて容量調整
・低分子ヘパリンは体重による容量設定で、モニタリングは不要
・安全性、有効性の面で未分画ヘパリンより低分子ヘパリンが好まれる
・腎機能障害(CCr<30ml/min)には低分子ヘパリンやフォンダパリヌクスより未分画ヘパリン
・ワルファリンは少なくとも5日間併用し、INRが2.0を超えたら、ヘパリンまたはフォンダパリヌクスは中止する
・INRは2.0−3.0で維持する
・ダビガトランとエドキサバンはヘパリンと5日間併用
・リバロキサバンとアピキサバンは併用しない
・高容量:リバロキサバンは3週間、アピキサバンは7日間
・DOACは大出血を39%減らした
・どのDOACがいいか明確なエビデンスなし
・中等度の腎機能障害にはダビガトランよりXa阻害薬
・高度の腎機能障害にはDOACよりワルファリン
・活動性の悪性腫瘍にはワルファリンより低分子ヘパリン
・活動性の悪性腫瘍で低分子ヘパリンとDOACは比較されていないので、低分子ヘパリンが第一選択(臨床試験が現在進行中)
・ワルファリンとDOACは胎児への悪影響になりえる
・ワルファリンは授乳婦には安全
・DOACは授乳婦にもダメ

外来治療
・血行動態が安定し死亡リスクが低いなら、外来での治療が可能
・30日死亡率はPESI(Pulmonary Embolism Severity Index)がlowなら1%、highなら11%

血栓溶解療法
・血行動態が不安定だと、死亡率は高い
・PEITHO試験では血行動態が安定した右室機能不全があるPEを対象とし、プラセボと比較し、死亡率は変わらず、大出血を9%、頭蓋内出血を2%増加させた
・腸骨大腿部の深部静脈血栓にはカテーテルによる血栓溶解療法を考慮(24ヶ月時点での血栓後症候群を減らすが、リスクベネフィット比は不明確)

下大静脈フィルター
・抗凝固療法の絶対的な禁忌には適応がある
・活動性の出血、適切な抗凝固療法下での再発
・IVCフィルターはPEの再発を減らさない
・恒久型より回収可能型フィルターが好ましい
・回収可能型は回収できないこともある

弾性ストッキング
・段階式弾性ストッキングは血栓後症候群を減らす
・しかし、RCTで膝までの段階式弾性ストッキングのベネフィットが示されなかった
・近位DVTでの下肢腫脹を抑えるためには考慮すべき

治療期間

・初回VTEなら3ヶ月は続ける
・原因不明のVTEの再発なら3ヶ月以上続ける
・初回のVTEで原因が不明なら3ヶ月の時点で再評価(Dダイマー+下肢近位部エコー、しかしこの有効性は不明)
・抗凝固療法中のDダイマーが繰り返し正常でも、中止1ヶ月後の再発率は3−7%
・活動性の悪性腫瘍だと抗凝固療法を行なっていても8%/6ヶ月の再発率
・下腿のみの血栓、亜区域性のPEの有病率や抗凝固療法のリスクベネフィットは議論がある

抗凝固療法の延長
・ワルファリン、アピキサバン、ダビガトランはプラセボより、VTE再発を80−90%減らすが、出血を2−5倍に増やす
・アスピリンもプラセボと比較し、30%再発を減らす
・抗凝固薬とアスピリンの出血リスクは同等だが、再発への有効性は抗凝固薬が高い
・アスピリンは代替薬にならない
・DOAC間の直接比較データはない

◇感想・コメント
Dダイマーのカットオフは0.5μg/mlだと思っていましたが、年齢調整したカットオフは同等の感度で特異度は高くなるというのは、初めて知りました。これは使えそうです。

CHA2DS2-VAScスコア2点以上では、PVI後の抗凝固療法中止により脳梗塞リスクが上昇する可能性

Assessment of Use vs Discontinuation of Oral Anticoagulation After Pulmonary Vein Isolation in Patients With Atrial Fibrillation
JAMA Cardiol. Published online November 23, 2016.

《要約》
重要性
肺静脈隔離(PVI)は心房細動患者に対する推奨された治療だが、脳梗塞リスクの低下をもたらすかどうかは明らかではない。

目的
PVI後に抗凝固療法を中止した患者の割合とCHA2DS2-VSAcスコア、PVI後の脳梗塞の予測因子の同定、ガイドラインに基づく抗凝固療法の有無での心血管イベントリスクを評価すること。

デザイン・セッティング・患者
Swedish national health registriesを用いて、後ろ向きコホート研究を行なった。2006年1月1日から2012年12月31日のデータで、平均フォローアップ期間は2.6年、心房細動でPVIが施行された1585例が対象である。データ解析は2015年1月1日から2016年4月30日に行なわれた。

暴露
ワルファリン

アウトカム
虚血性脳梗塞、頭蓋内出血、死亡

結果
この集団は1585例で、男性が73.0%、年齢59±9.4歳、CHA2DS2-VAScスコア1.5±1.4だった。1585例のうち、1175例がPVI後1年以上フォローアップされた。360例は1年以内にワルファリンが中止された。CHA2DS2-VAScスコアが2点以上の患者のうち、ワルファリンを中止した患者では虚血性脳梗塞の発症リスクが、ワルファリンを継続した患者より高かった(5イベント/312年[1.6%/年]、4イベント/1192年[0.3%/年]、P=0.046)。CHA2DS2-VAScが2以上の患者や虚血性脳梗塞の既往がある患者では、ワルファリンが中止にあると虚血性脳梗塞の発症リスクが増加する(それぞれ、HR:4.6、95%CI:1.2−17.2、HR:13.7、95%CI:2.0−91.9)。

結論
これらの結果は、ハイリスクの患者、特に脳梗塞の既往がある患者において、PVI後にワルファリンを中止することは安全でないことを示唆している。

◇この論文のPECOは?
P:PVIを行なった心房細動患者
E/C:ワルファリンの中止、または継続
O:虚血性脳梗塞、頭蓋内出血、死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向き
・CHA2DS2-VAScスコア2点以上と脳梗塞の既往がある患者の脳梗塞リスクは、COX比例ハザードモデルを用いた。脳梗塞に関連した因子の算定には、ロジスティック回帰分析を行なった。
・1585例
・観察期間:平均2.6年

characteristics

◇結果
result

CHA2DS2-VAScスコアが0−1では、脳梗塞の発症率に差はなかった。

◇感想
CHA2DS2-VAScスコアが高ければ、内皮障害や繊維化が進んでいるし、心房細動の再発も起こりやすいと考えられるので、抗凝固療法を中止することで脳梗塞リスクが上昇するのは合点がいく。

PVI後3ヶ月は抗凝固療法を継続し、それ以降はCHA2DS2-VASc0−1なら、中止をしても脳梗塞のリスクは上昇しないかもしれない。

プラスグレルとチカグレロルの直接比較 PRAGUE-18試験

Prasugrel Versus Ticagrelor in Patients With Acute Myocardial Infarction Treated With Primary Percutaneous Coronary InterventionMulticenter Randomized PRAGUE-18 Study
Circulation. 2016;134:1603-1612

《要約》
背景
プラスグレルとチカグレロルはクロピドグレルに対し高い有効性が示されているが、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性の直接比較は行われていない。

方法
急性心筋梗塞(AMI)で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が施行された患者を対象に、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性を比較した。14施設で、AMI1230例をPCI開始前にプラスグレルとチカグレロルに無作為に割り付けた。4%弱が心原性ショック、5.2%で人工呼吸器管理を行った。主要評価項目は、7日間での死亡、再梗塞、緊急標的血管血行再建、脳梗塞、輸血や入院期間の延長を要する出血の複合エンドポイントである。全フォローアップ期間は1年で、2017年に終了する。

結果
試験は、早期中止となった。プラスグレルとチカグレロルで、主要評価項目に有意差はなかった(4.0%vs4.1%、OR:0.98、95%CI:0.55−1.73)。主要評価項目の中で、どれも有意差はなかった。30日以内の副次評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、脳梗塞)でも、プラスグレルとチカグレロルに有意差はなかった(2.7%vs2.5%、OR:1.06、95%CI:0.53-2.15)。

結論
こののプラスグレルとチカグレロルの比較試験は、PCIを施行したAMI急性期での梗塞イベントと出血イベントの予防において、一方の抗血小板薬はもう一方より、より有効もしくはより安全であるという仮説を支持しなかった。主要なアウトカムの発生率は似通っていたが、信頼区間は広かった。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞(STEMI、NSTEMI)
I/C:アスピリンに加え、プラスグレルまたはチカグレロルの内服
O:7日以内の全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建

プラスグレルは60mgでローディングして、維持容量は10mgを1日1回。76歳以上または60kg未満の場合は維持容量を5mgに減量する。

チカグレロルは180mgでローディングして、維持容量は90mgを1日2回。

inclusion criteria:緊急CAGの適応である症例

exclusion criteria:脳梗塞の既往、6ヶ月以内の重大な出血、長期の抗凝固療法を必要とする症例、クロピドグレル300mg以上の内服をしている症例、その他の抗血小板薬の内服(アスピリンと低容量クロピドグレルを除く)、76歳以上で体重60kg未満、中等度〜高度の肝障害、強力なCYP3A4阻害薬の使用、プラスグレルまたはチカグレロルに対するアレルギー

◇baselineは同等か
characteristics1
平均61歳で、3/4が男性。STEMIが90%で、他は脚ブロックとNSTEMI。他の抗血小板薬の使用率にも差がなく、PCIのアプローチも橈骨動脈が2/3とこれも差がない。

characteristics2
BMSとDESの使用率に差はないが、生体吸収性スキャフォールドはプラスグレル群で多い。PCI後のTIMIグレードは同じ。

◇結果
地域:チェコ共和国
登録期間:2013年4月〜2016年3月
観察期間:30日
無作為化:GraphPad scientific softwareを使用。封筒法。
盲検化:オープンラベル。解析者は盲検化されている。
必要症例数:各群1250例で、1130例が登録された時点で中間解析を行い、試験の早期中止を判断することになっている。
症例数:1230例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:資金源はチャールズ大学のリサーチプログラムで直接の資金提供はないが、複数のauthorにCOIあり(アストラゼネカ、第一三共)。

result

◇批判的吟味
抗血小板作用による梗塞イベントの抑制と出血イベントの増加はトレードオフである。強力な抗血小板作用により、PCI後の梗塞イベント(ステント血栓症など)を抑えられたとしても、それにより重大な出血が増えてしまえば、そのメリットは相殺されてしまう。なので、梗塞イベントと出血イベントを複合して主要評価項目に設定することは妥当だし、いずれのイベントも急性期に多いので観察期間が1週間というのも妥当だろう。

ただ、この試験はfutilityで早期中止になっている。イベント数が少ないにもかかわらず。もともと2500例で予定されていて、3年間で半分以下しか集まっていないので、しょうがないのかもしれないけど、これだとどちらがいいとも言えない。

◇感想
プラスグレルとチカグレロルの有効性と安全性を直接比較したPRAGUE-18試験。主要評価項目(全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建)はどちらも4%程度だったが、イベント数が少なく、”両群とも同等に安全で有効”とは言えない結果だった。

ちなみにチカグレロルはPCI後の抗血小板薬として、2016年9月に日本でも承認されたが、PHILO試験でクロピドグレルと比較し出血を増やしたため、「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」という文言が付いてしまっているようだ。

ステント留置後の心房細動 NOAC+SAPTでいいのか? PIONEER AF-PCI試験

Prevention of Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing PCI
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
PCIを行いステントを留置した心房細動合併患者では、ワーファリン+DAPTの標準的抗血栓療法によって血栓症と脳梗塞のリスクは減少するが、出血のリスクは増大する。リバーロキサバン+SAPTもしくはリバーロキサバン+DAPTの有効性と安全性は明らかではない。

方法
PCIを行った非弁膜症性心房細動の患者2124例を、以下の3群に1:1:1に無作為に割り付けた。
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
主要安全性評価項目は臨床的に重大な出血(TIMI出血基準で大出血、小出血、治療を要する出血)である。

結果
臨床的に重大な出血の発症率は、リバーロキサバンを内服している2群で、標準的抗血栓療法より低かった(グループ1:16.8%、グループ2:18.0%、グループ3:26.7%、グループ1vs3のハザード比0.59:95%CI0.47−0.76、グループ2vs3のハザード比0.63;95%CI0.50−0.80)。心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の発症率は3群で似通っていた(グループ1:6.5%、グループ2:5.6%、グループ3:6.0%、いずれの群間比較でもP値は有意ではなかった)。

結論
PCIでステントを留置した心房細動患者では、12ヶ月の低容量リバーロキサバン+P2Y12阻害薬の内服、1・6・12ヶ月の超低容量リバーロキサバン+DAPTは、1・6・12ヶ月のワルファリン+DAPTの標準的抗血栓療法と比較し、臨床的に重大な出血が少なかった。3群の有効性に差はなかったが、信頼区間の幅は広い。

◇この論文のPICOはなにか
P:PCIを行なった非弁膜症性心房細動患者
I/C:以下の3群に1:1:1に割り付け
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
O:TIMI出血基準での臨床的に重大な出血(大出血+小出血+治療を要する出血)

inclusion criteria:18歳以上、発作性・持続性・慢性の非弁膜症性心房細動、1年以内に心房細動がドキュメントされていること、1年以内に心房細動がドキュメントされていなくてもPCIの3ヶ月前から抗凝固療法を行なっている場合

exclusion criteria:脳梗塞/TIAの既往、12ヶ月以内の重大な消化管出血、CCr<30ml/min、原因不明の貧血(Hb<10g/dl)、その他出血リスクがある患者

手順:PCIのシースを抜去72時間後にPT-INR2.5未満であれば無作為化を行う。無作為化の前にDAPT期間と使用するP2Y12阻害薬(クロピドグレル/プラスグレル/チカグレロル)を決めておき、それに応じて層別化を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
同等。平均70歳で、1/4が女性。ほとんどが白人。CCrは平均だと80ml/minぐらいで良いが、30−60ml/minも30%弱いる。ACSが半分。P2Y12阻害薬はほぼクロピドグレル。ステントは2/3がDESで、1/3がBMS。ワーファリンのTTRは65.0%とちょっと低め(治療域は2.0−3.0と設定)。CHA2DS2-VAScは平均で3−4ぐらい?

◇結果
地域:北米、南米、欧州など
登録期間:2013年3月〜2015年7月
観察期間:12ヶ月
無作為化:記載なし。
盲検化:オープンラベル。アウトカム評価者は盲検化されている。
必要症例数:記載なし。
症例数:2124例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen Scientific Affairs社、バイエル社)。リバーロキサバンは無料で提供。

kaplan-meier
DAPT+ワルファリンが有意に出血が多い。
secondary efficacy endpointは心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントで、有意な差はなかった。

result
治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)の定義がいまいちわからないけど、TIMI出血基準の小出血より軽度な出血のことらしい。大出血と小出血は、ワルファリン+DAPTが多い傾向だけど有意差はなくて、有意差がついているのは治療を要する出血という部分だけ。

result2
primary endpointの出血うんぬんより、個人的にはこっちの方が気になる。どれもイベント数が少なくて、有意な差はない。

◇批判的吟味
・primary endpointで有意差がついているが、その内訳をみると治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)で有意差がついている。もちろん感覚的には納得できるが、これはソフトなエンドポイントであり、かつオープンラベルなので、バイアスが入るかもしれない。
・なぜ出血をprimary endpointにしているんだろう。梗塞+塞栓イベントをprimary endpointに設定して欲しかった。
・梗塞+塞栓イベントがsecondary outcomeに設定されているが、イベントの発生が少なくて本当に差があるのかどうかはわからない(3群とも同等と解釈してはいけない)。
・可能であれば、3−5年ぐらいの観察期間でsecondary outcomeがどうなっているか見てみたい。
・超低容量リバーロキサバン併用で塞栓イベントは増えないのか?
・日本だと低容量は10mg?、超低容量はどうすれば?
・ロストフォローアップはないが、どの群も20−30%で治療中断あり。

◇感想
PCIを行なった心房細動患者の抗血栓療法について結論はでていないが、WOEST試験の結果を踏まえて、抗血小板薬は単剤にしていることが多い(ACSなら最初は3剤)。それでもステント血栓症は経験してないので、抗血小板薬と抗凝固薬の2剤でいいんだろうなあという感触は持っています。

抗凝固薬はワルファリンじゃなくてNOACでいいのかわからないが、多くの場合にNOACを使っていると思われるし、自分もそうしている。このPIONEER AF-PCI試験は、NOAC+抗血小板薬でもいいのか検証した試験で、結果としてはワルファリン+DAPTよりも出血は有意に少なく、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞は増えなかった。

それにしても、なんで出血がprimary endpointになっているんでしょうか。個人的には、むしろNOAC+抗血小板薬の2剤にすることで、梗塞や塞栓が増えないかが知りたかったので、secondary endpointに設定されている心血管死、心筋梗塞、脳梗塞を、primary endpointでやってほしかった。それだと、Nがでかくなりすぎるので難しいのでしょう。

あと、グループ2でATLAS ACS 2-TIMI51試験のレジメンを持ってきているが、この超低容量で塞栓イベントが増えないのかも気になる。

secondary endpointの心血管死、心筋梗塞、脳梗塞はイベント数が少なく、本当に差があるかどうかがわからない。これはもっと長い期間観察しないとわからないと思うので、3−5年のデータがでてくるといいなあと思いますが、1年以降の抗血栓療法をどのようにするかにもよるでしょう。

まあとりあえず、ルーチンで3剤飲まないといけないということはなさそうなので、今の感じの抗血栓療法(NOAC+P2Y12阻害薬の2剤で、ときどき3剤)でよさそうです。

IVCフィルターでは肺血栓塞栓症の再発は抑えられない

Effect of a retrievable inferior vena cava filter plus anticoagulation vs anticoagulation alone on risk of recurrent pulmonary embolism: a randomized clinical trial.
JAMA. 2015 Apr 28;313(16):1627-35.

《要約》
重要性
急性肺血栓塞栓症の患者に対し、抗凝固療法に加え回収可能型IVCフィルター留置することがよくあるが、そのベネフィットは不明確である。

目標
急性肺血栓塞栓症を発症し再発リスクが高い患者に対し、抗凝固療法+回収可能型IVCフィルターの安全性と有効性を評価すること。

デザイン、セッティング、参加者
無作為化、オープンラベル、エンドポイントを盲検化した臨床試験を行った。登録期間は2006年8月から2013年1月で、フォローアップは6ヶ月とした。重症度基準を1つ以上満たす深部静脈血栓症を有する急性症候性肺血栓塞栓症を、回収可能型IVCフィルター+抗凝固療法(IVCフィルター併用群200例)と抗凝固療法単独(抗凝固療法単独群199例)に割り付けた。

介入
すべての患者で少なくとも6ヶ月は抗凝固療法を行った。IVCフィルター併用群には、回収可能型IVCフィルターを留置した。フィルターの回収は留置から3ヶ月後に予定された。

主要なアウトカム
有効性主要評価項目は3ヶ月時点での症候性の肺血栓塞栓症の再発である。副次評価項目は6ヶ月時点での差肺血栓塞栓症の再発、症候性深部静脈血栓症、大出血、3ヶ月と6ヶ月時点での死亡、フィルター合併症である。

結果
IVCフィルター併用群では、193例でIVCフィルターの留置に成功し、3ヶ月時点で抜去が試みられた164例のうち153例で抜去に成功した。3ヶ月までに、肺血栓塞栓症の再発はIVCフィルター併用群で6例(3%、全例死亡)、抗凝固療法単独群で3例(1.5%、うち2例死亡)で認められた(フィルターの相対リスク2.00、95%CI0.51−7.89)。結果は6ヶ月の時点でも同様であった。他のアウトカムでも両群間に有意差はなかった。フィルター血栓症は3例で認められた。

結論
重症な急性肺血栓塞栓症患者では、抗凝固療法に加え回収可能型IVCフィルターを留置することは、肺血栓塞栓症の再発を減少させなかった。抗凝固療法で治療可能な患者に対しては、このタイプのフィルターの使用は支持できない。

◯この論文のPICOはなにか
P:深部静脈血栓症を有する急性肺血栓塞栓症
I:抗凝固療法に加え、回収可能型IVCフィルターの留置
C:抗凝固療法のみ
O:3ヶ月時点での致死的、もしくは症候性の肺血栓塞栓症の再発

inclusion criteria:18歳以上、下肢の深部もしくは表在静脈に血栓を有する急性症候性肺血栓塞栓症、重症基準をひとつ以上満たすこと(75歳以上、活動性悪性腫瘍、慢性心不全、慢性呼吸不全、脳梗塞による下肢麻痺、腸骨静脈の血栓、右室機能不全もしくは心筋障害)

右室機能不全もしくは心筋障害とは、右室拡大(右室/左室比0.9)、エコーでの肺高血圧(推定肺動脈圧40mmHg以上)、BNP・NT−proBNP・トロポニンI・トロポニンTの異常値と定義する。

exclusion criteria:抗凝固療法が行えない患者、適切な抗凝固療法にもかかわらず再発している患者、すでにIVCフィルターが留置されている患者、下大静脈に血栓がありIVCフィルターが留置困難な患者、3ヶ月以内に非悪性腫瘍の手術を行った患者、10日以内に悪性腫瘍の手術が行われた患者、造影剤アレルギー、血清Cr>2.04mg/dl、生命予後6ヶ月以内、妊娠

◯baselineは同等か
characteristics
慢性呼吸不全は有意にIVCフィルター併用群で多かった。

◯結果
地域:フランス
登録期間:2006年8月〜2012年7月
観察期間:6ヶ月
無作為化:中央割り付け(interactive voice response system)、ブロック無作為化、施設と血清Cr値で層別化
盲検化:試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できない。アウトカム評価者は盲検化されている。
必要症例数:各群200例(抗凝固療法単独群のイベント率が8.0%、IVCフィルターにより75%の相対リスク低下、power80%、αlevel0.05として算出)
症例数:IVCフィルター併用群200例、抗凝固療法単独群199例と必要症例数をほぼ満たしている。
追跡率:IVCフィルター併用群198/200例(99%)、抗凝固療法単独群190/199例(95.4%)
解析:ITT解析
スポンサー:IVCフィルターはALN Implants Chirurgicauxより提供。

IVCフィルター併用群200例のうち、195例でIVCフィルターの留置が試みられ、193例で留置に成功。そして、3ヶ月時点でフォローアップされている180例のうち、164例でIVCフィルターの抜去が試みられ、153例(93.3%)で成功している。一方、抗凝固療法単独群では6例でIVCフィルターが留置された(4例は侵襲的処置や手術のため、2例は抗凝固療法による出血のため)。

result

antithrombotic-therapy

◯感想/批判的吟味
・PEの再発律が想定(8.0%)よりかなり低い。
・近位部DVTは70%で、残りの30%は遠位もしくは表在なので、近位の症例に絞った方が良かったのでは。
・慢性期の抗凝固療法として、フォンダパリヌクスが使われており、日本の状況とは異なる。
・NOACは使用されていない。
・ワルファリンのTTRは60%ほどでコントロールが良いとは言えないが、それでもPEの再発は、この程度しか起きていない。
・IVCフィルターが回収できない症例が存在し、より長期で問題になる可能性がある。

下肢静脈血栓が残存する肺血栓塞栓症において、抗凝固療法に加えIVCフィルターを留置しても、PEの再発は抑制できない。

ENSURE−AF試験 電気的除細動時の抗凝固療法はエドキサバンでもよい

Edoxaban versus enoxaparin–warfarin in patients undergoing cardioversion of atrial fibrillation (ENSURE-AF): a randomised, open-label, phase 3b trial
Lancet. 2016 Aug 26. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
経口第Ⅹa因子阻害薬であるエドキサバンは、心房細動患者の脳梗塞と全身性塞栓症の予防において、良好にコントロールされたエノキサパリンーワルファリン療法に対し非劣性で、出血は少ない。また、電気的除細動施行時のエドキサバンの有効性に関するデータは少ない。

方法
多施設、前向き、無作為化、オープンラベル、エンドポイントの盲検化を行なった試験で、19カ国、239施設が参加した。電気的除細動を施行する非弁膜症性心房細動患者において、エドキサバン60mgとエノキサパリンーワルファリンを比較した。減量基準(CCr15−50ml/min、体重≦60kg、P糖蛋白阻害薬の使用)を1つ以上満たす場合には、エドキサバンは30mgに減量した。経食道心エコー(TEE)の有無、抗凝固療法の治療歴、エドキサバンの投与量、地域で層別化し、voice-web systemでプロック無作為化を行った。有効性主要評価項目は脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、心血管死亡率の複合エンドポイントで、ITT解析を行った。安全性主要評価項目は大出血と臨床的に意義のある非大出血である。フォローアップは電気的除細動後28日間で、安全性の評価にはさらに30日間観察した。

結果
2014年3月14日から2015年10月28日までに2199例が登録され、エドキサバン(1095例)とエノキサパリンーワルファリン(1104例)の投与を受けた。平均年齢は64歳(SD10.54)、CHA2DS2−VAScスコアの平均値は2.6(SD1.4)、ワルファリンのTTRは70.8%(SD27.4)であった。有効性主要評価項目は、エドキサバン群で5例(<1%)、ワルファリン群で11例(1%)であった(OR:0.46、95%CI:0.12−1.43)。安全性主要評価項目はエドキサバン群16/1067例(1%)、ワルファリン群11/1082例であった(OR:1.48、95%CI:0.64−3.55)。結果はTEEと抗凝固療法の治療歴に依存した。

結論
ENSURE-AF試験は、非弁膜症性心房細動患者の電気的除細動施行時の抗凝固療法として、最も大きい前向き無作為化試験である。大出血、臨床的に意義のある非大出血、血栓塞栓症の発現率は両群で低値であった。

◯この論文のPICOはなにか
P:非弁膜症性心房細動で電気的除細動を行う患者
I:エドキサバンの内服
C:エノキサパリン及びワルファリンの内服
O:有効性主要評価項目は脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、心血管死亡率の複合エンドポイント。安全性主要評価項目は大出血と臨床的に意義のある非大出血。

inclusion criteria:非弁膜症性心房細動、電気的除細動と抗凝固療法が予定されている患者、抗凝固療法あるいは抗血小板療法が以前もしくは現在行われている患者
exclusion criteria:本文には記載なし

手順:まず、TEEを行う患者群について。ワルファリン群は、無作為化の時点でPT−INRが2.0を超えていればエノキサパリンは使用せず、ワルファリンを継続する。PT−INRが2.0を超えていなければエノキサパリンとワルファリンの投与を開始し、PT−INRが2.0を超えた時点でエノキサパリンを中止する。PT−INRは2.0−3.0を目標とし、ワルファリンはカルディオバージョン後28日間継続する。エドキサバン群は、少なくとも電気的除細動の2時間前までに内服を開始し、電気的除細動後28日間継続する。
次に、TEEを行わない患者群について。TEEを行う患者群とほとんど変わらないが、電気的除細動前の抗凝固療法は少なくとも21日間は行う。

◯baselineは同等か
characteristics
群間差についての記載がないが、一見差はなさそう。平均年齢64歳と若めで、CHA2Ds2−VAScスコア2.6±1.4と中等度ぐらいの塞栓リスク。

◯結果
地域:欧州・米国の19カ国、239施設
登録期間:2014年3月25日〜2015年10月28日
観察期間:電気的除細動後28日間+内服中止後30日間
無作為化:TEEの有無、抗凝固療薬の使用歴、エドキサバンの用量、地域による層別化を行い、voice-web systemを用いてブロック無作為化を行う。
盲検化:患者、治療介入者、解析者は盲検化されていない(オープンラベル)。outcome評価者のみ盲検化。
必要症例数:2200例(ワルファリン群の脳梗塞及び全身性塞栓症が0.6%、power80%として0.2%の差異を検出するためには40000例が必要。実際には、点推定を用いるためサンプルサイズは2200例としている)
症例数:2199例(エドキサバン群1095例、ワルファリン群1104例)
追跡率:エドキサバン群1001/1095例(91.4%)、ワルファリン群969/1104例(87.8%)
解析:ITT解析
スポンサー:第一三共

result
エドキサバンのコンプライアンスは99%以上で、ワルファリン群のTTRは70.8%と概ね良い。

◯感想/批判的吟味
電気的除細動を行う心房細動患者の抗凝固療法は、エドキサバンでもワルファリンでも差がないという結果。これだけイベント率が低いので2200例ではパワー不足であり、これでエドキサバンとワルファリンの効果は同等としてよいのかわからない。ただ、NOACの今までのRCTのpost hoc解析や、リバーロキサバンのX−VeRT試験と同じ傾向であるし、感覚的にも別にNOACでいいよなぁという感じ。

急性内科疾患での深部静脈血栓症予防 ベトリキサバンの効果

Extended Thromboprophylaxis with Betrixaban in Acutely Ill Medical Patients.
N Engl J Med. 2016 May 27. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
急性内科疾患の患者は、長期にわたり静脈血栓症のリスクにさらされている。

方法
急性内科疾患で入院した患者を、エノキサパリン皮下注+ベトリキサバンのプラセボの内服(エノキサパリン群)と、エノキサパリンのプラセボの皮下注+ベトリキサバン内服(ベトリキサバン群)の2群に無作為に割り付けた。エノキサパリン、またはそのプラセボの投与期間は10±4日、実薬の投与量は40mg1日1回とした。また、ベトリキサバン、またはそのプラセボの投与期間は35−42日で、実薬の投与量は80mg1日1回とした。事前に定めた3つのコホート、コホート1:Dダイマーの上昇した患者、コホート2:Dダイマーが上昇した患者または75歳以上の患者、コホート3:登録した全患者、について解析した。いずれの解析でも群間差がない場合、他の解析を考慮することを解析計画で明記した。有効性主要評価項目は無症候性の近位深部静脈血栓症(DVT)と症候性静脈血栓症である。安全性主要評価項目は大出血である。

結果
7513例を無作為化した。コホート1では、有効性主要評価項目は、ベトリキサバン群で6.9%、エノキサパリン群では8.5%であった(ベトリキサバン群の相対リスク0.81、95%CI:0.65−1.00、P=0.054)であった。コホート2では、ベトリキサバン群5.6%、エノキサパリン群7.1%で相対リスクは0.80(95%CI:0.66−0.98)であった。コホート3では、ベトリキサバン群5.3%、エノキサパリン群7.0%で相対リスクは0.76(95%CI:0.63−0.92)であった。全患者で大出血は、ベトリキサバン群で0.7%、エノキサパリン群で0.6%であった(相対リスク1.19、95%CI:0.67−2.12)。

結論
Dダイマーが上昇した急性内科疾患患者では、期間を延長したベトリキサバン投与と、エノキサパリンの標準的なレジメンに有意差はなかった。しかしながら、事前に示した予備的な解析では、2つのより大きい集団でベトリキサバンのメリットが示された。

◯この論文のPICOはなにか
P:急性内科疾患で96時間以上入院している患者
I:エノキサパリンのプラセボの皮下注+ベトリキサバン内服(ベトリキサバン群)
C:エノキサパリン皮下注+ベトリキサバンのプラセボの内服(エノキサパリン群)
O:有効性主要評価項目は、32−47日目に認められた無症候性近位部深部静脈血栓症、1−42日目に起こった症候性の近位部または遠位部深部静脈血栓症、症候性肺血栓塞栓症、静脈血栓症による死亡の複合エンドポイント。安全性主要評価項目は薬剤投与中止7日までに起こる大出血。

procedure:エノキサパリン、またはそのプラセボは、10±4日間投与し、実薬の投与量は40mg1日1回である。ベトリキサバン、またはそのプラセボは、35−42日間投与し、実薬の投与量は80mg1日1回(初回投与量は160mg)である。

inclusion criteria:40歳以上、診断された急性内科疾患(心不全、呼吸不全、感染症、リウマチ疾患、虚血性脳梗塞)

◯baselineは同等か
同等。
characteristics

◯結果
地域:35カ国、460施設
登録期間:2012年3月〜2015年11月
観察期間:47日間
無作為化:地域による置換ブロック法、層別化。interactive voice-response systemを用いる。
盲検化:患者、治療介入者、outcome評価者は盲検化されている。
必要症例数:本文に記載なし
症例数:7513例(ベトリキサバン群3759例、エノキサパリン群3754例)
追跡率:outcomeが不明な患者は、ベトリキサバン群では609例、エノキサパリン群では546例であった。
解析:1回でも薬剤を投与されたものを解析に含めるmITT解析(ベトリキサバン群3721例、エノキサパリン群3720例)
スポンサー:企業の関与あり(Portola Pharmaceuticals)

result

◯感想/批判的吟味
・脱落が少なくない
・途中でプロトコールの変更あり(よりハイリスクな症例を集めるため、Dダイマー上昇、75歳以上を組み入れ基準に加えた)
・途中で解析方法の変更あり
・コホート1でベトリキサバンの優位性が認められればコホート2、3での優位性を解析をすると定められているが、そもそもコホート1でベトリキサバンの優位性が確認されていない(よりハイリスクな集団だとベトリキサバンの効果が認められやすいと考えた様。power不足だと考察されている)
・この試験ではエノキサパリンが用いられているが、日本では未分画ヘパリンを使用することが一般的。医療経済的にはどうなのか気になるところ。ヘパリンは安いし、ヘパリンを使用していてVTEで苦労したという経験はない(無症候性VTEに気づいていないだけかもしれないが)

ベトリキサバンは、急性内科疾患においてエノキサパリンよりもVTE予防効果に優れる。アピキサバン(ADOPT試験)やリバロキサバン(MAGELLAN試験)では、エノキサパリン標準療法よりも有意に大出血を増やしたが、ベトリキサバンでは大出血の有意な増加はなかった。

ダビガトランとリバーロキサバンの消化管出血リスク

Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study.
BMJ. 2015 Apr 24;350:h1857

《要約》
目的
新規経口抗凝固薬リバーロキサバンとダビガトランの実臨床での消化管出血のリスクを検証すること。

デザイン
後ろ向き、プロペンシティをマッチさせたコホート研究

参加者
2010年12月1日〜2013年9月30日に新規にダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンの内服を開始した患者。

主要評価項目
全消化管出血、上部・下部消化管出血の発生率を推定するため、プロペンシティスコアをマッチさせたCox比例ハザードモデルを用いた。異質性についはmarginal effects modelを用いて検討した。

結果
心房細動患者では、ダビガトランの消化管出血の発生率は2.29%/年(95%CI:1.88−2.79)、ワルファリンでは2.87%/年(95%CI:2.41−3.41)であった。非心房細動患者では、ダビガトランの消化管出血は4.10%/年(95%CI:2.47−6.80)、ワルファリンでは3.71%/年(95%CI:2.16−6.40)であった。リバーロキサバンでは、心房細動患者の消化管出血は2.84%/年(95%CI:2.16−6.40)であった(ワルファリン:3.06%/年[2.49−3.77])。非心房細動患者では1.66%/年(95%CI:1.23−2.24)であった(ワルファリン:1.57[1.25−1.99])。プロペンシティスコアを用いた解析では、心房細動患者の消化管出血はNOACとワルファリンでは同程度であった(ダビガトランvsワルファリン:HR0.79[0.61−1.03]、リバーロキサバンvsワルファリン:HR0.93[0.69−1.25])。また非心房細動患者でも同様であった(ダビガトランvsワルファリン:HR1.14[0.54−2.39]、リバーロキサバンvsワルファリン:HR0.89[0.60−1.32])。65歳以上では消化管出血のリスクは増加し、76歳以上になると心房細動患者ではダビガトランの消化管出血はワルファリンのそれを超える(HR:2.46[1.61−3.83])。また、リバーロキサバンでも心房細動の有無を問わずワルファリンに比べ消化管出血が増加する(心房細動:HR2.91[1.65−4.81]、非心房細動:HR4.58[2.40−8.72])。

結論
NOACに関連した消化管出血のリスクは、ワルファリンと同程度であった。高齢者、特に75歳以上の患者でNOACを処方する際は注意すべきである。

◯論文のPECOはなにか
P:ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンを内服している患者
E/C:なし
O:消化管出血

inclusion criteria:18歳以上、2010年12月1日〜2013年9月30日に初めてダビガトラン・リバーロキサバン・ワルファリンが処方された患者
exclusion criteria:アピキサバン内服例(サンプルサイズが小さいため)、機械弁、僧帽弁狭窄症、血液透析、腹膜透析、腎移植、ナーシングホームなどへの入所

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート研究
登録期間:2010年12月1日〜2013年9月30日
地域:米国
症例数:92816例(プロペンシティスコアがマッチしたのは、ダビガトランvsワルファリンでは心房細動で7749例、非心房細動で732例、リバーロキサバンvsワルファリンでは心房細動で5166例、非心房細動で10803例)
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:プロペンシティスコア
スポンサー:企業の関与なし

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
米国のデータベースからの後ろ向きデータ。COIなし。

75歳以上の恒例でなければ、ダビガトランもリバーロキサバンもワルファリンと消化管出血のリスクは同程度。非心房細動の高齢者ではcomparableとされているが、サンプルサイズが小さくさが出にくいのかもしれない。とにかく、心房細動の有無によらず75歳以上の高齢者に対しNOACを使用する場合は、注意が必要。