カテゴリー別アーカイブ: 抗血栓療法

Fushimiレジストリ 抗凝固薬と抗血小板薬の傾向と予後

Current Status, Time Trends and Outcomes of Combination Therapy With Oral Anticoagulant and Antiplatelet Drug in Patients With Atrial Fibrillation ― The Fushimi AF Registry ―
Circ J. 2018 Nov 24;82(12):2983-2991.

抗凝固薬単剤と抗凝固薬+抗血小板薬併用の現状と予後を比較。

【デザイン、セッティング】
・Fushimiレジストリ
・後向きコホート研究
・2378例(抗凝固薬単剤78%、抗凝固薬+抗血小板薬併用22%)
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】
2011年→2017年で、抗凝固薬+抗血小板薬併用は26%→14%に経時的に減少。

併用群の30%で、動脈硬化疾患の合併なし。

動脈硬化疾患ありの集団で
抗凝固薬単剤 vs 抗凝固薬+抗血小板薬併用

【まとめと感想】
抗凝固薬に抗血小板薬を加えることで、出血も塞栓症も増える傾向にあるけど、統計学的には有意な差ではない。

J-RHYTHMレジストリでは、ワルファリンにアスピリンを加えることで、ワルファリン単剤と比較して、塞栓症は変わらなかったけど、大出血(相対リスク1.6)と、全死亡(相対リスク1.5)は、有意に増加した(1)

結果は微妙に違うけど、それはそのレジストリに含まれている患者がもともと持っているリスクによっての違いもあるでしょう。まあ、出血が増えるというのはある意味当然で、それを上回るベネフィットがあるかどうかが問題で、CHA2DS2-VAScスコア≧2+HAS-BLED≧3だとワルファリンとアスピリンの併用の方が、net clinical benefitが高いという話もありますが(1)、AF+冠動脈疾患患者の慢性期の抗血栓療法は基本的には抗凝固薬単剤でいい気がします。

1)Int J Cardiol 2016;212:311-317

抗凝固療法にPPI併用は必要か

抗凝固薬にPPIの併用・・・
よくやられているパターンだと思います。

Association of Oral Anticoagulants and Proton Pump Inhibitor Cotherapy With Hospitalization for Upper Gastrointestinal Tract Bleeding.
JAMA. 2018 Dec 4;320(21):2221-2230.

【PECO】
P:抗凝固療法を新規で開始された患者
E:PPIあり
C:PPIなし
O:上部消化管出血による入院

抗凝固療法:アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン、ワルファリン(エドキサバンは試験期間中の処方が少なかったため含まない)

inclusion criteria:30歳以上

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・メディケア
・1643123例
・2011年1月1日〜2015年9月30日に抗凝固薬を開始された患者
・ポアソン回帰分析

【結果】

単位は調整後発生率/10000人年 (95%CI)

【まとめと感想】
PPIの内服により総じて40%ぐらい、消化管出血による入院が減っています。40/10000人年ぐらいなので、絶対値としてはそれほどインパクトは強くありません。数字だけ見ると、ダビガトランはワルファリンより消化管出血が少ないようですが、より消化管出血リスクの低い患者が選ばれているのだろうと思います。

DOAC内服時のPPIの併用について、ガイドラインではどうなっているのでしょうか。

Novel Oral Anticoagulants for Atrial Fibrillation(ESC)

DOAC投与時は、消化管出血の既往がある場合や抗血小板薬併用時は”考慮しても良い”、骨髄抑制が起こり得る化学療法や放射線療法が計画されている場合には”考慮すべき”ということになっています。それと、ダビガトランは臨床的な効果には差は長い、PPIやH2Bを併用すると10−30%吸収が低下します。アピキサバン、エドキサバン、リバロキサバンには影響はありません。

心房細動で抗凝固療法の適応になる時点で、他の併存疾患があり、それなりに薬を飲んでいる人が多いので、ポリファーマシーの観点からもルーチンにPPIを併用するのは望ましくないと思っています。

80代の高齢心房細動患者では、痩せが出血の危険因子

Fushimiレジストリでは、85歳以上だとそれ以下と比べて脳梗塞/全身性塞栓症が多くなるけど(HR:2.57、95%CI:1.77-3.65)、出血は多いわけではない(HR:1.40、95%CI:0.78-2.36)ということが以前報告されていました。

で、これは、高齢者の心房細動で出血にスポットを当てた論文です。高齢の心房細動患者で出血の危険因子はなにかということが調べられています。

Assessment of the bleeding risk of anticoagulant treatment in non-severe frail octogenarians with atrial fibrillation.
J Cardiol. 2019 Jan;73(1):7-13.

【PECO】
P:重度のフレイルでない80代の心房細動患者
E:暴露因子あり
C:暴露因子なし
O:出血

暴露因子:BMI(<18.5)、BW(&lt:50kg)、85歳以上、HAS-BLED3点以上、CKD、Hb<10g/dl、ワルファリン内服、抗血小板薬内服

フレイルティについては、臨床フレイルスケール(clinical frailty scale)で評価。
DOACは添付文書に準じた投与量調整がなされているか評価。
ワルファリンは、PT-INR1.6−2.6を至適範囲とし、TTR65%以上あれば適切な容量調整がなされていると判断した。

出血は3カテゴリに分類。
1)大出血:入院、または2単位以上の輸血が必要となる出血。生命に関わる出血。
2)臨床的に重大な出血:医学的介入、予約外受診、OACの一時的な中断が必要、または日常生活での支障をきたすような出血
3)小出血:上記以外

exclusion criteria:出血の既往、活動性の出血、重度腎障害、患者のコンディションが悪い場合

【デザイン、セッティング】
・症例対照研究
・単施設
・346例(ダビガトラン64例、リバロキサバン80例、アピキサバン95例、エドキサバン27例、ワルファリン80例)
・2011年1月〜2017年1月までにOACの処方が開始された患者
・観察期間:32.7ヶ月(14.0−51.0ヶ月)
・適切な容量調整がされていたのは、DOAC群では76%、ワルファリン群では65%。
・出血、抗凝固療法中止、抗凝固薬の変更、死亡、観察期間終了(2018年1月)のいずれかが起こるまでフォローアップ。
・COX比例ハザードモデル

【結果】
大出血は12例(消化管出血10例、喀血1例、肝出血1例)、臨床的に重大な出血4例(消化管出血4例)、小出血43例であった。

適切な容量調整がされている集団では、BMI<18.5が出血の最も重大な因子だった。
HR:2.17(95%CI:1.01−4.70)

一方、ワルファリンの使用(HR:0.57 [95%CI:0.26−1.27])や、抗血小板薬内服(HR:1.07 [95%CI:0.48−2.39])は有意差はなかった。

【まとめと感想】
80歳以上のAF患者では、やせ(BMI<18.5)が出血の危険因子のようです。

リアルワールドのデータでは、DOACはワルファリンと比べ出血が少ないと言われていますが、75歳以上のAF/VTEを対象としたメタ解析では出血に差はなく、このレジストリでもワルファリンの使用の有無では有意差はなかったようです。また、抗血小板薬併用下でも差はなかったということですが、ここらへんはNが大きくないので差が出なかったのかもしれません。

まあ、やせてる高齢者の抗凝固療法は要注意です。

今後ますます高齢の心房細動が増えてくると思いますが、エドキサバンのRCT(ELDERCARE-AF試験)やすべてのOACを含んだ前向きコホート研究(ANAFIEレジストリ)が走っているところのようなので、その結果が出てくると、高齢心房細動患者の治療も確立されてくるのではないでしょうか。

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

Apixaban to Prevent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer
N Engl J Med. 2018 Dec 4. doi: 10.1056/NEJMoa1814468. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:化学療法を行う新規、または再発の悪性腫瘍で、Khoranaスコア2点以上
I:アピキサバン2.5mg/回 1日2回
C:プラセボの内服
O:180日間の静脈血栓塞栓症(VTE)

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点
白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT
地域:カナダ
登録期間:2014年2月〜2018年4月
観察期間:210日
症例数:563例(アピキサバン群288例、プラセボ群275例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bristol-Myers社、Squibb–Pfizer社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりとした背景。年齢61歳、男性4割、体重80kg、リンパ腫と婦人科腫瘍が1/4ずつ、肺癌・胃癌・膵癌が10%ずつ、Khonaraスコア2点:2/3、3点:1/4、4点:1/12、抗血小板薬の併用1/4、VTEの既往3%。

【結果】
アピキサバン群 vs プラセボ群
▶︎180日以内のVTE
4.2% vs 10.2% HR:0.41(95%CI:0.26−0.65)

▶︎肺塞栓症
1.7% vs 5.8%(統計学的有意差の検証なし)

▶︎すべての出血
3.5% vs 1.8% HR:2.00(95%CI:1.01-3.95)

アピキサバン群で10例、プラセボ群で5例で、そのうち出血性ショック・頭蓋内出血まで至ったのは、アピキサバン群で1例(10%)、プラセボ群で2例(40%)。致死的な出血はいずれの群でも認めなかった。

▶︎全死亡
12.2% vs 9.8% HR:1.29(95%CI:0.98−1.71)

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTEはアピキサバンにより減らすことができるようです。Khoranaスコアというのは知りませんでしたが、この試験通りVTEリスクが高い2点以上でアピキサバンの予防投与をやってもいいのかもしれません。重大な出血を増やさずに、VTEを予防できる可能性はあると思います。

ただ、自分はこの結果をみても、悪性腫瘍+Khoranaスコア2点以上でアピキサバンを勧めようとは思いません。アピキサバンの内服期間は180日間となっている意味がよくわからないからです。この180日というのは恣意的で、アピキサバンのVTE予防効果が発揮されるだけの期間で、かつ出血がそれほど増えない期間として設定されてるのではないかと勘ぐってしまいます。

実臨床で、VTEの予防として内服し始めた薬を180日でやめるでしょうか。おそらく、副作用などの問題がなければ180日経過した後も続けるケースが大半を占めることになるのではないでしょうか。メーカが狙っているのはそこだろうと思います。企業のマーケティングに乗っかる必要はありません。

この論文の中にはありませんでしたが、Khoranaスコアがより高いグループではどうなのかは気になりますし、どのような患者群で本当に抗凝固療薬の恩恵を享受できるかを知りたいです。

ダビガトランvsワルファリン 日本のレセプトデータベースより

Comparative effectiveness and safety of warfarin and dabigatran in patients with non-valvular atrial fibrillation in Japan: A claims database analysis
J Cardiol. 2018 Nov 23. pii: S0914-5087(18)30293-4. doi: 10.1016/j.jjcc.2018.09.004. [Epub ahead of print]

【PECO】
P:新規で抗凝固薬を開始した非弁膜症性心房細動
E:ダビガトラン
C:ワルファリン
O:脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血
secondary endpoint:大出血

【デザイン、セッティング】
・後向き
・日本のレセプトデータベース(Medical Data Vision)
・2011年3月14日〜2016年6月30日
・22490例(プロペンシティスコアマッチ後は両群4606例ずつ)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコアマッチ

【結果】
プロペンシティスコアマッチ後の患者背景。
平均74歳、女性34%、心不全35%、糖尿病27%、心筋梗塞1%、脳梗塞/TIA13%、PPI40%、H2blocker17%、CHADS2スコア2.0点、HAS-BLEDスコア1.0点。

ワルファリン vs ダビガトラン
脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血(primary endpoint)
35.6 vs 29.0%/1000人年 HR:0.72(95%CI:0.53-0.97)

大出血(secondary endpoint)
11.3 vs 6.4%/1000人年 HR:0.55(95%CI:0.30−0.99)

消化管出血
6.4 vs 1.6%/1000人年 HR:0.24(95%CI:0.28−0.80)

【まとめと感想】
後向きのデータではありますが、ダビガトランの方が消化管出血が少なかったみたいです。

DOAC・ワルファリンを開始したAF患者の心筋梗塞発症率と死亡率

Risk of Myocardial Infarction in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 3;72(1):17-26.

RE-LY試験では、ダビガトランで心筋梗塞の増加を認めた。ARISTOTLE試験やROCKET-AF試験では、アピキサンバンやリバロキサバンに心筋梗塞の増加は認めなかった。これらの試験では、高齢者・フレイルは除かれており、また心筋梗塞をアウトカムにしたDOAC間の比較データはない。

【PECO】
P:AFと診断され初めて抗凝固療薬を内服する患者
E:DOAC(アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン)
C:VKA(ワルファリン)
O:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院
secondary outcome:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院+全死亡

exclusion criteria:弁膜症性心房細動、DOACが禁忌となる腎障害

【デザイン、セッティング】
・the Civil Registration System(デンマーク)
・2013年1月1日〜2016年6月30日
・後向き
・31739例(ワルファリン8913例、アピキサバン8611例、ダビガトラン7377例、リバロキサバン6838例)
 うち1年間の脱落が8905例(28%)
・観察期間:1年
・COX比例ハザードモデル

【結果】
1年間の絶対リスク(95%CI)とワルファリンとのリスク差

心筋梗塞(primary endpoint)
ワルファリン 1.56%(1.33-1.80%) 
アピキサバン 1.16%(0.94-1.39%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 1.20%(0.95-1.47%)リスク差−0.36%(−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 1.07%(0.83-1.32%)リスク差-0.49%(−0.82to−0.16%)

DOAC間では、リスク差に有意差はない。

心筋梗塞+全死亡(secondary endpoint)
ワルファリン 12.2%(11.5-12.9%) 
アピキサバン 10.9%(10.3-11.5%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 9.3%(8.6-10.0%)リスク差-0.36% (−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 12.0%(11.3-12.7%)リスク差-0.49% (−0.82to-0.16%)

【まとめと感想】
DOACはワルファリンと比べ、低い心筋梗塞発症率と関連あり。心筋梗塞発症率は1.1%-1.2%程度で、ワルファリンとの差も有意とはいえ、年間0.4%程度。

システマティックレビューでは、ダビガトランはワルファリンと比べ心筋梗塞が増えることが報告されているが、このコホート研究ではその傾向は認めなかった。

それよりなにより、全死亡がその10倍起きている。平均年齢70歳ちょっとなので、10%/年の死亡率はインパクトがある。

抗血小板薬併用下でのDOACとワルファリンの比較

Combining Oral Anticoagulants With Platelet Inhibitors in Patients With Atrial Fibrillation and Coronary Disease
J Am Coll Cardiol. 2018 Oct 9;72(15):1790-1800.

【PECO】
P:OMI+AF、もしくはPCI施行後+AF
E:DOAC+抗血小板薬
C:VKA+抗血小板薬
O:出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全死亡

【デザイン、セッティング】
・Danish nationwide administrative registries
・後向き
・3222例
(VKA+SAPT 875例、DOAC+SAPT 595例、DAPT 1074例、DOAC+DAPT 678例)
・2011年8月〜2017年7月
・観察期間:12ヶ月
・PT-INR、血圧、腎機能のデータは含んでいない
・COX比例ハザードモデル
・著者には、DOAC企業とのCOIあり

【結果】
DOACは、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンが1/3ずつぐらい。2/3は減量投与。

VKA+DAPTを基準として、DOAC+DAPTのハザード比は・・・
出血:0.51(95%CI:0.33-0.78)

脳卒中:1.44(95%CI:0.78-2.67)

心筋梗塞:0.92(95%CI:0.58-1.45)

全死亡:0.83(95%CI:0.59-1.17)

VKA+SAPTを基準として、DOAC+SAPTのハザード比は・・・

出血:0.90(95%CI:0.60-1.53)

脳卒中:0.64(95%CI:0.30-1.36)

心筋梗塞:0.63(95%CI:0.40-1.00)

全死亡:1.08(95%CI:0.80-1.44)

【まとめと感想】
VKA+DAPTは、DOAC+DAPTと比較すると心筋梗塞・脳梗塞・全死亡には差はないが、約2倍の出血と関連あり。

VKA+SAPTは、DOAC+SAPTと比較すると出血・脳梗塞・全死亡には差がないが、約2/3倍の心筋梗塞と関連あり。

DOAC betterな結果でした。PT-INR、血圧、腎機能などイベントに関連がありそうな因子は、解析には含まれてないというのはlimitation。

ステント留置から1年以上たった心房細動患者の抗血栓療法 OAC-ALONE試験

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

冠動脈疾患があり、カテーテル治療されている患者さんで心房細動も合併している場合、ESCのガイドラインでは、ステント留置から1年たったら抗凝固薬単剤を推奨。AHAでは、ステント留置から1年たって、塞栓リスクが低くて出血リスクが高いなら抗凝固薬単剤を推奨している。ただ、RCTはやられていなかったので、本当にそれでいいかはわからない。これが、冠動脈疾患+心房細動で抗凝固療法単剤で良いか検証した初めてのRCT。

【PICO】
P:ステント留置から1年以上経過した冠動脈疾患+心房細動
I:抗凝固薬単剤
C:抗凝固薬+抗血小板薬
O:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症

抗凝固薬はワルファリンかDOAC。ワルファリンは70歳未満はINR:2.0−3.0を、70歳以上はINR:1.6-.26を目標とし、少なくとも3ヶ月おきに測定。DOACは基本的には減量基準に従うことを推奨するが、自由裁量による減量もあり。

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験)
地域:日本 111施設
登録期間:2013年11月5日〜2016年12月28日
観察期間:2.5年
予定症例数:2000例(event rate:8.0%/1.5年、非劣勢マージン4.0%)
症例数:690例(OAC単剤群344例、併用療法群346例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(第一三共)

【患者背景】
ざっくりと。
年齢75歳、発作性と持続性+慢性は半々ぐらい、CHADS2:2.5±1.2、CHA2DS2-VASc:4.6±1.4、HAS-BLED:3以上 44%、抗凝固薬はワルファリン:3/4、DOAC:1/4、ワルファリンのTTR75%
両群で差があったのは、eGFR<30(10%vs5%)、PPI(53%vs62%)で、いずれもOAC単剤群で少し不利。

【結果】
OAC単剤群 vs 併用療法群
以下はいずれも年率。
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症 (primary endpoint)
6.4% vs 5.5%, HR:1.16(95%CI:0.79-1.72)

全死亡
4.6% vs 3.5%, HR:1.30(95%CI:0.82-2.10)

心血管死
2.3% vs 1.9%, HR:1.18(95%CI:0.62-2.28)

心筋梗塞
0.93% vs 0.46%, HR:2.03(95%CI:0.64-7.59)

脳梗塞+全身性塞栓症
1.5% vs 2.2%, HR:0.69(95%CI:0.33-1.38)

TIMI大出血
1.9% vs 3.4%, HR:0.57(95%CI:0.31-1.03)

【まとめと感想】
日本でやられたRCTだし、みんなが知りたい疑問だし、結果が出るのが楽しみでしたが、著者がabstractで述べている通り、パワー不足で結論めいたことは言えないのが残念です。日本でのRCTでは多くの症例を集めるのは本当に大変そうです。

心房細動患者の死因の多くは非心原性ですが、心房細動+冠動脈疾患であってでも心臓死は半分ぐらいで、もう半分は心臓以外の原因で亡くなられるということは頭に入れておく必要があるでしょう。それと、心筋梗塞の再発は1%/年ととても低いことも。

心房細動を合併した末期腎不全で、アピキサバンは有効なのか

Outcomes Associated With Apixaban Use in Patients With End-Stage Kidney Disease and Atrial Fibrillation in the United States.
Circulation. 2018 Oct 9;138(15):1519-1529.

【PECO】
P:末期腎不全で心房細動(AF)を合併した透析患者
E:アピキサバン内服
C:ワルファリン内服
O:脳梗塞・全身性塞栓症、大出血、、消化管出血、頭蓋内出血、死亡

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・United States Renal Data System
・25523例(アピキサバン群2351例、ワルファリン群23172例)のうち、prognostic scoreでマッチした症例を解析(アピキサバン群2351例、ワルファリン群7053例)
・COX回帰分析

【結果】
アピキサバン群 vs ワルファリン群
▶︎脳梗塞・全身性塞栓症(100人年)
12.4 vs 11.8 HR:0.88(95%CI:0.69-1.12)

▶︎大出血(100人年)
19.7 vs 22.9 HR:0.72(95%CI:0.59-0.87)

▶︎消化管出血(100人年)
23.8 vs 23.4 HR:0.86(95%CI:0.72−1.02)

▶︎頭蓋内出血(100人年)
3.1 vs 3.5 HR:0.79(95%CI:0.49-1.26)

▶︎死亡(100人年)
23.7 vs 24.9 HR:0.85(0.71-1.01)

【まとめと感想】
そもそも透析患者の抗凝固療法で、10人に1人がDOACということが軽く驚き。そして、やっぱりワーファリンは悪者にされる。

まあ、後向きのデータなので、せめて前向きので検討が必要ではありますが。RCTをやってもらいたいけど、メーカーとしては旨味がないからやらないでしょう。パイは小さいし、数年かけてやってもその頃には特許は切れるし。

VA-ECMO下でのHIT発症率

Prevalence and outcome of heparin-induced thrombocytopenia diagnosed under veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: a retrospective nationwide study.
Intensive Care Med. 2018 Sep;44(9):1460-1469.

VA-ECMOとHIT(ヘパリン起因性血小板減少症)との関連を調べたもの。

フランスの20施設のICUの後向きのデータ。

2012年1月から2016年12月までにICUへ入室し、心原性ショックでVA-ECMOを装着した患者で、臨床的にHITを疑いヘパリン血小板第4因子複合体抗体(HIT抗体)陽性だった患者をスクリーニング。

HITの診断は、HIT抗体陽性と少なくとも1つ以上の機能的検査が陽性であること。機能的検査は血小板凝集法、SRA法、HIPA法のいずれか。HIT抗体も機能的検査も陰性であれば、HITではないと診断。

HIT抗体が陽性になったのは39/5797例で、うちHITと診断がついた(機能的検査も陽性)だったのは21/5797例(0.35%、95%CI:0.12-0.52)。

だいたい300人に1人くらい。そんなもんなんですね。ちなみに、HITでもHITが除外された症例でも血小板はbaselineから70%ぐらい低下していて、4Tスコアは5点でした。HIT抗体とか調べてみないとわからないということですね。