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左冠動脈主幹部病変 3−5年のフォローアップではPCIとCABGでアウトカムに差はない

Percutaneous Coronary Intervention vs Coronary Artery Bypass Grafting in Patients With Left Main Coronary Artery Stenosis: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Cardiol. 2017 Sep 13. doi: 10.1001/jamacardio.2017.2895. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:左冠動脈主幹部病変
I:DESを用いたPCI
C:CABG
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

<研究の選択>
・LMT病変に対し、DESを使用したPCIとCABGを比較した試験で、3年以上フォローアップしている研究を組み入れた。
・文献データベース:PubMed、Scopus、EMBASE、Web of Knowledge、Science Direct database
・期間:2001年11月18日〜2017年1月1月
・研究の種類:RCT
・Fixed-effect and random-effects models

◇結果
SYNTAX試験、PRECOMBAT試験、EXCEL試験、NOBLE試験の4試験を統合。いずれも非劣性試験で、EXCEL試験のサンプルサイズが一番大きい。

フォローアップ期間はEXCEL試験のみ3年で、他は5年。


(本文から引用)

3年まではPCIでイベントが少ないが、3年でクロスし、その後はCABGでイベントが少ないものの有意差はない。random effects modelでは、ハザード比:1.06(95%CI:0.85-1.32)。


(本文から引用)

primary endpointのフォレストプロット。NOBLE試験のみCABG betterで、統合すると有意差はない。


(本文から引用)

それぞれの試験を除外した場合の感度分析も行われている。結果の方向性が異なったNOBLE試験を除いたとしても、有意差はない。


(本文から引用)

DESの世代、Syntax scoreで見ても、有意差なし。


(本文から引用)

強いて言えば、心筋梗塞はCABGで良い傾向。
脳梗塞には差がない。

PCI群で再血行再建のハザード比は、第1世代DESで1.8、第2世代DESで1.7だった。

◇まとめと感想
LMT病変の安定冠動脈疾患において、3−5年のフォローアップでは、PCIとCABGによるアウトカム(全死亡、心筋梗塞、脳梗塞)の差はなかった。再血行再建は、第2世代DESを使用したとしても、CABGと比べ有意に多かった(ハザード比1.7)。

より長期のフォローアップだと、このカプランマイヤー曲線が開いていくのか、糖尿病合併だと結果は違ってくるのか、など気になります。


(2014 ESC/EACTS guidelines on myocardial revascularizationより引用)

基本的には、ESCのガイドラインの推奨通り。

ROOBY試験 OPCABの5年生存率はon-pump CABGに劣る

CABGの方法としては、心拍動下で行うoff-pumpCABG(OPCAB)と人工心肺を用いたon-pumpCABGがある。周術期の脳梗塞はoff-pumpで少なくなることが期待できるが、グラフト開存率はon-pumpの方が良いと言われている。

off-pumpとon-pumpのCABGを比較したRCTはいくつかある。ドイツの75際以上の高齢者を対象としたGOPCABE試験では、早期の血行再建はoff-pump群で多いものの、1年後の死亡率に差はなく、CORONARY試験でも同様に早期の血行再建はoff-pumpで多かったが、5年生存率に差はなかった(1−2)。

このROOBY試験では、1年後のMACEはoff-pump群で有意に多く(9.9%vs7.4%)、グラフト開存率も悪いことが以前報告されていた(3)。これは、その5年のフォローアップ。

Five-Year Outcomes after On-Pump and Off-Pump Coronary-Artery Bypass.
N Engl J Med. 2017;377(7):623-632

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:全死亡とMACE(全死亡、再血行再建、非致死的心筋梗塞)

inclusion criteria:緊急もしくは待機的なCABG、CABGのみ行う症例
exclusion criteria:臨床的に有意な弁膜症

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:アメリカ
登録期間:2002年2月〜2007年6月
観察期間:5年
盲検化:患者のみ
必要症例数:2200例(詳細不明。死亡率はoff-pump15%, on-pump群10%?)
症例数:2203例(off-pump群1104例、on-pump群1099例)
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
婚姻状況も調べられている。

◇結果
外科医のoff-pumpCABG経験数は、平均120例(中央値50例)。


(本文から引用)

全死亡もMACEもoff-pump群で有意に多い。


(本文から引用)

conversionした症例を除外した感度分析(PP解析)。off-pump群で137例、on-pump群で40例がconversion。両群ともにconversionした症例でのイベントの発現が多いため、有意差がなくなる。

◇批判的吟味
・独身男性だと予後は悪くなるが、characteristicsで婚姻状況も調べられている試験はあまり見かけない。
・off-pump群でon-pumpへのconversionが多く、5年後の死亡率は27.0%(37/137例)と高い。術中のconversionが多かったのだろうか。
・off-pumpCABGの経験数は、CORONARY試験やGOPCABE試験と比べると少ない。

◇感想
このROOBY試験では、5年死亡率率はoff-pumpで有意に高く、それはconversion(on-pumpへの切り替え)が多いことが影響していそう。conversionした症例の5年死亡率は27.0%と高く、おそらく術中のconversionが多かったと考えられる。

一方、CORONARY試験では、conversionは両群で6−7%程度であり、5年生存率には差がなかった(年齢、心機能、糖尿病など患者背景は、ROOBY試験の方が軽い印象)。

つまり、術者の経験が十分であれば、off-pumpでもon-pumpでも5年生存率に差はないと考えていいかもしれない。ただ、より長期のアウトカムについてはまだわからず、今後検証されるだろう。

(1)N Engl J Med 2013;368:1189-1198
(2)N Engl J Med 2016;375:2359-2368
(3)N Engl J Med 2009;361:1827-1837

糖尿病とグラフト開存率

Influence of Diabetes on Long-Term Coronary Artery Bypass Graft Patency.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 1;70(5):515-524.

◇この論文のPECOは?
P:CABG
E:糖尿病あり
C:糖尿病なし
O:グラフト開存率

inclusion criteria:糖尿病の治療内容、術前の冠動脈所見、再血行再建前の冠動脈造影所見、グラフトの狭窄の程度がわかる症例のみ組み入れ

<デザイン、セッティング>
・1972年1月1日〜2011年1月1日
・米国
・単施設(Cleveland Clinic)
・retrospective
・糖尿病あり:1372例(ITA:1132、SV:2512、その他:152)
 糖尿病なし:11519例(ITA:6771、SV:17554、その他:339)
・CABG後の冠動脈造影
 1回:8387例、2回:2267例、3回:623例、>4回:242例
・プロペンシティスコアマッチ

<結果>

(本文から引用)

・ITA
糖尿病ありでは、85%は狭窄なし。閉塞は4.6%。
糖尿病なしでは、86%が狭窄なし。閉塞は6.7%。
調整前のデータだが、差はない。

・SV
これも調整前で、差はない。
1/3は狭窄ゼロ。半分は閉塞する。


(本文から引用)


(本文から引用)

調整後。
糖尿病ありで、早期の開存率が有意に高い。
遠隔期では、差がない。
SVでは有意差なし。

propensity matched cohort
5年、10年、15年、20年生存率はそれぞれ
糖尿病あり 93%、73%、51%、35%
糖尿病なし 96%、83%、69%、58%
(P<0.0001)

◇感想
CABG後のグラフト開存率は、ITAもSVも糖尿病の有無で差がない。冠動脈造影自体が定期的にルーチンで行われているわけではないため、そのタイミングや回数にバイアスが入ってしまうが、BARI試験など以前の報告との一貫性はある。

糖尿病がある方が、冠動脈自体の動脈硬化が進みやすいため、内胸動脈はより閉塞しにくいのかもしれない。でも、そうだとすれば、なぜSVでも開存率に差がないのかはわからない。

CABG後でも糖尿病がある方が予後は悪い。グラフト開存率に差がないなら、それは非冠動脈死を反映しているのかと思ったが、この研究では心臓死、非心臓死に、両群で差はなかった(BARI試験では、5年間の心臓死に差はないが、非心臓死は糖尿病で有意に多い)。

CABG 動脈グラフトの使用本数と生命予後

冠動脈バイパス術において、両側内胸動脈と片側内胸動脈の使用を比較したART試験では、5年時点での死亡、心筋梗塞、脳梗塞に差はなかった(1)。

しかし、今までの観察研究では、両側内胸動脈(BITA)を使用した場合、片側のみ使用した場合と比べ、予後が改善することが多く報告されている。15000例、観察期間9年以上の結果を統合したメタ解析でも、2本の動脈グラフトを使用することの予後改善効果が示されている(2)。

ART試験では、片側内胸動脈群で橈骨動脈の使用が23%あり、またBITA群では割付通りITAを両側使用できたのは83%であったため、それが結果に影響を与えたかもしれない。

このように、2本の動脈グラフトを使用することのsurvival benefitは明確な結論が出ていない現状で、動脈グラフトを3本使用することのsurvival benefitについては、なおのこと明らかではない。

Three Arterial Grafts Improve Late Survival: A Meta-Analysis of Propensity-Matched Studies.
Circulation. 2017 Mar 14;135(11):1036-1044.

◇論文のPICOはなにか
P:初回のCABGを行う冠動脈疾患患者
I:3本の動脈グラフトを使用
C:2本の動脈グラフトを使用
O:長期的な死亡率(プロペンシティスコアマッチ)

secondary endpoint:院内死亡率/30日死亡率(プロペンシティスコアマッチ)、長期的な死亡率(プロペンシティスコアマッチなし)

◇結果
8試験を統合。

(本文から引用)

観察期間は37.2−196.8ヶ月で、平均で6.5年ぐらいフォローされていて、各研究のフォローアップ率も高い。

(本文から引用)

・I²統計量
プロペンシティマッチ→58.8%
プロペンシティマッチなし→91.3%
院内死亡率/30日死亡率→85.6%

出版バイアスなし(Egger’s test)


(本文から引用)
院内死亡率/30日死亡率に差はない。


(本文から引用)
長期的な死亡率は、ハザード比0.80(95%CI:0.75-0.87)と有意に減少。

◇感想
CABGで動脈グラフトを3本使用した場合、2本使用した場合と比べ、院内死亡率・30日死亡率を上昇させず、長期的な生命予後が改善するという結果。

3本の動脈グラフトは、BITAと橈骨動脈の組み合わせが多数を占めていた。

たしかに静脈グラフトを使用するより、動脈グラフトを使用した方が長期の開存率は高いので、理論上は生命予後改善効果がありそう。ただ、動脈グラフト1本と2本を比べた場合より、生命予後へのインパクトは弱いだろう。

(1)N Engl J Med 2016;375:2540-2549
(2)Circulation. 2014;130:539-545

80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離の手術成績

Early and Late Outcomes of Surgical Repair for Stanford A Acute Aortic Dissection in Octogenarians.
Circ J. 2016 Nov 25;80(12):2468-2472

◇論文の概要
<背景>
高齢であることは死亡率と罹患率の強力な独立した予後因子と考えられ、80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離(AAD)では手術が避けられるかもしれない。

<方法と結果>
2005年から2015年の間に、胸骨正中切開でAADの外科的手術を158例行なった。80歳代の患者24例(15.2%、平均年齢83±3歳)と、79歳以下の患者134例(平均年齢62±13歳)をレトロスペクティブに比較した。80歳代では女性が多かった(79.2%vs44.8%、P=0.0033)。


(本文より引用)

上行大動脈の置換は80歳代で多く(95.8%vs65.7%、P=0.0015)、全弓部置換は70歳代以下で多かった(4.2%vs26.9%、P=0.00165)。院内死亡は70歳代以下では14例、80歳代では0例であった(0%vs10.4%、P=0.1303)。主要な罹患率は同程度であった。慢性期の死亡は、80歳代で3例、70歳代以下で9例であった。1,3,5年生存率は、80歳代では94.4%、81.5%、81.5%で、70歳代以下では86.9%、85.6%、83.9%で、有意差はなかった。


(本文より引用)

<結論>
80歳代のAADに対する外科的手術は、より若い集団と比較しても良好な結果であった。院内死亡率は低く、長期的なアウトカムも良好であった。したがって、患者が80歳代というだけで外科的手術を忌避すべきではない。

◇この論文のPECOは?
P:スタンフォードA型急性大動脈解離
E:80歳以上
C:79歳以下
O:院内死亡率、1-,3-,5-年生存率

◇批判的吟味
・80歳代では、大動脈基部置換はゼロ。上行大動脈置換のみで済む症例がほとんど。臓器環流障害もゼロ。比較的状態がよさそうな症例に手術が行われている。

・80歳以上で手術に回らなかった症例について検討されていない。

・交絡因子の調整なし。

・単施設、少数。

◇結果
80歳代の大動脈解離であっても、70歳代以下と院内死亡率、遠隔期死亡率は有意差がないという結果。

80歳代であったとしても、解離が上行に限局(DebakeyII型)、大動脈弁手術や基部置換が不要で上行置換のみで済む、循環動態が安定、臓器環流障害なしなど、状態が比較的良さそうな症例では、高齢であること自体はそこまでネガティブな要因にならないのかもしれない。

CABGで内胸動脈を両側使用した方がいいのか:ART試験

Randomized Trial of Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)で、両側内胸動脈のグラフトは、片側内胸動脈と静脈グラフトを使用するより、長期的なアウトカムを改善させるかもしれない。

方法
7ヶ国28施設で、CABGが予定されている患者を、片側内胸動脈を用いたCABGと両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。主要評価項目は10年間の全死亡である。全死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントを副次評価項目とした。中間解析は5年時に行うこととした。

結果
3102例を登録し、1554例を片側内胸動脈を用いたCABGに、1548例を両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。5年間のフォローアップで全死亡は両側内胸動脈群で8.7%、片側内胸動脈群で8.4%で(HR:1.04、95%CI:0.81−1.32)、全死亡・心筋梗塞・脳梗塞の複合エンドポイントは12.2%vs12.7%であった(HR:0.96、95%CI:0.79-1.17)。胸骨創部に関連した合併症は、両側内胸動脈群で3.5%、片側内胸動脈群で1.9%(P=0.005)、胸骨再建は両側内胸動脈群で1.9%、片側内胸動脈群で0.6%であった(P=0.002)。

結論
CABGで内胸動脈を片側だけ使用するか、あるいは両側使用するかで、5年間の死亡あるいは心血管複合イベントに有意差はなかった。胸骨の創部に関連した合併症は、片側内胸動脈群より両側内胸動脈群で多かった。10年間のフォローアップは現在進行中である。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGを予定されている患者
I:両側内胸動脈を用いたCABG
C:片側内胸動脈を用いたCABG
O:10年間の全死亡(secondary endpoint:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞)

inclusion criteria:多枝病変
exclusion criteria:一枝疾患、弁膜症の手術も行う患者、再手術例

◇baselineは同等か
characteristics
同等。EF、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の合併の有無とその程度についての記載はない。

◇結果
地域:7ヶ国
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:5年間
無作為化:施設ごとの層別化を伴う置換ブロック法。コーディネーティングセンターへ電話して無作為化を行う。
盲検化:オープンラベルだがアウトカムへの影響はない
必要症例数:3000例(10年間の全死亡は両側内胸動脈群で20%、片側内胸動脈群で25%、power90%、αlevel0.05で2928例と算出され、たぶんロストフォローアップを加味してか、必要症例数を3000例としている)
症例数:3102例(両側内胸動脈群:1548例、片側内胸動脈群:1554例)
追跡率:両側内胸動脈群:1477/1548例(95.4%)、片側内胸動脈群:1492/1554例(96.0%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用したのは予想より高かったらしく83.6%であった。40.6%でoff-pump CABGが行われたようだが、群間差があるのか記載なし。

5年の時点での内服薬には群間差なし。
アスピリン:88.9%
β遮断薬:76.2%
スタチン:89.0%
ACE阻害薬/ARB:73.4%

result

◇批判的吟味
・両側内胸動脈が使用されたのは83%と予想より低く、差を薄める方向に働くかも。
・off-pump CABGの割合に群間差があるかわからない(脳梗塞への影響)。
・生命予後に影響を与える因子として、baselineのLVEFとMRの有無と程度についての記載がない。
・薬剤(アスピリン、スタチンなど)の使用率に群間差はないが、少し低い。
・一般的に静脈グラフトは動脈グラフトより開存率が劣るが、その使用率がわからない。
・追跡率は高い。

◇感想
CABGで両側の内胸動脈を使用しても片側でも、5年の時点での生存率に差はないという結果。5年で差がつかないなら、70歳を超えるような高齢者では、片側の内胸動脈だけで十分かもしれいない。

静脈グラフトとin-situの内胸動脈の差が出てくるのはこれからと思われるので、10年間のフォローアップで有意な差が出てくるかどうか(Kaplan-Meierをみるとあまり変わらない雰囲気)。もし、10年のスパンで差がでてくるなら、若年でCABGをする人には両側内胸動脈で、ということになるかもしれない。

左冠動脈主幹部病変 5年間のMACCEはCABGよりもPCIで多い

Percutaneous coronary angioplasty versus coronary artery bypass grafting in treatment of unprotected left main stenosis (NOBLE): a prospective, randomised, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2016 Oct 31. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)は左冠動脈主幹部病変の標準的治療であるが、経費的冠動脈インターベンション(PCI)での治療も増えている。我々は、左冠動脈主幹部病変でPCIとCABGを比較した。

方法
前向き、無作為化、オープンラベル、非劣性試験である。北欧36施設で左冠動脈主幹部病変を有する患者を登録し、PCIとCABGに1:1に無作為に割り付けた。安定狭心症、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を対象とし、24時間以内のST上昇型心筋梗塞(STEMI)、1年以内の生命予後は除外した。主要評価項目はmajor adverse cardiac or cerebrovascular events(MACCE)で、全死亡、手技に関連していない心筋梗塞、再血行再建、脳梗塞の複合エンドポイントである。5年間のフォローアップで、ハザード比の95%信頼区間が1.35を超えない場合に、PCIはCABGに対し非劣性とし、ITT解析を行った。

結果
2008年12月9日から2015年1月21日までに、1201例をPCIとCABGに無作為に割り付けた。PCI群598例、CABG群603例で、両群とも592例をITT解析に組み入れた。5年間のMACCEは、PCI群で29%(121イベント)、CABG群で19%(81イベント)、HR1.48(95%CI1.11-1.96)で、非劣性の上限を超えており、CABGはPCIと比較し有意にMACCEの発症が低かった(P=0.0066)。as treatment解析では、28%vs19%、HR1.55(95%CI1.18-2.04)であった。5年間の全死亡は、12%vs9%、HR1.07(95%CI0.67-1.72)、5年間の心筋梗塞は、7%vs2%、HR2.88(95%CI1.40-5.90)、5年間の再血行再建は、16%vs10%、HR1.50(95%CI1.04-2.17)、脳梗塞は5%vs2%、HR2.25(95%CI0.93-5.48)であった。

結論
これらの結果から、左冠動脈主幹部病変の治療はPCIよりCABGがベターであると考えられる。

◇この論文のPICOはなにか
P:左冠動脈主幹部病変
I:PCI
C:CABG
O:MACCE(全死亡、手技に関連していない心筋梗塞、再血行再建、脳梗塞の複合エンドポイント)

inclusion criteria:安定狭心症、不安定狭心症、NSTEMI、左冠動脈主幹部に50%以上の狭窄があること、FFR0.80以下であること、その他の病変が複雑でなく3つ以下であること(複雑病変とは、CTO、2stent techniqueが必要な病変、石灰化病変、屈曲病変である)

exclusion criteria:24時間以内のSTEMI、1年以内の生命予後

◇baselineは同等か
baseline
同等。平均年齢66歳、女性は20%、DMが15%。Syntaxスコアは22±8なので、大部分はlowとintermediateで、80%でbifurcationを絡む。

◇結果
地域:北欧(ラトビア、エストニア、リトアニア、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、英国、デンマーク)
登録期間:2008年12月9日〜2015年1月21日
観察期間:4.1年(中央値、四分位範囲3.0−5.0)
無作為化:web-based computer randomisation systemを用いている。permutated block with stratification。
盲検化:オープンラベル。
必要症例数:1200例(2年間のフォローアップでMACCEがPCI群で30%、CABG群で23%、非劣性マージン1.35として算出)
症例数:1201例
追跡率:試験デザインとしては2年間なので、そこまでは約90%と良いが、今回の5年間のフォローアップデータは40%弱の追跡率になっている。
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Biosensors社)

PCIに関して。
88%がbifurcationを絡んでステントを留置されているが、KBTが行われたのは55%。35%が2ステント。第一世代DESは11%で使用されている。IVUSが使用されたのは、preで47%、postで74%と低い。

CABGに関して。
84%がon-pumpで行われている。LADに動脈グラフトを使用したのは93%で、内胸動脈は86%とちょっと低い。

result

◇批判的吟味
・追跡率が低すぎるので、無作為化は維持できていないと考えられる。
・動脈グラフト・内胸動脈の使用率が少し低いので、長期的なグラフト開存率は低くなるはず。
・静脈グラフトは10年で半分ぐらいの開存率なので、これからCABG群で再血行再建が増えてくるかも。
・ほとんどon-pumpなので、周術期の脳梗塞はoff-pumpより高いはず。
・IVUS使用率、KBT施行率が低く、再血行再建を増やす方向に働くかも。
・脳梗塞がPCIで有意に高くなっている理由がわからない。

◇感想
左冠動脈主幹部病変にPCIをやるか、CABGをやるかで比較した試験。追跡率が40%と低いので内的妥当性は微妙だけど、5年間のフォローアップで、全死亡は変わらないが、心筋梗塞は約3倍、再血行再建は1.5倍、PCIで多くなってしまう。

そりゃそうだろうなという結果でした。ただ、追跡率が低かったり、PCIの手技が日本で行われるような手技ではなかったり、on-pumpCABGが多かったりと、日本の実情とは異なる印象でした。

Syntax試験とは異なり、PCI群でSyntaxスコアとイベントに関連はなかった様です。感覚的には、病変の複雑性が増せばイベント発症率は上がりそうなので、これも追跡率が低いことと関連があるのかもしれません。

STICH試験 年齢別サブグループ解析

Ten-Year Outcomes After Coronary Artery Bypass Grafting According to Age in Patients With Heart Failure and Left Ventricular Systolic Dysfunction: An Analysis of the Extended Follow-Up of the STICH Trial (Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure).
Circulation. 2016 Nov 1;134(18):1314-1324.

《要約》
背景
EFが低下し、冠動脈バイパス術(CABG)の合併症のリスクがより高い心不全において、高齢により冠動脈疾患(CAD)の有病率は高くなる。虚血性心筋症による心不全で、異なる年齢でもCABGの効果が同等にあるかどうかは明らかではない。

方法
STICH試験で、CABGの適応があるEF35%以下のCAD患者1212例を、CABGと薬物療法に無作為に割り付け、9.8年間フォローした。

結果
平均年齢60歳、12%が女性、36%が非白人、baselineのEFは28%であった。年齢により4つのカテゴリに分けた。Quartile1:54歳以下、Quartile2:55−59歳、Quartile3:60−67歳、Quartile4:68歳以上である。より高齢の患者で併存疾患が多かった。高齢者(Quartile4)と若年者(Quartile1)の全死亡を比較した場合、薬物療法でも(79%vs60%、P=0.005)、CABGでも(68%vs48%、P<0.001)、高齢者で高かった。対照的に、心血管死の年齢による統計学的な差は、薬物療法でも(Quartile4vs1、53%vs49%、P=0.388)、CABGでも(Quartile4vs1、39%vs35%、P=0.103)認めなかった。Quartile4でも1でも、もっとも多い死亡原因は心血管死であった(79%、62%)。全死亡に対するCABGの効果は、年齢が上昇するほど減少する傾向にあるが(P for interaction=0.062)、心血管死に対するCABGの効果は、年齢に関わらず一貫している(P for interaction=0.307)。CABGは、高齢者よりも若年者で、全死亡と心血管イベントによる入院を減少させた(P for interaction=0.004)。CABGを行った患者で、人工心肺接続時間およびICU滞在日数は、年齢による違いはなかった。

結論
高齢者と比較し若年者では、薬物療法に加えCABGを行うことで、全死亡および全死亡と心血管イベントによる入院が大きく減少した。年齢に関わらず、薬物療法に加えCABGを行うことが、心血管死を減少させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGの適応があるEF35%以下のCAD
I:CABG+薬物療法
C:薬物療法のみ
O:全死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・RCTの年齢によるサブグループ解析
・COX比例ハザードモデル?
・1212例
・観察期間:9.8年(中央値)

characeristics
年齢があがるほど白人が多くなる。非白人の方が生命予後が悪くなる要因(経済的要因など)があるのでしょうか。基礎疾患は、やはり年齢が高いほど多い。Quartile4で症状がない人が多いのは活動性の低さを表している気がする。当たり前だが、年齢が高いほど、Hbが低く、Crが高くなる。

medical-and-device
βblockerは入れにくいのか、80%強しか内服していない。スタチンは80%と低め。おそらく100%近い割合で、なんらかの抗血栓薬を内服してそう。

anatomy
MRの程度は年齢による差がない。三枝疾患やLAD近位部病変が多い。

◇結果
result
全死亡は、CABG群で低い。心血管死もQuartile3でほぼ同等だが、他は一応CABG群で低い。

◇批判的吟味
・心血管のアウトカムを評価するのに十分な観察期間。
・交絡因子の調整は??
・Quartile3だと、心血管死は薬物療法と変わらないし、Quartile4だとunkownが多いので、これが心血管死と考えると、高齢になるといろいろ併存疾患もあるし、ちょっとCABGは微妙かもしれない。
・Quartileの年齢の切り方が67歳としているのは、事前に設定されているのか。あるいは事後なのか。
・当たり前だが、60歳を超えると、非心血管死が多くなる。

◇感想
STICH試験の年齢によるサブグループ解析で、どの年齢層でもCABG+薬物療法を行うことで、全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院を減らしたという結果。当たり前かもしれないが、CABG群でも薬物療法群でも、年齢が高くなると10年生存率は低くなってしまう。60歳以下の人でも10年生存率が半分ぐらいなので、冠動脈疾患はここまで進行してしまうと厳しい。

OPCAB(心拍動下冠動脈バイパス術)の長期生存率と再血行再建率

Long-Term Survival and Freedom From Reintervention After Off-Pump Coronary Artery Bypass GraftingA Propensity-Matched Study
Circulation. 2016;134:1209-1220

《要約》
背景
心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の長期的なアウトカムは議論の的である。我々の施設では15年以上、OPCABと人工心肺を使用した冠動脈バイパス術(on-pump CABG)を行ってきた。我々の仮説は、OPCABとon-pump CABGに長期的なアウトカム(死亡と再血行再建)の差がないことである。

方法
2001年から2015年までにCABGの単独手術について、後ろ向きに検討した。プロペンシティスコアで調整後にITT解析を行った。OPCAB5882例、on-pump CABG7344例の合計13226例で、フォローアップ期間の中央値は6.2年であった。

結果
OPCAB群では、76/5882例(1.3%)でCPBへの切り替えがあった。1年、5年、10年生存率は両群で似通っていた(OPCAB vs CPB:96.7%、87.9%、72.1% vs 96.2%、87.4%、72.8%)。長期生存率(adjusted hazard ratio1.03、95%CI0.94−1.11)、生存率と再血行再建回避率pl0(HR0.98, 95%CI0.92-1.06)に有意差はなかった。OPCABではEuroSCOREsが高く(2.81vs2.73、P=0.01)、グラフト数が少なかったが(3.0±0.9vs3.3±0.9、P<0.001)、動脈グラフトは多かった(45.9%vs8.4%、P&;t;0.001)。OPCABは、術者がトレイニーであることが多く、心筋逸脱酵素の上昇が低く、在院日数が短く、心筋梗塞などの合併症が少なかった。

結論
我々の施設では、OPCABはon-pump CABGと長期成績は似通っていた。on-pump CABGへの切り替え率が低いことから、OPCABは安全であると言えるだろう。グラフト数は統計的には差があるが、臨床的には同等で、on-pump CABGと同等の生存率と再血行再建回避率であると明らかになった。


◇この論文のPICOは?
P:初回のCABG
I:OPCAB
C:on-pump CABG
O:生存率と再血行再建回避率

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向きコホート研究
・2001年12月〜2015年10月
・プロペンシティスコアマッチ
・11078例(OPCAB5539例、on-pump CABG5539例)
・観察期間:6.2年(中央値)

characteristics1
characteristics2
OPCABの方が意外にEFが悪い人が多く、unstableな症例が多い。周術期のカテコラミンの使用率は高い。

◇結果
kaplan-meier1
生存率に有意差なし。

kaplan-meier2
生存率と再血行再建回避率の複合アウトカムにも有意差なし。

◇批判的吟味
・off-pumpとon-pumpを比較したものの中では長期のデータ。
・off-pumpの技術にはlearning curveがあるようで、off-pumpを始めた初期のデータは含んでいない。
・後ろ向きなので結論めいたことは言えない。

◇感想
off-pumpとon-pumpのどちらがよいかという、未だ結論が出ていない話題。約1万例の6.8年の後ろ向きのデータでは、off-pumpとon-pumpに生存率・再血行再建回避率に差はないという結果。

CORONARY試験など他のRCTとか、Cochrane Systematic Reviewでも、off-pumpとon-pumpの生存率に差がないみたいなので、たぶんどっちも変わらないってことでいいのでしょう。心拡大が著明とか、心膜が癒着しているような症例はon-pumpで、ということでしょうか。

off-pump CABGは、on-pump CABGと同等の長期成績 CORONARY試験

Five-Year Outcomes after Off-Pump or On-Pump Coronary-Artery Bypass Grafting
N Engl J Med. 2016 Oct 23. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
心拍動下バイパス手術(off-pump)と人工心肺使用心停止下バイパス術(on-pump)について、術後30日、1年での複合アウトカム(死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全)に有意な差がないことを、以前報告した。そして、術後5年の結果を報告する。

方法
冠動脈疾患(CAD)を有する患者4752例を、off-pumpまたはon-pumpCABGに無作為に割り付けた。死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、再血行再建(CABGもしくはPCI)の複合エンドポイントである。フォローアップ期間の中央値は4.8年である。

結果
off-pump群、on-pump群で複合エンドポイントに有意差はなかった(23.1%vs23.6%、off-pumpのHR0.98、95%CI0.87−1.10)。再血行再建はoff-pump群で2.8%、on-pump群で2.3%と有意差はなく(HR1.21、95%CI0.85−1.73)、それを含め、複合エンドポイントのそれぞれについても有意差はなかった。副次評価項目は患者一人あたりの医療費で、これもoff-pump群、on-pump群で有意差はなかった($15107vs$14992、群間差$115、95%CI-$697to$927)。QOLについても群間差はなかった。

結論
術後5年での、死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、再血行再建の複合エンドポイントはoff-pump、on-pumpで有意差はなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGが予定されているCAD患者
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:人工心肺使用心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、腎不全、再血行再建の複合エンドポイント

inclusion criteria:以下のうち1つ以上のリスクがあること(70歳以上、末梢血管疾患、脳血管疾患、70%以上の頸動脈狭窄、腎機能障害)、60−69歳であれば以下のうち1つ以上・55−59歳であれば2つ以上のリスクがあること(糖尿病、ACSにより緊急血行再建を要する状態、EF<35%、1年以内に喫煙歴があること)

exclusion criteria:記載なし

◇baselineは同等か
characteristics
(NEJM2016;366:1489-1487より抜粋)
 病変数にのみ群間差あり。

◇結果
地域:19ヶ国79施設
登録期間:2006年11月〜2011年10月
観察期間:4.8年間(中央値)
無作為化: 24-hour automated voice-activated telephone randomization serviceを用いて無作為化を行っている。
盲検化:試験の性質上、open-label。
必要症例数:4700例(30日後の死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、腎不全を複合エンドポイントとして、28%の相対リスク低下、power80%、また5年後の上記の複合エンドポイントに再血行再建を加えたイベントに対し相対リスク低下20%、power90%として算出)
症例数:4752例(off-pump群2375例、on-pump群2377例)
追跡率:98.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

off-pump群の7.9%(184例)でon-pumpに、on-pump群の6.4%(150例)でoff-pumpにクロスオーバーあり。

result
kplan-meier
second coprimary outcomeは、5年間の死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、血液透析を要する腎不全、再血行再建の複合エンドポイント。全く差がない結果。

◇批判的吟味
・primary outcomeに有意差はないが、必要症例数は満たしている。
・割り付け通りにCABGが行われたのは両群ともに90%以上で追跡率も良い。
・off-pumpだとグラフト数が少なかったり、途中でon-pumpに切り替えられたりということがあるが、それでも長期的なアウトカムに差はなかった。
・off-pumpでグラフト開存率が低いなら、心筋梗塞や死亡などへの影響は、これから出てくるのではないか。

◇感想
off-pumpとon-pumpに長期的なアウトカムに差があるかを検証した試験で、死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、血液透析を要する腎不全、再血行再建の複合エンドポイントは、両群に有意差はなかった。

off-pumpとon-pumpのどちらが優れているかについては議論がある様。短期的には、off-pumpでのaortic non-touch techniqueにより脳梗塞が減ることや、人工心肺使用による臓器障害を抑えられるが、長期的にはグラフト開存率が低いことによる心筋梗塞・再血行再建、ひいては死亡が増えるという懸念がある。日本では約60%がoff-pumpで行われるということで、グラフト開存率は海外より良く長期的なアウトカムも期待できるのかもしれない。