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EMPA-REG OUTCOME試験 アジア人(サブグループ解析)

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®.
Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

《要約》
背景
EMPA-REG OUTCOME®︎試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、標準的治療にエンパグリフロジンを追加することで、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)を14%、心血管死を38%、心不全入院を35%、全死亡を32%低下させた。我々は、アジア人におけるエンパグリフロジンの効果を調べた。

方法と結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボに無作為に割り付けられた。全体7020例のうち、1517例(21.6%)がアジア人であった。3-point MACEはエンパグリフロジン群で79/1006例(7.9%)、プラセボ群で58/511例(11.4%)、ハザード比0.68(95%CI:0.48−0.95)、人種による交互作用P=0.0872であり、アジア人での3-point MACEの減少は、試験全体と一貫していた。エンパグリフロジンのアジア人に対する効果は、MACE、全死亡、心不全アウトカムで、試験全体と一貫していた(人種による交互作用のP>0.05)。有害事象のプロファイルは、アジア人と全患者で似通っていた。

結論
心血管疾患を有するアジア人の2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンの心血管アウトカムと死亡率に対する効果は、EMPA-REG OUTCOME試験全体の患者と一貫性があった。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病のアジア人
I:エンパグリフロジン10mgもしくは25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞(3-point MACE)

◇患者背景


EMPA-REG OUTCOME試験全体との患者背景の違いは、糖尿病罹患期間が短く、インスリン使用が少ない、体重が軽い、多枝疾患が多い、利尿薬の使用が少ないという感じ。

エンパグリフロジン群とプラセボ群で群間差はない。

◇結果
エンパグリフロジン群 vs プラセボ群
・3-point MACE
7.9% vs 11.4% HR:0.68(95%CI:0.48−0.95)

・4-point MACE(3-point MACE+不安定狭心症による入院)
10.0% vs 13.5% HR:0.73(95%CI:0.54−1.00)

・心血管死
2.2% vs 4.9% HR:0.44(95%CI:0.25−0.78)

・致死的/非致死的脳梗塞
3.8% vs 3.9% HR:0.95(95%CI:0.55-1.64)

・致死的/非致死的心筋梗塞
2.9% vs 4.5% HR:0.62(95%CI:0.36−1.08)

・心不全入院
2.2% vs 3.1% HR:0.70(95%CI:0.37−1.33)

◇批判的吟味
・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、Hb<8.5%、BMI<30で良いのではないかということが言われていた。しかし、アジア人のサブグループ解析ではサンプルサイズが小さいため、サブグープ解析による一貫性については調べられておらず、同様の傾向を示すかどうかはわからない。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、3-point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、それは心不全入院を減らした結果であった。アジア人でのサブグループ解析でも3−point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、心不全入院を抑制する傾向があったため、心不全死を減らしているものと推測する(心不全入院で有意差が付いていないのはパワー不足と思われる)。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、エンパグリフロジンで脳梗塞が増える傾向にあったが、アジア人ではその傾向は見られなかった。

・3-point MACEのNNTは29、心血管死のNNTは38。

◇感想
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンを投与することにより3-point MACEを有意に減少させた。エンパグリフロジンにより心不全入院、心不全死が抑えられたためと考えら、アジア人でのサブグループ解析でも同様の傾向が認められた。

他のSGLT2阻害薬でも心血管イベントをアウトカムとした試験が進行中のようで、この効果がドラッグエフェクトなのかクラスエフェクトなのか、はたまた違う方向に議論が進んでいくのか、期待して待ちたいと思います。

ていうか、EMPA-REG OUTCOMEって商標登録されていたんですね。悪用されるのを防ぐためなのでしょうか。

メトホルミンは、CKD、CHFでも全死亡と心不全入院を減少させる

Clinical Outcomes of Metformin Use in Populations With Chronic Kidney Disease, Congestive Heart Failure, or Chronic Liver Disease: A Systematic Review.
Ann Intern Med. 2017 Jan 3. [Epub ahead of print]

◇論文の概要
<背景>
メトホルミンの使用に関するFDAの警告の変化は、今まで禁忌あるいは慎重投与だった患者への処方を増やすかもしれない。処方する者は、これらの患者に対するメトホルミンの臨床的アウトカムを理解するべき。

<目的>
2型糖尿病で、中等度から高度の慢性腎臓病(CKD)、うっ血性心不全(CHF)、肝障害のある慢性肝臓病(CLD)の患者を対象とし、メトホルミンの臨床的アウトカムを統合すること。

<データ収集>
MEDLINE:1994年1月〜2016年9月
コクランライブラリー・EMBASE:1994年1月〜2015年11月

<研究の選択>
英語論文であり、以下の3つを満たすこと。
1)CKD(eGFR60未満)、CHF、CLDを合併した2型糖尿病を対象とした研究であること
2)メトホルミンを含んだレジメンと含まないレジメンの比較であること
3)全死亡、主要な心血管イベントをアウトカムにしていること

<データ抽出>
独立した2人のレビュアーが、情報の要約を行い、研究の質とエビデンスの強度を評価する。

<データの統合>
17の観察研究を質的・量的に統合すると、メトホルミンはCKD、CHF、CLDにおいて全死亡の減少と関連があった。また、CKD、CHFでは心不全入院の減少と関連があった。


CKDでは、HR:0.78(95%CI:0.63−0.96)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下している。ただし、I2統計量:79.8%と異質性は高い。


CHFについての対象となった観察研究のfunnel plotで、Egger’s test P=0.09と非対象ではない。CKDとCLDは、選択された研究の数が少ないため掲載されていない。


CHFでも、HR:0.78(95%CI:0.71−0.87)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下しているが、これもI2統計量:62.3%と異質性は高い。

<限界>
エビデンスの強度は低く、全死亡や心血管イベント以外のデータは十分でない。観察研究の統合であり、また観察期間は一定ではない。

<結論>
CKD、CHF、CLDにおいてメトホルミンの使用は、主要な臨床的アウトカムの改善と関連があった。我々のデータは、メトホルミン使用に関する最近の流れを支持するものである。

◇論文のPICOはなにか
P:CKD、CHF、CLDを合併した2型糖尿病
I:メトホルミンを含んだレジメン
C:メトホルミンを含まないレジメン
O:全死亡、主要な心血管イベント

◇批判的吟味
・CKD、CHF、肝障害を伴うCLDでもメトホルミンにより死亡率が低下しているが、異質性は高く結果の信頼性は低い。
・CKDやCHFの定義が試験により異なっており、重症度・患者背景の違いより異質性が高くなった可能性。
・メトホルミン投与量がわからない(どのれくらいの量が許容できるのかわからない)。

◇感想
メトホルミンは体重増加や低血糖の原因にならず、血糖降下作用を超えた死亡率の低下が示されている薬剤。しかし、乳酸アシドーシスの懸念から、CKD、CHF、CLDでは禁忌になっていました。最近になり、これらの疾患でも比較的安全に投与できるとして、処方は増えているみたい。

日本人は欧米人と異なり、インスリン分泌が低下しやすく、彼らほどインスリン抵抗性が高くありませんが、薬価・低血糖リスクなどを考慮して、個人的にはまずメトホルミンから処方することが多いです。心不全やeGFR30以上のCKDでも使えるということなので、循環器内科医としてはありがたいです。

慢性心不全と貧血と鉄欠乏

Prevalence and Outcomes of Anemia and Hematinic Deficiencies in Patients With Chronic Heart Failure.
JAMA Cardiol. 2016 Aug 1;1(5):539-47.

《要約》
背景
慢性心不全の患者で、貧血と鉄欠乏の頻度・関連・影響などの詳細な情報は不足している。

目的
心不全が疑われ循環器内科を紹介された患者で、貧血と鉄欠乏の疫学を調査すること。

デザイン、セッティング、患者
20001年1月1日から2010年12月31日までに心不全が疑われ紹介された患者の、ヘモグロビン(Hb)、血清鉄、鉄結合率、フェリチンの情報を収集した。フォローアップデータは2011年12月13日に検閲した。心エコー、NT-proBNPは最大10年間フォローした。

アウトカム
貧血と鉄欠乏の頻度、それらの関連、死亡率、心血管死亡率

結果
4456例が研究に組み入れられた。年齢の中央値は73歳で、2696例(60.5%)は男性、1791例(40.2%)で左室収縮障害を認めた。左室収縮障害がない患者では、1172例(26.3%)でNT-proBNPが400pg/ml以上、841例(18.9%)で400pg/ml未満、652例(14.6%)は測定されていなかった。1237例(27.8%)で貧血を認め、心不全のクライテリアを満たす患者で多かった(987例、33.3%)。鉄欠乏は、貧血のある患者では270例(43.2%)から425例(68.0%)で認め、貧血のない患者では260例(14.7%)から624例(35.3%)で認めた。多変量解析では、より低いHb(HR0.92、95%CI0.89−0.95)とより低い血清鉄(HR0.98、95%CI0.97−0.99)は、より高い死亡率・心血管死亡率と独立した関連があった。

結論
心不全患者では貧血はありふれたもので、しばしば鉄欠乏と関連していた。貧血と鉄欠乏の両方が全死亡・心血管死と関連しており、心不全患者では治療のターゲットになるかもしれない。

◇この論文のPECOは?
P:慢性心不全
E/C:貧血、鉄欠乏
O:死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・英国
・後ろ向きコホート研究
・ロジスティック回帰(貧血と鉄欠乏の変数を特定するため)、COX比例ハザードモデル(全死亡、心血管死の変数を特定するため)
・4456例
・観察期間:7.7年(中央値)
・貧血の定義(WHO) 男性:<13.0g/dl、女性:<12.0g/dl

◇結果
・心不全のある患者では、貧血を合併している頻度が高い。
・男性の場合、貧血と年齢は相関がある。

hematinic-variables

◇感想
慢性炎症によりフェリチンは高値になる傾向。フェリチン値で鉄欠乏の有無を判断していると、鉄欠乏を見逃すこともある。血清鉄やTSATの方が、鉄欠乏を反映している。

心不全患者でHbが低下する機序は複雑である。体液貯留による希釈、赤血球容積の低下、ACE阻害薬やカルベジロールの使用、鉄やエリスロポエチンの不足などがあげられる。貧血と鉄欠乏が死亡と相関するからと言って、内服薬によって鉄を補えばいいというものではない。

高容量のカフェインを摂取しても、期外収縮は増えない

Short-term Effects of High-Dose Caffeine on Cardiac Arrhythmias in Patients With Heart FailureA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online October 17, 2016.

《要約》
重要性
カフェインの催不整脈性については議論がある。心室性不整脈のリスクが高い左室収縮不全の心不全患者に対し、高容量のカフェインの効果を評価した研究はほとんどない。

目的
高容量カフェインとプラセボそれぞれの、安静時および運動負荷時の上室性・心室性不整脈の頻度を比較すること。

デザイン、セッティング、参加者
二重盲検、クロスオーバー、無作為化試験を3次医療の大学病院で行った。中等度から高度の収縮不全(EF<45%)で、NYHAⅠ-Ⅲの慢性心不全患者を組み入れた。

介入
デカフェのコーヒー100mlにカフェイン100mgまたはラクトースを加え、1杯1時間で、計5杯飲む。1週間のウォッシュアウト期間を設け、そのプロトコールを繰り返す。

アウトカム
連続心電図モニタリングで記録された、心室性期外収縮と上室性期外収縮の回数と割合。

結果
中等度から高度の収縮不全がありICDが植え込まれている患者51例を登録した(平均年齢60.6±10.9歳、男性37例)。心室性不整脈および上室性不整脈の回数は、両群間で有意差はなかった(心室性不整脈:185vs239beats P=0.47、上室性不整脈:6vs6beats P=0.44)。PVC2連、二段脈、非持続性心室頻拍(NSVT)も同様であった。運動負荷検査では、心室および上室性期外収縮、運動時間、推定最大酸素消費量、心拍数に対するカフェインの影響はなかった。血中カフェイン濃度が高い患者、低い患者、またはプラセボ群で心室性期外収縮に差はなかった(91vs223vs207beats)。

結論
高容量カフェインの急速摂取は、心室性不整脈のリスクが高い収縮不全の患者の不整脈を増加させない。

◇この論文のPICOはなにか
P:EF<45%の収縮不全を有するNYHAⅠ-Ⅲの心不全
I:カフェイン500mg/日の摂取(カフェイン群)
C:ラクトースの摂取(プラセボ群)
O:安静時および運動負荷時の心室性および上室性期外収縮

inclusion criteria:3ヶ月以内に施行した心エコーでEF<45%であること、安全のため試験開始初期(最初の25例まで)ではICDが植え込まれていることを必須とした、ICDが正常に機能していること
exclusion criteria:カフェインやラクトースを摂取できないこと、身体的または機能的に運動の制限がある、β遮断薬とアミオダロン以外の抗不整脈薬の使用、shockやATPを必要とする不整脈のエピソードが2ヶ月以内にあること、2ヶ月以内の心不全に関連した入院

手順:まず、7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設ける。ウォッシュアウト期間終了後、リサーチクリニックを訪れる。AM8時にリサーチクリニックに来院し、AM9時より連続心電図モニタリングと割り付けられたデカフェの摂取を開始する。PM1時に最後のデカフェの摂取を開始し、PM2時からトレッドミル検査を開始する。検査終了後に再度7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設け、クロスオーバーさせ、同様の介入を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
クロスオーバー試験なので群間差はないが、カフェイン入りのデカフェを飲用している際に、2例が嘔気と頭痛があり、飲用を中止している。

◇結果
地域:ブラジル
登録期間:2013年3月5日〜2015年10月2日
無作為化:コンピュータプログラムによる無作為化を行っている。
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者、解析者はすべて盲検化されている。
必要症例数:47例(カフェイン摂取により心室性期外収縮が100beat増加する、power80%、αlevel0.05と仮定)
症例数:51例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result

◇批判的吟味
・primary endpointに有意差はないが、必要症例数は満たしているため、カフェインで期外収縮は増えないと考えていいだろう。
・高容量のカフェインを急速に摂取した場合の影響をみたものであって、慢性的に摂取することの影響はわからない。
・臨床的なアウトカムがどうなるかはわからない(PVCが増えなくても臨床的なアウトカムは悪化するかもしれない)。

◇感想
動物実験でカフェインによる不整脈の増加が報告され、80−90年代に人でも心室性期外収縮が増えるかリサーチされたが、関連は見出せていない。Myersの報告では、OMIで300mgのカフェイン投与により心室性期外収縮が26%増えたと報告されたが、メタアナリシスでは、カフェインの摂取と心室性期外収縮の関連はなかった。

高容量のカフェインを急速に摂取しても、心室性および上室性期外収縮は増えないという結果で、過去のメタアナリシスと矛盾しない。カフェインの血圧上昇作用や利尿作用には注意は必要であるが、患者さんには特別カフェインの摂取は控えてもらってないし、この試験の結果からも、あえて控えてもらわなくてもよさそう。

EMPA-REG試験心不全サブ解析 ハイリスク2型糖尿病に対するエンパグリフロジンの効果

Heart failure outcomes with empagliflozin in patients with type 2 diabetes at high cardiovascular risk: results of the EMPA-REG OUTCOME® trial.
Eur Heart J. 2016 Jan 26.[Epub ahead of print]

《要約》
背景
ハイリスクの2型糖尿病患者に対し、標準的治療へエンパグリフロジンすることにより3point MACE(心血管及び全死亡、心不全による入院)が減少したことを、以前報告した。baselineでの心不全の有無を含め、全患者とサブグループで心不全について、さらなる調査を行った。

方法・結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、25mg、プラセボに割り付けられた。7020例が登録され、706例(10.1%)がbaselineで心不全を有していた。心不全による入院と心血管死は、エンパグリフロジン群265/4687例(5.7%)、プラセボ群198/2333例(8.5%)とエンパグリフロジン群で有意に低かった(HR0.66、95%CI:0.55−0.79)。3年間の心不全による入院と心血管死のNNTは35であった。baselineの心不全の有無によらず、また糖尿病・心不全に対する治療によらず、エンパグリフロジンの一貫した効果を認めた。エンパグリフロジンは、心不全による入院や心不全死を減少させ(2.8% vs 4.5%, HR0.61, 95%CI:0.47-0.79)、全入院を減少させた(36.8% vs 39.6%, HR0.89, 95%CI:0.82-0.96)。重大なものを含めた有害事象は、心不全を有していた群で多く見られたが、エンパグリフロジン群とプラセボ群では差は認めなかった。

結論
エンパグリフロジンは、ハイリスクの2型糖尿病患者においてbaselineの心不全の有無によらず、心不全による入院と心血管死を減少させた。

◯この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病患者
I:エンパグリフロジン(10mgもしくは25mg)の内服
C:プラセボの内服
O:心臓死、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く)、非致死的脳梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:18歳以上、BMI45以下、eGFR>30ml/min/1.73m2、心血管疾患(2ヶ月以上前の心筋梗塞の既往、CAGまたはMDCTで証明された2枝以上または左冠動脈主幹部の狭窄、2ヶ月以上前のPCI/CABGの既往、2ヶ月以上前の脳梗塞の既往、末梢血管へのstentingやbypassなどの閉塞性動脈硬化症)と診断がついていて血糖降下薬を使用せずにHbA1c7.0−9.0%、もしくは血糖降下薬内服下で7.0−10.0%

study procedure:2週間のrun-in periodの後、ランダム化が行われる。エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボの3群に1:1:1に分ける。ランダム化後12週間は糖尿病治療の薬剤を変更しない。その後は、それぞれの地域のガイドラインに基づいて変更可能。脂質異常症や高血圧症などそれぞれの国のガイドラインに基づいて最良な治療を行う。

◯結果
地域:42カ国、590施設
登録期間:2010年9月〜2013年4月
観察期間:3.1年(中央値)
無作為化:コンピュータによって生成された乱数を用いる。層別化(HbA1c、BMI、腎機能、地域)を行う。
盲検化:double blind。outcome評価者と解析者は独立した機関が行っている。
必要症例数:非劣性の証明には691イベント(αlevel:0.0498, power90%、非劣性マージン1.3)の発生が必要とされているが、必要症例数については記載なし。
症例数:7020例(エンパグリフロジン10mg:2345例、25mg:2342例、プラセボ:2333例)
解析:Cox比例ハザードモデル(primary endpointはmITT解析)
スポンサー:べーリンガーインゲルハイム、イーライリリー

result
subgroup
haert failure

◯感想/批判的吟味
・baselineの心不全の定義は、心機能やBNPの測定はされておらず、治療介入者の判断である。
・全患者を対象とした解析結果と異なり、baselineで心不全があった群では、心不全入院や心血管死の減少に有意差はない。(baselineで心不全があった症例数は少ないために有意差がでなかった可能性はあるが、authorはbaselineの心不全の有無に関わらずエンパグリフロジンが有効であると結論づけている)。
・観察期間の中央値は約3年のため、症例数は急激に少なくなる。カプランマイヤー曲線では36ヶ月以降のプラセボ群で急速にイベント発生率が上昇しており、この部分の正確性には欠けるのではないか(試験開始早期からプラセボ群とエンパグリフロジン群の差は現れているため、時間経過とともに差は開く事が予想することはできる)。
・エンパグリフロジン固有の効果ではなく、SGLT2阻害薬のクラスエフェクトだろう(SGLTの選択性による違いはあるかもしれないが)
・劇的な有効性を示した試験は鵜呑みにせず、複数のRCTで有効性が確認される事が重要である。

ピモベンダンは心不全増悪による入院を抑制する EPOCH試験

Effects of pimobendan on adverse cardiac events and physical activities in patients with mild to moderate chronic heart failure: the effects of pimobendan on chronic heart failure study (EPOCH study).
Circ J. 2002 Feb;66(2):149-57.

《要約》
慢性心不全に対する長期のピモベンダンの効果は確立されていない。EF<45%で至適薬物療法を行っているいの関わらずNYHAⅡ−Ⅲの安定した慢性心不全306例を、二重盲検化し52週までフォローアップした。52週目までで有害事象(primary endpontの発生)は、ピモベンダン群で19例(15.9%)、プラセボ群で33例(26.3%)であった。プラセボ群に対するピモベンダン群の累積的な心臓の有害事象は、45%低かった(ハザード比の95%CI:0.31−0.97)。死亡と心臓が原因の入院はピモベンダン群で12例(10.1%)、プラセボ群で19例(15.3%)であったが、有意差はなかった。ピモベンダン群でbaselineでのSpecific Activity Scale score(SASスコア)が4.39±0.12、52週時で4.68±0.15と増加していた(P<0.05)。長期のピモベンダンの使用は、軽度から中等度の慢性心不全患者の罹患率を低下させ、運動能を改善させる。

◯この論文のPICOはなにか
P:EF<45%でNYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全
I:ピモベンダンの内服(ピモンベンダン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心不全死、心臓突然死、不整脈死、心不全増悪による入院の複合エンドポイント
(secondary endpointは、SAS質問表による1Mets以上の運動耐用能上昇、心不全増悪による薬剤の追加・変更、非心臓死)

inclusion criteria:20−85歳、臨床的に安定していること、至適薬物療法でも症状が残存していること
exclusion criteria:重症の心室性または心房性不整脈、高度房室ブロック、狭窄症、閉塞性または感染性心疾患、3ヶ月以内の心筋梗塞の既往、重症の脳血管疾患・呼吸器疾患・肝疾患・腎疾患・血液疾患、妊婦、授乳婦

◯baselineは同等か
baselineの群間差についての記載なし。
ただ、ぱっと見ではほとんど差はなさそう。
baseline

◯結果
登録は1995年12月から1998年9月まで。
ピモベンダンは、2.5mg分2で開始し忍容性があれば5mg分2に増量した。

ピモベンダン群 vs プラセボ群(95%CI)
primary endpoint:10.1% vs 15.3%(0.30−1.29)
primary endpoint + secondary endpoint:15.9% vs 26.3%(0.31-0.97)

result
primary endpointは、心臓死に差はなく、心不全入院で差がついている。

◯感想/批判的吟味
・二重盲検無作為化試験
・追跡率98.9%
・ITT解析
・primary endpointでは有意差なし
・必要症例数をprimary endpointとsecondary endpointを合わせて算出されている。

primary endpointで有意差がないため、必要症例数に達しているか確認する必要があるが、事前に定められた症例数はprimary endpointとsecondary endpointを合わせて算出されており、その症例数は満たしている(プラセボ群のrimary endpointとsecondary endpointの発生が27−29%、ハザード比0.4−0.5、αlevel5%、power80%)。これは症例数の算出方法として、あまり見かけない方法だと思う。

NEAT−HFpEF試験 一硝酸イソソルビドはHFpEFの運動能を改善しない

Isosorbide Mononitrate in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction.
N Engl J Med. 2015 Dec 10;373(24):2314-24.

《要約》
背景
硝酸薬は左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)患者の運動耐用能を改善させるために処方されている。HFpEF患者の日常生活の活動性に対するイソソルビドの効果を検証した。

方法
多施設、二重盲検、クロスオーバー試験で、HFpEF110例をイソソルビドとプラセボにむさいくに割り付けた。イソソルビドは6週間で漸増させる(30mg分1から60mg分1、120mg分1まで)。その後、別の群にクロスオーバーさせる。主要評価項目は日常生活活動レベル(患者が装着した加速度計で加速度単位を測定)、副次評価項目は1日あたりの活動時間、QOLスコア、6分間歩行、NT−proBNP値である。

結果
イソソルビド120mgを内服した群では、プラセボと比較し日常生活活動性が低い傾向がみられ(−381加速度単位、95%CI:−780to17)、1日あたりの活動時間が有意に短縮した(−0.30時間、95%CI:-0.55to-0.05)。容量に問わずすべての患者を解析に含めると、イソソルビド群で日常生活の活動性は有意に低下していた(−439加速度単位、95%CI−792to−86)。イソソルビドの容量が増えると、有意に活動性は低下した。6分間歩行距離、QOLスコア、NT−proBNP値に差はなかった。

結論
イソソルビドを内服しているHFpEF患者では、活動性が低下し、QOLや運動能力も改善しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:HFpEF
I:一硝酸イソソルビドの内服(イソソルビド群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:日常生活活動性(加速度単位)

inclusion criteria:50歳以上、安定した薬物療法を行っていること、LVEF≧50%で以下の項目をひとつ以上満たすこと(肺うっ血を伴った心不全で入院歴があること、安静時LVEDP≧15mmHg、安静時PCWP≧20mmHg、運動時PCWP≧25mmHg、NT−proBNP>400pg/ml、BNP>200pg/ml、ドップラーエコーにて拡張障害を認めること)

exclusion criteria:収縮期血圧110mmHg未満・180mmHg以上、硝酸薬やPDE-5阻害薬に対する有害事象や現在の使用

手順
6週間ごとのクロスオーバー。それぞれ、最初の2週間は投薬しない。1週間おきに1錠(イソソルビドなら30mg)ずつ増量する。毎週、副作用とコンプライアンスを確認する。

◯baseline
characteristics1
characteristics2

◯結果
esult
(tableはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)では、硝酸薬により運動耐用能が改善する。HFpEFでも活動時にはLVEDPが著しく上昇するため、硝酸薬によりそれを抑えることで、活動性が改善しそうなものだが、結果はそれに反するものだった。

EMPA-REG OUTCOME試験 エディトリアル

Cardiovascular Risk and Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibition in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2178-9

2型糖尿病は心血管疾患や腎疾患のリスクを上昇させるが、ACCORD試験では厳密な血糖コントロールを行っても心血管イベントは減少しないことが示されている。EMPA-REG OUTCOME試験では、エンパグリフロジンにより全死亡と心血管死を減少させ、3point-MACEに対するNNTは39と驚くべき効果があった。

組織への糖の取り込みは、SGLTやGLUTを通して行われる。GLUTは受動的な取り込みを、SGLTは能動的な取り込みを行う。SGLT2は腎臓に特異的だが、SGLT1は全身に分布しているため、それの阻害は広範囲な影響があるだろう。

SGLT2阻害薬はインスリ抵抗性改善と血糖効果作用を有する。インスリンには依存しない効果がある。体重減少、降圧、タンパク尿減少、尿酸値減少などの効果がみられている。

EMPA-REG OUTCOME試験を実臨床に適応する際の注意点としては以下の点があげられる。糖尿病の罹患暦が10年以上の症例が多くを占め、糖尿病薬・降圧薬・脂質降下薬など多剤を内服している症例が対象である。80%が白人なので、そのほかの人種では同様の結果になるかはわからない。心血管疾患がない2型糖尿病にも同様の効果があるかはわからない。有害事象についてはさらなる観察が必要である。

GISSI-HF試験 ロスバスタチンは慢性心不全の生命予後には寄与しない

Effect of rosuvastatin in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2008 Oct 4;372(9645):1231-9

《要約》
背景
大規模な観察研究、小規模の前向き試験、無作為化試験のpost−hoc解析で、慢性心不全に対するスタチンのベネフィットが示唆されている。しかしながら、以前の試験は方法論が不十分であったため、慢性心不全に対するロスバスタチンの有効性と安全性を検証した。

方法
イタリア国内の31施設で、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行った。18歳以上の、NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者を、ロスバスタチ投与(10mg/日)とプラセボ投与に無作為に割り付けた。心不全の原因やLVEFは問わない。割り付けは隠匿化され、コンピュータ化した電話無作為化システムを用いた。患者は中央値3.9年のフォローアップが行なわれた。主要評価項目は全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院である。ITT解析を行った。

結果
無作為化されたすべての患者の解析を行った。ロスバスタチン群で657例(29%)、プラセボ群で644例(28%)が死亡した(adjusted HR:1.00[95%CI:0.898−1.122)。ロスバスタチン群で1305例(57%)、プラセボ群で1283例(56%)で全死亡と心血管イベントによる入院があった(adjusted HR:1.01[95%CI:0.908−1.112)。両群で、胃腸障害が最も高頻度な有害事象であった(ロスバスタチン群34例[1%], プラセボ群44例[2%])。

結論
慢性心不全に対するロスバスタチン10mg/日の投与は安全だが、臨床的なアウトカムには影響がない。

◯この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全
I:ロスバスタチン10mg/日の内服(ロスバスタチン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:死亡、死亡と心血管イベントによる入院のco-primary endpoint

inclusion criteria:18歳以上、LVEF<40%、LVEF>40%で過去に1回以上うっ血性心不全による入院歴がある事
exclusion criteria:使用する薬剤に対する禁忌、悪性腫瘍などの併存疾患、ランダム化1ヶ月以内の治験薬の投与、ACS、1ヶ月以内の血行再建、ランダム化後3ヶ月以内に予定された心臓手術、Cr>2.5mg/dl、AST/ALTが正常上限の1.5倍以上、妊婦、授乳婦、妊娠する可能性がある女性

◯ランダム化されているか
隠匿化されたcomputed telephone randomization systemによってランダム化を行う。

◯baselineは同等か
どこに群間差があるかわからない。tableにも本文にも記載なし。
characteristics

◯症例数は十分か
プラセボ群で3年間でイベント発生が25%あり、ロスバスタチンにより15%のリスク低下すると仮定し、power90%として、1252例のイベント発生が必要と算出されている。

◯盲検化されているか
患者、治療介入者、outcome評価者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
不適切なインフォームドコンセントなどがあった57/4631例を除き、ITT解析が行なわれている。

◯結果
フォローアップ期間は3.9年(中央値)。
試験終了時に割り付けられた治療を行っていなかった症例が、ロスバスタチン群で790例(35%)、プラセボ群で831例(36%)あった。
result

◯感想/批判的吟味
primary endpointで有意差がないが、必要なイベント発生数は超えているので、スタチンは心不全の生命予後に本当に寄与しないのだろう。

無作為化比較試験だが、baselineで群間差が生じてしまっており、多変量解析が行なわれている。

GISSI-HF試験 n−3PUFAの予後改善効果

Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2008 Oct 4;372(9645):1223-30

《要約》
背景
いくつかの疫学的実験的試験では、n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)がアテローム血栓性冠動脈疾患や不整脈に対し良い効果を与える事が示されている。n−3PUFAが症候性心不全患者の罹病率や死亡率を改善する事ができるか検証した。

方法
イタリア国内31施設で、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行った。原因やLVEFにかかわらず、NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者をn−3PUFA1g/日投与群(N=3439)とプラセボ投与群(N=3481)に無作為に割り付けた。割り付けは隠匿化され、コンピュータ化された電話無作為化システムによって行なわれた。患者は中央値3.9年までフォローアップされた。主要評価項目は全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院である。ITT解析を行った。

結果
無作為化したすべての患者を解析した。n−3PUFA群で955例(27%)、プラセボ群で1014例(29%)が死亡した(adjusted HR:0.92[95%CI:0.849−0.998])。死亡に対するNNTは56、死亡と心血管イベントによる入院に対するNNTは44であった。両群で、胃腸障害が最も高頻度の有害事象であった(n−3PUFA群96例[3%]、プラセボ群92例[3%])。

結論
n-3脂肪酸による簡便で安全な治療が、慢性心不全の全死亡や心血管イベントによる入院をわずかに抑える。

◯この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ−Ⅲの慢性心不全
I:n−3PUFA850−882mg(EPA:DHA=1:1.2)の投与(n−3PUFA群)
C:プラセボの投与(プラセボ群)
O:死亡、死亡と心血管イベントによる入院のco-primary endpoint

inclusion criteria:18歳以上、LVEF>40%なら過去に心不全の入院歴があること
exclusion criteria:n−3PUFAに対する禁忌、悪性腫瘍などの併存疾患、ランダム化1ヶ月以内の治験薬の投与、ACS、1ヶ月以内の血行再建、ランダム化後3ヶ月以内に予定された心臓手術、重大な肝疾患、妊婦、授乳婦、妊娠する可能性がある女性

◯ランダム化されているか
隠匿化されたcomputed telephone randomization systemによってランダム化を行う。

◯baselineは同等か
どこに統計学的な群間差があるかわからない。表にも本文にも記載がない。
characteristics

◯症例数は十分か
3年間のフォローアップで、プラセボ群で25%の死亡率であり、n−3PUFAにより3.75%の絶対リスク低下があると仮定。αlevel0.045、power90%として、サンプルサイズが算出されているが、いくつかは記載がない。

◯盲検化されているか
double blind。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
不適切なインフォームドコンセントなどのため71/7046例が除外されている。

◯結果
フォローアップ期間3.9年(中央値)。
n−3PUFA群で1004例(29%)、プラセボ群で1029例(30%)で割り付けられた治療を中断していた。
result
(table,figureはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
無作為化比較試験なのに群間差があり、Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析が行なわれている。これはコホート研究ではないか。