カテゴリー別アーカイブ: 抗血栓療法

CKD合併心房細動 ワーファリンとDOACの比較

Direct oral anticoagulants versus warfarin for preventing stroke and systemic embolic events among atrial fibrillation patients with chronic kidney disease
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 6; doi:10.1002/14651858.CD011373.pub2.

AF+CKDで、ワーファリンとDOACを比較したコクランのレビュー。

DOAC:アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバン、リバロキサバン
観察期間:1.8−2.8年
CKDは、CrClまたはeGFR:15−60mL/min (CKD G3とG4) と定義した。
G3:12155例、G4:390例

5つの試験を統合。
• ARISTOTLE Study 2010: 3,017/18,122 (17%)
• ENGAGE AF-TIMI 48 Study 2013: 2,740/14,071 (19.5%)
• J-ROCKET AF Study 2012: 284/1,278 (22.2%)
• RE-LY Study 2009: 3,554/17,951 (19.8%)
• ROCKET AF Study 2010: 2,950/14,264 (20.7%).

【結果】
ワーファリン vs DOAC
脳梗塞+全身性塞栓症
29/1000 vs 23/1000 (95%CI:19-29/1000)
RR:0.81 (95%CI:0.65-1.00)
quality of the evidence:moderate

大出血
55/1000 vs 43/1000 (95%CI:32-57/10000)
RR:0.79 (95%CI:0.59-1.04)
quality of the evidence:low

心筋梗塞
11/1000 vs 10/1000 (95%CI:5-21/1000)
RR:0.92 (0.45-1.90)
quality of the evidence:-

小出血
74/1000 vs 72/1000 (95%CI:43−119/1000)
RR:0.92 (0.58−1.61)
quality of the evidence:low

消化管出血
17/1000 vs 24/1000 (95%CI:17−35/1000)
RR:1.40 (0.97-2.01)
quality of the evidence:moderate

頭蓋内出血
14/1000 vs 6/1000 (95%CI:4−9/1000)
RR:0.43 (0.27−0.69)
quality of the evidence:moderate

全死亡
78/1000 vs 71/1000 (95%CI:61-82/1000)
RR:0.91 (0.78−1.05)
quality of the evidence:moderate

【まとめ】
CKDを合併した心房細動において、脳梗塞+全身性塞栓症のリスクはワーファリンとDOACで同程度だった。出血性合併症は、頭蓋内出血は有意にワーファリンが多かったが、大出血・消化管出血に差はなかった。全死亡についても差はなかった。

RCTのSRであるということと、CKDG4はほとんど含まれないという点は、実臨床で抗凝固療法を行う上で留意すべき。

ACSではDAPT期間は6ヶ月より12ヶ月がベター

6-month versus 12-month or longer dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome (SMART-DATE): a randomised, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2018 Mar 31;391(10127):1274-1284.

ACSのDAPT期間を短くできるか検証したRCT。

【PICO】
P:UAP、NSTEMI、STEMI
I:6ヶ月DAPT
C:12ヶ月DAPT
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:血管径2.25−4.25mm
exclusion criteria:3ヶ月以内の大出血の既往、2ヶ月以内の大出血、手術予定

procedure:すべての患者で、アスピリン300mgとクロピドグレル300−600mgのローディングを行う。維持量は、アスピリン100mg、クロピドグレル75mg。試験の途中でプラスグレルとチカグレロルが使えるようになった。プラスグレルはローディング60mg、維持量10mg、チカグレロルはローディング180mg、維持量90mg。PCIの手技については、術者に一任。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:韓国
登録期間:2012年9月5日〜2015年12月31日
観察期間:18ヶ月
症例数:2712例(6ヶ月群1357例、12ヶ月群1355例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Abbott Vascular、Medtronic Vascular, Biosensors Inc, Dong-A ST)

【患者背景】
平均年齢62歳、男性75%、糖尿病28%、喫煙者40%、慢性腎不全1%、平均LVEF10%、UAPとNSTEMIとSTEMIは1/3ずつ。多枝病変45%、分岐部病変9%、ステント長26mm。両群にbaselineの差はない。

【結果】
6ヶ月群 vs 12ヶ月群
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞
4.7% vs 4.2% HR:1.13(95%CI:0.79−1.62)

全死亡
2.6% vs 2.9% HR:0.90(95%CI:0.57−1.42)

心筋梗塞
1.8% vs 0.8% HR:2.41(95%CI:1.15−5.05)

BARC2−5
2.7% vs 3.9% HR:0.69(95%CI:0.45−1.05)

大出血
0.5% vs 0.8% HR:0.60(95%CI:0.22−1.65)

【まとめと感想】
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞という複合エンドポイントにしてみると、6ヶ月DAPTは12ヶ月DAPTに対し非劣性だが、心筋梗塞だけを見ると有意に増えている。標的血管も非標的血管も両方とも。

出血に関しては、BARCtype2−5で6ヶ月DAPTで少ない傾向にあるが、有意ではなく、かつBARCtype2は軽めの出血も含まれる。大出血に限ると差はない。プラスグレルの投与量は日本と異なるが、韓国のRCTで同じアジア人なので、日本人にも十分当てはめることができるデータだと思う。

心筋梗塞は増やすが、大出血は変わらないとなると、あえて6ヶ月DAPTにする理由はない。

75歳以上の高齢者でも、ステントはDESが良い

Drug-eluting stents in elderly patients with coronary artery disease (SENIOR): a randomised single-blind trial.
Lancet. 2017 Oct 31. pii: S0140-6736(17)32713-7. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32713-7. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
短期間のDAPT下で、DESがBMSより心血管イベントを減少させるのか。

◇PICO
P:75歳以上のAP・ACS
I:DES(Synergyステント)
C:BMS
O:PCI後1年での全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、虚血による標的血管血行再建(TLR)

inclusion criteria:70%以上の狭窄(LMは50%以上)、無症候性狭心症の場合は10%以上の血流欠損もしくはFFR<0.80

◇試験の概要
デザイン:RCT(single blined)
地域:9ヶ国44施設
登録期間:2014年3月21日〜2016年4月14日
観察期間:1年
症例数:1200例(DES群596例、BMS群604例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bostron Scientific社)

◇結果

(本文から引用)
両群で、DAPT期間は変わらなかった。


(本文から引用)
primary endpointで有意差があり、メインはTLR。

◇まとめと感想
75歳以上の高齢者のAP・ACSを対象とし、DESの安全性を検証したRCT。DESはBMSに比べ、TVRを有意に減少させ、primary endpointで差がついた。ステント血栓症はDESで少ない傾向で、1例を除きすべてDAPT継続中だった。

心血管死はDESで少ない傾向にあるが、ステント血栓症や自然発生の心筋梗塞については差がないので、これは無視していいだろう。

TVRは減るので、高齢者でもDESを選択した方が良い。

DAPT 血小板機能測定とクロピドグレル/プラスグレルの選択

VerifyNowを用いて血小板活性を評価し、それに応じてクロピドグレルあるいはプラスグレルの容量調整・薬剤変更を行う方法は、臨床的アウトカムに差がないことが以前報告されている(1−2)。

これは、Roche Diagnostics社の測定器を用いて血小板機能検査を行い、その結果に応じてクロピドグレルかプラスグレルのいずれかのDAPTへの割り付けを行い、臨床的アウトカムについて検証したRCTである。

Guided de-escalation of antiplatelet treatment in patients with acute coronary syndrome undergoing percutaneous coronary intervention (TROPICAL-ACS): a randomised, open-label, multicentre trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32155-4.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:バイオマーカ陽性のACS
I:クロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTへ割り付けを、血小板活性を評価し行う
C:プラスグレルのDAPT
O:12ヶ月後のnet clinical benefit(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、BARCgrade2以上の出血)

procedure:

(本文から引用)

対照群は12ヶ月のプラスグレルを用いたDAPT。介入群はprimay PCIを施行し退院7日後までプラスグレルのDAPTを継続。その後、プラスグレルからクロピドグレルへ切り替え7日後に血小板活性を評価。血小板活性が高くなければクロピグレルを継続し、血小板活性が高い場合にはプラスグレルへ戻す。

血小板機能はRoche Diagnostics社の測定器を使用。

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:オーストリア、ドイツ、ハンガリー、ポーランドの33施設
登録期間:2013年12月2日〜2016年5月20日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:secondary endpointに対し2600例(primary endpointだけなら2344例)
症例数:2610例(介入群1304例、対照群1306例)
解析:PP解析
スポンサー:企業の関与あり(Roche Diagnostics、イーライリリー、第一三共など4社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢60歳と若め、男性20%、糖尿病20%、腎不全3%。


(本文から引用)

1枝病変と多枝が半分ずつ、LAD lesionが多い、lesion classificationは様々、DESが80%。

◇結果

(本文から引用)

◇まとめと感想
理屈では、CYP2C19のPMであれば、血栓症予防にはクロピドグレルよりもプラスグレルの方がいい。PMでなければ、プラスグレルよりクロピドグレルの方が出血リスクは抑えられるだろう。クロピドグレルの効果が表れているか検査により判断できれば、効果を示していないPMに対してはプラスグレルを継続することは理にかなっている。

この試験デザインなら、出血が抑えられることが期待できたが、有意なイベントの低下は認めなかった(塞栓症と出血の複合エンドポイントで非劣性が証明されただけ)。

しかし、このTROPICAL-ACS試験で使用されたRoche Diagnostics社の測定器でも、またARCTIC試験やTRRIGER-PCI試験で用いられたVerifyNowでもそうだけど、血小板機能を評価して、それに応じて薬剤を変更したり調整したりする方法は、臨床的アウトカムを改善しないみたい。

理屈としては正しいけど、血小板機能をみるその方法がまずいのか。体内での血小板機能と検査での血小板機能の乖離みたいなものがあるのかも。

CYP2C19のPMの頻度、日本人では約20%、白人では3%程度と言われており、この試験では白人が99%でありPMの絶対数が少なかったから、結果に差が出なかった可能性はある。日本人なら、結果が違っていたかもしれない。

(1)J Am Coll Cardiol. 2012;59(24):2159-64.
(2)N Engl J Med. 2012;367(22):2100-9.

心房細動+ステント留置後の抗血栓療法 ダビガトランなら150mg BIDの方がいい

Dual Antithrombotic Therapy with Dabigatran after PCI in Atrial Fibrillation.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1708454. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:非弁膜症性心房細動+冠動脈疾患(ステント留置後)
I:P2Y12阻害薬に、ダビガトラン110mg BID、または150mg BIDの追加
C:DAPT+ワーファリン
O:大出血、または臨床的に問題となる出血

secondary endpoint:心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建

手順:非弁膜症性心房細動(発作性・持続性・慢性でもどれでもいいが二次性のものはダメ)で、ACSまたは安定狭心症でPCIが施行された患者が対象。ステントはDESでもBMSでもどちらを使用してもよく、PCI成功後120時間以内に登録し、3群に割り付ける。なお、米国以外の国の高齢者(≧70歳)は3剤併用群もしくは110mgBIDの2群に割り付け。VKA+DAPTの3剤併用期間は、BMSなら1ヶ月、DESなら3ヶ月で、アスピリンを中止する。P2Y12阻害薬は、いずれの群もクロピドグレルかチカグレロルを使用。

exclusion criteria:機械弁、生体弁、eGFR<30ml/minなど

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:41ヶ国 414施設
登録期間:2014年7月21日〜2016年10月31日
観察期間:14ヶ月(中央値)
必要症例数:最初は8520例だったが、途中で2500例に変更(3剤併用群のイベント発生14%、非劣性マージン1.38)。血栓塞栓イベント(心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建)は当初primary endpointに含められていたが、パワー不足のためsecondary endpointへ変更。
症例数:2725例
追跡率:99.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ベーリンガーインゲルハイム社)。同社はデータ解析、論文の執筆にも関与している。

◇患者背景

(本文から引用)

両群間にちょっと差がありそうだが、統計学的な差については記載がない。

平均年齢70歳
CHA2DS2-VASc:3.8、HAS-BLED:2.8
ACS50%で、82%にDES留置
P2Y12阻害薬はクロピドグレルが88%
3剤併用群のワーファリンのTTRは64%

◇結果

(本文から引用)

出血はダビガトラン110mgBIDでも150mgBIDでも、有意に少ない。


(本文から引用)

しかし、心筋梗塞・ステント血栓症についてはダビガトランが良いとは決して言えない。110mgBIDでは統計学的な有意差はないが、多い傾向にある。

◇まとめと感想
ステント留置直後の非弁膜症性心房細動において、VKA+DAPTの3剤併用療法に比べ、ダビガトランとP2Y12阻害薬の2剤併用の方が、出血が少なかった。PIONEERーAF PCI試験でも同様だが、出血という点に関して言えば、VKA+DAPTよりもDOAC+P2Y12阻害薬が良い。

ただ、心筋梗塞・ステント血栓症については、ダビガトラン110mgBID+P2Y12阻害薬で多い傾向にある。心筋梗塞に関しては、もとのサンプルサイズでやっていれば、統計学的な有意差もついたかもしれない。ステント血栓症は数が少ないのでなんとも言えないが、この結果で110mgを使おうとは思わない。

その点、150mgBIDだとVKA+DAPTと比較した場合、血栓症・塞栓症に大きな差はないため、150mgBIDを使うという選択肢はありかもしれない。比較的若く腎機能がよいということが条件にはなるが。

冠動脈疾患標準治療への超低容量リバロキサバン追加 COMPASS試験

Rivaroxaban with or without Aspirin in Stable Cardiovascular Disease.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1709118. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患、末梢血管疾患
I/C:リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群比較
O:心血管死、脳梗塞、心筋梗塞

死因が明確である非心血管死以外は、心血管死としてカウントする。
虚血性疾患死(CHD death)=心筋梗塞による死亡、心臓突然死、心血管治療による死亡

安全性主要評価項目は、致死的出血、重要臓器不全の症候性出血、再手術を要する外科創部出血、入院を要する出血

inclusion criteria:65歳未満なら糖尿病や喫煙などの他のリスクが2つ以上あることなど
exclusion criteria:高い出血リスク、DAPT、他の抗血栓薬の使用など

◇試験の概要
デザイン:RCT(二重盲検、ダブルダミー、3×2 factrial design)
地域:33ヶ国 602施設
登録期間:2013年3月〜2016年5月
観察期間:23ヶ月
必要症例数:27400例(A単独群でpirimary endpointが3.3%/人年、Rの2群で20%の相対リスク減少)
症例数:27395例
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(バイエル社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢68歳、OMI60%、冠動脈疾患90%、アジア人15%、βblockerやACE阻害薬/ARBは70%、脂質低下薬は90%

◇結果

(本文から引用)


(本文から引用)

A単独に比べR+Aで、primary endpointが有意に減少。
絶対リスク減少1.3%、相対リスク減少24%

心筋梗塞は減っていないので、心血管死の減少は脳梗塞死によるものかもしれないが、虚血性疾患死は有意に減少しているのは???

R単独では、primary endpointで差はつかない。虚血性脳卒中は減るが、それ以上に出血性脳卒中は増加する。

R+Aでは、やはり大出血は増加し、消化管と皮膚からの出血が増加している。

◇感想
冠動脈疾患を対象として、リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群で、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞をアウトカムに比較した試験。

R単独ではA単独より、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞の複合エンドポイントは変わらず、大出血は有意に増加させた。なので、アスピリンの代わりにあえてリバロキサバン5mgを使用する理由はない。

ただ、アスピリンにリバロキサバン2.5mg追加すると、アウトカムは改善する(主に心血管死と脳梗塞の減少)。

欧米人に比べると虚血リスクが低い日本人でも有効性があるのか(サブグループ解析をみると有効っぽい)、出血がさらに増えるのではないか、容量は2.5mgで良いのかなど疑問はある。日本人も1500例ほど登録されているようなので、これからデータが出てくるだろう。非弁膜症性心房細動でもDOACがunder-doseで処方されることが少なくない日本では、アスピリン+リバロキサバンという処方は、たとえ有効性が確認されたとしても流行らないだろう。メーカーが、超低容量というなんか出血が少なそうな”響き”、”イメージ”を上手く使って売り込めば、どうかわからないが。

若くて、血圧コントロールが良くて出血リスクが低い人なら、リバロキサバン2.5mgを加えるのはありか。

透析患者の心房細動へのワーファリン

透析患者に心房細動が見つかった場合、抗凝固療法を行なった方がいいのか、控えるべきなのか、非常に悩ましい。

AFを有する透析患者を対象としたRCTは存在しない。観察研究の結果も一貫しているわけではなく、CHA2DS2-VASc≧2点ではワーファリンにより死亡率が低下するというデータはある。(1−2)。

ガイドラインをみてみると、AHAでは、CHA2DS2-VASc≧2点の透析患者へのワーファリン投与はreasonableとしているが、ESCでは明言を避けている(3−4)。

これは、韓国のレジストリーデータ。

Warfarin Use in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Hemodialysis: A Nationwide Population-Based Study.
Stroke. 2017 Aug 11.[Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:心房細動を有する透析患者
E/C:ワーファリンの内服の有無(VKA群、non-user群)
O:急性心筋梗塞、虚血性脳梗塞、末梢血管疾患、出血性脳卒中、消化管出血

exclusion criteria:僧帽弁狭窄症、僧帽弁手術例

<デザイン、セッティング>
・韓国のレジストリー
・2009年1月1日〜2013年12月31日
・9974例(VKA群:2921例、non-user群:7053例)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコア
・プロペンシティスコアがマッチしたのは2774例ずつ
・PT-INRの推移はわからない

<結果>

(本文から引用)

心筋梗塞、脳梗塞はワーファリンの使用の有無に関わらず同程度で、出血性脳卒中はVKA群で有意に多い。

出血性脳卒中 HR1.56(95%CI:1.10−2.22)


(本文から引用)

VKA群の方が出血性脳卒中が多いが、number at riskはnon-user群で減少が早い。


(本文から引用)

交互作用の統計学的解析はされていないが、見た目では一貫性がありそう。

◇感想
透析患者では、AFに対するワーファリンの使用は、出血性脳卒中を有意に増やしてしまうが、虚血性脳梗塞や心筋梗塞は減らせないという結果。以前、死亡リスクの減少が報告されたようなCHA2DS2-VAScのhigh scoreの患者でも、ワーファリンの有効性は乏しかった。

同じアジア人でのデータなので、日本人でも同様に、透析患者には抗凝固療法を控えるというのはreasonableかもしれない。

ただ、ワーファリンを処方するかどうかの選択バイアスが大きいことと、日本の透析患者は海外と比較すると予後が良いということは考慮に入れないといけない。

選択バイアスについては、Kaplan-Meierのnumber at riskをみると、non-user群の減少が大きい。イベントはVKA群の方が多いので、non-user群で死亡が多いということだろう(ロストフォローアップも含まれるが死亡の方が多いはず)。つまり、予後が短いことが予想される患者では、そもそもワーファリンが処方されないという選択バイアスを反映しているように思う。

あと日本人透析患者の予後が良さについては、DOPPS研究から示されている。生命予後が長いということは、それだけ出血リスクに晒されるわけで、上記のような選択バイアスがあればなおさら。

この研究では、PT-INRの推移やTTRはわからないので、そこがlimitation。

抗凝固療法をやるにしろ、やらないにしろ、慎重に。

(1)Circulation. 2014;129(11):1196-203.
(2)J Am Coll Cardiol. 2014;64(23):2471-82.
(3)Circulation. 2014;130:e199-e267
(4)Eur Heart J. 2016;37(38):2893-2962.

糖尿病合併冠動脈多枝病変へのCABG 抗血小板療法はアスピリン単剤で

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin Monotherapy in Diabetics With Multivessel Disease Undergoing CABG: FREEDOM Insights.
J Am Coll Cardiol. 2017 Jan 17;69(2):119-127.

◇この論文のPECOは?
P:糖尿病を有する冠動脈多枝病変でCABGを行なった患者
E:DAPT(アスピリン+クロピドグレル)
C:アスピリン単剤療法(ASA)
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

exclusion criteria:CABG後30日以内の死亡、アスピリンを内服していない、ワーファリンの内服

<デザイン、セッティング>
・FREEDOM試験(糖尿病を有する冠動脈多枝病変を対象に、PCIとCABGを比較したRCT)のpost hoc解析
・795例(DAPT群544例、ASA群251例)
・DAPT期間は0.98年(中央値)
・観察期間:平均5年
・COX比例ハザードモデル

<結果>

(本文から引用)

◇批判的吟味と感想
AHAのガイドラインでは、off-pump CABG(OPCAG)後の1年間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はclassⅠで推奨されており、on-pump CABGでは、DAPTを支持するデータが乏しく、classⅡbとなっている(1)。

糖尿病では、グラフト開存率の低下や死亡率上昇と関連があるが、糖尿病合併症例でもCABG後の1年間のDAPTは、5年での死亡率、心筋梗塞、脳梗塞を減少させなかった。

AHAのガイドラインではCABG後にDAPTが推奨されているとは言え、DAPT処方率は2/3と過去の観察研究よりも多かった。FREEDOM試験では、割付に関わらずクロピドグレルが提供されていたためかもしれない。1年間のDAPTでもASA単剤と出血に差はなかったが、この研究では、30日以内の死亡は解析から除外されているため、DAPTの出血リスクを過小評価するかもしれない。

post hoc解析なので結論めいたことは言えないが、DAPTがon-pumpCABGのアウトカムを改善しないという過去の報告と矛盾しない結果だった。

(1)Circulation. 2015;131:927-64

心血管疾患のない心房細動で、ワルファリンの心筋梗塞・脳梗塞予防効果はアスピリンに勝る

Antithrombotic Therapy and First Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(24):2901-2909

◇この論文のPECOは?
P:心血管疾患の既往のない心房細動
E/C:ワルファリンのみ、アスピリンのみ、ワルファリン+アスピリンの併用の3群
O:心筋梗塞

secondary endpointは脳梗塞と出血。

<デザイン、セッティング>
・デンマークのレジストリーデータ
・71959例
・観察期間:4.1年(中央値)
・ポアソン回帰モデル

<患者背景>

(本文から引用)
ASA+VKA群で、心不全、高血圧、糖尿病などの冠危険因子が多い。
ASA単独群は、年齢が高く出血を危惧され、アスピリンを処方されているのか?

<結果>

(本文から引用)
脳梗塞はアスピリンよりワルファリンがいいに決まっているが、出血に関してはアスピリンとワルファリンで有意差がない。心筋梗塞はアスピリンよりワルファリンの方が、予防効果が高い。

アスピリンとワルファリンの併用は、アスピリン単剤より心筋梗塞、脳梗塞を抑えるが、出血は逆に増える。

◇感想
ワルファリンも心筋梗塞予防効果があるが、その効果がアスピリンより高く出血も増えていないのは意外な結果だった。デンマークのレジストリーデータなので、フォローアップ率も極めて高く、まさにリアルワールドのデータ。

PT-INRの値やTTRもわかればよかったけど、この研究では調べられていないのは残念。この比較にDOACが入ってくるとどうなるか気もなるところです。

【総説】急性心筋梗塞 NEJM

Acute Myocardial Infarction
N Engl J Med 2017; 376:2053-2064

【定義】
・急性心筋梗塞には6つのタイプがある。
type1:アテローム血栓症によるもの
type2:需要と供給のミスマッチ
type3:心筋梗塞による突然死(バイオマーカーやECGなし)
type4a:PCIによるもの
type4b:ステント血栓症
type5:CABGによるもの

【疫学】
・米国ではここ30−40年で減少傾向にあるが、それでもAMIは55万人/年。低所得、中所得の国では増えている。

【病理】
・急性心筋梗塞は、不安定で脂質に富んだ動脈硬化性プラークの破裂や侵食によって起こる。

【初期評価】
・ACSが疑われる場合、来院から10分以内にECGをとり、トロポニン検査を行うこと。

・トロポニンは心筋炎などの心筋障害、心不全、腎不全、呼吸不全、脳梗塞、脳出血、敗血症性ショック、心構造疾患でも上昇する。トロポニンに加えて、CK-MBやミオグロビンを測ることは推奨されていない。

・リスク評価にはTIMIモデル、GRACEモデルが有効。

【初期治療】
・より迅速なprimaryPCIがアウトカムを改善する。

・院外心停止(初期波形VF)に対し、プレホスピタルで低体温療法を開始した2つのRCTがある。病着時の体温は有意に下がっていたが、病着後に低体温療法を開始する場合と比べ退院時のアウトカムは改善しなかった。

・酸素投与はルーチンでされることが多いが、SpO2<90%でない限り酸素投与はすすめられない。酸素投与は、SpO2<90%、呼吸不全など低酸素血症のリスクがある場合のみ勧める。現在、AMI6650例を対象として酸素投与の影響を検証するDETO2X-AMI試験が進行中である。

【治療戦略】

・βblockerは、ショック・LOS・心不全などがなければ、24時間以内に開始。
・アトルバスタチン40−80mg、ロスバスタチン20−40mg(注:日本ではアトルバスタチン20mg、ロスバスタチン20mgが最大量)の高容量のスタチンは、コレステロール低下作用と多面的効果あり。
・ACE阻害薬/ARBは、特にLAD、左室機能不全、心不全への導入が望ましく、24時間以内に開始を。
・OMIがあればアルドステロン拮抗薬を。


(日本では例外的な場所を除いて、120分以内にカテができるところにたどりつけるので、STEMIであればPCI。bivalirudinは使えず、ticagrelorも出番がないので、ASA+クロピドグレルorプラスグレルのDAPT。PCI前後は未分画ヘパリンを使用。)

・ステントは、ベアメタルステントよりコバルトクロム・エベロリムス溶出性ステント(Xience)が最も安全性・有効性(心臓死、AMI、ステント血栓症の減少)が高い。

・非責任病変に対するPCIは議論が分かれる。AHA/ACCのガイドラインでは、非責任病変へのPCI(primaryPCIと同時に、またはstagedPCIで)はclassⅡb。現在、非責任病変に対するPCIのタイミング(primaryPCIと同時かstagedか)を検証するための大規模RCT(COMPLETE試験)が進行中である。

・血栓吸引は、TOTAL試験で180日時点の心血管死、心筋梗塞、心不全を減少させず、30日時点の脳梗塞をわずかではあるが有意に増加させた(0.7%vs0.3%)。AHA/ACCガイドラインでは、ルーチンでの血栓吸引は推奨されていない。

・PCIのアクセスは、大腿動脈より橈骨動脈が出血が少ない。ただ、メタ解析では手技時間はわずかに(2分)増加することが示されている。

【抗血栓療法】
・腸溶性でないアスピリン(=バイアスピリンはダメ)162−325mgの投与。

・維持量は81−325mg。ただし、チカグレロル(ブリリンタ)とプラスグレル(エフィエント)を併用するときは、アスピリンは81mgがよい(注:日本では、ブリリンタはプラビックスとエフィエント(とパナルジン)が使えない時だけ使用可、なので出番なし)。クロピドグレル(プラビックス)を併用するときの至適容量は不明。

・PCI時に速やかにP2Y12阻害薬(プラビックス、エフィエント、ブリリンタ)を投与し、少なくとも1年間は継続すること。

・エフィエントとブリリンタのPCI前のローディングは、効果がなかった。

・プラビックスの効果はCYP2C19に依存する。

・ワルファリンとDAPTの3剤併用は、心房細動、機械弁、静脈血栓塞栓症の際に推奨されるが、出血リスクは増加するため極力短い方がいい。WOEST試験では、抗凝固薬+プラビックスが3剤併用より塞栓リスクを増加させず、出血リスクを低下させた(ハザード比:0.36、95%CI:0.26−0.50)。

・PIONEER AF-PCI試験では、ワーファリンとDAPTの3剤併用、リバロキサバン(イグザレルト)低容量とプラビックスの2剤併用、イグザレルト超低容量(2.5mg)とDAPTの3剤併用の3群に分け、有効性と安全性が検証された。どの群でも心血管死、心筋梗塞、脳梗塞に差はなかったが、出血リスクは、イグザレルトの低容量群と超低容量群で有意に減少した。