重症患者のDVT・PE予防には、抗凝固療法に間欠的空気圧迫法(IPC)を併用すべきか

抗凝固療法と間欠的空気圧迫法(IPC)はどちらがよいのでしょうか。あるいは、それを組み合わせたほうがいいのでしょうか。

コクランのSR(15RCT、7762例)では、IPC単独と比べIPC+抗凝固療法は症候性PEは減りませんでしたが、DVTは有意に減少しています(4.1% vs 2.1%, OR:0.52[0.33-0.82])。その代わり、出血は増えてしまっています(0.6% vs 4.0%, OR:5.04[2.36-10.77])(1)

IPC+抗凝固療法と抗凝固療法単独との比較では、症候性PEは2.9%から1.2%へ減りましたが(OR:0.39[0.23-0.64])、DVTの有意な減少はみとめませんでした(6.2% vs 2.9%, OR:0.42[0.18-1.03])。抗凝固療法にIPCを加えても、大出血は増えません(OR:1.21[0.35-4.18])(1)

つまり、DVT・PEの予防にはIPC+抗凝固療法を行う方がいいけど、出血はIPC単独より増えてしまうよう。ICPよりかは抗凝固療法の方が、DVTの予防効果は高いらしいので、DVT予防は抗凝固療法単独でやるか、あるいは抗凝固療法にIPCを併用するかのどちらかでしょう。

Adjunctive Intermittent Pneumatic Compression for Venous Thromboprophylaxis
N Engl J Med. 2019 Feb 18. doi: 10.1056/NEJMoa1816150. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:72時間以上ICUに滞在しそうな患者
I:間欠的空気圧迫法(IPC)+抗凝固療法
C:抗凝固療法のみ
O:近位部DVT

inclusion criteria:成人(14−18歳以上)の内科疾患・術後・外傷患者、45kg以上

【治療の流れ】
ICU入室48時間以内に登録。IPCは、大腿までの連続圧迫できるマルチチャンバーカフのデバイスを推奨。膝までで非連続圧迫(シングルチャンバーカフ)でも許容する。デバイスは両下肢に少なくとも1日18時間以上装着し、8時間ごとに取り外し皮膚の観察とケアをする。

深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PE)を発症した場合・疑う場合・皮膚潰瘍を生じた場合・虚血が生じた場合には、デバイスを取り外す。観察期間は、動けるようになるまでと、ICU退室までと、試験開始後28日までのいずれか。

両群とも弾性ストッキングは使わない。

ランダム化後48時間以内に近位下肢静脈エコーを行う。それ以降も2回/週の頻度で下肢静脈の
行い、臨床的にDVTを疑う場合にも施行する。下肢静脈エコーは大腿静脈・膝窩静脈・下腿三分枝を1cm間隔で評価する。ソノグラファーとは別のブラインドされた放射線科医が画像を評価する。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、インド
登録期間:2014年7月〜2018年8月
観察期間:7日(中央値)
症例数:2003例(IPC併用群991例、抗凝固療法単独群1012例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。58歳、男性6割、BMI29、人工呼吸器2/3、血管収縮薬1/3、抗凝固薬(未分画ヘパリン60%、低分子ヘパリン40%)、大腿静脈へのCV挿入15%

【結果】

治療期間は両群とも中央値7日。IPCを使用したのは、IPC併用群で98%、抗凝固療法単独群で10%、IPC併用群のIPC使用時間は22時間/日、スリーブの長さは大腿19%、膝79%、フットポンプの使用12%。


stage1:nonblanchable erythema, stage2:partial-thickness ulceration, stage3:full-thickness skin or tissue loss

【まとめと感想】
報告によって異なりますが、重症患者でのDVT発生率は5−20%のようで、このPREVENT試験では両群とも4%程度でした(PEは1%程度)。抗凝固療法にIPCを追加しても、効果はありませんでした。ただ、皮膚障害などの有害事象もほとんど同程度なので、IPCを併用しても別に悪くはないでしょう。

予防をしていても、DVTやPEの発生はそこそこあるので、忘れてはいけない疾患です。

1)Cochrane Database Syst Rev. 2016;9:CD005258

着用型除細動器 (WCD) は心筋梗塞発症早期の心臓突然死を予防できるか

植込型除細動器(ICD)は、心機能が悪い虚血性心疾患の心臓突然死の予防に有効です。MADIT試験ではEF≦35%の虚血性心疾患で心室性不整脈がある症例を対象として、ICDにより生命予後が改善しました。また、MADITⅡ試験では心室性不整脈は問わず、EF≦30%の虚血性心疾患を対象としましたが、これでもICDよる生命予後改善を認めています(観察期間20ヶ月、ハザード比0.69)(1-2)

MADITⅡ試験はAMI発症1ヶ月以内の症例は含んでいません。

DINAMIT試験やIRIS試験は、AMI発症早期で心機能が悪い症例で、ICDで生命予後が改善するか検証したRCTです。どちらも心臓突然死は半分ぐらいに有意に減っていますが、全死亡は非ICD群とほとんど変わりません(つまり非心臓死が多い)(3-4)

なので、AHAのガイドラインでも心臓突然死一次予防の場合は、”AMI発症から40日以上もしくは血行再建から90日以上経過”していて、心機能が悪い症例がICD適応になっています。心機能は悪いけど、AMI発症から時間が経ってないような症例は、至適薬物療法を行って再評価することになります。でもまあ、虚血だと薬物療法でも心機能の改善はあまり見込めませんが。

AMI発症早期にICDを植え込んでも生命予後は改善しませんが、やはり心臓突然死のリスクが高いというのは事実です。AHAガイドラインでは、AMI発症40日以内の場合は、着用型除細動器(WCD)を着てもらってもいいかもね(classⅡb)となっています。

そして、そのAMI発症早期で心機能が悪い症例で、WCDが本当に有効なのでしょうか。

Wearable Cardioverter–Defibrillator after Myocardial Infarction
N Engl J Med 2018; 379:1205-1215

【PICO】
P:EF35%以下のAMI
I:標準治療+WCDの着用
C:標準治療のみ
O:90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死

EFの評価は、PCI後なら8時間以上経ったあとに、CABG後なら48時間以上経ったあとに行う。

exclusion criteria:すでにICD留置、ユニポーラーペースメーカ、重度の弁膜症、長期の血液透析、WCDを着られないぐらい胸囲が小さいor大きい

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:アメリカ・ポーランド・ドイツ・ハンガリー
登録期間:2008年7月〜2017年4月
観察期間:90日
症例数:2348例(うち46例は規約違反のため除外)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ZOLL社)

【患者背景】
両群の患者背景に差はない。EFの中央値は28%、PCI84%、血栓溶解療法8%、CABG1%、心停止・心室細動10%。内服薬にも差はない(βblocker92%、ACE阻害薬/ARB87%、アスピリンとそれ以外の抗血小板薬がそれぞれ87%、アミオダロン7%)

【結果】
primary outcomeは60日以内の全死亡だったが、登録が進まなかったため、90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死、に途中で変更。

WCD群:1524例 vs 標準治療群:778例

標準治療群でWCD導入が2.6%。
ICD植込みはWCD群で4.4%、標準治療群で5.7%。だいたい2ヶ月ぐらいのときに植込まれている。

【まとめと感想】
AMI発症早期で心機能が悪い症例にWCDを導入すると、不整脈死が少なくなるけど、統計学的には有意な差ではありませんでした。discussionでパワー不足(不整脈死58%減少と推定)だと書かれていましたが、まあ確かに侵襲の大きな介入ではありませんし、適切に使用すれば突然死を予防できるという理屈はわかります。

不適切作動がありますので、理解力や操作能力に乏しい患者さんには導入しないなどの配慮は必要ですし、夏場は蒸れるということや、使えば使うほど病院の赤字になるという課題はあります。

AMI発症早期の心機能が悪い方でも、まず薬物療法をしっかりやるということですね。

1)N Engl J Med.1996;335:1933-1940
2)N Engl J Med 2004;351:2481-2488
3)N Engl J Med.2004;351:2481–2488
4)N Engl J Med.2009;361:1427−1436
5)Circulation.2018;138:e210–e271

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とリバロキサバンの予防投与

AVERT試験では、アピキサバン2.5mgの1日2回投与により血栓イベントは有意に減りました(出血は有2倍に増えましたが)。このCASSINI試験は同じような試験デザインで、リバロキサバンでのVTE予防効果が検証されています。

Rivaroxaban for Thromboprophylaxis in High-Risk Ambulatory Patients with Cancer.
N Engl J Med. 2019 Feb 21;380(8):720-728.

【PICO】
P:外来化学療法を行う固形癌・リンパ腫でKhoranaスコア2点以上
I:リバロキサバン10mg
C:プラセボ
O:180日間の血栓イベント(下肢の近位部深部静脈血栓症、遠位部深部静脈血栓症、症候性肺血栓塞栓症、血栓塞栓症による死亡)
安全性評価項目:大出血(輸血を要する出血、Hb>2g/dlの出血)

exclusion criteria:脳腫瘍、脳転移、活動性出血

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点 白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:? 11ヶ国143施設
登録期間:?
観察期間:平均4.3ヶ月(予定は180日)
症例数:841例(リバロキサバン群420例、プラセボ群421例)
解析:ITT解析
スポンサー:Janssen社、Bayer社

【患者背景】
DVT既往がリバロキサバン群で多いが、それ以外は有意差なし。
ざっくりと。年齢62歳、男女半々、白人80%、Khoranaスコア2点70%、3点25%、DVT既往(プラセボ群0.5%、リバロキサバン群2.6%)、癌種(膵癌1/3、胃癌20%、肺癌15%、リンパ腫6%)

【結果】
リバロキサバン群の43.7%、プラセボ群の50.2%が薬剤を途中で中止している。

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTE予防のためにルーチンで抗凝固薬が必要かどうかは置いといて、少なくともリバロキサバンでは有意な差にはなりませんでした。

アピキサバンについてはこちらをご参照ください。
悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

たこつぼ型心筋症の再発

ヨーロッパでは、「たこつぼ症候群(Takotsubo syndrome)」と言うそうです。アメリカでは、「たこつぼ型心筋症(Takotsubo Cardiomyopathy)」です。ほかにも、stress cardiomyaopathyとか、broken heart syndromeとは言われたりします。

そんなたこつぼ型心筋症のスイスのレジストリから、再発についてのLetterです。

Takotsubo RecurrenceMorphological Types and Triggers and Identification of Risk Factors
J Am Coll Cardiol. 2019;73(8):982-984

たこつぼ型心筋症で壁運動異常が完全に回復し、4週間以上フォローされてる症例が対象で、再発した集団と再発しなかった集団を比較。

1402例、観察期間921日±883日

4.7%(66例)で再発。
発生率は18.7例/1000人年。

再発は初回の発症から30日〜9.9年。

COX回帰分析では、神経学的疾患(痙攣・脳血管疾患・偏頭痛)や精神疾患(情緒障害・不安症・適応障害)は再発の独立した予後因子。
神経学的疾患:ハザード比1.76(95%CI 1.01−3.07)
精神疾患:ハザード比1.77(95%CI 1.05-3.00)

再発は、34.8%で初回のバルーニングパターンとは違うパターンになり、誘因(身体的、情動的、両方、特定できない)も47%で初回とは違うものだった。

5/66例で2回の再発あり。すべて神経学的疾患や精神疾患を持っていた。

βblokcerに再発予防効果なし。

ーーーーーーーーーー
循環器内科医にとってたこつぼ型心筋症は、診断はできるけど、治療できるわけじゃないし、再発も予防できない。そんな病気。

スタチンは75歳以上の高齢者でも心血管イベント抑制に有効

ベースのLDLコレステロール値とか、患者さんの状態にもよりますが、心筋梗塞二次予防だったら基本的にスタチンは出しています。

Efficacy and safety of statin therapy in older people: a meta-analysis of individual participant data from 28 randomised controlled trials.
Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):407-415.

【PICO】
P:高齢者
I/C:スタチンvsコントロール、高容量vs低容量スタチン
O:大血管イベント(冠動脈イベント・脳梗塞・冠動脈血行再建)、死因別死亡率、悪性腫瘍

<研究の選択>
症例数1000以上、観察期間2年以上のRCTを組み入れ
文献データベース:MEDLINE、EMBASE、Pubmed
検索語: “statins OR HMG CoA Reductase Inhibitors” “Elderly OR Aged”
期間:1996年1月1日〜2017年12月31日
28のRCT
出版バイアス:low

◇まとめと感想
観察期間の中央値4.9年。心不全と透析を対象としたRCTでは高齢者でのスタチンは有効性が見出せなかったけど、高齢者でもスタチン療法・高容量スタチン療法により、1mmol/LのLDLコレステロール低下で21%(RR:0.79 [0.77-0.81])の冠動脈イベント減少を認めました。心不全と透析を除くと、どの年齢のサブグループでも冠動脈イベントが減少していますが、高齢になるほど減少率は小さくなっています(≦55歳:RR0.75 [0.69-0.81]、≧75歳:RR0.87 [0.77-0.99])。

相対リスクにすると20%前後のイベント減少ですが、絶対リスクにすると1%/年にも満たないです。75歳以上だと絶対リスク減少0.5%で、NNT200になります。75歳以上の患者さん200人に1年間スタチンを処方し、LDLコレステロールを1mmol/L(=39mg/dl)下げると、冠動脈イベントがひとり減る感じです。

日本人ならもっと絶対リスク減少は小さいのかも。そうなると、スタチンを処方すべきかどうかは患者さんの状況によりけりなんでしょうね。

AKI後のACE阻害薬・ARBの使用は、死亡率低下と関連あり

入院患者に起こるAKIは、退院後の死亡率の増加と関連があり、高血圧や心血管イベントが引き金となっていると考えられます。

AKIを起こした患者で、ACE阻害薬やARBと長期予後の関連を検証した前向き研究はまだありません。

Association of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker Use With Outcomes After Acute Kidney Injury
JAMA Intern Med. 2018;178(12):1681-1690.

【PECO】
P:入院中にAKIを生じた症例
E:退院後6ヶ月以内にACE阻害薬・ARBを開始
C:ACE阻害薬・ARBの内服なし
O:死亡率
secondary endpoint:腎疾患による入院、ESRD、ESRD+Crの倍化

inclusion criteria:入院の前180日以内にCrが測定されていること、入院中にCrが測定されていること
exclusion criteria:初回の入院中に死亡した症例、初回の入院中にESRD(<15ml/min/1.73m2)に至った症例

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・カナダ
・Alberta Kidney Disease Network population based database
・2008年7月1日〜2013年3月31日
・46253例(ACE阻害薬・ARBあり群22193例、なし群24060例)
・観察期間:最低2年
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】

【まとめと感想】
後向き研究では、AKI後にACE阻害薬やARBの使用は、死亡率の低下と関連がありました。ただ、腎疾患による入院・高K血症の増加とも関連があるようです。現時点で、AKI後にACE阻害薬やARBを使用することは妥当だけど、CrやKなどのモニタリングは必要、ということでしょう。

ACE阻害薬やABRの使用がうっ血性心不全の増加と関連があるようですが、discussionでは特に触れられていませんでした。むしろ、減りそうですが。よくわかりません。

CABGで使用する内胸動脈は片側で良いか、両側が良いか

冠動脈多枝病変では、PCIよりCABGの方が予後が良いです。それはCABGに心筋梗塞予防効果があるためですが、CABGでは左内胸動脈(LITA)が使われるのが一般的です。

観察研究では、内胸動脈を片側のみ用いたCABGより、左右の内胸動脈を用いたCABGの方が、死亡率を低下させることが報告されています。

このART試験は、両側内胸動脈を用いることで、LITAのみの場合と比べ生命予後を改善させるか検証したRCTで、5年の時点では死亡率に差はありませんでした。10年ではどうなのでしょうか。

Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts at 10 Years
N Engl J Med 2019; 380:437-446

【PICO】
P:冠動脈多枝病変
I:両側の内胸動脈を用いたCABG
C:片側の内胸動脈を用いたCABG
O:全死亡
secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、再血行再建、出血、創部合併症

exclusion criteria:冠動脈1枝病変、同時の弁膜症手術、CABGの既往

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験など)
地域:オーストラリア、オーストリア、ブラジル、インド、イタリア、ポーランド、イギリス
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:10年
症例数:3102例(両側群1548例、片側群1554例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
群間差なし。
ざっくりと。年齢63歳、男性85%、白人90%、インスリン依存性糖尿病6%、陳旧性脳梗塞3%、OMI40%、

【結果】
片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用できたのは83.6%。両群とも約40%でoff-pumpで行われている。

橈骨動脈は、両側群で19.4%、片側群で21.8%使用されている。

10年時点での薬剤に群間差なし。
アスピリン81%、β遮断薬74%、スタチン90%、AEC阻害薬/ARB72%。

サブグループ
糖尿病、70歳未満、off pumpかon pumpか、橈骨動脈の有無、グラフト本数、EF<50%などすべてのサブグループでも有意差なく、一貫した結果。

【まとめと感想】
両側群で想定よりクロスオーバーが多かったり、片側群で橈骨動脈使用率がちょっと多かったり、両群の差を薄める要因はあるかもしれませんが、CABGで内胸動脈を両側使おうが、LITAだけにしようが、生命予後に変わりないという結果でした。

敗血症性ショックでの循環蘇生はcapillary refill timeを指標にする

敗血症では、末梢循環をターゲットとした循環蘇生が良いのか、あるいは乳酸をターゲットとした循環蘇生が良いのか。

Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2019 Feb 17. doi: 10.1001/jama.2019.0071.

【PICO】
P:高乳酸血症(≧2.0mmol/L)+輸液負荷・血管収縮薬を要する敗血症性ショック
I:capillary refill timeを指標とした循環蘇生
C:乳酸を指標とした循環蘇生
O:28日死亡率
secondary endpoint:90日死亡率、72時間以内の臓器不全(SOFAスコアによる)、28日間の人工呼吸器離脱期間・腎代替療法離脱期間・血管収縮薬離脱期間など

inclusion criteria:MAP≧65mmHgを維持するため60分以内に20ml/kgの輸液を行った上で血管収縮薬が必要な症例
exclusion criteria:出血、重症ARDS、DNR

手順:介入期間は8時間。まずCRT測定。右手の人差し指の腹でスライドグラスを皮膚に押し付け、皮膚が白くなった状態で10秒間キープ。計測器でrefill timeを測定し、3秒以上を異常とした。
CRTは30分おきに、乳酸は2時間おきに測定。

目標は、CRTターゲット群ではCRTの正常化、乳酸ターゲット群では乳酸の正常化、または2時間ごとに20%の減少。

1st step:輸液反応性の評価。輸液反応性があれば、目標が達成されるか、CVPが上限に達するか、輸液反応性がなくなるまで500mlの晶質液を30分ごとに投与。輸液反応性が判断ができない場合は、目標が達成されるかCVPが上限に達するまで輸液を継続。
2nd step:高血圧患者で、1st stepで目標に到達しなかった場合、ノルアドレナリンを用いてMAP80−85mmHgに上げ、CRTと乳酸を1−2時間で評価。目標に到達すればその血圧を維持。目標に到達しなければノルアドレナリンをもとの投与量まで減量して3rd stepへ。
3rd step:目標に到達していなければ、低容量のドブタミンかミルリノンを投与し、1−2時間後に評価。それでも目標に到達しない、もしくは安全性の問題がでてきたら、ドブタミン・ミルリノンは中止。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:南米5ヶ国
登録期間:2017年3月〜2018年3月
観察期間:28日間
症例数:424例(CRTターゲット群212例、乳酸ターゲット群212例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。年齢62歳、男女半々、APACHEⅡ22、SOFA9.7、高血圧40%、敗血症の原因は腹腔内感染と肺炎が1/3ずつ、尿路感染が20%、MAP69mmHg、CVP9mmHg、乳酸4.5mmol/L、ScvO2 71%、CRT5秒、輸液量25−30ml/kg、敗血症の診断から抗菌薬投与まで1.5-2時間

【結果】

【まとめと感想】
統計学的には有意な差ではないけど、CRTを指標とした循環蘇生を行うことで、28日死亡率が低下しています(HR:0.75 [0.55-1.02])。ベットサイドで簡単にできる方法だし、これはいい。

私自身は、CRTをターゲットとして循環蘇生を行ったことがありませんでした。末梢循環が改善した結果として、「CRT・mottled skinよくなってんじゃん」って感じでみてました。今度からはこのやり方を取り入れようと思います。

まず、CRTをターゲットとした循環蘇生を行い、さらに乳酸値も確認していくという感じでやってみます。

感染性心内膜炎の初期治療が奏功していれば、経口抗菌薬に切り替えてもいいかもしれない

感染性心内膜炎(IE)では、静注が基本です。経口薬に切り替えた経験はありません。

治療の失敗は悲惨な結果に繋がることを考えると、”腸管からの吸収”という余計なステップがある経口薬は使いづらいと感じます。

そんなIEで経口薬への切り替えをトライするという、なかなか勇気ある?RCTです。

Partial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis.
N Engl J Med. 2019 Jan 31;380(5):415-424.

【PICO】
P:感染性心内膜炎
I:経口抗菌薬にスイッチ
C:抗菌薬静注を継続
O:全死亡、計画されていない心臓手術、臨床的に明らかな塞栓症、同じ起炎菌による菌血症の再燃

inclusion criteria:左心系のIE、Duke診断基準を満たしていること、起炎菌がstreptococcus・Enterococcus faecalis・Staphylococcus aureus・CNSのいずれかであること、安定した状態であること(初期治療への反応が良く治療開始から10日以上経過している、弁手術を行った場合は術後7日以上経過している)、

手順:ランダム化の前に経食道心エコー(TEE)を行い、膿瘍や手術を要する弁異常がないか確認する。ランダム化の時点で予定治療期間が10日以上あること。経口抗菌薬は異なるクラスの薬剤を2剤併用する。静注群は入院で治療。経口群は2−3回/週外来へ通院する。予定された治療が終わる1−3日前にTEE再検。治療終了後、1週間後、1,3,6ヶ月後に外来受診。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験:非劣性マージン10%)
地域:デンマーク
登録期間:2011年7月15日〜2017年8月30日
観察期間:6ヶ月
症例数:400例(経口群201例、静注群199例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。ざっくりと。
年齢67歳、男性3/4、基礎疾患も差はない(DM、腎不全、透析、COPD、悪性腫瘍)、起炎菌 Streptococcus50%、Enterococcus faecalis25%, Staphyrococcus aureus20%, CNS5%、人工弁25%、ペースメーカ10%、既知の弁膜症40%、半分が大動脈弁、1/3が僧帽弁、残りが両方

【結果】
割り付けられた治療法の期間は、経口群17(14−25)日、静注群19(14−25)日。

primary endpoint
経口群9.0% vs 静注群12.1%、P=0.40

【まとめと感想】
初期治療によって安定したIEは、経口薬に切り替えても静注薬に劣らないという結果でした。

バイオアベイラビリティが高く作用機序の異なる薬剤を2剤併用することで、治療失敗のリスクを回避できるのかもしれません。ただ、この結果で、「経口薬に切り替えてさっさと退院させるかー」という感じにはなりません。早期に退院させなければならない事情があれば、やってもいいかもしれませんが。

ケチをつけるわけではないですが、非劣性の証明なので非劣性マージン分(この場合は10%)だけ劣る可能性があることは認識しておいた方がいいでしょう。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックの循環動態維持には、ノルアドレリンを使用し、アドレナリンは避ける

普段、循環動態維持のために使っている薬剤はノルアドレナリンとドブタミンで、アドレナリンというものは正直使ったことがありません。

心臓に頑張ってもらいたいときはドブタミンを、血管を締めたいときにはノルアドレナリンを使います。

アドレナリンは蘇生のときにしか使ったことがないです。そのアドレナリンもPARAMEDIC2試験で、院外心停止でプラセボに比べて病院到着までの生存率は改善したものの、退院時の重度神経障害の患者の割合は増えるという結果でした。

あまり良い印象は持たれていない薬剤かもしれません。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックに、アドレナリンを使うか、ノルアドレナリンを使うか。ここでもアドレナリンは良い結果は出せませんでした。

Epinephrine Versus Norepinephrine for Cardiogenic Shock After Acute Myocardial Infarction.
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 10;72(2):173-182.

【PICO】
P:心原性ショックを合併したAMI
I:アドレナリン(AD)の投与
C:ノルアドレナリン(NAD)の投与
O:cardiac indexの変化(有効性評価項目)、難治性心原性ショック(安全性評価項目)

難治性心原性ショック:①エコーで評価した重大な心機能不全、②乳酸値上昇、③適切な血管内ボリュームを保っているにも関わらず低血圧(SAP<90mmHg or MAP<65mmHg)が持続し、1γ以上のADまたはNAD、もしくは10γ以上のドブタミンを投与しているにも関わらず臓器機能の急激な悪化(無尿、肝不全)を認めること。

inclusion criteria:
①PCIによる再灌流に成功していること
②血管収縮薬なしでSAP<90mmHg or MAP<65mmHg
③低血圧に対し血管収縮薬が必要
④cadiac index<2.2l/min/m2
⑤肺動脈楔入圧(PCWP)>15mmHg
⑥EF<40%
⑦臓器低灌流(mottled skin、無尿、乳酸値上昇、意識の変容)
⑧肺動脈カテーテル挿入

exclusion criteria:体外生命維持装置、他の原因でのショックなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:フランス
登録期間:2011年9月〜2016年8月
症例数:57例(AD群27例、NAD群30例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
AD群 vs NAD群
性別のみ群間差あり(男性:50% vs 80%)。他は同等。
ざっくりと。BMI25、心拍数(100 vs 88)、MAP72、高血圧(30% vs 20%)、組み入れ前の蘇生術(41% vs 60%)、SOFA10、ランダム化前のショック持続時間6時間、組み入れ前の薬剤(アドレナリン 30% v 17%、ノルアドレナリン 70% vs 80%)、STEMI96%、乳酸値(5.0mmol/L vs 2.9mmol/L)、LVEF34%
群間差は性別のみだけど、Nが小さいから有意にならないだけで、多少の差はある

【結果】
難治性ショックがAD群で多かったため、試験は早期中止されています。

MAP70mmHgを保つのに必要な投与量は、AD:0.7±0.5γ、NAD:0.6±0.7γ。最大投与量に有意差なし。

DOBを併用したのは両群とも67%で、投与量も有意差なし。

投与開始3日までの血圧(SAP、DAP、MAP)の推移に有意差なし。

図しか示されていないので、正確にはわかりませんが、有効性評価項目であるCIはbaselineが2.0ぐらいで、72時間後には両群とも2.7ぐらいにあがっていますが、有意差はありません(P=0.43)。

AD群で、2時間後・4時間後のCIが2.4ぐらいに上がっていて、NAD群と比較し有意に高かったようです。

安全性評価項目は

【まとめと感想】
アドレナリンでもノルアドレナリンでも、血圧やCIは同じような変化をたどっており、差はありませんでした。しかし、アドレナリンで投与早期に(2−6時間)有意に心拍数が高くなり、心筋酸素消費量のサロゲートマーカーであるダブルプロダクトが有意に上昇しています。つまり、同じ血圧を維持するのに酸素を余計に消費しないといけないということで、アドレナリンは心臓の燃費を悪くさせているとも言えます。

かつ、乳酸値は投与開始2−4時間で有意に上昇(ノルアドレナリンでは投与開始後より低下)しています。CIは両群で似たようなもの(むしろ開始早期はアドレナリンの方がCIが高い)ということは、酸素供給ではなく末梢循環の問題で乳酸が上がっているのだと思います。

アドレナリンにはα受容体刺激作用もβ受容体刺激作用もありますが、ノルアドレナリンのβ受容体刺激作用は弱いです。もしかしたら、β2受容体刺激作用により末梢循環不全をきたしているのかもしれません。

不整脈、死亡が多めなのも気になります。

心筋梗塞+心原性ショックには、ドブタミンとノルアドレナリンで対処するということでよさそうです。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。