カテゴリー別アーカイブ: 心不全

来院からフロセミド静注までの時間の短縮が、心不全の院内死亡率を改善する

ime-to-Furosemide Treatment and Mortality in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2017;69(25):3042–3051

◇この論文のPECOは?
P:急性心不全
E:D2Ftime60分未満(early群)
C:D2Ftime60分以上(non-early群)
O:院内死亡率

D2Ftime:病院到着からフロセミド静注までの時間

組み入れ基準:病院到着から3時間以内に急性心不全の診断がついた患者、24時間以内にフロセミドが静注されていること
除外基準:透析、AMIなど

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・2014年8月〜2015年12月
・1291例(early群:481例、non-early群:810例)
・ロジスティック回帰

<患者背景>

(本文から引用)
early群の方が、救急車利用、うっ血の症候(下腿浮腫、頸静脈怒張など)が多く、D2Ftimeが短縮しそうな要因がある。心房細動はnon-earlyで多い。EF、腎機能、Nohria-Stevenson分類に群間差はない。

<結果>

(本文から引用)
60分未満のフロミセミドの静注により院内死亡率は低下。


(本文から引用)
100分ぐらいのところにひとつピークがある。

◇感想
急性心不全患者で、来院から60分以内にフロセミドを静注できた群は、それよりも時間がかかった群に比べて院内死亡率が低い。

Figure3をみると100分ぐらいのところにピークがあって、右肩上がりになっていない。左側の山の群と右側のなだらかな右肩上がりの群は、そもそも患者の質が違うんじゃないかな。characteristicsをみてもはっきりとはわからないけど、なんかそんな気がする。だから、いくら交絡を調整しても、そもそも母集団が違っているから比較ができないんじゃないかな。

ただ、100分以内でみると時間経過とともに院内死亡率が上昇しているので、早く心不全と診断してフロセミドを静注することは良いアウトカムに繋がりそうではある。まあ、迅速かつ的確な診断と早期の治療開始が重要ということで。

トルバプタンとフロセミド 心不全の症状改善効果は同じ

Efficacy and Safety of Tolvaptan in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(11):1399-1406.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:トルバプタン30mg/日の内服
C:プラセボの内服
O:24時間以内に呼吸困難が中等度以上改善した患者の割合(7-point Likert scaleで評価)

inclusion criteria:安静時または軽労作で呼吸困難がある心不全、BNP>400pg/ml、血清Na140mEq/L以下
exclusion criteria:低血圧(SBP<90mmHg)、高度腎機能障害(Cr>3.5mg/dl)、血液透析

◇試験の概要
地域:米国
観察期間:30日
盲検化:二重盲検
必要症例数:250例
症例数:257例(トルバプタン群129例、プラセボ群128例)
追跡率:97.7%(追跡不能と同意撤回が計6例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(大塚製薬)

◇患者背景

(本文から引用)
EF30%と心機能は悪く、BNPも1400台と高く、普段のフロセミドの使用量も多め。腎機能も悪め。

◇結果

(本文から引用)
トルバプタンを内服すると尿はよく出る。でも、3日たつと差は薄まる。


たくさん尿が出ても、症状はサムスカを使わない場合と変わらない。いずれの時点でも有意差なし。

30日後の再入院+死亡、30日死亡率ともに差はなかった。

◇感想
EVEREST試験では、急性心不全に対するトルバプタンの使用は、10ヶ月後の死亡率も再入院も改善しなかったが、症状はトルバプタン群で早期に改善する症例が多かった。

このTACTICS-HF試験は、その症状をエンドポイントに検証した試験である。尿量はやはりトルバプタン群で多く、早期から体重も減っていたが、症状はフロセミド単独と変わりはなかった。つまり、水はよく出すが、症状改善効果はフロセミドと変わりがないということ。

重症心不全でサムスカを使って良くなるケースもあるが、そんなに多用する薬じゃない。フロセミドと同程度に安ければいくらでも使っていいと思うが、高いけど症状改善効果は安い薬と変わらず予後が良くなるわけでもないというと、多くの症例には使う理由がない。

ST上昇型心筋梗塞 予後の性差

Infarct size, left ventricular function, and prognosis in women compared to men after primary percutaneous coronary intervention in ST-segment elevation myocardial infarction: results from an individual patient-level pooled analysis of 10 randomized trials.
Eur Heart J. 2017 Jun 1;38(21):1656-1663.

◇論文のPICOはなにか
P:primaryPCIが行われたSTEMI患者
E/C:男性と女性
O:全死亡と心不全入院

primary PCIが行われたSTEMI患者を対象とし、1ヶ月以内にMRIもしくはSPECT(テクネシウム)で梗塞サイズが評価された10のRCTを解析に組み入れた。すべての患者は6ヶ月以上フォローされており、死亡や心不全入院について評価されている。

◇患者背景

(本文から引用)
女性の方が、年齢が高い。糖尿病が多い。責任病変の部位や治療前のTIMI分類に差はないけど、最終造影がTIMI3の割合が若干少ない。発症から再還流までの時間が長い。


(本文から引用)
女性の方が、最終造影がTIMI3の割合が少なく、発症から再還流までの時間が長いので、硬塞サイズが大きくなりそうだけど、そうでもない。

◇結果
フォローアップ期間は352日(中央値)。


(本文から引用)
年齢、糖尿病などの併存疾患などで調整しても、女性のハザード比は約2倍。


(本文から引用)
女性では、心不全入院も死亡も増える。心筋梗塞の再発に差はない。

◇感想
女性だと、再還流までの時間が長くなる傾向があるが、硬塞サイズに性差はなかった。しかし、退院後1年間で、心不全入院や死亡は男性の2倍多い。女性の方がHFpEFが多いということだろう。

心筋梗塞の再発には性差はないので、死亡は心不全死が増えていると考えられる。もしかしたら不整脈も増えるのかもしれない。

心不全のない心筋梗塞 1年後の生存率とβ遮断薬

β-Blockers and Mortality After Acute Myocardial Infarction in Patients Without Heart Failure or Ventricular Dysfunction
J Am Coll Cardiol. 2017;69(22):2710-2720.

◇この論文のPECOは?
P:AMI(STEMIとNSTEMI)
E/C:β遮断薬内服の有無
O:1年後の死亡率

<デザイン、セッティング>
・イギリス
・2007年から2013年のデータ
・前向きコホート研究
・179810例
・院内死亡、すでにβblockerが処方されている、心不全、LVEF<30%、ループ利尿薬の使用、100歳以上は除外
・観察期間:1年
・プロペンシティスコアマッチ

<患者背景>


(本文から引用)
トロポニンのピーク値が低い。CAGをやってない症例も多い。冠動脈インターベンションが施行されたのは半分程度。

<結果>

(本文から引用)
STEMI、NSTEMIにかかわらず、β遮断薬の効果なし。

◇感想
AMIに対するβ遮断薬は、ガイドラインによって推奨度が異なる。AHA/ACCではすべてAMI患者に推奨されており、ESCでは心不全や左室収縮不全がない症例ではclassⅡaである。

心不全や左室収縮不全のない症例を対象にβ遮断薬の効果を検証したRCTはない。このデータは約18万人の前向きコホート研究なので、β遮断薬の効果を調べるにはパワーは十分と思われる。

患者背景についてだが、トロポニンのピークの中央値は低く、ほんとに軽いAMIが多い。この結果を、たとえばピークCKが2000ぐらいの心不全がないAMIにも適応できるのかはわからない。そういう患者でもβ遮断薬の効果がないと言っていいのかどうなのか。

少なくとも、β遮断薬が予後を悪化させているわけではないので、血圧や心拍数が許容できるなら処方していても悪くないし、血圧や心拍数が低いのにあえて入れる必要はないということだろう。

心機能が保たれたDCMでも、心臓MRIで遅延造影があると予後は悪い

ssociation Between Midwall Late Gadolinium Enhancement and Sudden Cardiac Death in Patients With Dilated Cardiomyopathy and Mild and Moderate Left Ventricular Systolic Dysfunction
Circulation. 2017;135:2106-2115

◇この論文のPECOは?
P:LVEF≧40%のDCM
E/C:MRIでの遅延造影の有無
O:心臓突然死(SCD)、蘇生したSCD

<デザイン、セッティング>
・前向き
・399例
・観察期間:4.6年(中央値)
・比例ハザードモデル

<患者背景>

(本文から引用)

<結果>

(本文から引用)

◇感想
心臓MRIでガドリニウムによる遅延造影(LGE:late gadolinium enhancement)は、予後の悪化と関連がある(Circulation 2009;120:2069-2076)。DCMでは、約30%でLGEがあると言われている。

EF35%以下の虚血性心筋症では、ICDにより死亡率が有意に改善することが示されている(NEJM2002;346:877−883)。しかし、非虚血を対象としたDANISH試験ではSCDは減らしたが、全死亡に差はなかった(NEJM2016;375:1221-1230)。

EF40%以上のDCMで、LGEを認める症例では、SCDまたはそれと同程度のイベントが9倍に上昇する。これらの症例に対しICDを植えこむことで生命予後が改善するかどうかは、今後のRCTが待たれる。

ASVは睡眠時無呼吸がある心不全の死亡や入院を減らすことができない CAT-HF試験

Cardiovascular Outcomes With Minute Ventilation-Targeted Adaptive Servo-Ventilation Therapy in Heart Failure: The CAT-HF Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(12):1577-1587.

《要約》
背景
睡眠時無呼吸は入院した心不全患者によくみられ、死亡率の上昇と関連がある。

目的
CAT-HF試験は、minute ventilation adaptive servo-ventilation(MV-ASV)が中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者の心血管アウトカムを改善するか調べた試験である。

方法
心不全で入院し、中等度から高度の睡眠時無呼吸がある患者を、ASV+至適薬物療法(OMT)とOMT単独の治療に無作為に割り付けた。主要評価項目は、6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率である。

結果
126/215例が無作為化され、SERVE-HF試験の結果が発表されたため、早期に登録中止となった。平均デバイス使用時間は2.7時間/夜間であった。6ヶ月時点でのAHIは、ASV群では35.7/時間から2.1/時間へ、OMT単独群では35.1/時間から19.0/時間へ減少し、有意差を認めた。主要評価項目はASV群とOMT単独群で有意差はなかった。主要評価項目のコンポーネントでも有意差はなかった。治療とEFとの間に交互作用はなかったが、事前に設定したサブグループ解析では、HFpEFへのポジティブな効果が示唆された。

結論
中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者では、OMTにASVを加えても6ヶ月後の心血管アウトカムは改善しなかった。HFpEFに対するASVの効果を判定するにはパワーが不足しているが、追加の試験の根拠になりえる。

◇この論文のPICOはなにか
P:AHI15以上の睡眠時無呼吸を有する急性心不全
I:ASV+OMT(ASV群)
C:OMTのみ(OMT単独群)
O:6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率

inclusion criteria:21歳以上、急性心不全(HFrEF、HFpEF)で、安静時あるいは軽労作での呼吸困難があり、BNP≧300pg/ml、またはNT proBNP≧1200pg/mlで、かつ1つ以上の所見(起座呼吸、ラ音、肺うっ血、PCWP≧25mmHg)があること
exclusion criteria:本文には記載なし

◇baselineは同等か
同等。年齢は62歳ぐらいで、BMI32と肥満。NYHAⅡ-Ⅲが多く、平均LVEF30%、心房細動40%、薬剤の使用率に差はない。

(本文から引用)

◇試験の概要
地域:アメリカ、ドイツ
登録期間:2013年12月〜2015年5月
観察期間:6ヶ月
無作為化:HFpEF(EF>45%)・HFpEF(EF≦45%)、施設で層別化した上で、ブロックランダム化する。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:215例(死亡と心血管死による入院はASV群25%、OMT単独群で35%、6分間歩行の改善はASV群40%、OMT単独群20%と仮定し、αlevel0.05、power80%で算出)
症例数:126例(ASV群65例、OMT単独群61例)
追跡率:フォローアップ不能や同意の撤回などのため、ASV群87%、OMT単独群90%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ResMed社)

◇結果
ASV群の6ヶ月時点での平均デバイス使用時間は2.7時間/日。


(本文から引用)

◇批判的吟味
・パワー不足のため、ASVに効果がないとは言えない。
・HFpEFだとポジティブな結果だが、信頼区間が広い。これも症例数が少ないためか。
・6ヶ月時点での死亡と入院が、足して40%というのは少し多いように思う。

◇感想
AHI>15/hの睡眠時無呼吸がある心不全へのASVの導入は、死亡・心血管疾患による入院・6分間歩行の変化率を改善しなかった。ただ、SERVE-HF試験の結果から試験が早期中止になっているため、パワー不足であり、本当に差がないかどうかは判断が難しく、すっきりしない結果。

そもそもASVとは、PEEPと患者の呼吸に合わせた調節呼吸を行うもの。それにより、前負荷の軽減や、交感神経の抑制を介した後負荷の減少が期待でき、心血管アウトカムを減少させることができると言われてきた。

しかし、中枢性無呼吸がメインのEF35%以下の心不全を対象にしたSERVE-HF試験では、primary endpointに差がなく、むしろ心血管死を増加させた。圧のかけすぎ、クロスオーバーが多いなどが試験の問題点としてあげられていたが、前負荷に依存した血行動態(脱水、心房細動合併)では、ASVにより血行動態が悪化し、それにより心血管死が増加した可能性が指摘されている。

HFrEFでも閉塞型がメインの場合、あるいは睡眠時無呼吸がないか軽度の場合には、SERVE-HF試験の結果をそのまま当てはめることはできない。しかし、HFrEFであれが心房細動の合併や利尿薬による脱水リスクは高くなるので、ASVが前負荷に依存した血行動態を悪化させるのであれば、睡眠時無呼吸のタイプや程度によらずASVによる心血管イベントリスクが上昇する可能性がある。

HFrEFでもASVが有効な症例もあるだろうが、どのような症例が良いのか、あるいはどのような設定が良いのかが現時点ではわからないので、害になりうる治療は避けた方が無難だろう。

SERVE-HF試験ではHFpEFは含まれておらず、またこのCAT-HF試験ではHFpEFでポジティブな結果が出ていたので、ASVがHFpEFの心不全増悪を抑えるかもしれない。今のところHFpEFではエビデンスのある薬剤がないため、もしそうだとしたらおもしろい。

EMPA-REG OUTCOME試験 アジア人(サブグループ解析)

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®.
Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

《要約》
背景
EMPA-REG OUTCOME®︎試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、標準的治療にエンパグリフロジンを追加することで、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)を14%、心血管死を38%、心不全入院を35%、全死亡を32%低下させた。我々は、アジア人におけるエンパグリフロジンの効果を調べた。

方法と結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボに無作為に割り付けられた。全体7020例のうち、1517例(21.6%)がアジア人であった。3-point MACEはエンパグリフロジン群で79/1006例(7.9%)、プラセボ群で58/511例(11.4%)、ハザード比0.68(95%CI:0.48−0.95)、人種による交互作用P=0.0872であり、アジア人での3-point MACEの減少は、試験全体と一貫していた。エンパグリフロジンのアジア人に対する効果は、MACE、全死亡、心不全アウトカムで、試験全体と一貫していた(人種による交互作用のP>0.05)。有害事象のプロファイルは、アジア人と全患者で似通っていた。

結論
心血管疾患を有するアジア人の2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンの心血管アウトカムと死亡率に対する効果は、EMPA-REG OUTCOME試験全体の患者と一貫性があった。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病のアジア人
I:エンパグリフロジン10mgもしくは25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞(3-point MACE)

◇患者背景


EMPA-REG OUTCOME試験全体との患者背景の違いは、糖尿病罹患期間が短く、インスリン使用が少ない、体重が軽い、多枝疾患が多い、利尿薬の使用が少ないという感じ。

エンパグリフロジン群とプラセボ群で群間差はない。

◇結果
エンパグリフロジン群 vs プラセボ群
・3-point MACE
7.9% vs 11.4% HR:0.68(95%CI:0.48−0.95)

・4-point MACE(3-point MACE+不安定狭心症による入院)
10.0% vs 13.5% HR:0.73(95%CI:0.54−1.00)

・心血管死
2.2% vs 4.9% HR:0.44(95%CI:0.25−0.78)

・致死的/非致死的脳梗塞
3.8% vs 3.9% HR:0.95(95%CI:0.55-1.64)

・致死的/非致死的心筋梗塞
2.9% vs 4.5% HR:0.62(95%CI:0.36−1.08)

・心不全入院
2.2% vs 3.1% HR:0.70(95%CI:0.37−1.33)

◇批判的吟味
・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、Hb<8.5%、BMI<30で良いのではないかということが言われていた。しかし、アジア人のサブグループ解析ではサンプルサイズが小さいため、サブグープ解析による一貫性については調べられておらず、同様の傾向を示すかどうかはわからない。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、3-point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、それは心不全入院を減らした結果であった。アジア人でのサブグループ解析でも3−point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、心不全入院を抑制する傾向があったため、心不全死を減らしているものと推測する(心不全入院で有意差が付いていないのはパワー不足と思われる)。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、エンパグリフロジンで脳梗塞が増える傾向にあったが、アジア人ではその傾向は見られなかった。

・3-point MACEのNNTは29、心血管死のNNTは38。

◇感想
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンを投与することにより3-point MACEを有意に減少させた。エンパグリフロジンにより心不全入院、心不全死が抑えられたためと考えら、アジア人でのサブグループ解析でも同様の傾向が認められた。

他のSGLT2阻害薬でも心血管イベントをアウトカムとした試験が進行中のようで、この効果がドラッグエフェクトなのかクラスエフェクトなのか、はたまた違う方向に議論が進んでいくのか、期待して待ちたいと思います。

ていうか、EMPA-REG OUTCOMEって商標登録されていたんですね。悪用されるのを防ぐためなのでしょうか。

メトホルミンは、CKD、CHFでも全死亡と心不全入院を減少させる

Clinical Outcomes of Metformin Use in Populations With Chronic Kidney Disease, Congestive Heart Failure, or Chronic Liver Disease: A Systematic Review.
Ann Intern Med. 2017 Jan 3. [Epub ahead of print]

◇論文の概要
<背景>
メトホルミンの使用に関するFDAの警告の変化は、今まで禁忌あるいは慎重投与だった患者への処方を増やすかもしれない。処方する者は、これらの患者に対するメトホルミンの臨床的アウトカムを理解するべき。

<目的>
2型糖尿病で、中等度から高度の慢性腎臓病(CKD)、うっ血性心不全(CHF)、肝障害のある慢性肝臓病(CLD)の患者を対象とし、メトホルミンの臨床的アウトカムを統合すること。

<データ収集>
MEDLINE:1994年1月〜2016年9月
コクランライブラリー・EMBASE:1994年1月〜2015年11月

<研究の選択>
英語論文であり、以下の3つを満たすこと。
1)CKD(eGFR60未満)、CHF、CLDを合併した2型糖尿病を対象とした研究であること
2)メトホルミンを含んだレジメンと含まないレジメンの比較であること
3)全死亡、主要な心血管イベントをアウトカムにしていること

<データ抽出>
独立した2人のレビュアーが、情報の要約を行い、研究の質とエビデンスの強度を評価する。

<データの統合>
17の観察研究を質的・量的に統合すると、メトホルミンはCKD、CHF、CLDにおいて全死亡の減少と関連があった。また、CKD、CHFでは心不全入院の減少と関連があった。


CKDでは、HR:0.78(95%CI:0.63−0.96)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下している。ただし、I2統計量:79.8%と異質性は高い。


CHFについての対象となった観察研究のfunnel plotで、Egger’s test P=0.09と非対象ではない。CKDとCLDは、選択された研究の数が少ないため掲載されていない。


CHFでも、HR:0.78(95%CI:0.71−0.87)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下しているが、これもI2統計量:62.3%と異質性は高い。

<限界>
エビデンスの強度は低く、全死亡や心血管イベント以外のデータは十分でない。観察研究の統合であり、また観察期間は一定ではない。

<結論>
CKD、CHF、CLDにおいてメトホルミンの使用は、主要な臨床的アウトカムの改善と関連があった。我々のデータは、メトホルミン使用に関する最近の流れを支持するものである。

◇論文のPICOはなにか
P:CKD、CHF、CLDを合併した2型糖尿病
I:メトホルミンを含んだレジメン
C:メトホルミンを含まないレジメン
O:全死亡、主要な心血管イベント

◇批判的吟味
・CKD、CHF、肝障害を伴うCLDでもメトホルミンにより死亡率が低下しているが、異質性は高く結果の信頼性は低い。
・CKDやCHFの定義が試験により異なっており、重症度・患者背景の違いより異質性が高くなった可能性。
・メトホルミン投与量がわからない(どのれくらいの量が許容できるのかわからない)。

◇感想
メトホルミンは体重増加や低血糖の原因にならず、血糖降下作用を超えた死亡率の低下が示されている薬剤。しかし、乳酸アシドーシスの懸念から、CKD、CHF、CLDでは禁忌になっていました。最近になり、これらの疾患でも比較的安全に投与できるとして、処方は増えているみたい。

日本人は欧米人と異なり、インスリン分泌が低下しやすく、彼らほどインスリン抵抗性が高くありませんが、薬価・低血糖リスクなどを考慮して、個人的にはまずメトホルミンから処方することが多いです。心不全やeGFR30以上のCKDでも使えるということなので、循環器内科医としてはありがたいです。

慢性心不全と貧血と鉄欠乏

Prevalence and Outcomes of Anemia and Hematinic Deficiencies in Patients With Chronic Heart Failure.
JAMA Cardiol. 2016 Aug 1;1(5):539-47.

《要約》
背景
慢性心不全の患者で、貧血と鉄欠乏の頻度・関連・影響などの詳細な情報は不足している。

目的
心不全が疑われ循環器内科を紹介された患者で、貧血と鉄欠乏の疫学を調査すること。

デザイン、セッティング、患者
20001年1月1日から2010年12月31日までに心不全が疑われ紹介された患者の、ヘモグロビン(Hb)、血清鉄、鉄結合率、フェリチンの情報を収集した。フォローアップデータは2011年12月13日に検閲した。心エコー、NT-proBNPは最大10年間フォローした。

アウトカム
貧血と鉄欠乏の頻度、それらの関連、死亡率、心血管死亡率

結果
4456例が研究に組み入れられた。年齢の中央値は73歳で、2696例(60.5%)は男性、1791例(40.2%)で左室収縮障害を認めた。左室収縮障害がない患者では、1172例(26.3%)でNT-proBNPが400pg/ml以上、841例(18.9%)で400pg/ml未満、652例(14.6%)は測定されていなかった。1237例(27.8%)で貧血を認め、心不全のクライテリアを満たす患者で多かった(987例、33.3%)。鉄欠乏は、貧血のある患者では270例(43.2%)から425例(68.0%)で認め、貧血のない患者では260例(14.7%)から624例(35.3%)で認めた。多変量解析では、より低いHb(HR0.92、95%CI0.89−0.95)とより低い血清鉄(HR0.98、95%CI0.97−0.99)は、より高い死亡率・心血管死亡率と独立した関連があった。

結論
心不全患者では貧血はありふれたもので、しばしば鉄欠乏と関連していた。貧血と鉄欠乏の両方が全死亡・心血管死と関連しており、心不全患者では治療のターゲットになるかもしれない。

◇この論文のPECOは?
P:慢性心不全
E/C:貧血、鉄欠乏
O:死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・英国
・後ろ向きコホート研究
・ロジスティック回帰(貧血と鉄欠乏の変数を特定するため)、COX比例ハザードモデル(全死亡、心血管死の変数を特定するため)
・4456例
・観察期間:7.7年(中央値)
・貧血の定義(WHO) 男性:<13.0g/dl、女性:<12.0g/dl

◇結果
・心不全のある患者では、貧血を合併している頻度が高い。
・男性の場合、貧血と年齢は相関がある。

hematinic-variables

◇感想
慢性炎症によりフェリチンは高値になる傾向。フェリチン値で鉄欠乏の有無を判断していると、鉄欠乏を見逃すこともある。血清鉄やTSATの方が、鉄欠乏を反映している。

心不全患者でHbが低下する機序は複雑である。体液貯留による希釈、赤血球容積の低下、ACE阻害薬やカルベジロールの使用、鉄やエリスロポエチンの不足などがあげられる。貧血と鉄欠乏が死亡と相関するからと言って、内服薬によって鉄を補えばいいというものではない。

高容量のカフェインを摂取しても、期外収縮は増えない

Short-term Effects of High-Dose Caffeine on Cardiac Arrhythmias in Patients With Heart FailureA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online October 17, 2016.

《要約》
重要性
カフェインの催不整脈性については議論がある。心室性不整脈のリスクが高い左室収縮不全の心不全患者に対し、高容量のカフェインの効果を評価した研究はほとんどない。

目的
高容量カフェインとプラセボそれぞれの、安静時および運動負荷時の上室性・心室性不整脈の頻度を比較すること。

デザイン、セッティング、参加者
二重盲検、クロスオーバー、無作為化試験を3次医療の大学病院で行った。中等度から高度の収縮不全(EF<45%)で、NYHAⅠ-Ⅲの慢性心不全患者を組み入れた。

介入
デカフェのコーヒー100mlにカフェイン100mgまたはラクトースを加え、1杯1時間で、計5杯飲む。1週間のウォッシュアウト期間を設け、そのプロトコールを繰り返す。

アウトカム
連続心電図モニタリングで記録された、心室性期外収縮と上室性期外収縮の回数と割合。

結果
中等度から高度の収縮不全がありICDが植え込まれている患者51例を登録した(平均年齢60.6±10.9歳、男性37例)。心室性不整脈および上室性不整脈の回数は、両群間で有意差はなかった(心室性不整脈:185vs239beats P=0.47、上室性不整脈:6vs6beats P=0.44)。PVC2連、二段脈、非持続性心室頻拍(NSVT)も同様であった。運動負荷検査では、心室および上室性期外収縮、運動時間、推定最大酸素消費量、心拍数に対するカフェインの影響はなかった。血中カフェイン濃度が高い患者、低い患者、またはプラセボ群で心室性期外収縮に差はなかった(91vs223vs207beats)。

結論
高容量カフェインの急速摂取は、心室性不整脈のリスクが高い収縮不全の患者の不整脈を増加させない。

◇この論文のPICOはなにか
P:EF<45%の収縮不全を有するNYHAⅠ-Ⅲの心不全
I:カフェイン500mg/日の摂取(カフェイン群)
C:ラクトースの摂取(プラセボ群)
O:安静時および運動負荷時の心室性および上室性期外収縮

inclusion criteria:3ヶ月以内に施行した心エコーでEF<45%であること、安全のため試験開始初期(最初の25例まで)ではICDが植え込まれていることを必須とした、ICDが正常に機能していること
exclusion criteria:カフェインやラクトースを摂取できないこと、身体的または機能的に運動の制限がある、β遮断薬とアミオダロン以外の抗不整脈薬の使用、shockやATPを必要とする不整脈のエピソードが2ヶ月以内にあること、2ヶ月以内の心不全に関連した入院

手順:まず、7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設ける。ウォッシュアウト期間終了後、リサーチクリニックを訪れる。AM8時にリサーチクリニックに来院し、AM9時より連続心電図モニタリングと割り付けられたデカフェの摂取を開始する。PM1時に最後のデカフェの摂取を開始し、PM2時からトレッドミル検査を開始する。検査終了後に再度7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設け、クロスオーバーさせ、同様の介入を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
クロスオーバー試験なので群間差はないが、カフェイン入りのデカフェを飲用している際に、2例が嘔気と頭痛があり、飲用を中止している。

◇結果
地域:ブラジル
登録期間:2013年3月5日〜2015年10月2日
無作為化:コンピュータプログラムによる無作為化を行っている。
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者、解析者はすべて盲検化されている。
必要症例数:47例(カフェイン摂取により心室性期外収縮が100beat増加する、power80%、αlevel0.05と仮定)
症例数:51例
追跡率:100%
解析:ITT解析
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result

◇批判的吟味
・primary endpointに有意差はないが、必要症例数は満たしているため、カフェインで期外収縮は増えないと考えていいだろう。
・高容量のカフェインを急速に摂取した場合の影響をみたものであって、慢性的に摂取することの影響はわからない。
・臨床的なアウトカムがどうなるかはわからない(PVCが増えなくても臨床的なアウトカムは悪化するかもしれない)。

◇感想
動物実験でカフェインによる不整脈の増加が報告され、80−90年代に人でも心室性期外収縮が増えるかリサーチされたが、関連は見出せていない。Myersの報告では、OMIで300mgのカフェイン投与により心室性期外収縮が26%増えたと報告されたが、メタアナリシスでは、カフェインの摂取と心室性期外収縮の関連はなかった。

高容量のカフェインを急速に摂取しても、心室性および上室性期外収縮は増えないという結果で、過去のメタアナリシスと矛盾しない。カフェインの血圧上昇作用や利尿作用には注意は必要であるが、患者さんには特別カフェインの摂取は控えてもらってないし、この試験の結果からも、あえて控えてもらわなくてもよさそう。