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カテーテル挿入時・ドレッシング交換時の消毒は、ポビドンヨードより0.5%以上のクロルヘキシジンアルコールで

カテーテル挿入時の消毒は、ポビドンヨード (PVI) より2%クロルヘキシジン (CHG) の方が、カテーテル関連血流感染 (CRBSI) を減らすことができる(1)。ただ、日本ではCHGは、0.5%か1%のものしかなく、この結果をそのまま適応できるかは疑問があった。

IDSAのガイドラインでは、ヨードチンキより0.5%以上のCHGで消毒するよう推奨されており、CDCガイドラインでも0.5%以上のCHGの使用が推奨されている(2-3)。下の論文の著者によると、0.5%CHG、1%CHG、10%PVIの有効性を検証した臨床試験は今までなかったらしい。

Comparison of the efficacy of three topical antiseptic solutions for the prevention of catheter colonization: a multicenter randomized controlled study
Crit Care. 2017 Dec 21;21(1):320.

0.5%CHGと1%CHGは、10%PVIよりもカテーテルコロナイゼーションを減らせるか検証したRCT。CRBSIは発生率が低いので、カテーテルコロナイゼーションをサロゲートエンドポイントとしている。

【PICO】
P:CVカテーテルと動脈カテーテルを留置した患者
I/C:0.5%CHG、1%CHG、10%PVIによる消毒 (カテ挿入時とドレッシング交換時)
O:カテーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション
secondary outcome:CRBSI

カテーテルコロナゼーションの定義:roll plate法で培養し24時間後のコロニーが15CFU以上。sonication法では、それぞれの施設の検査室基準で。
CRBSIの定義:血液培養は末梢静脈とカテーテルからそれぞれ1セット以上採取する。1) 末梢静脈から培養された菌とカテ先培養で検出された菌が合致した場合。2) 末梢静脈とカテーテルから採取した血液培養で菌が合致した場合 (または血液培養陽性化までの時間差)。3) 2つのカテーテルルーメンから血培を採取した場合は、一方のコロニー数が他方の3倍以上であれば、たぶんそう。

inclusion criteria:18歳以上
exclusion criteria:ICU入室前のカテーテル挿入、中心静脈栄養や化学療法のため7日以上留置する患者、いずれかの消毒にアレルギーがある患者

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:日本 16施設
登録期間:2012年12月1日〜2014年3月31日
観察期間:カテーテル挿入から抜去まで (中央値3.8日)
症例数:1132例 (0.5%クロルヘキシジン群377例、1%クロルヘキシジン群387例、10%ポビドンヨード群368例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり (丸石製薬、吉田製薬)

【患者背景】
3群とも有意差なし。年齢66歳、男性63%、SOFA7.2点、免疫不全5%、ステロイド11%、糖尿病19%、AKI30%、CKD17%、内科系81%、手術症例19%、カテーテル留置前の感染56%、感染源 肺24%、腹部11%、尿路5%、カテーテル留置前の抗菌薬投与55%、CV35%、Aライン65%、内頸静脈93%、鎖骨下静脈4%、大腿静脈3%、留置期間3.8日、カテ培養 maki法83%、sonication法17%。

【結果】
0.5%CHG vs 1%CHG vs 10%PVI
テーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション (primary outcome)
3.7 vs 3.9 vs 10.5 /1000カテーテル日 P=0.03

CRBSI (secondary endpoint)
3.0 vs 2.0 vs 4.9 /1000カテーテル日 P=0.41

CRBSIは3群で有意差はないが、カテーテルコロナイゼーションは0.5%CHGと10%PVI、1%CHGと10%PVIの間で有意差あり (HRはそれぞれ0.33、0.35)。

【まとめと感想】
カテーテルコロナイゼーションは、10%PVIより0.5%CHGと1%CHGで低かった。CRBSIについてはパワー不足なので統計学的な差はなかったが、0.5%CHGと1%CHGで低い傾向は見て取れた。

(1) Lancet. 2015;386(10008):2069-2077
(2) http://www.idsociety.org/Guidelines/Patient_Care/IDSA_Practice_Guidelines/Other_Guidelines/Other/Management_of_Catheter-Related_Infections/
(3) https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/bsi/index.html

潜在性甲状腺機能異常と心疾患

Subclinical thyroid dysfunction and cardiovascular diseases: 2016 update.
Eur Heart J. 2018 Feb 14;39(7):503-507.

甲状腺機能低下
・潜在性甲状腺機能低下症=TSHが正常上限以上でFT4が正常範囲
・高齢者の10%、女性に多い
冠動脈疾患、心不全、脳梗塞と関連あり。
・TSHの範囲・上限については議論あり。
TSHは年齢とともに低下するが、年齢調整したカットオフ値は標準化していない
・甲状腺機能低下症は次のような異常をきたす。リズムの異常 (徐脈や房室ブロック)、心筋の異常 (収縮能低下、拡張能低下、LVEDV増加、肺高血圧、心嚢水)、血管内皮障害と低血圧。
・よりTSHが高い甲状腺機能低下症で、異常を認めやすく、特に拡張障害が起きやすい。
・65歳以上でTSH≧10mIU/Lの症例3044例を観察したCardiovascular Health Studyでは、peak E velocityが0.80m/sとTSHが正常範囲の群よりも有意に高かった (0.72m/s, P=0.002)。
・潜在性甲状腺機能低下症は心血管死のリスクである。
 TSH:4.5-6.9mIU/L → HR:1.09 (95%CI:0.91-1.30)
 TSH:7.0-9.9mIU/L → HR:1.42 (95%CI:1.03-1.95)
 TSH>10mIU/L → HR:1.58 (95%CI:1.10-2.27)
・ただし、全死亡は増やさない。
・高いTSH (TSH:10-19.9mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.89, 95%CI1.23-2.80)。
・潜在生甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充が、心機能を改善させたという小規模のデータがあるが、limitationは多い。
・甲状腺機能が正常化すると、頸動脈IMTが薄くなり、LDLが下がる。

甲状腺機能亢進
・潜在性甲状腺機能亢進症=TSHが低下or検出できない、FT3とFT4が正常範囲
心房性・心室性期外収縮、AF、心血管疾患と関連あり。
・潜在性甲状腺機能低下症は、次のようなリスクがある。
 全死亡 HR:1.24 (95%CI:1.06-1.46)
 心血管死 HR:1.29 (95%CI:1.02-1.62)
 心房細動 HR:1.68 (95%CI:1.16-2.43)
・低いTSH (TSH<0.1mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.94, 95%CI:1.01-3.72)。

甲状腺機能のスクリーニング
・甲状腺疾患の既往、視床下部・下垂体機能異常、自己免疫疾患の既往がある場合は、TSHのモニタリングが有用。
脂質異常、低Na血症、原因不明のCK上昇、貧血、甲状腺機能に影響を与える薬剤の使用などでは、TSHの検査が有用。
・ACPでは、50歳以上の女性では定期的な検査を推奨している。
・ATAとAACEでは、60歳以上でTSHの測定を推奨している。

治療
・甲状腺ホルモン補充の閾値は、観察研究と短期間の臨床試験に基づく。
・ATAとAACEでは、TSH≧10mIU/Lで甲状腺ホルモンの補充を推奨しており、TSH<10mIU/Lではリスクなどを勘案し個々に判断するとしている。
・議論が分かれるところであるが、心血管疾患では早期の治療が有用かもしれない。
・高齢者では特に、過剰な治療が行われやすく、心不全増悪や不整脈のリスクになる。
・ATAとAACEでは、TSH<0.1mIU/Lで、不整脈を有する症例、骨粗鬆症の既往やリスクがある閉経後の女性に対する治療はリーズナブルとしている。

痛風の治療は、心血管疾患予防のためにプロベネシドがよい?

日本で使える尿酸降下薬は、尿酸生成抑制薬はアロプリノールとフェブキソスタットの2種類、尿酸排泄促進薬はプロベネシド、ベンズブロマロン、ブコロームの3種類。

先発品の商品名は
アロプリノール:ザイロリック
フェブキソスタット:フェブリク
プロベネシド:ベネシット
ベンズブロマロン:ユリノーム
ブコローム:パラミジン

プロベネシドとベンズブロマロンは、近位尿細管のURAT1に作用し、尿酸の再吸収を抑制することで尿酸排泄を促す。ベンズブロマロンの方が尿酸排泄作用が強い。アロプリノールとフェブキソスタットは、プリン体代謝の最終段階に作用するキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸の生成を抑える。

尿酸排泄促進薬は尿酸排泄低下型に用いる。尿アルカリ化薬を併用し、尿路結石の既往やCKDG4以上の腎障害には、尿酸促進薬ではなく尿酸産生抑制薬を用いる。尿酸産生過剰型に対しては尿酸生成抑制薬を用いる。

痛風患者では、心筋梗塞、脳梗塞、心不全などの心血管イベントリスクが高いが、これが因果関係なのかどうかはわかっていない。アロプリノールは、EXACT-HF試験で有意差はなかったものの心不全を減少させ、いくつかの観察研究では心血管疾患リスクの減少が示されている。プロベネシドの心血管疾患に対する効果は定かではない

Cardiovascular Risks of Probenecid Versus Allopurinol in Older Patients With Gout.
J Am Coll Cardiol. 2018 Mar 6;71(9):994-1004

【PECO】
P:65歳以上の痛風患者
E/C:プロベネシドとアロプリノール
O:心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞による入院)

secondary endpoint:心筋梗塞、脳梗塞、冠血行再建、心不全、死亡率

inclusion criteria:プロベネシドまたはアロプリノールの新規処方
exclusion criteria:過去1年以内にいずれかの薬剤が処方されている場合、両方の薬剤が処方されている場合、末期腎不全、透析

【デザイン、セッティング】
・メディケアのデータ
・後ろ向きコホート
・38888例(プロベネシド:9722例、アロプリノール:29166例)
・プロペンシティスコアマッチ

【結果】
プロベネシドvsアロプリノール(100人年) As-treated analysis

心筋梗塞・脳梗塞による入院
2.36 vs 2.83 HR:0.80(95%CI:0.69-0.93)

心筋梗塞
1.40 vs 1.64 HR:0.81(95%CI:0.67−0.99)

脳梗塞
0.96 vs 1.27 HR:0.72(0.57−0.90)

全死亡
2.91 vs 3.25 HR:0.87(95%CI:0.76−1.00)

【まとめと感想】
CANTOS試験でIL-1β阻害薬であるカナキヌマブが心筋梗塞を減らしたが、プロベネシドもIL-1βを減らす作用があるかもしれず、そういった抗炎症効果によりアロプリノールより心血管イベントが抑えられたのかもしれない。

心血管疾患がある痛風患者ではフェブキソスタットよりアロプリノール

Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout.
N Engl J Med. 2018;378(13):1200-1210.

【PICO】
P:痛風+心血管疾患で尿酸≧7.0mg/dl(もしくは、尿酸≧6.0mg/dlで痛風のコントロール不良)
I:フェブキソスタット
C:アロプリノール
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による緊急血行再建

心血管疾患:心筋梗塞、不安定狭心症による入院、脳梗塞、TIAによる入院、PAD、微小血管障害もしくは大血管障害を有する糖尿病

【試験の概要】
デザイン:RCT(多施設、二重盲検、非劣性)
地域:北米
登録期間:2010年4月〜2017年5月
観察期間:32ヶ月(中央値)
症例数:6190例(フェブキソスタット群:6098例、アロプリノール群:3092例)
解析:mITT解析(いずれの薬剤も内服しなかった8例を除外)
スポンサー:企業の関与あり(Takeda Pharmaceuticals)。試験デザイン・データ収集・解析まで。

【患者背景】
年齢65歳、男性84%、痛風罹患歴11年、白人70%・黒人18%・アジア人3%、OMI40%、CKDはstage1+2とsatage3が半々

【結果】
フェブキソスタット群vsアロプリノール群
primary endpoint
10.8% vs 10.4%、HR:1.03(95%CI:0.87-1.23)

中身をみると、心筋梗塞・脳梗塞・TIAには差がないが
心血管死
4.3% vs 3.2%、HR:1.34(95%CI:1.03−1.73)

全死亡
7.8% vs 6.4%、HR:1.22(95%CI:1.02−1.47)

感度分析(割り付けられた治療薬内服中+中断30日後までを解析に含める)では、全死亡で差がなくなるが、心血管死のみ差が残る。
心血管死
2.0% vs 1.3%、HR:1.49(95%CI:1.01−2.22)

【まとめと感想】
心血管疾患の既往がある痛風患者では、フェブキソスタットとアロプリノールで、心筋梗塞や脳梗塞の発症に差はないが、心血管死・全死亡がフェブキソスタットで有意に多かった。ただ、これは、心血管イベントがアロプリノールによって抑えられたのが、フェブキソスタットによって増えてしまったのかはわからない。

心筋梗塞に痛風を合併している症例はあまりお目にかからないが、無症候性高尿酸血症に使うとしても、アロプリノールがベターか。

糖尿病を合併した多枝病変 急性冠症候群でも血行再建はCABGが望ましい

Surgical Versus Percutaneous Coronary Revascularization in Patients With Diabetes and Acute Coronary Syndromes.
J Am Coll Cardiol. 2017;70(24):2995-3006.

◇PECO
P:糖尿病を合併した多枝病変のACS
E:CABG
C:PCI
O:血行再建30日時点と、31日-5年時点でのMACCE(全死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)

exclusion criteria:LM病変、弁手術の既往、72時間以内のSTEMI、6ヶ月以内のDABG/PCIや脳梗塞

<デザイン、セッティング>
・後向きコホート
・Cardiac Services British Columbiaのレジストリ
・ACS3017例、SIHD1802例
・長期フォローアップは、3.3年(IQR:1.8−4.9年)
・COX比例ハザードモデル、感度分析はpropensity score model

<結果>
血行再建30日時点では、死亡率に差はないものの、MACCE全体ではCABGがよかった。また、血行再建31日−5年時点では、30日時点でPCIの方が少なかった脳梗塞は差がなくなり、死亡率・心筋梗塞はCABGで有意に少なかった。



(いずれも本文から引用)

◇まとめと感想
FREEDOM試験で示されたように、糖尿病を合併した冠動脈多枝病変は、PCIよりCABGで死亡率・MIが減少する。この研究は、急性冠症候群を対象とした場合でも同様の結果が示されるのかについて検証したものである。

長期のデータは、FREEDOM試験と同様、死亡率と心筋梗塞がCABG群で低く、然もありなんという感じ。ただ、MIが血行再建30日時点でCABG群で低いというのはどうなのか。PCIよりtype5のMIが増えそうだけど。

造影剤腎症予防に炭酸水素ナトリウムは生食以上の効果はなく、NACは効果なし

Outcomes after Angiography with Sodium Bicarbonate and Acetylcysteine
N Engl J Med. 2017 Nov 12. doi: 10.1056/NEJMoa1710933. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
炭酸水素ナトリウムとアセチルシステイン(NAC)は、有効性が十分確認されていないが、臨床では造影剤腎症の予防として使用されている。炭酸水素ナトリウムとNACに、生食を上回る効果があるのか。

◇PICO
P:CKDがあり、血管造影が行われる患者
I/C:炭酸水素ナトリウムvs生食、NACvsプラセボ
O:死亡、透析、90日時点での血清Crの50%以上の上昇

炭酸水素ナトリウムと生食は、造影1-12時間前に1−3ml/kg/hの速度でtotal3−12ml/kg投与する。造影中は1−1.5ml/kg/hとし、造影後は1−3ml/kg/hで2−12時間続ける。

NACは造影1時間前と1時間後に1200mgずつ内服。その後4日間、1200mg/回、2回/日で内服する。

inclusion criteria:eGFR15−44.9ml/min/1.73m2、DM+eGFR45−59.9ml/min/1.73m2
exclusion criteria:緊急血管造影

◇試験の概要
デザイン:RCT(2×2 factorial design, double blind, placebo control)
地域:米国
登録期間:2013年2月〜2017年3月
観察期間:90日
症例数:5177例(炭酸水素ナトリウム群)
解析:mITT解析(4993/5177例、96.4%)
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
4群に患者背景の差はない。
だいたい、体重:98±22kg、eGFR:50(IQR:41−59)、造影剤使用量:85(IQR:55−135)。

▶︎primary endpoint
炭酸水素ナトリウムvs生食
  4.4%vs4.7%(OR0.93、95%CI0.72−1.22)

NACvsプラセボ
  4.6%vs4.5%(OR1.02、95%CI0.78-1.33)
  

▶︎CINの発生
炭酸水素ナトリウムvs生食
  9.5%vs8.3%(OR1.16、95%CI0.96−1.41)

NACvsプラセボ
  9.1%vs8.7%(OR1.06、95%CI0.87-1.28)

中間解析で、有効性を認めなかったため試験は早期に中止となった。

◇まとめと感想
eGFR15−49.9、DM+eGFR45−59.9という造影剤腎症ハイリスクを対象とし、炭酸水素ナトリウムとNACの有効性を検証した試験。炭酸水素ナトリウムに生食を上回る効果はなく、造影剤腎症の発生にも差はなかった。またNACは役に立たないという結果だった。

造影剤腎症の予防は、生食でよい。

HFpEF 腹部肥満は全死亡増加のリスク

Abdominal Obesity Is Associated With an Increased Risk of All-Cause Mortality in Patients With HFpEF
J Am Coll Cardiol. 2017;70(22):2739-2749.

◇PECO
P:HFpEF
E/C:腹部肥満の有無(腹囲 男性≧102cm、女性≧88cm)
O:全死亡

<デザイン、セッティング>
・HFpEFに対するスピロノラクトンの効果を検証したTOPCAT試験のサブ解析
・3345例 うち135例でデータの欠落
・観察期間:3.4±1.7年
・COX比例ハザードモデル

<結果>

年齢、性、肥満、糖尿病、虚血性心疾患、心房細動、スピロノラクトンの内服、NYHA分類のサブグループでも一貫して、腹部肥満は全死亡増加のリスク。

◇まとめと感想
腹部肥満のHFpEFは、腹部肥満がないHFpEFより予後が悪い。

腹部肥満による炎症、後負荷増大、高血圧、左室肥大などの影響でしょうか。男性≧102cm、女性≧88cmの腹囲って、かなりの肥満。痩せてもらった方がいいですね。

高齢者の心血管疾患一次予防のためスタチン

Effect of Statin Treatment vs Usual Care on Primary Cardiovascular Prevention Among Older Adults: The ALLHAT-LLT Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2017 Jul 1;177(7):955-965.

◇この論文のPECOは?
P:75歳以上の高齢者で、冠動脈疾患の既往のない高血圧患者
E:新規のプラバスタチンの内服
C:通常治療
O:全死亡

secondary outcome:死因が明確な死亡、心血管疾患イベント(非致死的心筋梗塞、致死的心血管疾患)

<デザイン、セッティング>
・ALTTHAT-LLT試験のpost hoc解析
・北米 513施設
・2867例(プラバスタチン1467例、通常治療1400例)
・平均観察期間:プラバスタチン4.63年、通常治療4.77年
・COX比例ハザードモデル

<患者背景>

(本文から引用)

<結果>

(本文から引用)

有意差はないが、全死亡や冠動脈疾患死など増える傾向に傾いている。

◇感想
高齢者へスタチンの使用は、冠動脈疾患を減少させる可能性があるが、全死亡の減少とまでは至らない(1)。それは、高齢者では横紋筋融解症が起こりやすいこと、転倒リスク、認知機能の悪化などさまざまな負の影響があるからだと推測される。

これはALLHAT-LLT試験のpost hoc解析だが、いままでの報告同様、全死亡を減少させる効果はなかった。

冠動脈疾患のリスクが高い欧米人でこのデータなので、よりリスクの低い日本人では、まずメリットはなさそう。処方するなら、negative effectについても十分考えてから。

(1)N Engl J Med. 2016 May 26;374(21):2021-31.

潜在性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法に症状改善効果なし

Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism.
N Engl J Med. 2017 Apr 3. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
潜在性甲状腺機能低下症に対し、レボチロキシンを使用するかは議論が分かれる。我々は、高齢者の潜在性甲状腺機能低下症において、レボチロキシンの臨床的効果があるか調べた。

方法
二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験に、潜在性甲状腺機能低下症(fT4が正常範囲で、TSH:4.60−19.99mIU/L)を有する65歳以上の高齢者737例を組み入れた。レボチロキシン群に368例、プラセボ群に369例を割り付けた。レボチロキシン開始量は50μg/日とし、体重50kg未満や心血管疾患を有する場合は25μgから開始し、TSH値に応じて容量調整する。primary endpointは、Hypothyroid Symptoms scoreとTiredness score on a thyroid-related quality-of-life questionnaireの1年後の変化である(いずれも症状に基づくスコア評価)。

結果
平均年齢74.4歳、396例(53.7%)が女性であった。baselineの平均TSH値:6.40±2.01mIU/Lで、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/L、レボチロキシン群で3.63mIU/Lであった(P<0.001)。レボチロキシン投与量の中央値は50μgであった。Hypothyroid Symptoms scoreは、プラセボ群:0.2±15.3、レボチロキシン群:0.2±14.4、Tiredness scoreは、プラセボ群:3.2±17.7、レボチロキシン群3.8±18.4と、いずれも有意差はなかった。secondary outcomeでもレボチロキシンの効果は認めなかった。重大な有害事象にも有意差はなかった。

結論
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症において、レボチロキシンはベネフィットがなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:65歳以上の潜在性甲状腺機能低下症
I:レボチロキシンの内服
C:プラセボの内服
O:Hypothyroid Symptoms scoreとTiredness scoreの1年後の変化

inclusion criteria:過去3ヶ月〜3年の間で2回以上TSH:4.60−19.99mIU/Lであること、fT4は正常範囲
exclusion criteria:レボチロキシン・抗甲状腺薬・アミオダロン・リチウムの内服、12ヶ月以内の甲状腺手術やアイソトープ治療

◇baselineは同等か
同等。

(本文から引用)

◇試験の概要
地域:イギリス
登録期間:不明
観察期間:12ヶ月
無作為化:国、性別、開始容量で層別化。ブロックランダム化。
盲検化:二重盲検
必要症例数:750例(プラセボとの差がHypothyroid Symptoms score:3ポイント、Tiredness score:4.1ポイント、power80%、αlevel0.05)、540例(プラセボとの差がHypothyroid Symptoms score:3.5ポイント、Tiredness score:4.9ポイント、power80%、αlevel0.05)
症例数:637例(レボチロキシン群368例、プラセボ群369例)
追跡率:レボチロキシン群:86.4%、プラセボ群:86.7%
解析:mITT解析
スポンサー:レボチロキシンとプラセボはMerk社が提供。

◇結果

(本文から引用)

(本文から引用)

心血管イベントにも差がない。

◇批判的吟味
潜在性甲状腺機能低下症に対してレボチロキシンを投与しても、症状や握力、認知機能などに変化はない。なので、特に心血管疾患の既往のない方では、投薬なしに経過観察してよいだろう。

ただ、心血管疾患の既往がある方では慎重に考えた方がいいかもしれない。甲状腺機能低下症は、拡張期血圧を上昇させ、脂質代謝の面ではLDLコレステロールや中性脂肪を上昇させる。なので、1年間では差がなかったが長期的には心血管系へのリスクになりえるかもしれない。

個人的には、血圧や脂質がコントロールされていれば、潜在性甲状腺機能低下症(TSHが高くなっているというだけで)に対しあえて投薬をしなくてもよいと思う。

◇感想
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法は、症状・認知機能・握力などに影響をおよぼさない。心血管イベントに関しては、より長期の観察が望まれる。

急性心膜炎の診断と治療 システマティックレビュー

Evaluation and Treatment of PericarditisA Systematic Review
JAMA. 2015;314(14):1498-1506.

◇疫学
欧米では80−90%が特発性とされていて、多くがウイルスによるもの。
悪性腫瘍5−10%、全身性炎症疾患または外傷2−7%、結核性4%、化膿性<1%
発展途上国では、結核性が多く予後が悪い。6ヶ月死亡率はHIVなしで25%、HIVありだと40%。

◇臨床所見
鋭い胸痛。座位や前傾で軽快する。
心膜摩擦音は1/3で聴取。
心嚢液貯留(約60%で認める)
予後因子:>38℃の発熱、亜急性、高度心嚢液貯留(>20mm)、心タンポナーデ、NSAID無効
上記の所見があれば、入院が必要。


心電図では、広範囲なST上昇(>60%で認める)と、PR低下が特徴的。

◇診断
・診断基準

心嚢穿刺の適応は、高度な心嚢液貯留(>20mm)、心タンポナーデ、内科的治療抵抗性、細菌性や悪性腫瘍が疑われる場合。

◇特発性、ウイルス性、免疫介在性心膜炎の治療
・アスピリン、またはNSAIDs(イブプロフェン、インドメタシン)
内科的治療の中心
治療効果は、解熱、胸痛や心膜摩擦音の消失

・コルチコステロイド
以前は、第一選択と考えられていたが、罹患期間の延長や再発が多いことなど有害事象が多いことが明らかになった。
高容量プレドニゾン(1mg/kg/day)と低容量〜中等量プレドニゾン(0.2−0.5mg/kg/day)を比較した研究では、高容量プレドニゾンで重大な有害事象、再発、入院が有意に多かった(ハザード比3.61、95%CI:1.96−6.63)。

・コルヒチン
急性心膜炎、再発性心膜炎のいずれでも、NSAIDsにコルヒチンを併用することで、1週間後の寛解率が上昇し、再発が減少する(エビデンスレベルA)。
コルヒチンの最も多い有害事象は消化管症状で、特に下痢である(7−10%)。
投与量は体重で調整(>70kgなら0.5mgを1日2回、≦70kgなら0.5mgを1回)

・コルヒチンによる治療後の再発
確立された治療はない。
アザチオプリンや免疫グロブリン静注が試みられているがエビデンスは不十分。

◇予後
病態により異なる。
収縮性心膜炎は、以下のような確率で起こる。
 特発性、ウイルス性で0.76/1000人年
 膠原病、外傷で4.40/1000人年
 悪性腫瘍で6.33/1000人年
 結核性で31.65/1000人年
 細菌性で52.74/1000人年

心膜炎に心筋炎が合併するのは20−30%。
トロポニンが上昇する。
心膜心筋炎389例、31ヶ月の観察では、3.5%で左室機能低下が残存したが、心不全はゼロ。13.0%で再発したが、その90%以上が心膜炎のみの再発で、心タンポナーデや収縮性心膜炎は1%未満だった。
再発した特発性心膜炎の予後は良い(230例、61ヶ月の観察で、心タンポナーデ3.5%、収縮性心膜炎や左室機能低下はなかった)。