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【レビュー】分子標的治療の心血管毒性

Cardiovascular Toxic Effects of Targeted Cancer Therapies
N Engl J Med 2016; 375:1457-1467

悪性腫瘍治療による心血管合併症の歴史
アントラサイクリンと放射線治療が心血管合併症の原因ということが知られている。アントラサイクリンは容量依存的に心毒性を示す。放射線治療は、特に胸部の場合、心筋、弁、心外膜、冠動脈への毒性がある。

抗HER2抗体
抗HER2抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)は、HER2陽性乳癌の予後を改善した。しかし、ドキソルビシンやシクロホスファミドと併用した初期のデータでは、27%で症候性心不全や無症候性心機能障害を認めた。そのため、トラスツズマブ使用中は定期的な心機能評価が求められ、アントラサイクリンに続きトラスツズマブを使用する場合は、相乗的な心毒性を引き起こす可能性を念頭に置かなくてはならない。

トラスツズマブの心毒性についての認識が広がり、心機能がモニタリングされるようになったためか、現在では、症候性心不全は2−4%、心機能低下は3−19%と報告されている。

最近の臨床試験では、HER2陽性乳癌に対しパクリタキセルとトラスツズマブで治療した406例で、臨床的な心不全は2例(0.5%)、収縮不全は13例(3.2%)にしか起こらなかった。HER2陽性乳癌の10年間のフォローアップでは心機能低下は、パクリタキセル・シクロホスファミド・トラスツズマブを含んだレジメンに割り付けられた患者では9.4%、アントラサイクリンを含んだレジメンでは19.2%であった。

HER2を標的とした新しい治療が承認され、トラスツズマブとの併用も行われているが、その心毒性は十分明らかになっていない。

トラスツズマブの臨床試験では、心疾患や心不全が除外されているため、データベースから抽出したトラスツズマブに関連した心毒性は臨床試験のそれよりも多い。

アントラサイクリン使用後の心機能低下に対し、標準的な心不全治療を行うことでわずかな心機能改善が得られた報告もある。ただ、プラセボと比較していないため自然経過によるものかもしれない。トラスツズマブによる心筋症では、2/3で症状や心機能の改善を認めたが、1/3は心機能低下が持続した。

抗VEGF抗体
血管内皮増殖因子A(VEGFA)は腫瘍から分泌され、VEGF受容体に結合することで血管形成の重要な役割を果たす。抗VEGF抗体はいくつかの癌に対し、FDAから認可されている。抗VEGF抗体は、高血圧、血管毒性、心筋症など様々な心血管疾患との関連が報告されている。

ほぼすべての患者で、容量依存的で一過性に血圧が上昇する。ベバシズマブ(商品名:アバスチン)とスニチニブ(商品名:スーテント)は20−25%の血圧上昇が認められる。収縮期血圧と拡張期血圧のいずれにも影響がある。

VEGFは血管拡張物質であるNOとプロスタサイクリンを増加させ、エンドセリン1の産生を抑制する。VEGFは腎臓にも存在する。抗VEGF抗体が血管収縮を招き、糸球体機能を変化させることで、血圧が上昇するものと推測されている。

抗VEGF抗体は血管イベント(血栓症)と心筋症のリスクを増大させる。パゾパニブ(商品名:ヴォトリエント)とスニチニブは前向きのサーベイランスにおいて、9%で心機能が有意に低下し、1%で症候性心不全を認めた。

後ろ向きの研究では、27%で心血管毒性が認められ、血圧上昇を含めると心血管毒性が認められた症例は64%に上る。別の後ろ向きの研究ではスニチニブは心機能障害を28%で認め、うっ血性心不全になった症例は8%に上った。

チロシンキナーゼ阻害薬
イマチニブ(商品名:イレッサ)は最初のチロシンキナーゼ阻害薬である、慢性骨髄性白血病で活性化されるABL1キナーゼや、腸管間質腫瘍で活性化されるKITやPDGFRAを阻害することで、これらの悪性腫瘍を自然暦を変え、致死的な疾患から管理できる慢性疾患に変えた。CMLの5年生存率は90%を超えるようになった。

イマチニブ耐性となった患者に対し、新世代のチロシンキナーゼ阻害薬が開発され、first-lineの治療となった。

チロシンキナーゼ阻害薬も様々な心血管毒性があるが、イマチニブの心血管合併症は少ない。ダサチニブ(商品名:スプリセル)は肺高血圧と、ニロチニブ(商品名:タシグナ)とポナチニブ(商品名:アイクルシグ)は血管イベントと関連がある。

ポナチニブは血管イベントのため、米国の市場から消えた。

イブルチニブ(商品名:イムブルビカカプセル)はB細胞悪性腫瘍に対し効果が示されているが、3%に入院または侵襲的治療を要するgrade3以上の心房細動が出現する。イブルチニブの臨床試験では心毒性のスクリーニングがされていなかったので、その他の不整脈や無症候性心房細動が増えたかどうかは明らかではない。同様にトラメチニブ(商品名:メキニスト)は7%に心機能低下が報告されており、FDAから治療中は心臓のモニタリングを推奨されている。

その他
サリドマイドとレナリドミド(商品名:レブラミド)の2つの免疫調整薬は、静脈血栓塞栓症のリスクが高く、特に高容量のデキサメサゾンと併用するとリスクは増大する。免疫調整薬は動脈イベントとも関連があり、多発性骨髄腫に対するレナリドミドと高容量のデキサメサゾンの併用は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを増大させる。リスクの高い患者では、予防的抗凝固療法が勧められる。

カルフィルゾミブ(商品名:カイプロリス)は多発性骨髄腫に対し高い有効性があるが、静脈心血管合併症のリスクは高い。カルフィルゾミブ+レナリドミド+高容量デキサメサゾンとレナリドミド+高容量デキサメサゾンの有効性を比較した最近の臨床試験では、カルフィゾミブ群で心血管合併症(心不全、虚血性心疾患、静脈血栓塞栓症、高血圧症)が多かった。

免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体では、中止後に自己免疫性心筋炎を起こした症例が報告されており、マウスでは薬剤の中止後に心筋症と突然死を起こすことが報告されている。また、他剤との併用時の心血管における安全性は明らかではない。

cardiovascular-toxic-effect1
cardiovascular-toxic-effect2

PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ®︎)のLDLコレステロール低下効果

Efficacy and Tolerability of Evolocumab vs Ezetimibe in Patients With Muscle-Related Statin IntoleranceThe GAUSS-3 Randomized Clinical Trial
JAMA. 2016;315(15):1580-1590.

《要約》
重要性
筋肉に関連したスタチンの不耐性は5−20%で起こることが報告されている。

目的
スタチンの再導入により、筋肉の症状を訴える患者を同定することと、非スタチン療法であるエゼチミブとエボロクマブの脂質降下の効果を比較すること。

デザイン、セッティング、患者
LDLコレステロールのコントロールが不十分で、2つ以上のスタチンが不耐性である患者511例に対し、2段階の無作為化試験を行った。登録期間は2013年から2014年である。phaseAは、24週のクロスオーバー試験で、アトルバスタチンとプラセボを用い、アトルバスタチンのみで筋肉の症状がでること確認する。phaseBでは、phaseAから2週間のウォッシュアウト期間を設け、エゼチミブとエボロクマブに割り付け、24週間内服する。

介入
phaseA:アトルバスタチンとプラセボ
phaseB:エボログマブ420mg皮下注とエゼチミブ10mgに2:1に無作為化する。

アウトカム
LDLコレステロールの変化率。ベースラインから22と24週の平均値、ベースラインから24週のcoprimary endpointである。

結果
phaseAに入った491例で、平均年齢60.7±10.2歳、女性246例、冠動脈疾患170例、平均LDLコレステロール212.3±67.9mg/dlであった。筋肉の症状がプラセボではみられずアトルバスタチンでみられたのは209(42.6%)例であった。これらの症例のうち199例と、CKが上昇した19例の218例がphaseBに入り、エゼチミブ群に73例、エボロクマブ群に145例、無作為に割り付けられた。平均LDLコレステロールは219.9±72mg/dlであった。エゼチミブ群では、22週と24週でのLDLコレステロールの平均値は183.0mg/dl、平均LDLコレステロール変化率は−16.7%(95%CI:-20.5%to-12.9%)、変化の絶対値は−31.0mg/dlであった。エボロクマブ群では、22週と24週でのLDLコレステロールの平均値は103.6mg/dl、平均LDLコレステロール変化率は−54.5%(95%CI:-57.2%to-51.8%)、変化の絶対値は−106.8mg/dlであった(P&;t;0.001)。エゼチミブ群では、24週でのLDLコレステロールの平均値は181.5mg/dl、平均LDLコレステロール変化率は−16.7%(95%CI:-20.8%to-12.5%)、変化の絶対値は−31.2mg/dlであった。エボロクマブ群では、24週でのLDLコレステロールの平均値は104.1mg/dl、平均LDLコレステロール変化率は−52.8%(95%CI:-55.8%to-49.8%)、変化の絶対値は−102.9mg/dlであった(P<0.001)。22週と24週でのLDLコレステロールの平均値の群間差は、変化の絶対値−37.8%、変化の絶対値−75.8mg/dlであった。24週でのLDLコレステロールの群間差は、変化の絶対値−36.1%、変化の絶対値−71.7mg/dlであった。筋肉の症状はエゼチミブ群で28.8%、エボロクマグ群で20.7%で認めた(log-rank P=0.17)。薬剤を中止したのは、エゼチミブ群で5/73例(6.8%)、エボロクマブ群で1/145例(0.7%)であった。

結論
筋肉に関連したスタチンの不耐性がある患者において、エボロクマブはエゼチミブと比較し、24週でのLDLコレステロール値が大きく減少した。長期の有効性と安全性の評価のため、さらなる試験が必要である。

◇この論文のPICOはなにか
P:筋肉の症状によりスタチン不耐性の患者
I/C:エゼチミブ10mg1日1回内服、エボロクマブ420mgを月に1回皮下注
O:LDLコレステロールの変化率(ベースラインから22と24週の平均値、ベースラインから24週)。

inclusion criteria:18−80歳、スタチン不耐性(アトルバスタチン10mgと他のスタチンをどの容量でも。または、3つのスタチンでいずれか1つは最低容量で、その他の2つのスタチンはどの容量でも。最低容量はロスバスタチン5mg、シンバスタチン10mg、プラバスタチン40mg、ロバスタチン20mg、フルバスタチン40mg、ピタバスタチン2mgとする。)、冠動脈疾患患者ではLDLコレステロールが100mg/dl以上であること、2つ以上のリスクがある非冠動脈疾患患者ではLDLコレステロールが130mg/dl以上、リスクが1つある非冠動脈疾患患者ではLDLコレステロールが160mg/dl以上、リスクがない非冠動脈疾患患者ではLDLコレステロールが190mg/dl以上

exclusion criteria:3ヶ月いないに以下の病歴があること。心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞。

◇baselineは同等か
LDLコレステロールは両群間で差がなく、220mg/dlぐらい。
characteristics

◇結果
地域:米国、英国、オランダなど複数の国で
登録期間:2013年12月10日〜2014年11月28日
観察期間:24週
無作為化:interactive web-basedまたはvoice recognition systemによる中央割り付け。
盲検化:open-label(phaseAは二重盲検)
必要症例数:phaseBで100例
症例数:phaseBで218例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業が関与(アムジェン社)

result

◇感想
副作用のためにスタチンが投与できない患者に対し、エゼチミブ(ゼチーア®︎)かエボロクマブ(レパーサ®︎)を投与し、LDLコレステロールの変化率をみた試験。エボロクマブがエゼチミブに比べ、有意にLDLコレステロールを低下させた。そうですよね、という結果。PCSK9阻害薬の心血管イベントや副作用などのデータは、これから出てくるはずなので、期待して待つ。

抗生剤の使用は、次に同一のベットを使用する患者のクロストリジウム・ディフィシル感染症のリスクを増やす

Receipt of Antibiotics in Hospitalized Patients and Risk for Clostridium difficile Infection in Subsequent Patients Who Occupy the Same Bed
JAMA Intern Med. Published online October 10, 2016.

《要約》
目的
患者が抗生剤の投与を受けた場合、同一ベットを次に使用した患者はクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)のリスクが増加するか検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
2010年から2015年に入院した成人患者を対象とした後ろ向きコホート研究である。CDIの再発、入院48時間以内に発症したCDI、不十分なフォローアップ期間、同一ベットの前の患者が24時間以内に転出した場合は除外した。

アウトカム
主要は暴露は、同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤の投与で、主要なアウトカムは同一ベットを次に使用した患者のCDIの発生率である。CDIの定義は、クロストリジウム・ディフィシル毒素B遺伝子に対する便ポリメラーゼ連鎖反応陽性である。

結果
同一ベットの連続使用患者は100615ペアで、そのうち576ペアでCDIを発症した。同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤の投与は、次に使用した患者のCDI発症と有意に関連があった(log-rank P<0.01)。その関連は、同一ベットを次に使用した患者に対する抗生剤投与を調整した後(adjustedHR1.22, 95%CI1.02-1.45)や、同一ベットを前に使用しCDI発症した患者1497例を除いた後(adjustedHR1.20, 95%CI1.01-1.43)も認められた。同一ベットを前に使用した患者と、次に使用した患者がCDIを発症することの関連は抗生剤の使用のみであった。

結論
抗生剤の投与は、同一ベットを次に使用した患者のCDIリスクの上昇と関連がある。抗生剤は、それを直接投与されていない患者に対しても影響があるかもしれない。

◇この論文のPICOは?
P:48時間以上入院した患者
E:同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤投与
O:CDIの発症

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向きコホート研究
・ニューヨークの4つの施設
・COX比例ハザードモデル
・100615例
・観察期間:2−14日

ベットを後に使用した患者のcharacteristics
characteristics1
高齢、アルブミン低値、入院日数の長期化、抗生剤の使用、血液透析、制酸薬の使用、免疫抑制状態が、その患者のCDIのリスクになる。

ベットを前に使用した患者のcharacteristics
characteristics2

◇結果
result
同一ベットの前の患者に対する抗生剤の投与が、後に使用した患者のCDIリスクを有意に上昇させている。

◇感想
抗生剤の投与がその患者のクロストリジウム・ディフィシルを増殖させ、環境も汚染してしまう。それにより、次にそのベットを使用した患者のCDIのリスクを増大させてしまうことの様です。つまり、抗生剤を適切に使用しなさいということでしょうか。

ω3脂肪酸による心筋梗塞後のリモデリング抑制 OMEGA-REMODEL試験

Effect of Omega-3 Acid Ethyl Esters on Left Ventricular Remodeling After Acute Myocardial InfarctionThe OMEGA-REMODEL Randomized Clinical Trial
Circulation. 2016;134:378-391

《要約》
背景
魚油のω−3脂肪酸は心血管への有益性が報告されているが、ガイドラインに準じた治療を行っている陳旧性心筋梗塞での心筋リモデリングの効果については明らかではない。

方法
急性心筋梗塞患者患者を、高容量ω−3脂肪酸またはプラセボを内服する2群に無作為に割り付けた。高容量ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例で、6ヶ月間内服を継続した多施設、二重盲検、プラセボ対象試験である。心臓の構造と心筋の性状を評価するため、baselineと治療終了後に心臓MRI検査を行った。主要評価項目は左室収縮末期容積指数(LVESVI)である。副次評価項目は非梗塞部位の線維化と左室駆出率(LVEF)と梗塞サイズである。

結果
ω−3脂肪酸によって、LVESVI(−5.8%、P=0.017)、非梗塞部位の線維化(−5.6%、P=0.026)は有意に低下した。per-protcol解析では、赤血球ω−3脂肪酸指数が高い群では、低い群よりLVESVIが13%低下した。加えて、ω−3脂肪酸群では、全身性及び血管性炎症バイオマーカーと心筋線維化が減少した。

結論
急性心筋梗塞患者がガイドラインに準じた照準的治療に加え、高容量ω−3脂肪酸を内服することで、LVESVI、非梗塞部位の線維化、炎症バイオマーカーが減少した。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞を発症した患者
I:EPA465mg+DHA375mgのカプセルを1日1回内服(ω−3脂肪酸群)
C:コーン油のカプセルを1日1回内服(プラセボ群)
O:6ヶ月後のLVESVI

inclusion criteria:21歳以上、症状が持続しトロポニンT>0.5ng/mlで造影で有意な冠動脈狭窄があること

exclusion criteria:心臓手術による二次的な心筋梗塞、生命予後1年未満、ω−3脂肪酸の適応である患者、妊娠、MRIの禁忌

◇baselineは同等か
characteristics1
characteristics2
この中だと、ω−3脂肪酸群でCABGの既往が有意に多い。βblockerとかACE阻害薬/ARBも同等。

characteristics-cmr
baselineのLVESVI・梗塞サイズに有意差なし。

◇結果
地域:米国、ボストン
登録期間:2008年1月〜2012年8月
観察期間:6ヶ月
無作為化:年齢(>70歳)と前壁梗塞でブロック化し、コンピュータによる無作為化を行った。
盲検化:二重盲検。ハードなエンドポイントなのでアウトカム評価者の盲検化の有無による影響はないと考えてよい。
必要症例数:記載なし
症例数:358例(ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例)
追跡率:ω−3脂肪酸群73.9%、プラセボ群71.9%
解析:ITT解析
スポンサー:ω−3脂肪酸、プラセボはいずれも企業から提供(Glaxo SmithKline)

result

◇批判的吟味
・追跡率が低い。
・魚油から作ったEPA製剤は匂いでわかるので、盲検化が難しい。
・サロゲートエンドポイントの改善

◇感想
GISSI-Prevenzione試験ではOMI患者にω−3脂肪酸を投与することにより突然死が有意に減少した(虚血イベントは減らなかった)。ただ、90年代の試験であり現在のガイドラインに準じた治療とは異なる部分があり(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が低い)、その結果を鵜呑みにすることには議論があった。そこで、2010年にOMEGA試験が行われ、現在のガイドに準じた治療を行っている患者群(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が高い)を対象に、心臓突然死をエンドポイントにしてω−3脂肪酸とプラセボで無作為化試験を行っているが、心臓突然死は減らずGISSI-Prevenzione試験の結果は否定された形となった。

2007年に行われたJELIS試験は、心筋梗塞の一次予防・二次予防患者を対象に、ω−3脂肪酸の効果を検証したRCTであるが、一次予防群ではプラセボと変わらず、二次予防群では有意差がついたものの、その中身をみてみると不安定狭心症のみを減らしたという結果であった。これはPROBE試験であり、その解釈は慎重にならざるを得ない。

そして、2010年にOMI二次予防目的でω−3脂肪酸の効果を検証したALPHA OMEGA試験が行われ、ω−3脂肪酸の使用量が多くなかったことが影響しているかもしれないが、OMI患者の心血管イベントは抑えられなかった(こちらはJELIS試験と違い心筋梗塞・脳梗塞などのハードエンドポイント)。心筋梗塞や死亡を減らさないという点では、ALPHA OMEGA試験もJELIS試験も一致してるのかもしれない。

という流れの中で、EPA+DHA製剤を急性心筋梗塞を発症したばかりの人に内服させると、6ヶ月後のLVESVIが改善するというOMEGA-REMODEL試験の結果。追跡率が低く無作為化が維持できていない可能性があるので、ちょっと微妙かなと思ってしまう。ただ、リモデリングが抑えられれば、心不全入院・心不全死も抑えられる可能性があるし、GISSI-HF試験でも心不全患者を対象に、少し良い結果だったので、今後臨床的なエンドポイントで検証してもらいたい。

COMMENT:ENSURE-AF試験

Do NOACs ENSURE safe cardioversion in atrial fibrillation?
Lancet. 2016 Aug 26.[Epub ahead of print]

電気的除細動後は血栓塞栓リスクが増大し、その多くは10日以内に起こる。抗凝固療法を行わず電気的除細動を行った場合の血栓塞栓症のリスクは10%で、抗凝固療法を行った場合は4%以下になる。そして、電気的除細動施行3週間前から施行後1ヶ月まで抗凝固療法を行うと、血栓塞栓症は1%未満まで低下する。

RCTのデータは、非弁膜症性心房細動の血栓塞栓症予防にNOACsを使用することを支持しているが、電気的除細動の際の有効性及び安全性は確認されていない。実際には、電気的除細動の1/3でNOACsが投与されており、またRCTのpost hoc解析で脳梗塞と出血イベントは1%未満と報告されているため、ACC/AHAのガイドラインではNOACsの使用はclass Ⅱaとなっている。

X-VeRT試験は、非弁膜症性心房細動の電気的除細動時にリバーロキサバンを使用した、最初の多施設前向きオープンラベル無作為化試験である。1504例をリバーロキサバン群とワルファリン群に割り付け、両群で脳梗塞が0.5%未満、出血が1%未満であった。

エドキサバンとエノキサパリンーワルファリンを比較したENSURE-AF試験は、多施設のオープンラベル試験で、エンドポイント判定者が盲検化されてある。コンプライアンス不良やロストフォローアップはほとんどなく、ワルファリンのTTRは70%以上であった。ENSURE-AF試験は最も大きいRCTであるが、イベント率が低いため、有効性と安全性を評価するのに十分なパワーがない。

TEEを行わず電気的除細動を行う場合は、3週間の抗凝固療法のアドヒアランスを確認することは必須である。

血行動態が不安定な患者に電気的除細動を行う場合や、心房細動発症から48時間以内の場合に、NOACsが安全に使用できるかは定かではない。

治療抵抗性VT/VFの院外心停止 アミオダロンやリドカインの有効性は示せず

Amiodarone, Lidocaine, or Placebo in Out-of-Hospital Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1711-22

《要約》
背景
抗不整脈薬は、ショック抵抗性の心室細動(VF)や脈なし心室頻拍(pulseless VT)を伴った院外心停止に対して用いられるが、生存利益は証明されていない。

方法
無作為化二重盲検試験で、アミオダロン、リドカイン、生理食塩水(生食)を比較した。対象は成人の院外心停止で、非外傷性のショック抵抗性VF、またはpulselessVT(少なくともショックを1回行った後)である。北米10施設の救急救命士が患者の登録を行う。主要評価項目は退院までの生存率、副次評価項目は退院時の良好な神経学的機能である。参加条件を満たし、試験で用いられる薬剤が使用され、初期波形がVFもしくはショック抵抗性のpulseless VTであった者を、per-protocol populationとする。

結果
per−protocol populationでは、アミオダロンに974例、リドカインに993例、プラセボに1059例の計3026例が登録され、退院時生存率はそれぞれ24.4%、23.7%、21.0%であった。生存率の相違は、アミオダロンとプラセボでは3.2ポイント(95%CI:−0.4 to 7.0)、リドカインとプラセボでは2.6ポイント(95%CI:−1.0 to 6.3)、アミオダロンとリドカインでは0.7ポイント(95%CI:−3.2 to 4.7)であった。退院時の神経学的アウトカムは三群で似通っていた。目撃者(witness)のある心停止で薬剤の効果が異なり、居合わせた人による心肺蘇生(bystander)とwitnessのある心停止では、アミオダロンとリドカインの生存率は有意に高かった。アミオダロン投与群では、他の群より一時的な心臓ペーシングが必要となる者がより多かった。

結論
全体では、ショック抵抗性のVFやpulseless VTの院外心停止では、アミオダロンもリドカインも生存率や退院時の神経学的アウトカムを改善しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:非外傷性の院外心停止でショック抵抗性のVF及びpulseless VT
I:アミオダロン、もしくはリドカインの投与
C:生食の投与
O:退院時の生存率

inclusion criteria:18歳以上、一回以上のショックでも持続するVFもしくはpulseless VT、再発性のVFもしくはpulseless VT
exclusion criteria:すでにオープンラベルでアミオダロンもしくはリドカインが投与された症例、アミオダロンとリドカインに対するアレルギーの既往

◯baselineは同等か
同等。witnessがあったのは、どの群も70%程度。bystanderによるPADショックは5−6%で、救急要請から救急隊現着まで5−6分と、日本と大きな差はないように思います。
characteristics1
characteristics2

◯結果
地域:米国
登録期間:2012年5月7日〜2015年10月25日
観察期間:心肺停止から退院まで
無作為化:施設で層別化され、ブロック法を用いて行われる
盲検化:患者、EMS、治療介入者は盲検化されている(使用される薬剤のキットも同一ものになっている)。
必要症例数:退院時生存率をアミオダロン群で29.7%、プラセボ群で23.4%と仮定。power90%、αlevel0.05として、必要症例数は3000例と算出されている。
症例数:3026例(アミオダロン群974例、リドカイン群993例、プラセボ群1059例)
追跡率:ITT populationから1/3がexcludeされた残りがper−protocol populationでうち99%が、解析されている(ITT populationからどのような理由でexcludeされ、per-protocol populationとしたかは知りたいところだが、Supplementary Appendix参照しろということで、詳細不明)。
解析:per−protocol解析(primary analysis)
スポンサー:the National Heart,Lung,and Blood Instituteなど。企業の関与はない。

result
witnessとbaystanderのある集団のサブグループ解析では、生存率は、アミオダロン群27.7%、リドカイン群27.8%、プラセボ群22.7%であった。全体的リスク差はアミオダロンとプラセボで5.0ポイント(95%CI:0.3−9.7)、リドカインとプラセボで5.2ポイント(95%CI:0.5−9.9)であった。

◯感想/批判的吟味
per−protocol解析でprimary outcomeに差なし。もちろんITTでも差はなかった。つまり、全体としてはアミオダロンやリドカインの投与は、生存率や神経学的予後に寄与しないということになる。

しかし、witnessとbaystanderのある集団を対象としたサブグループ解析では、アミオダロン群とリドカイン群で精鋭予後改善効果が認められる。promary outocomeに差がないので、サブグループ解析の結果をそのまま信頼してはいけないと思うが、ただ、witnessやbystanderがない症例で生命予後や神経学的予後が悪いのは、実感としてわかる話。

アミオダロンはROSCや入院時生存率を改善するデータはあるが、退院時生存率まで改善する効果があるかわかっておらず、この試験によりその可能性があることが示された。今後、witnessやbystanderがある症例を対象とし、同様の仮説が成り立つかどうか検証が待たれる。

PPIは高齢者の認知症を増加させる

Association of Proton Pump Inhibitors With Risk of Dementia: A Pharmacoepidemiological Claims Data Analysis.
JAMA Neurol. 2016 Feb 15. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
高齢者の認知症リスクに影響を与える治療は、認知症予防に関連があるかもしれない。プロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃腸疾患の治療に広く使用されているが、認知機能の低下を引き起こす可能性があることが報告されている。

目標
高齢者において、PPIの使用と認知症の発症に関連があるか検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
2004年から2011年のドイツ健康保険AOKの観察データを用いて前向きコホート研究を行った。外来患者と入院患者の診断と処方薬は、年4回入手した。データの解析は2015年8月から11月に行った。

暴露
オメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾールの処方

主要評価項目
主要評価項目は、認知症の発生である。PPIの使用と認知症との関連は、時間依存性Cox回帰で解析した。年齢、性別、併存疾患、ポリファーマシーを交絡因子として調整した。

結果
75歳以上のbaseline時に認知症のない76679例を解析した。PPIを処方された患者(2950例、平均年齢83.8±5.4歳、女性77.0%)は、PPIを処方されていない患者(70729例、平均年齢83.0±5.6歳、女性73.6%)より、認知症のリスクが有意に増加した(HR:1.44、95%CI:1.36−1.52)。

結論
PPIの処方を避けることは、認知症の予防につながるかもしれない。この結果は、最近の疫学研究にも支持される。またPPIの使用は、動物実験でもマウスの脳内βアミロイドを増加させた。前向き無作為化試験によって、その関連についての詳細を検証する必要がある。

◯論文のPECOはなにか
P:75歳以上の高齢者
E/C:PPI(オメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール)使用の有無
O:認知症の発症

inclusion criteria:データの矛盾がないこと、baselineの期間で認知症がないことと死亡していないこと

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート研究
登録期間:2004年〜2011年
フォローアップ期間:18ヶ月
地域:ドイツ
症例数:73679例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:時間依存性Cox回帰

result

VADT試験 長期フォローアップ CORRESPONDENCE

TO THE EDITOR
1) 心血管死、脳梗塞、心不全など臨床的に異質のものを、複合エンドポイントとして設定している。そして、強化療法により増えることが示されている非心血管死が、エンドポイントから外されており、複合エンドポイントの設定が恣意的である。UKPDSリスクスコアの低い患者では、強化療法によって非心血管死が38%増加し、VADT試験でも標準療法群より強化療法群で非心血管死が増えていた。VADT試験の主要評価項目に全死亡も含めれば、有意差はなくなる(P=0.22)。

2) 最初の心血管イベントまでの時間は、HbA1cの変化に影響を受けないように思われ、血糖値のコントロールはアウトカムの改善に繋がるわけではない。。

3) 使用した経口血糖降下薬による影響があるのではないか。VADT試験では、BMI≧27の症例には心血管イベントを抑制することが示されているメトホルミンを使用しており、BMI<27の症例にはSU薬を使用していた。

4) 生活習慣や心保護薬の使用が確認されていない。

THE AUTHOR REPLY
1) UKPDSリスクスコアの低いサブグループの解析は、統計学的に不適切である。ただ、ACCORD試験やVADT試験から、特に高齢者において強化療法を行うことは注意が必要である。

2) VADT試験で確認された心血管イベントの減少は、試験期間中のHbA1cではなく、baselineのHbA1cの影響を受けない。心血管イベントの減少が、HbA1cの減少に影響を受けないエビデンスはない。

3) BMIと同様、メトホルミンの使用率は両群間で差はない。

4) 心保護薬に関しては、Supplementary Appendixに記載してあり、群間差はない。生活習慣について厳密に比較できないが、両群の同一の生活習慣のカウンセリングを行っており、血圧や脂質も似通っていることから、両群で生活習慣が著しく異なることはありえないだろう。

VADT試験 長期フォローアップデータ

Follow-up of glycemic control and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes.
N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2197-206

《要約》
背景
VADT試験は、退役軍人1791例を対象とし、厳格な血糖コントロールは標準療法と比較し心血管イベントを減少させなかった(観察期間中央値:5.6年)。そのフォローアップデータを報告する。

方法
データベースを用いて、手術、入院、死亡を確認した(フォローアップ率92.4%)。多くの患者は、毎年の調査やカルテの調査など、追加のデータ収集に同意した(77.7%)。主要評価項目は重大な心血管イベント(心臓発作。脳梗塞、新規または増悪したうっ血性心不全、虚血性壊死による四肢切断、心血管死)である。副次評価項目は心血管死亡率と全死亡率である。

結果
試験期間中、強化療法群と標準療法群のHbA1cの差は1.5%(6.9% vs 8.9%)であったが、試験終了後から3年間で0.2−0.3%減少した。9.8年のフォローアップ(中央値)で、強化療法群は従来療法群と比べ、主要評価項目が有意に低く(HR:0.83、95%CI:0.70−0.99)、絶対リスク減少は0.86%/年であった。しかし、心血管死は減らなかった(HR:0.88、95%CI:0.64−1.20)。全死亡も減少しなかった(HR:1.05、95%CI:0.89−1.25、フォローアップ期間の中央値:11.8年)。

結論
10年近いフォローアップで、強化療法群は標準療法群に比べ重大な心血管イベントが0.86%/年低かったが、死亡率には差がなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病を有する退役軍人
I:より厳格な血糖コントロール(強化療法群)
C:標準的な血糖コントロール(標準療法群)
O:心血管イベント(心臓発作。脳梗塞、新規または増悪したうっ血性心不全、虚血性壊死による四肢切断、心血管死)

exclusion criteria:HbA1c<7.5%、6ヶ月以内の心血管イベント、高度のうっ血性心不全、重度の狭心症、7年以内の生命予後、BMI>40、Cr>1.6mg/dl、ALTが正常上限以上

治療プロトコール
BMI≧27ならビグアナイド+ロシグリタゾンで治療開始
BMI≦27ならグリメピリド+ロシグリタゾンで治療開始
強化療法群は最大量で、標準療法群は最大量の半量から治療開始
上記の治療で、強化療法群では6%未満、標準療法群では9%未満にならなければインスリンを導入する
治療目標は、強化療法群でHbA1cを1.5%低下させること

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢60歳、ほとんど男性、平均糖尿病罹患年数11.5年、60%強が高血圧合併、平均HbA1c:9.4%、血圧の平均値132/76mmHg、LDLコレステロール108mg/dl、HDLコレステロール36mg/dl

◯結果
地域:米国
登録期間:2000年12月1日~2003年5月30日
観察期間:9.8年(中央値)、もとの試験は5.6年
無作為化:置換ブロック法、施設・微小血管イベント・インスリンの有無で層別化
盲検化:オープンラベル
必要症例数:1700例(標準治療群の心血管イベント40.0%、強化療法群により心血管イベント21%減少、power86%、αlevel0.05、ドロップアウト5%として算出)
症例数:1791例(強化療法群892例、標準療法群899例)
追跡率:強化療法群703例(78.8%)、標準療法群688例(76.5%)
解析:ITT解析、ハザード比の推定にはCox比例ハザードモデルを用いた
スポンサー:企業からの資金提供はあるが、解析への関与はない。

HbA1cの差は、試験終了6ヶ月後に1.0%、1年後に0.5%(強化療法群:7.8%、標準療法群8.3%)、3年後に0.2−0.3%になった。

強化療法群 vs 標準治療群
主要評価項目:44.1% vs 52.7%(HR:0.83, 95%CI:0.70-0.99)
心血管死:10.0% vs 11.3%(HR:0.88, 95%CI:0.64-1.20)
全死亡:32.0% vs 30.3%(HR1.01, 95%CI:0.89-1.25)

result1
(Supplementary appendixより引用)

◯感想/批判的吟味
・退役軍人のデータで男性が97%と、特異な集団。
・チアゾリジンが多く使用されており、アウトカムを悪化させた可能性。
・VADT試験の以前の報告では、インスリンの使用や心血管イベントの既往によらず、強化療法の効果はなかった。
・追跡率が良いとは言えず、無作為化が維持できているとは言えない。

複合エンドポイントの中身をみてみると、どれも有意差がついておらず、なんとも煮え切らない結果。これでlegacy effectが確認されたとは言っていいのかわからない。低血糖が糖尿病の予後を悪くすることは確実であり、低血糖を起こさない程度に、十分な血糖コントロールを行った方がよいということだろう。

XANTUS試験 リバーロキサバンの実臨床での有効性と安全性

XANTUS: a real-world, prospective, observational study of patients treated with rivaroxaban for stroke prevention in atrial fibrillation.
Eur Heart J. 2015 Sep 1. [Epub ahead of print]

《要約》
目的
臨床試験の結果から、非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳梗塞予防に非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬が推奨されているが、実臨床での安全性と有効性のデータが必要である。XANTUS試験で、第X因子阻害薬であるリバーロキサバンの実臨床での安全性と有効性を検証した。

方法・結果
新規でリバーロキサバンを開始したNVAFの連続症例を、3ヶ月未満の間隔で1年間のフォローアップ、もしくは内服中止後少なくとも30日間のフォローアップを行った。すべての有害事象は、有害事象もしくは重大な有害事象として記録した。重大な有害事象は、大出血、症候性血栓塞栓症(脳梗塞、全身性塞栓症、TIA、心筋梗塞)、全死亡で、中央で判定し。欧州・イスラエル・カナダの311施設で、6784例が登録され、患者の平均年齢は71.5歳(19−99歳)、女性41%、中等度から高度の腎機能障害(<50ml/min)9.4%であった。CHADS2スコアとCHA2DS2−VAScスコアの平均値は、それぞれ2.0と3.4であった。859例(12.7%)はCHA2DS2−VAScが0か1であった。平均治療期間は329日で、大出血は128例(2.1%/年)、死亡118例(1.9%/年)、脳梗塞43例(0.7%/年)であった。

結論
XANTUSは、NVAFに対しリバーロキサバンを広く使用した、最初の国際的前向き観察研究である。実臨床で、リバーロキサバンを内服している患者の脳梗塞と大出血の発症率は低かった。

◯論文のPECOはなにか
P:新規でリバーロキサバンの内服を開始した非弁膜症性心房細動(NVAF)
E/C:経過観察
O:大出血、症候性血栓塞栓症(脳梗塞、全身性塞栓症、TIA、心筋梗塞)、全死亡

inclusion criteria:18歳以上

・処方するか否か、用法用量は主治医に一任

◯結果
デザイン:前向き観察研究
登録期間:2012年6月〜2013年12月
フォローアップ期間:平均329日
地域:欧州・イスラエル・カナダ
症例数:6785例

characteristics
年齢:71.5±10歳
男性:59.2%
BMI:28.3±17.3
CCr:15−30:1.1%、30−50:8.0%、>50:56.2%
CHADS2:2.0±1.3(0:10.4%、1:30.4%、>2:59.2%)
CHA2DS2−VASc:3.4±1.7

outcome
全死亡:1.9%/年
脳梗塞:0.7%/年
全身性塞栓症:0.1%/年
TIA:0.5%/年
心筋梗塞:0.4%/年

致死的出血:0.2%/年
頭蓋内出血:0.4/年
消化管出血:0.9%/年

◯感想/批判的吟味
ROCKET-AF試験では、CHADS2スコアは平均3.4とハイリスクの患者を対象としていたが、この研究ではCHADS2:0−1点が40%含まれていた。CHADS2スコアがより低い患者でも、その有効性と安全性が確認された。

日本と海外では推奨される用量は異なるので、そっくりそのまま日本人に当てはめて考えることはできないかもしれないが、同様の効果があると考えていいだろう。