80代の高齢心房細動患者では、痩せが出血の危険因子

Fushimiレジストリでは、85歳以上だとそれ以下と比べて脳梗塞/全身性塞栓症が多くなるけど(HR:2.57、95%CI:1.77-3.65)、出血は多いわけではない(HR:1.40、95%CI:0.78-2.36)ということが以前報告されていました。

で、これは、高齢者の心房細動で出血にスポットを当てた論文です。高齢の心房細動患者で出血の危険因子はなにかということが調べられています。

Assessment of the bleeding risk of anticoagulant treatment in non-severe frail octogenarians with atrial fibrillation.
J Cardiol. 2019 Jan;73(1):7-13.

【PECO】
P:重度のフレイルでない80代の心房細動患者
E:暴露因子あり
C:暴露因子なし
O:出血

暴露因子:BMI(<18.5)、BW(&lt:50kg)、85歳以上、HAS-BLED3点以上、CKD、Hb<10g/dl、ワルファリン内服、抗血小板薬内服

フレイルティについては、臨床フレイルスケール(clinical frailty scale)で評価。
DOACは添付文書に準じた投与量調整がなされているか評価。
ワルファリンは、PT-INR1.6−2.6を至適範囲とし、TTR65%以上あれば適切な容量調整がなされていると判断した。

出血は3カテゴリに分類。
1)大出血:入院、または2単位以上の輸血が必要となる出血。生命に関わる出血。
2)臨床的に重大な出血:医学的介入、予約外受診、OACの一時的な中断が必要、または日常生活での支障をきたすような出血
3)小出血:上記以外

exclusion criteria:出血の既往、活動性の出血、重度腎障害、患者のコンディションが悪い場合

【デザイン、セッティング】
・症例対照研究
・単施設
・346例(ダビガトラン64例、リバロキサバン80例、アピキサバン95例、エドキサバン27例、ワルファリン80例)
・2011年1月〜2017年1月までにOACの処方が開始された患者
・観察期間:32.7ヶ月(14.0−51.0ヶ月)
・適切な容量調整がされていたのは、DOAC群では76%、ワルファリン群では65%。
・出血、抗凝固療法中止、抗凝固薬の変更、死亡、観察期間終了(2018年1月)のいずれかが起こるまでフォローアップ。
・COX比例ハザードモデル

【結果】
大出血は12例(消化管出血10例、喀血1例、肝出血1例)、臨床的に重大な出血4例(消化管出血4例)、小出血43例であった。

適切な容量調整がされている集団では、BMI<18.5が出血の最も重大な因子だった。
HR:2.17(95%CI:1.01−4.70)

一方、ワルファリンの使用(HR:0.57 [95%CI:0.26−1.27])や、抗血小板薬内服(HR:1.07 [95%CI:0.48−2.39])は有意差はなかった。

【まとめと感想】
80歳以上のAF患者では、やせ(BMI<18.5)が出血の危険因子のようです。

リアルワールドのデータでは、DOACはワルファリンと比べ出血が少ないと言われていますが、75歳以上のAF/VTEを対象としたメタ解析では出血に差はなく、このレジストリでもワルファリンの使用の有無では有意差はなかったようです。また、抗血小板薬併用下でも差はなかったということですが、ここらへんはNが大きくないので差が出なかったのかもしれません。

まあ、やせてる高齢者の抗凝固療法は要注意です。

今後ますます高齢の心房細動が増えてくると思いますが、エドキサバンのRCT(ELDERCARE-AF試験)やすべてのOACを含んだ前向きコホート研究(ANAFIEレジストリ)が走っているところのようなので、その結果が出てくると、高齢心房細動患者の治療も確立されてくるのではないでしょうか。

植込み型心臓電気デバイス(CIED)手術での感染予防 抗菌薬の追加延長投与は有効か

Prevention of Arrhythmia Device Infection Trial: The PADIT Trial.
J Am Coll Cardiol. 2018 Dec 18;72(24):3098-3109.

【PICO】
P:デバイス植込みで感染症リスクの高い症例
I:抗菌薬追加延長投与
C:従来の抗菌薬予防投与
O:1年以内のデバイスもしくはポケット感染による入院

感染症リスクの高い症例:ジェネレーター交換、リード追加、CRTの植込み

従来の抗菌薬予防投与:皮膚切開60分前のセファゾリン1−2g投与。ペニシリンアレルギーの場合には、皮膚切開120分前にバンコマイシン1−1.5gを投与。

抗菌薬追加投与:術前のセファゾリン+バンコマイシン投与に加え、閉創前にバクトラシン50000万単位+生食/50mlでポケット内を洗浄し、術後はセファレキシン500mgを1日4回、2日間内服。もしくは、セファトドキシル1000mgを1日2回投与。ペニシリンアレルギーの場合は、クリンダマイシン150−300mgを1日3回内服。オランダの全施設とカナダの1施設ではバクトラシンが入手できなかったので、生食もしくはセファゾリンでポケット内を洗浄した。

【試験の概要】
デザイン:RCT(cluster randomized crossover trial)
地域:カナダ24施設、オランダ4施設
登録期間:2012年12月〜2016年7月
観察期間:12ヶ月
症例数:12826例(従来治療群6285例、追加延長群6541例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
施設:術者5.5人、手術室25%・その他はカテ室かその両方、PMジェネレータ交換86件/年、ICDジェネレータ交換34件/年、CRTジェネレータ交換14.5件/年、消毒はクロルヘキシジン93%

従来治療群と追加延長群では、性別、腎機能障害、CRT新規植込み、ポケット手技で有意差あり。

ざっくりと。年齢72歳、女性(従来治療群33%、追加延長群31%で差あり)、糖尿病1/4、腎機能低下(従来治療群16%、追加延長群18%で差あり)、ペニシリンアレルギー10%、ジェネレータ交換38%・ICDジェネレータ交換16%・CRTジェネレータ交換6%・CRT/ICD新規植込み18%、手技時間<1時間 2/3

【結果】
従来治療群 vs 追加延長群
▶︎デバイス感染による(primary endpoint)
1.23% vs 1.01% OR:0.82(95%CI:0.59−1.15)

▶︎血流感染・感染性心内膜炎
0.45% vs 0.32% OR:0.72(95%CI:0.41−1.28)

▶︎ポケット感染・びらん
0.78% vs 0.69% OR:0.89(95%CI:0.58-1.37)

【まとめと感想】
デバイスの手術で、感染は1番嫌な合併症だと思いますが、抗生剤を追加・延長しても感染症の減少には結びつかないようです。

心房細動への房室結節アブレーションとCRT

narrowQRSの心房細動では、ジャン切り(房室結節アブレーション)して普通のペースメーカを入れると、薬物療法単独よりも症状はよくなるけど、心不全入院とか生存率は改善しない。50%の患者で右室ペーシングによる左室非同期が起こるためと思われる。

では、ジャン切りしてCRTに乗せちゃうとどうなのか。

A randomized controlled trial of atrioventricular junction ablation and cardiac resynchronization therapy in patients with permanent atrial fibrillation and narrow QRS
Eur Heart J. 2018 Dec 1;39(45):3999-4008.

【PICO】
P:症候性慢性心房細動+narrowQRSで1年以内に心不全入院歴あり
I:房室結節アブレーション(ABL)+CRT
C:薬物療法
O:心不全死+心不全入院+心不全の悪化

CRTの設定は主治医に一任。
薬物療法では安静時心拍数110/min未満が目標。

exclusion criteria:NYHAⅣ度、SBP≦80mmHgなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2014年10月〜
観察期間:16ヶ月(中央値)
症例数:102例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Boston Scientific社)

【患者背景】
ジゴキシンのみABL+CRT群36%、薬物療法群58%と差あり。
ざっくりと。年齢71歳、男女半々、AFの期間1−1.5年、2/3がHYNAⅢ度、HR100/min、QRS97ms、LVDd59mm、LVDs44mm、EF40%、冠動脈疾患30%、β遮断薬84%、ACE阻害薬・ARB60%、抗アルドステロン薬50%。

【結果】
ABL+CRT群 vs 薬物療法群
▶︎心不全死+心不全入院+心不全の悪化
20% vs 38% HR:0.38(95%CI:0.18−0.81)

▶︎心不全死
1例 vs 2例

▶︎全死亡
4%(2例)vs 12%(6例)HR:0.30(95%CI:0.06−1.50)

▶︎心不全入院
10% vs 25% HR:0.30(95%CI:0.11−0.84)

▶︎心不全の悪化
10% vs 15% HR:0.55(95%CI:0.18−1.68)

サブグループ解析では、EF35%以下、SP120mmHg未満、SSSスコア(自覚症状のスコア)32以上で有意差あり。

【まとめと感想】
ジャン切り+CRTは薬物療法より心不全入院を減らす。EF35%以下だとなお良し。もしかしたら、生命予後も変わってくるかもしれないという期待はあります。でかい規模のRCTが進行中のようです。

お高い治療ですが、これで心不全入院が防げて、結果的に医療費の削減になればいいのですが。

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

Apixaban to Prevent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer
N Engl J Med. 2018 Dec 4. doi: 10.1056/NEJMoa1814468. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:化学療法を行う新規、または再発の悪性腫瘍で、Khoranaスコア2点以上
I:アピキサバン2.5mg/回 1日2回
C:プラセボの内服
O:180日間の静脈血栓塞栓症(VTE)

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点
白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT
地域:カナダ
登録期間:2014年2月〜2018年4月
観察期間:210日
症例数:563例(アピキサバン群288例、プラセボ群275例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bristol-Myers社、Squibb–Pfizer社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりとした背景。年齢61歳、男性4割、体重80kg、リンパ腫と婦人科腫瘍が1/4ずつ、肺癌・胃癌・膵癌が10%ずつ、Khonaraスコア2点:2/3、3点:1/4、4点:1/12、抗血小板薬の併用1/4、VTEの既往3%。

【結果】
アピキサバン群 vs プラセボ群
▶︎180日以内のVTE
4.2% vs 10.2% HR:0.41(95%CI:0.26−0.65)

▶︎肺塞栓症
1.7% vs 5.8%(統計学的有意差の検証なし)

▶︎すべての出血
3.5% vs 1.8% HR:2.00(95%CI:1.01-3.95)

アピキサバン群で10例、プラセボ群で5例で、そのうち出血性ショック・頭蓋内出血まで至ったのは、アピキサバン群で1例(10%)、プラセボ群で2例(40%)。致死的な出血はいずれの群でも認めなかった。

▶︎全死亡
12.2% vs 9.8% HR:1.29(95%CI:0.98−1.71)

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTEはアピキサバンにより減らすことができるようです。Khoranaスコアというのは知りませんでしたが、この試験通りVTEリスクが高い2点以上でアピキサバンの予防投与をやってもいいのかもしれません。重大な出血を増やさずに、VTEを予防できる可能性はあると思います。

ただ、自分はこの結果をみても、悪性腫瘍+Khoranaスコア2点以上でアピキサバンを勧めようとは思いません。アピキサバンの内服期間は180日間となっている意味がよくわからないからです。この180日というのは恣意的で、アピキサバンのVTE予防効果が発揮されるだけの期間で、かつ出血がそれほど増えない期間として設定されてるのではないかと勘ぐってしまいます。

実臨床で、VTEの予防として内服し始めた薬を180日でやめるでしょうか。おそらく、副作用などの問題がなければ180日経過した後も続けるケースが大半を占めることになるのではないでしょうか。メーカが狙っているのはそこだろうと思います。企業のマーケティングに乗っかる必要はありません。

この論文の中にはありませんでしたが、Khoranaスコアがより高いグループではどうなのかは気になりますし、どのような患者群で本当に抗凝固療薬の恩恵を享受できるかを知りたいです。

REAL-CAD試験 日本人での高容量スタチンの効果

High-Dose Versus Low-Dose Pitavastatin in Japanese Patients With Stable Coronary Artery Disease (REAL-CAD)
Circulation. 2018 May 8;137(19):1997-2009.

【リサーチクエスチョン】
日本人(アジア人)でも冠動脈疾患へのスタチン投与は、more is betterなのか?

【PICO】
P:安定冠動脈疾患
I:ピタバスタチン4mg
C:ピタバスタチン1mg
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症

心血管死=心臓死(突然死+心臓手技関連死)+心臓に由来しない血管死

inclusion criteria:OMIの既往、血行再建から3ヶ月以上、冠動脈造影で75%以上の狭窄
exclusion criteria:スタチン非使用下でLDL100mg/dl以下

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:日本
登録期間:2010年1月31日〜2013年3月31日
観察期間:3.9年(中央値)
症例数:13054例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(興和創薬)

【患者背景】
ざっくりと。
平均年齢68歳、男性82%、BMI24、EF60%、OMI51%、血行再建歴90%、うっ血性心不全5%、心房細動6%、LDL88mg/dl。

【結果】
3年以上フォローアップできたのは、両群とも89%程度。

高容量群 vs 低容量群
LDLコレステロール値(3年)
76mg/dl vs 91mg/dl

▶︎心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症(primary endpoint)
累積4年発生率
4.3% vs 5.4% HR:0.81(95%CI:0.69−0.95)

▶︎心血管死
1.4% vs 1.8% HR:0.78(95%CI:0.59−1.04)

▶︎心筋梗塞
0.6% vs 1.2% HR:0.57(95%CI:0.38−0.83)

▶︎脳梗塞
1.3% vs 1.4% HR:1.03(95%CI:0.76-1.40)

▶︎不安定狭心症
1.2% vs 1.4% HR:0.86(95%CI:0.63-1.17)

【まとめと感想】
日本人でもスタチンを高容量にすれば、心血管イベントは減るという結果でした。心血管イベント(primary endpoint)のNNT=91、心筋梗塞のNNT=167なので、費用対効果としてはちょっと微妙だと思います。より効果の高い集団がわかったらいいですが、年齢・性別・DM・LDL・高感度CRP・HDL・中性脂肪・BMIのどのサブグループでも、有意な差はありませんでした。

薬価はピタバスタチン1mg:19円、4mg:72円らしいので、心筋梗塞を1件減らすのに約1290万円かかってしまいます。なので、個人的にはこの結果をみても、冠動脈疾患全員にスタチンを高容量で投与しようとは思いません。心筋梗塞を繰り返しているような人とか、家族性高コレステロール血症は別ですが。

とは言え、OMIが半分を占める集団で心筋梗塞が4年間で1%程度というのは、やっぱり日本人は心筋梗塞が少ないなあと改めて思いました。

ダビガトランvsワルファリン 日本のレセプトデータベースより

Comparative effectiveness and safety of warfarin and dabigatran in patients with non-valvular atrial fibrillation in Japan: A claims database analysis
J Cardiol. 2018 Nov 23. pii: S0914-5087(18)30293-4. doi: 10.1016/j.jjcc.2018.09.004. [Epub ahead of print]

【PECO】
P:新規で抗凝固薬を開始した非弁膜症性心房細動
E:ダビガトラン
C:ワルファリン
O:脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血
secondary endpoint:大出血

【デザイン、セッティング】
・後向き
・日本のレセプトデータベース(Medical Data Vision)
・2011年3月14日〜2016年6月30日
・22490例(プロペンシティスコアマッチ後は両群4606例ずつ)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコアマッチ

【結果】
プロペンシティスコアマッチ後の患者背景。
平均74歳、女性34%、心不全35%、糖尿病27%、心筋梗塞1%、脳梗塞/TIA13%、PPI40%、H2blocker17%、CHADS2スコア2.0点、HAS-BLEDスコア1.0点。

ワルファリン vs ダビガトラン
脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血(primary endpoint)
35.6 vs 29.0%/1000人年 HR:0.72(95%CI:0.53-0.97)

大出血(secondary endpoint)
11.3 vs 6.4%/1000人年 HR:0.55(95%CI:0.30−0.99)

消化管出血
6.4 vs 1.6%/1000人年 HR:0.24(95%CI:0.28−0.80)

【まとめと感想】
後向きのデータではありますが、ダビガトランの方が消化管出血が少なかったみたいです。

DOAC・ワルファリンを開始したAF患者の心筋梗塞発症率と死亡率

Risk of Myocardial Infarction in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 3;72(1):17-26.

RE-LY試験では、ダビガトランで心筋梗塞の増加を認めた。ARISTOTLE試験やROCKET-AF試験では、アピキサンバンやリバロキサバンに心筋梗塞の増加は認めなかった。これらの試験では、高齢者・フレイルは除かれており、また心筋梗塞をアウトカムにしたDOAC間の比較データはない。

【PECO】
P:AFと診断され初めて抗凝固療薬を内服する患者
E:DOAC(アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン)
C:VKA(ワルファリン)
O:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院
secondary outcome:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院+全死亡

exclusion criteria:弁膜症性心房細動、DOACが禁忌となる腎障害

【デザイン、セッティング】
・the Civil Registration System(デンマーク)
・2013年1月1日〜2016年6月30日
・後向き
・31739例(ワルファリン8913例、アピキサバン8611例、ダビガトラン7377例、リバロキサバン6838例)
 うち1年間の脱落が8905例(28%)
・観察期間:1年
・COX比例ハザードモデル

【結果】
1年間の絶対リスク(95%CI)とワルファリンとのリスク差

心筋梗塞(primary endpoint)
ワルファリン 1.56%(1.33-1.80%) 
アピキサバン 1.16%(0.94-1.39%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 1.20%(0.95-1.47%)リスク差−0.36%(−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 1.07%(0.83-1.32%)リスク差-0.49%(−0.82to−0.16%)

DOAC間では、リスク差に有意差はない。

心筋梗塞+全死亡(secondary endpoint)
ワルファリン 12.2%(11.5-12.9%) 
アピキサバン 10.9%(10.3-11.5%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 9.3%(8.6-10.0%)リスク差-0.36% (−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 12.0%(11.3-12.7%)リスク差-0.49% (−0.82to-0.16%)

【まとめと感想】
DOACはワルファリンと比べ、低い心筋梗塞発症率と関連あり。心筋梗塞発症率は1.1%-1.2%程度で、ワルファリンとの差も有意とはいえ、年間0.4%程度。

システマティックレビューでは、ダビガトランはワルファリンと比べ心筋梗塞が増えることが報告されているが、このコホート研究ではその傾向は認めなかった。

それよりなにより、全死亡がその10倍起きている。平均年齢70歳ちょっとなので、10%/年の死亡率はインパクトがある。

抗血小板薬併用下でのDOACとワルファリンの比較

Combining Oral Anticoagulants With Platelet Inhibitors in Patients With Atrial Fibrillation and Coronary Disease
J Am Coll Cardiol. 2018 Oct 9;72(15):1790-1800.

【PECO】
P:OMI+AF、もしくはPCI施行後+AF
E:DOAC+抗血小板薬
C:VKA+抗血小板薬
O:出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全死亡

【デザイン、セッティング】
・Danish nationwide administrative registries
・後向き
・3222例
(VKA+SAPT 875例、DOAC+SAPT 595例、DAPT 1074例、DOAC+DAPT 678例)
・2011年8月〜2017年7月
・観察期間:12ヶ月
・PT-INR、血圧、腎機能のデータは含んでいない
・COX比例ハザードモデル
・著者には、DOAC企業とのCOIあり

【結果】
DOACは、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンが1/3ずつぐらい。2/3は減量投与。

VKA+DAPTを基準として、DOAC+DAPTのハザード比は・・・
出血:0.51(95%CI:0.33-0.78)

脳卒中:1.44(95%CI:0.78-2.67)

心筋梗塞:0.92(95%CI:0.58-1.45)

全死亡:0.83(95%CI:0.59-1.17)

VKA+SAPTを基準として、DOAC+SAPTのハザード比は・・・

出血:0.90(95%CI:0.60-1.53)

脳卒中:0.64(95%CI:0.30-1.36)

心筋梗塞:0.63(95%CI:0.40-1.00)

全死亡:1.08(95%CI:0.80-1.44)

【まとめと感想】
VKA+DAPTは、DOAC+DAPTと比較すると心筋梗塞・脳梗塞・全死亡には差はないが、約2倍の出血と関連あり。

VKA+SAPTは、DOAC+SAPTと比較すると出血・脳梗塞・全死亡には差がないが、約2/3倍の心筋梗塞と関連あり。

DOAC betterな結果でした。PT-INR、血圧、腎機能などイベントに関連がありそうな因子は、解析には含まれてないというのはlimitation。

冠動脈疾患のない糖尿病でのn-3脂肪酸の心血管イベント抑制効果 

観察研究では、n-3脂肪酸の摂取により冠動脈疾患が減少することが知られています。動脈硬化の抑制、不整脈の減少、心不全の抑制などいろいろ考えられ、その効果がRCTで検証されてきました。GISSI-Prevensioneのような1990年代の古いRCTでは死亡率が有意に減少しましたが、β遮断薬などの薬物療法は、現在のものとは大きくかけ離れていました。

2000年代になっていくつかのRCTがやられましたが、どれも結果はネガティブなものです1-3)。JELIS試験二次予防のサブグループで心血管イベントを減らしたことは、Lancetにも載り当時はメーカーもよく喧伝していたので広く知られていますが、オープンラベルのRCTで、かつ不安定狭心症というソフトエンドポイントでの有意差なので、かなりバイアスが入ったものだと思います。心筋梗塞や死亡といったハードエンドポイントにはもちろん差はありませんでした4)

個人的には、n-3脂肪酸は動脈硬化の進展抑制に有効で、若い頃から魚をよく摂るような食習慣の人はやっぱいいんだろうと思います。ただ、心血管イベントのハイリスク、あるいはその二次予防のような動脈硬化が進んだ人だと、n-3脂肪酸を多少とったぐらいでは動脈硬化に歯止めが効かないのではないでしょうか。

CochraneやAgency for Healthcare Research and Qualityも、心血管イベント抑制のためのn-3脂肪酸の内服はほとんど効果がないと結論付けています5-6)

上記の2000年代に行われたRCTには心筋梗塞二次予防を対象にしたものもあり、なんで今さら心筋梗塞一次予防を対象にしているかわかりませんが、一次予防で糖尿病がある人にn-3脂肪酸の心血管イベント抑制効果を検証したRCTがNEJMにでました。

Effects of n−3 Fatty Acid Supplements in Diabetes Mellitus
N Engl J Med 2018; 379:1540-1550

【PICO】
P:冠動脈疾患のない糖尿病
I:n-3脂肪酸840mg(EPA460mg、DHA380mg)
C:プラセボ(オリーブオイル)
O:重大な血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、TIA、血管死)

inclusion criteria:40歳以上、1型糖尿病、2型糖尿病

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験など)
地域:イギリス
登録期間:2005年6月〜2011年7月
観察期間:7.4年
症例数:15480例(n-3脂肪酸群7740例、、プラセボ群7740例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bayer社、Abbott社、Mylan社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりと。
年齢63歳、BMI≧30が半分弱、アスピリン1/3、スタチン3/4、糖尿病歴7年

アドヒアランス76%

フォローアップ期間中、n-3脂肪酸以外の薬の使用も差はない。

【結果】
n-3脂肪酸群 vs プラセボ群
心筋梗塞、脳梗塞、TIA、血管死 (primary endpoint)
8.9% vs 9.2% HR:0.97(95%CI:0.87-1.08)
内服期間別に解析しても、有意差なし。

全死亡
9.7% vs 10.2% HR:0.95(95%CI:0.86-1.05)

探索的な解析では、全死亡の28%は血管死で、それはn-3脂肪酸群で少なかった。
2.5% vs 3.1% HR:0.82(95%CI:0.68-0.98)

【まとめと感想】
やっぱりと言うべきか、冠動脈疾患のない糖尿病でn-3脂肪酸による心血管イベント抑制効果はありませんでした。

ただ、内服期間別のフォレストプロットをみると、内服期間が長くなるとn-3脂肪酸がbetterな方へだんだん寄っていくので、より長期にn-3脂肪酸を摂取しているといいのかもしれません。この程度のEPAとDHAの量なら魚(マグロ、ブリ、イワシ、サバなど)から摂れるので、わざわざ薬を飲むより魚を食べたほうがよさそうです。

1)Circ 2010;122:2152-2159
2)NEJM 2010;363:2015-2026
3)NEJM 2013:368;1800-1808
4)Lancet2007;369:1090−1098
5)Cochrane Database Syst Rev 2018;7:CD003177.
6)https://effectivehealthcare.ahrq.gov/topics/fatty-acids-cardiovascular-disease/research

ステント留置から1年以上たった心房細動患者の抗血栓療法 OAC-ALONE試験

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

冠動脈疾患があり、カテーテル治療されている患者さんで心房細動も合併している場合、ESCのガイドラインでは、ステント留置から1年たったら抗凝固薬単剤を推奨。AHAでは、ステント留置から1年たって、塞栓リスクが低くて出血リスクが高いなら抗凝固薬単剤を推奨している。ただ、RCTはやられていなかったので、本当にそれでいいかはわからない。これが、冠動脈疾患+心房細動で抗凝固療法単剤で良いか検証した初めてのRCT。

【PICO】
P:ステント留置から1年以上経過した冠動脈疾患+心房細動
I:抗凝固薬単剤
C:抗凝固薬+抗血小板薬
O:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症

抗凝固薬はワルファリンかDOAC。ワルファリンは70歳未満はINR:2.0−3.0を、70歳以上はINR:1.6-.26を目標とし、少なくとも3ヶ月おきに測定。DOACは基本的には減量基準に従うことを推奨するが、自由裁量による減量もあり。

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験)
地域:日本 111施設
登録期間:2013年11月5日〜2016年12月28日
観察期間:2.5年
予定症例数:2000例(event rate:8.0%/1.5年、非劣勢マージン4.0%)
症例数:690例(OAC単剤群344例、併用療法群346例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(第一三共)

【患者背景】
ざっくりと。
年齢75歳、発作性と持続性+慢性は半々ぐらい、CHADS2:2.5±1.2、CHA2DS2-VASc:4.6±1.4、HAS-BLED:3以上 44%、抗凝固薬はワルファリン:3/4、DOAC:1/4、ワルファリンのTTR75%
両群で差があったのは、eGFR<30(10%vs5%)、PPI(53%vs62%)で、いずれもOAC単剤群で少し不利。

【結果】
OAC単剤群 vs 併用療法群
以下はいずれも年率。
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症 (primary endpoint)
6.4% vs 5.5%, HR:1.16(95%CI:0.79-1.72)

全死亡
4.6% vs 3.5%, HR:1.30(95%CI:0.82-2.10)

心血管死
2.3% vs 1.9%, HR:1.18(95%CI:0.62-2.28)

心筋梗塞
0.93% vs 0.46%, HR:2.03(95%CI:0.64-7.59)

脳梗塞+全身性塞栓症
1.5% vs 2.2%, HR:0.69(95%CI:0.33-1.38)

TIMI大出血
1.9% vs 3.4%, HR:0.57(95%CI:0.31-1.03)

【まとめと感想】
日本でやられたRCTだし、みんなが知りたい疑問だし、結果が出るのが楽しみでしたが、著者がabstractで述べている通り、パワー不足で結論めいたことは言えないのが残念です。日本でのRCTでは多くの症例を集めるのは本当に大変そうです。

心房細動患者の死因の多くは非心原性ですが、心房細動+冠動脈疾患であってでも心臓死は半分ぐらいで、もう半分は心臓以外の原因で亡くなられるということは頭に入れておく必要があるでしょう。それと、心筋梗塞の再発は1%/年ととても低いことも。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。