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心不全 ACE阻害薬/ARB、β遮断薬の内服量と予後

Determinants and clinical outcome of uptitration of ACE-inhibitors and beta-blockers in patients with heart failure: a prospective European study
Eur Heart J. 2017 Mar 11. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:HFrEF(<40%)
E/C:ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬の内服量(0%、1−49%、50−99%、≧100%)
O:死亡、心不全入院

inclusion criteria:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬が未投与、ガイドライン推奨量の半分未満

登録から3ヶ月をoptimization periodとして、その期間に主治医の判断でACE阻害薬/ARB、β遮断薬を増量する。optimization periodを終えた患者のみ解析に含める。

ガイドライン推奨量

<デザイン、セッティング>
・ヨーロッパ11ヶ国、69施設
・前向きコホート研究
・2100例(2516例のうち、optimization periodで151例が死亡、23例がイベントはなかったが脱落、242例はEF≧40%のため除外)
・観察期間:21ヶ月(中央値)
・COX比例ハザードモデル

ARBの20%、ACE阻害薬の27%、β遮断薬の12%が推奨量に到達。

<患者背景>

(本文から引用)


(本文から引用)

ほとんど白人で、平均年齢は60代後半、虚血が半分、AFも半分弱、腎機能は比較的保たれている。

<結果>
ACE阻害薬/ARBが低い容量となる予測因子:女性、低いBMI、低いeGFR、高いALP
β遮断薬が低い容量となる予測因子:高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候


(本文から引用)


(本文から引用)
ACE阻害薬/ARBは推奨量の50%に達しているか、β遮断薬は容量依存的に死亡率が異なるという、わりとキレイな曲線になる。


(本文から引用)
この研究では、増量できない理由についても調べられている。
A)推奨量まで到達
B)症状、副作用、心臓以外の臓器障害
C)その他

B、Cの容量がどれぐらいだったかはわからない。

◇感想
ACE阻害薬/ARBでは、推奨量の半分以下の場合、死亡のハザード比が1.5−1.7倍に。β遮断薬では、容量依存的にハザード比は増加する。

増量できない予測因子としては、ACE阻害薬/ARBでは、女性、低いBMI、低いeGFR、高いALPが挙げられているが、女性やALPになぜ関連があるかはわからない。また、β遮断では、高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候があげられており、これはまさに実臨床通りといった感じ。

白人を対象にしていることや、日本での最大容量は欧米より少ないという点に違いはある。この研究ではACE阻害薬/ARB推奨容量の50%以上で推奨量と同程度の死亡率だったが、日本人ではそれがどれくらいの量なのかわからない。

まあ、ACE阻害薬/ARBやβ遮断薬は副作用がなければ増やしていくというスタンスでよいだろう。

CVD-REAL SGLT2阻害薬のリアルワールドデータ

EMPA-REG試験で、冠動脈疾患の既往がある患者を対象に、エンパグリフロジン(ジャディアンス)はプラセボと比較し、14%の心血管イベント(心臓死、心筋梗塞、脳梗塞)の抑制効果を認めた。また、心不全入院を35%、心臓死を38%低下させた(1)。

サブ解析では、心不全の既往のないサブグループでも、心不全入院、全死亡、心血管死の有意な低下が認められている(2)。

ジャディアンス以外のSGLT2阻害薬や、冠動脈疾患の既往がない患者でも、同様の効果があるかは明らかではない。

Lower Risk of Heart Failure and Death in Patients Initiated on SGLT-2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs: The CVD-REAL Study.
Circulation. 2017 May 18. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病
E:新規のSGLT2阻害薬の追加
C:新規の血糖降下薬(SGLT2阻害薬以外)の追加
O:心不全入院

6ヶ国のhealth recordを解析。

secondary endpointは、全死亡、心不全入院+全死亡(ドイツは死亡データがないため除外)。

観察期間は、新規の糖尿病薬が処方されてから、その治療の終了まで(on treatment解析)。

◇患者背景

(本文から引用)
プロペンシティスコアがマッチした集団。
87%で心筋梗塞や心不全の既往がない。IDDMが30%。
アウトカムに影響を与えうる薬剤であるチアゾリジンや利尿薬を含め、内服薬に差はない。

SGLT2阻害薬の内訳は、
○心不全入院
カナブリフロジン(カナグル) 53%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 42%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 5%

○全死亡
カナブリフロジン(カナグル) 42%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 51%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 7%

◇結果
○SGLT2阻害薬追加群
心不全入院:0.51/100人年
全死亡:0.87/100人年
心不全入院または全死亡:1.38/100人年

心不全入院(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院(ITT解析)

(本文から引用)

全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院、または全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

◇感想
2型糖尿病で、経口血糖降下薬やインスリンなどそれなりに投与していて、かつ心血管疾患の既往がない人がほとんどという集団で、新規のSGLT2阻害薬の追加は、それ以外の血糖降下薬の追加と比べ、心不全入院と全死亡を低下させた。

心不全入院は39%、全死亡は49%のリスク減少。

心不全の発症率は、EMPA-REG試験のサブ解析とほとんど変わらず、全死亡はEMPA-REG試験が二次予防を対象にしているためか、あちらの方が2倍ぐらい多い。

このCVD-REALのデータは、EMPA-REG試験のデータがリアルワールドでも確認できたとか、ジャディアンスだけじゃなく、カナグルやフォシーガでも心血管イベント抑制効果が確認できた、と喧伝されそうです。

個人的には、全死亡が半分になるというのは、すごく出来すぎているように思うけど、発生頻度が少ないので処方していても実感はできそうにない。死亡率が半分になるというのは、それが事実なら夢のような薬。

心不全入院だけでなく全死亡も減らしているので、これは単なる利尿効果では説明がつかないので、他の要因(レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系を賦活させないとか、ケトンの産生などの説明を耳にするが)が関与していると考えればいいのか。

EMPA-REG試験で増加傾向だった脳梗塞がどうなのかとか、安全性のデータについては、この論文からはわからないので要注意。

(1)N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.
(2)Eur Heart J. 2016 May 14;37(19):1526-34.

カナグリフロジン 心血管アウトカム

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病
I:カナグリフロジン100mg or 300mg
C:プラセボ
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞

inclusion criteria:HbA1c7.0−10.5%、心血管疾患の既往あり、ない場合はそれ相応のリスクがあること(糖尿病罹患歴10年以上、コントロール不良の高血圧、喫煙者、低HDL血症など)など

◇試験の概要
デザイン:RCT 非劣勢試験(非劣勢マージン1.3)
地域:30ヶ国、667施設
観察期間:126.1週(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:記載なし 688イベント発生するまで
症例数:10142例(カナグリフロジン5795例、プラセボ4347例)
追跡率:99.6%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen社)

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
内服薬は不明。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointとしては差がついてるが、心臓死、心筋梗塞、脳梗塞のぞれぞれでみるとどれも有意差はついていない。

アルブミン尿の抑制だとか、腎機能保護効果については、EMPA-REG試験と同じような感じ。


(本文から引用)

足趾と足の切断、骨折、男性器感染症、女性器真菌感染症は、カナグルで有意に多い。あと、光線過敏症が多い傾向。

◇感想
動脈硬化性の心血管疾患の既往、またはそれ相応のリスクがある2型糖尿病患者を対象とし、カナグリフロジンの心血管イベント抑制効果を検証したRCT。

結果としては、primary endpointである心臓死+心筋梗塞+脳梗塞は有意に減少したが、それぞれで見てみると、どれも有意な減少は認められなかった。EMPA-REG試験では、プラセボと比べエンパグリフロジンで脳梗塞が増加傾向にあったが、カナグリフロジンではその傾向は認められなかった。

primary endpointに対するNNT(1年)は218になる。今の薬価は205円なので、1630万円で1件イベントが減るが、下肢切断や感染症は増える。それをどう捉えるか。

自分は真菌感染とか診たことがないので、そもそもSGLT2阻害薬を使ってそういう副作用を起こされても困る。自分が対処しきれないことが起こりうる薬剤は処方しにくい。

RCTで有害事象まで調べることはできないので(primary endpointより発生率が低いからパワーが足りない)、これからコホート研究やメタ解析で明らかになっていくだろう。

急性心不全 ウラリチドの効果なし

ANP製剤であるカルペリチドは日本のみで使用されている薬剤で、UoToDateで”carperitide”と検索しても、心不全に関する記述はなにも出てきません。以前、BNP製剤であるネシリチドは、メタ解析で腎機能を悪化させる可能性が示唆され、ASCEND-HF試験が行われましたが、良い効果はなにも示せませんでした。

そして、同じナトリウム利尿ペプチドであるウラリチドのRCTです。

ffect of Ularitide on Cardiovascular Mortality in Acute Heart Failure
N Engl J Med. 2017 May 18;376(20):1956-1964.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:ウラリチド15ng/kg/minの持続静注
C:プラセボの持続静注
O:15ヶ月での心臓死

inclusion criteria:BNP500pg/ml以上、フロセミド40mg静注後少なくとも2時間以上安静時呼吸困難が持続、SBP116−180mmHg

◇試験の概要
地域:23ヶ国、156施設
登録期間:2012年8月〜2014年5月
観察期間:15ヶ月(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:2152例
症例数:2157例(ウラリチド群1088例、プラセボ群1069例)
解析:ITT解析
スポンサー:Cardiorentis社

◇患者背景

(本文から引用)
両群間で有意差なし。
2/3がHFrEF。

◇結果

(本文から引用)

◇感想
急性心不全に対するウラリチドは、NTproBNPは下がるが、生命予後を改善させない。Crはちょっと上がる。

急性心不全急性期の数十時間の治療が、その後の生命予後に影響を大きな影響を与えるというのは、そもそも違和感がある。ネシリチド、ウラリチドの効果は否定された。日本で使えるカルペリチド(ハンプ®️)はどうなのか。少なくとも自分の心不全治療には、これからも出番はありません。

来院からフロセミド静注までの時間の短縮が、心不全の院内死亡率を改善する

ime-to-Furosemide Treatment and Mortality in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2017;69(25):3042–3051

◇この論文のPECOは?
P:急性心不全
E:D2Ftime60分未満(early群)
C:D2Ftime60分以上(non-early群)
O:院内死亡率

D2Ftime:病院到着からフロセミド静注までの時間

組み入れ基準:病院到着から3時間以内に急性心不全の診断がついた患者、24時間以内にフロセミドが静注されていること
除外基準:透析、AMIなど

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・2014年8月〜2015年12月
・1291例(early群:481例、non-early群:810例)
・ロジスティック回帰

<患者背景>

(本文から引用)
early群の方が、救急車利用、うっ血の症候(下腿浮腫、頸静脈怒張など)が多く、D2Ftimeが短縮しそうな要因がある。心房細動はnon-earlyで多い。EF、腎機能、Nohria-Stevenson分類に群間差はない。

<結果>

(本文から引用)
60分未満のフロミセミドの静注により院内死亡率は低下。


(本文から引用)
100分ぐらいのところにひとつピークがある。

◇感想
急性心不全患者で、来院から60分以内にフロセミドを静注できた群は、それよりも時間がかかった群に比べて院内死亡率が低い。

Figure3をみると100分ぐらいのところにピークがあって、右肩上がりになっていない。左側の山の群と右側のなだらかな右肩上がりの群は、そもそも患者の質が違うんじゃないかな。characteristicsをみてもはっきりとはわからないけど、なんかそんな気がする。だから、いくら交絡を調整しても、そもそも母集団が違っているから比較ができないんじゃないかな。

ただ、100分以内でみると時間経過とともに院内死亡率が上昇しているので、早く心不全と診断してフロセミドを静注することは良いアウトカムに繋がりそうではある。まあ、迅速かつ的確な診断と早期の治療開始が重要ということで。

トルバプタンとフロセミド 心不全の症状改善効果は同じ

Efficacy and Safety of Tolvaptan in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(11):1399-1406.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:トルバプタン30mg/日の内服
C:プラセボの内服
O:24時間以内に呼吸困難が中等度以上改善した患者の割合(7-point Likert scaleで評価)

inclusion criteria:安静時または軽労作で呼吸困難がある心不全、BNP>400pg/ml、血清Na140mEq/L以下
exclusion criteria:低血圧(SBP<90mmHg)、高度腎機能障害(Cr>3.5mg/dl)、血液透析

◇試験の概要
地域:米国
観察期間:30日
盲検化:二重盲検
必要症例数:250例
症例数:257例(トルバプタン群129例、プラセボ群128例)
追跡率:97.7%(追跡不能と同意撤回が計6例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(大塚製薬)

◇患者背景

(本文から引用)
EF30%と心機能は悪く、BNPも1400台と高く、普段のフロセミドの使用量も多め。腎機能も悪め。

◇結果

(本文から引用)
トルバプタンを内服すると尿はよく出る。でも、3日たつと差は薄まる。


たくさん尿が出ても、症状はサムスカを使わない場合と変わらない。いずれの時点でも有意差なし。

30日後の再入院+死亡、30日死亡率ともに差はなかった。

◇感想
EVEREST試験では、急性心不全に対するトルバプタンの使用は、10ヶ月後の死亡率も再入院も改善しなかったが、症状はトルバプタン群で早期に改善する症例が多かった。

このTACTICS-HF試験は、その症状をエンドポイントに検証した試験である。尿量はやはりトルバプタン群で多く、早期から体重も減っていたが、症状はフロセミド単独と変わりはなかった。つまり、水はよく出すが、症状改善効果はフロセミドと変わりがないということ。

重症心不全でサムスカを使って良くなるケースもあるが、そんなに多用する薬じゃない。フロセミドと同程度に安ければいくらでも使っていいと思うが、”値段は高いけど症状改善効果は安い薬と変わらず予後が良くなるわけでもない”というと、多くの症例には使う理由がない。

ST上昇型心筋梗塞 予後の性差

Infarct size, left ventricular function, and prognosis in women compared to men after primary percutaneous coronary intervention in ST-segment elevation myocardial infarction: results from an individual patient-level pooled analysis of 10 randomized trials.
Eur Heart J. 2017 Jun 1;38(21):1656-1663.

◇論文のPICOはなにか
P:primaryPCIが行われたSTEMI患者
E/C:男性と女性
O:全死亡と心不全入院

primary PCIが行われたSTEMI患者を対象とし、1ヶ月以内にMRIもしくはSPECT(テクネシウム)で梗塞サイズが評価された10のRCTを解析に組み入れた。すべての患者は6ヶ月以上フォローされており、死亡や心不全入院について評価されている。

◇患者背景

(本文から引用)
女性の方が、年齢が高い。糖尿病が多い。責任病変の部位や治療前のTIMI分類に差はないけど、最終造影がTIMI3の割合が若干少ない。発症から再還流までの時間が長い。


(本文から引用)
女性の方が、最終造影がTIMI3の割合が少なく、発症から再還流までの時間が長いので、硬塞サイズが大きくなりそうだけど、そうでもない。

◇結果
フォローアップ期間は352日(中央値)。


(本文から引用)
年齢、糖尿病などの併存疾患などで調整しても、女性のハザード比は約2倍。


(本文から引用)
女性では、心不全入院も死亡も増える。心筋梗塞の再発に差はない。

◇感想
女性だと、再還流までの時間が長くなる傾向があるが、硬塞サイズに性差はなかった。しかし、退院後1年間で、心不全入院や死亡は男性の2倍多い。女性の方がHFpEFが多いということだろう。

心筋梗塞の再発には性差はないので、死亡は心不全死が増えていると考えられる。もしかしたら不整脈も増えるのかもしれない。

心不全のない心筋梗塞 1年後の生存率とβ遮断薬

β-Blockers and Mortality After Acute Myocardial Infarction in Patients Without Heart Failure or Ventricular Dysfunction
J Am Coll Cardiol. 2017;69(22):2710-2720.

◇この論文のPECOは?
P:AMI(STEMIとNSTEMI)
E/C:β遮断薬内服の有無
O:1年後の死亡率

<デザイン、セッティング>
・イギリス
・2007年から2013年のデータ
・前向きコホート研究
・179810例
・院内死亡、すでにβblockerが処方されている、心不全、LVEF<30%、ループ利尿薬の使用、100歳以上は除外
・観察期間:1年
・プロペンシティスコアマッチ

<患者背景>


(本文から引用)
トロポニンのピーク値が低い。CAGをやってない症例も多い。冠動脈インターベンションが施行されたのは半分程度。

<結果>

(本文から引用)
STEMI、NSTEMIにかかわらず、β遮断薬の効果なし。

◇感想
AMIに対するβ遮断薬は、ガイドラインによって推奨度が異なる。AHA/ACCではすべてAMI患者に推奨されており、ESCでは心不全や左室収縮不全がない症例ではclassⅡaである。

心不全や左室収縮不全のない症例を対象にβ遮断薬の効果を検証したRCTはない。このデータは約18万人の前向きコホート研究なので、β遮断薬の効果を調べるにはパワーは十分と思われる。

患者背景についてだが、トロポニンのピークの中央値は低く、ほんとに軽いAMIが多い。この結果を、たとえばピークCKが2000ぐらいの心不全がないAMIにも適応できるのかはわからない。そういう患者でもβ遮断薬の効果がないと言っていいのかどうなのか。

少なくとも、β遮断薬が予後を悪化させているわけではないので、血圧や心拍数が許容できるなら処方していても悪くないし、血圧や心拍数が低いのにあえて入れる必要はないということだろう。

心機能が保たれたDCMでも、心臓MRIで遅延造影があると予後は悪い

ssociation Between Midwall Late Gadolinium Enhancement and Sudden Cardiac Death in Patients With Dilated Cardiomyopathy and Mild and Moderate Left Ventricular Systolic Dysfunction
Circulation. 2017;135:2106-2115

◇この論文のPECOは?
P:LVEF≧40%のDCM
E/C:MRIでの遅延造影の有無
O:心臓突然死(SCD)、蘇生したSCD

<デザイン、セッティング>
・前向き
・399例
・観察期間:4.6年(中央値)
・比例ハザードモデル

<患者背景>

(本文から引用)

<結果>

(本文から引用)

◇感想
心臓MRIでガドリニウムによる遅延造影(LGE:late gadolinium enhancement)は、予後の悪化と関連がある(Circulation 2009;120:2069-2076)。DCMでは、約30%でLGEがあると言われている。

EF35%以下の虚血性心筋症では、ICDにより死亡率が有意に改善することが示されている(NEJM2002;346:877−883)。しかし、非虚血を対象としたDANISH試験ではSCDは減らしたが、全死亡に差はなかった(NEJM2016;375:1221-1230)。

EF40%以上のDCMで、LGEを認める症例では、SCDまたはそれと同程度のイベントが9倍に上昇する。これらの症例に対しICDを植えこむことで生命予後が改善するかどうかは、今後のRCTが待たれる。

ASVは睡眠時無呼吸がある心不全の死亡や入院を減らすことができない CAT-HF試験

Cardiovascular Outcomes With Minute Ventilation-Targeted Adaptive Servo-Ventilation Therapy in Heart Failure: The CAT-HF Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(12):1577-1587.

《要約》
背景
睡眠時無呼吸は入院した心不全患者によくみられ、死亡率の上昇と関連がある。

目的
CAT-HF試験は、minute ventilation adaptive servo-ventilation(MV-ASV)が中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者の心血管アウトカムを改善するか調べた試験である。

方法
心不全で入院し、中等度から高度の睡眠時無呼吸がある患者を、ASV+至適薬物療法(OMT)とOMT単独の治療に無作為に割り付けた。主要評価項目は、6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率である。

結果
126/215例が無作為化され、SERVE-HF試験の結果が発表されたため、早期に登録中止となった。平均デバイス使用時間は2.7時間/夜間であった。6ヶ月時点でのAHIは、ASV群では35.7/時間から2.1/時間へ、OMT単独群では35.1/時間から19.0/時間へ減少し、有意差を認めた。主要評価項目はASV群とOMT単独群で有意差はなかった。主要評価項目のコンポーネントでも有意差はなかった。治療とEFとの間に交互作用はなかったが、事前に設定したサブグループ解析では、HFpEFへのポジティブな効果が示唆された。

結論
中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者では、OMTにASVを加えても6ヶ月後の心血管アウトカムは改善しなかった。HFpEFに対するASVの効果を判定するにはパワーが不足しているが、追加の試験の根拠になりえる。

◇この論文のPICOはなにか
P:AHI15以上の睡眠時無呼吸を有する急性心不全
I:ASV+OMT(ASV群)
C:OMTのみ(OMT単独群)
O:6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率

inclusion criteria:21歳以上、急性心不全(HFrEF、HFpEF)で、安静時あるいは軽労作での呼吸困難があり、BNP≧300pg/ml、またはNT proBNP≧1200pg/mlで、かつ1つ以上の所見(起座呼吸、ラ音、肺うっ血、PCWP≧25mmHg)があること
exclusion criteria:本文には記載なし

◇baselineは同等か
同等。年齢は62歳ぐらいで、BMI32と肥満。NYHAⅡ-Ⅲが多く、平均LVEF30%、心房細動40%、薬剤の使用率に差はない。

(本文から引用)

◇試験の概要
地域:アメリカ、ドイツ
登録期間:2013年12月〜2015年5月
観察期間:6ヶ月
無作為化:HFpEF(EF>45%)・HFpEF(EF≦45%)、施設で層別化した上で、ブロックランダム化する。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:215例(死亡と心血管死による入院はASV群25%、OMT単独群で35%、6分間歩行の改善はASV群40%、OMT単独群20%と仮定し、αlevel0.05、power80%で算出)
症例数:126例(ASV群65例、OMT単独群61例)
追跡率:フォローアップ不能や同意の撤回などのため、ASV群87%、OMT単独群90%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ResMed社)

◇結果
ASV群の6ヶ月時点での平均デバイス使用時間は2.7時間/日。


(本文から引用)

◇批判的吟味
・パワー不足のため、ASVに効果がないとは言えない。
・HFpEFだとポジティブな結果だが、信頼区間が広い。これも症例数が少ないためか。
・6ヶ月時点での死亡と入院が、足して40%というのは少し多いように思う。

◇感想
AHI>15/hの睡眠時無呼吸がある心不全へのASVの導入は、死亡・心血管疾患による入院・6分間歩行の変化率を改善しなかった。ただ、SERVE-HF試験の結果から試験が早期中止になっているため、パワー不足であり、本当に差がないかどうかは判断が難しく、すっきりしない結果。

そもそもASVとは、PEEPと患者の呼吸に合わせた調節呼吸を行うもの。それにより、前負荷の軽減や、交感神経の抑制を介した後負荷の減少が期待でき、心血管アウトカムを減少させることができると言われてきた。

しかし、中枢性無呼吸がメインのEF35%以下の心不全を対象にしたSERVE-HF試験では、primary endpointに差がなく、むしろ心血管死を増加させた。圧のかけすぎ、クロスオーバーが多いなどが試験の問題点としてあげられていたが、前負荷に依存した血行動態(脱水、心房細動合併)では、ASVにより血行動態が悪化し、それにより心血管死が増加した可能性が指摘されている。

HFrEFでも閉塞型がメインの場合、あるいは睡眠時無呼吸がないか軽度の場合には、SERVE-HF試験の結果をそのまま当てはめることはできない。しかし、HFrEFであれが心房細動の合併や利尿薬による脱水リスクは高くなるので、ASVが前負荷に依存した血行動態を悪化させるのであれば、睡眠時無呼吸のタイプや程度によらずASVによる心血管イベントリスクが上昇する可能性がある。

HFrEFでもASVが有効な症例もあるだろうが、どのような症例が良いのか、あるいはどのような設定が良いのかが現時点ではわからないので、害になりうる治療は避けた方が無難だろう。

SERVE-HF試験ではHFpEFは含まれておらず、またこのCAT-HF試験ではHFpEFでポジティブな結果が出ていたので、ASVがHFpEFの心不全増悪を抑えるかもしれない。今のところHFpEFではエビデンスのある薬剤がないため、もしそうだとしたらおもしろい。