カテゴリー別アーカイブ: 心不全

70歳以下の非虚血性心筋症では、ICDにより全死亡が減少する可能性

Age and Outcomes of Primary Prevention Implantable Cardioverter-Defibrillators in Patients With Nonischemic Systolic Heart Failure.
Circulation. 2017 Nov 7;136(19):1772-1780.

◇PICO
P:EF35%以下の非虚血性心筋症
I:薬物療法+ICD
C:薬物療法のみ
O:全死亡

inclusion criteria:一次予防、CAG・CT・核医学検査で虚血を除外した症例、NYHAⅡ-Ⅲ
exclusion criteria:慢性心房細動、安静時心拍数100bpm以上、末期腎不全

<デザイン、セッティング>
・DANISH試験の事前に定められたサブグループ解析
 グループ1:59歳未満
 グループ2:59−67歳
 グループ3:68歳以上
・1116例 
・観察期間:67.6ヶ月(中央値)
・COX比例ハザードモデル

<結果>
薬物療法群に対するICD群のハザード比は、70歳で1.0で、そこから1歳低下するごとに3%ハザード比低下。

◇まとめと感想
DANISH試験は、EF35%以下の非虚血性心筋症を対象とし、ICDの生命予後改善効果を検証した試験である。全死亡をprimary endpointとして検証されたが、ICD群と薬物療法群の生存率に差はなかった。

しかし、secondary endpointの心臓突然死ではICDによる有意な減少を認め、またサブグループ解析では年齢のみに交互作用を認めた。

このサブグループ解析をみると、>70歳での非突然死の割合が、心臓突然死に比べると大きいため、ICDによる心臓突然死予防効果が薄められてしまったようだ。一方、≦70歳では、全死亡のハザード比0.70と有意に生命予後を改善した。

ただ、年齢によるサブグループ解析は事前に設定されたとしてるが、当初のグループ(<59歳、59−68、>68歳)とは異なり、70歳をカットオフに設定している(論文中では、生存率が最大になるためと説明している)。年齢を引き上げ、ICDの適応を広げようとする意図を感じるのは、僕だけではないだろう。

非虚血性心疾患患者では、若年であればあるほど心臓突然死の割合が高いだろうし、その患者群に対するICDが生命予後を改善することも、理にかなっている。そして、高齢になればなるほど、非心臓突然死が増えるため、ICDの生命予後改善効果は薄まってしまう。どれくらいの年齢まで生命予後改善効果があるのかは、RCTをやらないとはっきりしないし、人種や国(医療制度)による違いもあるかもしれないが、現時点ではICDは非虚血性心筋症には効果が乏しく、特に70歳以上では必要ないと考えていいだろう。

カテーテルアブレーションは低心機能+心房細動の心機能を改善する

Catheter Ablation Versus Medical Rate control in Atrial Fibrillation and Systolic Dysfunction (CAMERA-MRI).
J Am Coll Cardiol. 2017 doi: 10.1016/j.jacc.2017.08.041. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ以上で、EF≦45%の持続性心房細動
I:カテーテルアブレーション(CA)
C:薬物によるレートコントロールのみ
O:6ヶ月後のLVEFの変化率(CMRによる評価)

exclusion criteria:冠動脈疾患、心機能低下の原因となるような疾患、アブレーションやMRIの禁忌例

Procedure
薬物療法:安静時心拍数<80bpm、平均心拍数<110bpm、6分間歩行後の心拍数<120bpmを目標に薬の投与量を調整する。6ヶ月以内は原則CAは行わない。

CA:ランダム化から1ヶ月以内に肺静脈隔離術を行う。ワルファリン・ダビガトラン以外の抗凝固薬は術前に中止、また、アミオダロン以外の抗不整脈薬も術前に中止する。CA施行後にILRを植え込み、3ヶ月以内の症候性AFの再発や難治性AFがあれば、再度CAを施行する。

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:オーストラリアの3施設
登録期間:2013年9月3日〜2016年12月23日
観察期間:6ヶ月
必要症例数:total 40例(LVEF10%改善、CA成功率80%、power80%)
症例数:66例(各群33例ずつ)
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:ILRは14%はSJM社から無償で提供されているが、試験デザイン・データ収集・解析・論文執筆には関わっていない。その他、企業の関与なし。

◇患者背景

(本文から引用)

パッと見、スピロノラクトンは差がありそうだが、群間差についての記載はない。

◇結果
CA群で、肺静脈隔離術は100%成功し、左房後壁隔離術は94%で試みられ、85%で成功した。

CA群では洞調律に復帰した患者で、6ヶ月後の心拍数が有意に低下した(安静時心拍数:62±10bpm vs 79±12bpm、平均心拍数:67±9.1bpm vs 86±14bpm、6分間歩行後の心拍数:92±24bpm vs 73±12bpm)

薬物療法群では、6ヶ月の時点で、安静時心拍数80±10bpm、6分間歩行後の心拍数86±17bpmと良好な心拍数を維持した。


(本文から引用)

LEVF、左房容積、NYHA分類、BNPが有意に改善。

▶︎LVEF
CA群:+18.3%、薬物療法群:+4.4%
CA群の58%が、薬物療法群の9%がLVEF≧50%に。


(本文から引用)

CMRでLGEがない場合は、よりLVEFの改善が期待できる。

▶︎有害事象
予期しない入院は、薬物療法群で4例(心不全2例、ICD移植術2例)あったが、CA群ではなかった。CAの手技に関連した合併症としては、鼠径部とILR植え込み部の輸血を必要とする出血が1例、術後肺炎が1例であった。

◇まとめと感想
心機能が低下した心不全において、心房細動に対するアブレーションが心機能を改善させるかについては、研究により結果はまちまちだが、改善してもLVEFの変化はせいぜい1ケタだった(1−2)。

この研究では、LVEFはbaseline時の31%から+18.3%と大きく改善し、それは薬物療法のみの場合と比較して有意な差を示した。また、LGEがない症例では、LVEFの改善は+22%と大きかった。

つまり、左室線維化がそれほど進んでいなければ、アブレーションにより心機能が改善する余地が大きいということだろう。LGEがない症例、あるいはあっても軽度の場合には、アブレーションによって生命予後も改善するかもしれないが、それはちょっと飛躍しすぎかな。今後に期待。

(1)J am coll cardiol 2013;61:1894-1903
(2)Circ Arrhythm Electrophysiol 2014;7:31-8

糖尿病、高血圧、高脂血症がなくても、肥満自体が心血管疾患のリスクになる

Metabolically Healthy Obese and Incident Cardiovascular Disease Events Among 3.5 Million Men and Women
J Am Coll Cardiol. 2017;70(12):1429-37

◇この論文のPECOは?
P:心疾患を持たない18歳以上の男女
E/C:BMIと代謝疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症)
O:心血管疾患、脳血管疾患、心不全、末梢血管疾患

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・イギリス
・The Health Improvement Network(THIN)のデータベース(プライマリケアの記録)を使用
・3,495,777例
・観察期間:平均5.4年
・COX比例ハザードモデル

<結果>
underweight:<18.5kg/m2
normal weight:18.5-25.0kg/m2
overweight:25.0-30.0kg/m2
obese:≧30kg/m2


(本文から引用)

normal weightと比較すると、obese+no metabolic abnormalityのハザード比は、
心血管疾患 1.49(95%CI:1.45−1.54)
脳血管疾患 1.07(1.04−1.11)
心不全 1.96(95%CI:1.86−2.06)

◇まとめと感想
心血管疾患と心不全は、脳血管疾患や末梢血管疾患と比べて、肥満の程度とハザード比がわりときれいな正比例になる。

日本人では体重の分類やハザード比はそのまま適応できないかもしれないが、高血圧・糖尿病・高脂血症がなくても肥満自体が動脈硬化性疾患・死亡のリスクになるという考えは、日本人にも当てはまると考えていいだろう。

非虚血性心筋症でも遅延造影を認めれば、CRTPよりCRTDがbetter

Outcomes of Cardiac Resynchronization Therapy With or Without Defibrillation in Patients With Nonischemic Cardiomyopathy.
J Am Coll Cardiol. 2017 Sep 5;70(10):1216-1227.

◇この論文のPECOは?
P:非虚血性心筋症でCRT-PまたはCRT-Dを留置した患者
E:心臓MRIで中層に遅延造影あり
C:遅延造影なし
O:全死亡(心移植、VADの植え込みを含む)

inclusion criteria:CRT移植術前にCMRが施行されている、CRT移植術が成功した患者
exclusion criteria:陳旧性心筋梗塞、冠動脈血行再建の既往、肥大型心筋症、拘束性心筋症、原発性の弁膜症、サルコイドーシス、アミロイドーシス、心筋炎

<デザイン、セッティング>
・イギリス
・前向き
・2002年7月〜2017年1月
・252例(MWF+68例、MWF−184例)
・観察期間:MWF+群3.8年、MWF-群4.6年(中央値)
・COX比例ハザードモデル

<結果>

(本文から引用)

一年死亡率は、MVF+:12.8%、MVF-:6.86%


(本文から引用)

MVFは死亡率の増加と関連あり(ハザード比2.31)

心房細動やNYHA classⅣなども死亡率の増加と関連がある。

CRT-Dは死亡率の低下と関連あり(ハザード比0.33)。


(本文から引用)

MVF+だとCRT-Dで有意に生存率が高いが、MWF-ではそれが明らかではない。

MVF+でのCRT-Dのハザード比0.23(95%CI:0.07−0.75)

◇まとめと感想
DANISH試験では、非虚血性心筋症でICDにより心臓突然死(SCD)は有意に減少したが、全体としては生命予後の改善までは至らなかった。それは、非心臓死などによりSCDの抑制効果が薄められた結果で、若年に限るとICDの生命予後改善効果が示唆されていた。

虚血ならICD、非虚血ならCRTが生命予後改善に有効と考えられる。その非虚血でも、MVFがあればCRT-Dにより生命予後が改善する可能性を示唆したのが、この研究。観察研究であり、limitationはあるだろうが、MVF+とか若年ではDをつけるのはreasonableかもしれない。

心不全 ACE阻害薬/ARB、β遮断薬の内服量と予後

Determinants and clinical outcome of uptitration of ACE-inhibitors and beta-blockers in patients with heart failure: a prospective European study
Eur Heart J. 2017 Mar 11. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:HFrEF(<40%)
E/C:ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬の内服量(0%、1−49%、50−99%、≧100%)
O:死亡、心不全入院

inclusion criteria:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬が未投与、ガイドライン推奨量の半分未満

登録から3ヶ月をoptimization periodとして、その期間に主治医の判断でACE阻害薬/ARB、β遮断薬を増量する。optimization periodを終えた患者のみ解析に含める。

ガイドライン推奨量

<デザイン、セッティング>
・ヨーロッパ11ヶ国、69施設
・前向きコホート研究
・2100例(2516例のうち、optimization periodで151例が死亡、23例がイベントはなかったが脱落、242例はEF≧40%のため除外)
・観察期間:21ヶ月(中央値)
・COX比例ハザードモデル

ARBの20%、ACE阻害薬の27%、β遮断薬の12%が推奨量に到達。

<患者背景>

(本文から引用)


(本文から引用)

ほとんど白人で、平均年齢は60代後半、虚血が半分、AFも半分弱、腎機能は比較的保たれている。

<結果>
ACE阻害薬/ARBが低い容量となる予測因子:女性、低いBMI、低いeGFR、高いALP
β遮断薬が低い容量となる予測因子:高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候


(本文から引用)


(本文から引用)
ACE阻害薬/ARBは推奨量の50%に達しているか、β遮断薬は容量依存的に死亡率が異なるという、わりとキレイな曲線になる。


(本文から引用)
この研究では、増量できない理由についても調べられている。
A)推奨量まで到達
B)症状、副作用、心臓以外の臓器障害
C)その他

B、Cの容量がどれぐらいだったかはわからない。

◇感想
ACE阻害薬/ARBでは、推奨量の半分以下の場合、死亡のハザード比が1.5−1.7倍に。β遮断薬では、容量依存的にハザード比は増加する。

増量できない予測因子としては、ACE阻害薬/ARBでは、女性、低いBMI、低いeGFR、高いALPが挙げられているが、女性やALPになぜ関連があるかはわからない。また、β遮断では、高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候があげられており、これはまさに実臨床通りといった感じ。

白人を対象にしていることや、日本での最大容量は欧米より少ないという点に違いはある。この研究ではACE阻害薬/ARB推奨容量の50%以上で推奨量と同程度の死亡率だったが、日本人ではそれがどれくらいの量なのかわからない。

まあ、ACE阻害薬/ARBやβ遮断薬は副作用がなければ増やしていくというスタンスでよいだろう。

CVD-REAL SGLT2阻害薬のリアルワールドデータ

EMPA-REG試験で、冠動脈疾患の既往がある患者を対象に、エンパグリフロジン(ジャディアンス)はプラセボと比較し、14%の心血管イベント(心臓死、心筋梗塞、脳梗塞)の抑制効果を認めた。また、心不全入院を35%、心臓死を38%低下させた(1)。

サブ解析では、心不全の既往のないサブグループでも、心不全入院、全死亡、心血管死の有意な低下が認められている(2)。

ジャディアンス以外のSGLT2阻害薬や、冠動脈疾患の既往がない患者でも、同様の効果があるかは明らかではない。

Lower Risk of Heart Failure and Death in Patients Initiated on SGLT-2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs: The CVD-REAL Study.
Circulation. 2017 May 18. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病
E:新規のSGLT2阻害薬の追加
C:新規の血糖降下薬(SGLT2阻害薬以外)の追加
O:心不全入院

6ヶ国のhealth recordを解析。

secondary endpointは、全死亡、心不全入院+全死亡(ドイツは死亡データがないため除外)。

観察期間は、新規の糖尿病薬が処方されてから、その治療の終了まで(on treatment解析)。

◇患者背景

(本文から引用)
プロペンシティスコアがマッチした集団。
87%で心筋梗塞や心不全の既往がない。IDDMが30%。
アウトカムに影響を与えうる薬剤であるチアゾリジンや利尿薬を含め、内服薬に差はない。

SGLT2阻害薬の内訳は、
○心不全入院
カナブリフロジン(カナグル) 53%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 42%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 5%

○全死亡
カナブリフロジン(カナグル) 42%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 51%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 7%

◇結果
○SGLT2阻害薬追加群
心不全入院:0.51/100人年
全死亡:0.87/100人年
心不全入院または全死亡:1.38/100人年

心不全入院(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院(ITT解析)

(本文から引用)

全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院、または全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

◇感想
2型糖尿病で、経口血糖降下薬やインスリンなどそれなりに投与していて、かつ心血管疾患の既往がない人がほとんどという集団で、新規のSGLT2阻害薬の追加は、それ以外の血糖降下薬の追加と比べ、心不全入院と全死亡を低下させた。

心不全入院は39%、全死亡は49%のリスク減少。

心不全の発症率は、EMPA-REG試験のサブ解析とほとんど変わらず、全死亡はEMPA-REG試験が二次予防を対象にしているためか、あちらの方が2倍ぐらい多い。

このCVD-REALのデータは、EMPA-REG試験のデータがリアルワールドでも確認できたとか、ジャディアンスだけじゃなく、カナグルやフォシーガでも心血管イベント抑制効果が確認できた、と喧伝されそうです。

個人的には、全死亡が半分になるというのは、すごく出来すぎているように思うけど、発生頻度が少ないので処方していても実感はできそうにない。死亡率が半分になるというのは、それが事実なら夢のような薬。

心不全入院だけでなく全死亡も減らしているので、これは単なる利尿効果では説明がつかないので、他の要因(レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系を賦活させないとか、ケトンの産生などの説明を耳にするが)が関与していると考えればいいのか。

EMPA-REG試験で増加傾向だった脳梗塞がどうなのかとか、安全性のデータについては、この論文からはわからないので要注意。

(1)N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.
(2)Eur Heart J. 2016 May 14;37(19):1526-34.

カナグリフロジン 心血管アウトカム

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病
I:カナグリフロジン100mg or 300mg
C:プラセボ
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞

inclusion criteria:HbA1c7.0−10.5%、心血管疾患の既往あり、ない場合はそれ相応のリスクがあること(糖尿病罹患歴10年以上、コントロール不良の高血圧、喫煙者、低HDL血症など)など

◇試験の概要
デザイン:RCT 非劣勢試験(非劣勢マージン1.3)
地域:30ヶ国、667施設
観察期間:126.1週(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:記載なし 688イベント発生するまで
症例数:10142例(カナグリフロジン5795例、プラセボ4347例)
追跡率:99.6%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen社)

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
内服薬は不明。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointとしては差がついてるが、心臓死、心筋梗塞、脳梗塞のぞれぞれでみるとどれも有意差はついていない。

アルブミン尿の抑制だとか、腎機能保護効果については、EMPA-REG試験と同じような感じ。


(本文から引用)

足趾と足の切断、骨折、男性器感染症、女性器真菌感染症は、カナグルで有意に多い。あと、光線過敏症が多い傾向。

◇感想
動脈硬化性の心血管疾患の既往、またはそれ相応のリスクがある2型糖尿病患者を対象とし、カナグリフロジンの心血管イベント抑制効果を検証したRCT。

結果としては、primary endpointである心臓死+心筋梗塞+脳梗塞は有意に減少したが、それぞれで見てみると、どれも有意な減少は認められなかった。EMPA-REG試験では、プラセボと比べエンパグリフロジンで脳梗塞が増加傾向にあったが、カナグリフロジンではその傾向は認められなかった。

primary endpointに対するNNT(1年)は218になる。今の薬価は205円なので、1630万円で1件イベントが減るが、下肢切断や感染症は増える。それをどう捉えるか。

自分は真菌感染とか診たことがないので、そもそもSGLT2阻害薬を使ってそういう副作用を起こされても困る。自分が対処しきれないことが起こりうる薬剤は処方しにくい。

RCTで有害事象まで調べることはできないので(primary endpointより発生率が低いからパワーが足りない)、これからコホート研究やメタ解析で明らかになっていくだろう。

急性心不全 ウラリチドの効果なし

ANP製剤であるカルペリチドは日本のみで使用されている薬剤で、UoToDateで”carperitide”と検索しても、心不全に関する記述はなにも出てきません。以前、BNP製剤であるネシリチドは、メタ解析で腎機能を悪化させる可能性が示唆され、ASCEND-HF試験が行われましたが、良い効果はなにも示せませんでした。

そして、同じナトリウム利尿ペプチドであるウラリチドのRCTです。

ffect of Ularitide on Cardiovascular Mortality in Acute Heart Failure
N Engl J Med. 2017 May 18;376(20):1956-1964.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:ウラリチド15ng/kg/minの持続静注
C:プラセボの持続静注
O:15ヶ月での心臓死

inclusion criteria:BNP500pg/ml以上、フロセミド40mg静注後少なくとも2時間以上安静時呼吸困難が持続、SBP116−180mmHg

◇試験の概要
地域:23ヶ国、156施設
登録期間:2012年8月〜2014年5月
観察期間:15ヶ月(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:2152例
症例数:2157例(ウラリチド群1088例、プラセボ群1069例)
解析:ITT解析
スポンサー:Cardiorentis社

◇患者背景

(本文から引用)
両群間で有意差なし。
2/3がHFrEF。

◇結果

(本文から引用)

◇感想
急性心不全に対するウラリチドは、NTproBNPは下がるが、生命予後を改善させない。Crはちょっと上がる。

急性心不全急性期の数十時間の治療が、その後の生命予後に影響を大きな影響を与えるというのは、そもそも違和感がある。ネシリチド、ウラリチドの効果は否定された。日本で使えるカルペリチド(ハンプ®️)はどうなのか。少なくとも自分の心不全治療には、これからも出番はありません。

来院からフロセミド静注までの時間の短縮が、心不全の院内死亡率を改善する

ime-to-Furosemide Treatment and Mortality in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2017;69(25):3042–3051

◇この論文のPECOは?
P:急性心不全
E:D2Ftime60分未満(early群)
C:D2Ftime60分以上(non-early群)
O:院内死亡率

D2Ftime:病院到着からフロセミド静注までの時間

組み入れ基準:病院到着から3時間以内に急性心不全の診断がついた患者、24時間以内にフロセミドが静注されていること
除外基準:透析、AMIなど

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・2014年8月〜2015年12月
・1291例(early群:481例、non-early群:810例)
・ロジスティック回帰

<患者背景>

(本文から引用)
early群の方が、救急車利用、うっ血の症候(下腿浮腫、頸静脈怒張など)が多く、D2Ftimeが短縮しそうな要因がある。心房細動はnon-earlyで多い。EF、腎機能、Nohria-Stevenson分類に群間差はない。

<結果>

(本文から引用)
60分未満のフロミセミドの静注により院内死亡率は低下。


(本文から引用)
100分ぐらいのところにひとつピークがある。

◇感想
急性心不全患者で、来院から60分以内にフロセミドを静注できた群は、それよりも時間がかかった群に比べて院内死亡率が低い。

Figure3をみると100分ぐらいのところにピークがあって、右肩上がりになっていない。左側の山の群と右側のなだらかな右肩上がりの群は、そもそも患者の質が違うんじゃないかな。characteristicsをみてもはっきりとはわからないけど、なんかそんな気がする。だから、いくら交絡を調整しても、そもそも母集団が違っているから比較ができないんじゃないかな。

ただ、100分以内でみると時間経過とともに院内死亡率が上昇しているので、早く心不全と診断してフロセミドを静注することは良いアウトカムに繋がりそうではある。まあ、迅速かつ的確な診断と早期の治療開始が重要ということで。

トルバプタンとフロセミド 心不全の症状改善効果は同じ

Efficacy and Safety of Tolvaptan in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(11):1399-1406.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:トルバプタン30mg/日の内服
C:プラセボの内服
O:24時間以内に呼吸困難が中等度以上改善した患者の割合(7-point Likert scaleで評価)

inclusion criteria:安静時または軽労作で呼吸困難がある心不全、BNP>400pg/ml、血清Na140mEq/L以下
exclusion criteria:低血圧(SBP<90mmHg)、高度腎機能障害(Cr>3.5mg/dl)、血液透析

◇試験の概要
地域:米国
観察期間:30日
盲検化:二重盲検
必要症例数:250例
症例数:257例(トルバプタン群129例、プラセボ群128例)
追跡率:97.7%(追跡不能と同意撤回が計6例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(大塚製薬)

◇患者背景

(本文から引用)
EF30%と心機能は悪く、BNPも1400台と高く、普段のフロセミドの使用量も多め。腎機能も悪め。

◇結果

(本文から引用)
トルバプタンを内服すると尿はよく出る。でも、3日たつと差は薄まる。


たくさん尿が出ても、症状はサムスカを使わない場合と変わらない。いずれの時点でも有意差なし。

30日後の再入院+死亡、30日死亡率ともに差はなかった。

◇感想
EVEREST試験では、急性心不全に対するトルバプタンの使用は、10ヶ月後の死亡率も再入院も改善しなかったが、症状はトルバプタン群で早期に改善する症例が多かった。

このTACTICS-HF試験は、その症状をエンドポイントに検証した試験である。尿量はやはりトルバプタン群で多く、早期から体重も減っていたが、症状はフロセミド単独と変わりはなかった。つまり、水はよく出すが、症状改善効果はフロセミドと変わりがないということ。

重症心不全でサムスカを使って良くなるケースもあるが、そんなに多用する薬じゃない。フロセミドと同程度に安ければいくらでも使っていいと思うが、”値段は高いけど症状改善効果は安い薬と変わらず予後が良くなるわけでもない”というと、多くの症例には使う理由がない。