ステント留置から1年以上たった心房細動患者の抗血栓療法 OAC-ALONE試験

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

冠動脈疾患があり、カテーテル治療されている患者さんで心房細動も合併している場合、ESCのガイドラインでは、ステント留置から1年たったら抗凝固薬単剤を推奨。AHAでは、ステント留置から1年たって、塞栓リスクが低くて出血リスクが高いなら抗凝固薬単剤を推奨している。ただ、RCTはやられていなかったので、本当にそれでいいかはわからない。これが、冠動脈疾患+心房細動で抗凝固療法単剤で良いか検証した初めてのRCT。

【PICO】
P:ステント留置から1年以上経過した冠動脈疾患+心房細動
I:抗凝固薬単剤
C:抗凝固薬+抗血小板薬
O:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症

抗凝固薬はワルファリンかDOAC。ワルファリンは70歳未満はINR:2.0−3.0を、70歳以上はINR:1.6-.26を目標とし、少なくとも3ヶ月おきに測定。DOACは基本的には減量基準に従うことを推奨するが、自由裁量による減量もあり。

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験)
地域:日本 111施設
登録期間:2013年11月5日〜2016年12月28日
観察期間:2.5年
予定症例数:2000例(event rate:8.0%/1.5年、非劣勢マージン4.0%)
症例数:690例(OAC単剤群344例、併用療法群346例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(第一三共)

【患者背景】
ざっくりと。
年齢75歳、発作性と持続性+慢性は半々ぐらい、CHADS2:2.5±1.2、CHA2DS2-VASc:4.6±1.4、HAS-BLED:3以上 44%、抗凝固薬はワルファリン:3/4、DOAC:1/4、ワルファリンのTTR75%
両群で差があったのは、eGFR<30(10%vs5%)、PPI(53%vs62%)で、いずれもOAC単剤群で少し不利。

【結果】
OAC単剤群 vs 併用療法群
以下はいずれも年率。
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症 (primary endpoint)
6.4% vs 5.5%, HR:1.16(95%CI:0.79-1.72)

全死亡
4.6% vs 3.5%, HR:1.30(95%CI:0.82-2.10)

心血管死
2.3% vs 1.9%, HR:1.18(95%CI:0.62-2.28)

心筋梗塞
0.93% vs 0.46%, HR:2.03(95%CI:0.64-7.59)

脳梗塞+全身性塞栓症
1.5% vs 2.2%, HR:0.69(95%CI:0.33-1.38)

TIMI大出血
1.9% vs 3.4%, HR:0.57(95%CI:0.31-1.03)

【まとめと感想】
日本でやられたRCTだし、みんなが知りたい疑問だし、結果が出るのが楽しみでしたが、著者がabstractで述べている通り、パワー不足で結論めいたことは言えないのが残念です。日本でのRCTでは多くの症例を集めるのは本当に大変そうです。

心房細動患者の死因の多くは非心原性ですが、心房細動+冠動脈疾患であってでも心臓死は半分ぐらいで、もう半分は心臓以外の原因で亡くなられるということは頭に入れておく必要があるでしょう。それと、心筋梗塞の再発は1%/年ととても低いことも。

低酸素血症のない急性心筋梗塞患者への酸素投与は不要

DETO2X-AMI試験は、急性心筋梗塞を疑う患者で酸素を投与する群と投与しない群に分けて、死亡率が改善するかどうか検証したRCTです。

心筋梗塞に酸素投与は不要 DETO2X-AMI試験

酸素投与してもしなくても1年後の死亡率は差がありませんでした。

DETO2-AMI試験は急性心筋梗塞疑いの段階でランダム化しているので、そうではない患者さんも含まれています。なので、心筋梗塞に限れば違った結果になるかもしれないという考えは当然浮かびますが、サブグループ解析を見てみるとSTEMIでも有意差がなかったので、やっぱり結果的に心筋梗塞であっても、酸素投与のメリットはないと言えます。

また、SpO2:90-95%のサブグループでも有意差はなく、SpO2が多少低くても酸素投与は不要と言えます。

なので、STEMIであろうが、SpO2がちょっと低めであろうが、別に酸素投与しなくても患者さんの予後は悪くなりません。まあ確かに、急性期の数時間の酸素投与が、生命予後を変えるとはインパクトがあるとは思えません。

で、そのDETO2X-AMI試験のsecondary endpointの結果が、Circulationに出ました。

Long-Term Effects of Oxygen Therapy on Death or Hospitalization for Heart Failure in Patients With Suspected Acute Myocardial Infarction

結果としては、全死亡+心不全入院、心全死亡+心不全入院+心筋梗塞、血管死、心不全入院のいずれも酸素投与の有無で差はありませんでした。

AVOID試験では酸素投与により、トロポニンとかCKが高い傾向にあり、過剰な酸素により再環流障害を増大させる可能性があるので、低酸素血症でなければ急性心筋梗塞で酸素投与しない方が良いようです。

アロプリノールは痛風患者のCKD進行抑制と関連

Association of Chronic Kidney Disease With Allopurinol Use in Gout Treatment
JAMA Intern Med. 2018;178(11):1526-1533.

【PECO】
P:痛風
E:新規のアロプリノール300mg以上の内服開始(アロプリノール群)
C:アロプリノールの内服開始なし(非開始群)
O:CKD G3以上への腎障害の進行

exclusion criteria:CKD G3以上の腎障害、痛風の診断前の尿酸降下薬の使用

【デザイン、セッティング】
・前向きコホート研究
・9520例(アロプリノール群4760例、非開始群4760例)
・観察期間 アロプリノール群4.9年、非開始群4.5年
・プロペンシティスコアマッチ

【結果】
ざっくりとした患者背景。
年齢57歳、男性83%、BMI30、アロプリノールの使用量300mg:95%、CKD G2 70%、HT 47%、DM8%、心不全4%、eGFR77

アロプリノール群 vs 非開始群
▶︎CKD G3以上の腎障害
12.2% vs 13.1% HR:0.87(95%CI:0.77-0.97)

▶︎死亡
5.3% vs 5.0%

【まとめと感想】
アロプリノールが腎臓にいい作用があるかどうかは議論があるところらしい。ただ、少なくとも腎機能を悪化させるというデータはない。

で、痛風患者に限ると、腎機能の悪化が少なかったという話でした。

心房細動を合併した末期腎不全で、アピキサバンは有効なのか

Outcomes Associated With Apixaban Use in Patients With End-Stage Kidney Disease and Atrial Fibrillation in the United States.
Circulation. 2018 Oct 9;138(15):1519-1529.

【PECO】
P:末期腎不全で心房細動(AF)を合併した透析患者
E:アピキサバン内服
C:ワルファリン内服
O:脳梗塞・全身性塞栓症、大出血、、消化管出血、頭蓋内出血、死亡

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・United States Renal Data System
・25523例(アピキサバン群2351例、ワルファリン群23172例)のうち、prognostic scoreでマッチした症例を解析(アピキサバン群2351例、ワルファリン群7053例)
・COX回帰分析

【結果】
アピキサバン群 vs ワルファリン群
▶︎脳梗塞・全身性塞栓症(100人年)
12.4 vs 11.8 HR:0.88(95%CI:0.69-1.12)

▶︎大出血(100人年)
19.7 vs 22.9 HR:0.72(95%CI:0.59-0.87)

▶︎消化管出血(100人年)
23.8 vs 23.4 HR:0.86(95%CI:0.72−1.02)

▶︎頭蓋内出血(100人年)
3.1 vs 3.5 HR:0.79(95%CI:0.49-1.26)

▶︎死亡(100人年)
23.7 vs 24.9 HR:0.85(0.71-1.01)

【まとめと感想】
そもそも透析患者の抗凝固療法で、10人に1人がDOACということが軽く驚き。そして、やっぱりワーファリンは悪者にされる。

まあ、後向きのデータなので、せめて前向きので検討が必要ではありますが。RCTをやってもらいたいけど、メーカーとしては旨味がないからやらないでしょう。パイは小さいし、数年かけてやってもその頃には特許は切れるし。

重症患者に対するPPI静注による消化管出血予防効果

人工呼吸器、ショック、敗血症などは消化管出血のリスクで、消化管出血は死亡のリスクになります。PPIによる消化管出血の予防効果に関するRCTのシステマティックレビューについては以前記事にしました。プラセボやH2ブロッカーに比べ消化管出血は抑えられるが、肺炎は増えるかもしれないという感じの結果でした。

重症患者のストレス潰瘍予防に最も効果が高いのはPPIだが、院内肺炎は増える

この前、NEJMにSUP-ICU試験という、PPIの予防投与についてのRCTが出ました。

Pantoprazole in Patients at Risk for Gastrointestinal Bleeding in the ICU.
N Engl J Med. 2018 Oct 24. doi: 10.1056/NEJMoa1714919. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:消化管出血のリスクを有する患者
I:パントプラゾール40mg静注
C:プラセボ静注
O:90日死亡
secondary outcome:臨床的に重大な消化管出血、新規発症の肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)、急性心筋梗塞(AMI)

消化管出血のリスク=ショック、抗凝固薬の使用、腎代替療法下、24時間以上の人工呼吸器装着が予想される、肝疾患の既往、凝固異常

【試験の概要】
デザイン:RCT(multicenter、double blind)
地域:デンマーク
登録期間:2016年1月4日〜2017年10月22日
観察期間:90日
症例数:3298例(PPI群1645例、プラセボ群1653例)、脱落16例
解析:mITT解析
スポンサー:メーカーの関与なし

【結果】
患者背景は、肺疾患・凝固異常・緊急手術でちょっとだけ差があるのみ。
以下、ざっくりと。
年齢67歳、男性2/3、慢性肺疾患20%、慢性心不全9%、ICU入室からランダム化まで15時間、ICU入室理由 内科疾患60%;緊急手術30%;待機的手術10%、人工呼吸器80%、カテコラミン2/3、SOFA9点

PPI群 vs プラセボ群
▶︎90日死亡(primary endpoint)
31.1% vs 30.4% HR:1.02(95%CI:0.91-1.13)

▶︎消化管出血(secondary endpoint)
2.5% vs 4.2% HR:0.58(95%CI:0.40-0.86)

▶︎感染症(secondary endpoint)
16.8% vs 16.9% HR:0.99(95%CI:0.84−1.16)

【まとめと感想】
重症患者に消化管出血予防のためにPPIを投与しても、死亡率を改善するまでの効果はないけど、消化管出血は予防できる。上述のシステマティックレビューでも、PPI予防投与による死亡率改善は示されていなかったので、やはりそこまでの効果はないと言えます。著者はdiscussionでこのシステマティックレビューを引用して、死亡と感染に差がないけど消化管出血が減ったのは同じような結果だと言っていました。

ちなみに、AARは1.7%なので、NNTは59です。

感染症は特に有意差はなかったけど、PPIが肺炎とかCDIとかのリスクになり得ることは念頭において、消化管出血予防のために具合が悪い人にはちょこっとPPI入れておくってことでよいでしょう。

カロリー密度の高い経腸栄養を使ったfull feeding

Energy-Dense versus Routine Enteral Nutrition in the Critically Ill
N Engl J Med. 2018 Oct 22. doi: 10.1056/NEJMoa1811687. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:人工呼吸器装着中のICU患者
I:カロリー密度の高い経腸栄養(1.5kcal/ml)
C:通常の経腸栄養(1.0kcal/ml)
O:全死亡
secondary outcome:生存期間、28日死亡率など

カロリー密度の高い製剤は、通常の経腸栄養と比較し、蛋白質の量はほぼ同じで、脂肪と炭水化物が多い。

投与速度の目標は、1ml/kg/h(理想体重)として、48時間以内の到達することを推奨。

【試験の概要】
デザイン:RCT(multicenter, double blind)
地域:オーストラリア・ニュージーランド
登録期間:2016年6月21日〜2017年11月14日
観察期間:90日
症例数:3957例(1.5kcal群1971例、1.0kcal群1986例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
ざっくりとしたcharacteristics。
年齢57歳、男性60%、BMI29、非手術例73%、緊急手術17%、待機的手術10%、APACHEⅡスコア22、カテコラミン60%、RRT8%

ランダム化から栄養開始まで16時間、経腸栄養を受けた期間は6日で80%が目標カロリーに到達。投与量は約1200ml/日。

▶︎90日死亡率(primary endpoint)
1.5kcal群 vs 1.0kcal群
26.8% vs 25.7% 95%CI 1.05(0.94−1.16)

年齢・敗血症・外科or内科疾患、BMIなどすべてのサブグループで有意差なし。

▶︎28日死亡率(secondary endpoint)
22.9% vs 23.0% 95%CI:1.00(0.89−1.12)

【まとめと感想】
ガイドラインでは、25−30kcal/kg/日の栄養投与が推奨されているけど、そこまで強い根拠はなくて、むしろEDEN trialでは、400kcal/日のtrophic feedingでも1300kcal/日と死亡率や人工呼吸器装着期間に差はなかった。嘔吐は増えるし血糖は上がる。

このRCTでも1.5kcal/kgという多めのカロリーを投与しても、死亡率には影響がなかった。だから、trophic feedingで良いとは言えないけど、full feedingにする必要はなく、カロリー密度が高い経腸栄養をあえて使う必要もない。

経腸栄養は循環動態とかお腹の具合的に大丈夫そうなら、早めにちょこっと入れておく感じでいいのでしょう。

体温管理療法は心原性ショックを合併した心筋梗塞の血行動態や予後を改善しない

院外心停止での体温管理療法(TTM)については以前記事にした。

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

TTMの有効性が示されたRCTでは心原性ショックは除外されているので、心原性ショックでもTTMが有効かはわからないし、心停止していない心原性ショックでTTMが有効かどうかもわからない(1-3)

Mild Hypothermia in Cardiogenic Shock Complicating Myocardial Infarction – The Randomized SHOCK-COOL Trial.
Circulation. 2018 Jul 19. pii: CIRCULATIONAHA.117.032722. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.032722. [Epub ahead of print]

心原性ショックを合併する急性心筋梗塞で、体温管理療法が血行動態や予後の改善につながるか検証したRCT。

【PICO】
P:心原性ショックを合併した急性心筋梗塞
I:体温管理療法(33℃、24時間)
C:通常治療
O:24時間時点のCardiac power index(CPI)

CPI=平均動脈圧×Cardiac index/451

inclusion criteria:SBP90mmHg以下が30分以上持続、SBP90mmHg以上を維持するのにカテコラミンが必要など
exclusion criteria:12時間以上持続する心原性ショック、TTM適応の心停止など

primaryPCIの最中にランダム化を行う。
体温管理療法はinvasive cooling catheter(ZOLL社)を用いる。
全員にSwan-Ganzカテーテル挿入し、8時間おきに測定。

【試験の概要】
デザイン:single center, open-label RCT
地域:ドイツ
登録期間:2012年7月〜2015年3月
症例数:40例(各群20例ずつ)
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
TTM群 vs 通常治療群
▶︎CPI(primary endpoint)
0.41 [interquartile range 0.31-0.52] vs 0.36 [interquartile range 0.31-0.48] W/m2; p=0.50
▶︎30日死亡率(secondary endpoint)
60% vs 50%, ハザード比 1.27(95%CI:0.55-2.94)

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞に、33℃・24時間の体温管理療法を行っても、有意な血行動態の改善はない。死亡率は体温管理療法で多い傾向だったが、このサンプルサイズなのでなんとも言えない。

院外心停止での体温管理療法で生命予後が改善しているのは、低体温自体に意味があるというより、むしろ心停止後の高体温を避けることに意味があるのかなーと思っているので、心原性ショックで体温管理療法を行ってもあまり良いことはないというこのRCTの結果は然もありなんという感じがします。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.

VA-ECMO下の心原性ショック・閉塞性ショックへの早期経腸栄養

重症患者での早期経腸栄養は死亡率は変わらないが、感染は減る可能性がある。ガイドラインなどでは、ショック患者ではせめて循環動態が安定するまでは経腸栄養は控えることが推奨されている。

心原性ショック・閉塞性ショックでVA-ECMOがついているような患者で、早期経腸栄養の安全性・有用性を検証したRCTや前向き研究はない。これが初めてnationwide studyらしい。

Early enteral nutrition for cardiogenicor obstructive shock requiring venoarterial extracorporeal membrane oxygenation: a nationwide inpatient database study
Intensive Care Med. 2018 Aug;44(8):1258-1265.

【PECO】
P:心原性ショックor閉塞性ショックで人工呼吸器とVA-ECMOがついている人
E:早期経腸栄養開始(VA-ECMO導入から2日以内)
C:晩期経腸栄養開始(3日以降)
O:院内死亡率、28日死亡率

【デザイン、セッティング】
・the Japanese Diagnosis Procedure Combination inpatient database
・後向き
・2010年7月〜2016年3月
・1769例(早期220例、晩期1547例)
・人工呼吸器+ノルアドレナリン投与されている心原性ショックまたは閉塞性ショックで、VA-ECMOが導入された症例を抽出
・VA-ECMO導入後2日以内に死亡・離脱した症例は除外

【結果】
baselineはだいたいの値は、ノルアドレナリン0.03γ、ドブタミン1.5γ、IABP30%。

早期経腸栄養 vs 晩期経腸栄養
死亡率
55% vs 64% P=0.007

28日死亡率
37.7% vs 48% P=0.004

肺炎
9% vs 9% P=0.75

腸管虚血
0% vs 1% P=0.26

【まとめと感想】
VA-ECMOがついていてカテコラミンもちょこっと流れているようなショックの患者に早期に経腸栄養を開始すると予後が良いという結果。さすがに早期経腸栄養で予後がよくなるとまでは言えないだろうが、カテコラミンが多くなくて循環動態が安定に向かっているなら、ECMOがついていること自体は経腸栄養の妨げにはならないと考えていいのかも。開始基準や投与量(カロリー・栄養素)は主治医・施設によりけり。

早期経腸栄養 エキスパートオピニオン

ESICMの早期経腸栄養に関するエキスパートオピニオン。

Early enteral nutrition in critically ill patients: ESICM clinical practice guidelines
Intensive Care Med. 2017 Mar;43(3):380-398.

一般的な原則と注意点
・低速(10−20ml/h)から開始し、消化器症状に注意する。
・腹痛、腹部膨満、腹腔内圧上昇を認めた場合には経腸栄養を増やさない。症状が重篤な場合や腸管虚血などの場合には減量中止を。
・最適なカロリー、蛋白量はわからないが、カロリー過多は害で、少ない方が安全。
・胃貯留があり、他に異常がなければ、腸管運動促進薬や幽門後チューブ留置を。
・経腸栄養の開始・増量時には腹腔内圧測定を。
・意識障害や嚥下障害がある場合には、幽門後チューブ留置などの予防を。

推奨
・経静脈栄養より経腸栄養(死亡率は変わらないが、感染は少ない。HR:0.55、95%CI:0.35−0.86)。
・経腸栄養は遅らせるより、早期(48時間以内)に開始した方が感染が少ない(HR:0.64、95%CI:0.46−0.90)。

早期経腸栄養が良い
・ECMO下、外傷性脳損傷、脳梗塞、脊髄損傷、重症急性膵炎、消化管手術や腹部大動脈手術の術後、腹部外傷(腸管が大丈夫なら)、open abdomen。
腸管虚血や通過障害がないなら腸蠕動音に関わらず早期経腸栄養を。
・筋弛緩薬の使用のみ、伏臥位のみでは経腸栄養を遅らせる理由にならない。
・体温管理療法下では低速での経腸栄養を。

経腸栄養を遅らせた方が良い
・ショックや臓器灌流障害があれば、輸液や昇圧剤でコントロールがつくまで経腸栄養開始を遅らせる。ただし、多量の昇圧剤(ノルアドレナリン1γ以上)、高乳酸血症の持続などがある場合はその限りではない。
・コントロール不良の低酸素血症、高二酸化炭素血症、アシドーシス、腸管虚血、腹部コンパートメント症候群、胃からの排液500ml/6h以上。
上部消化管出血のときは出血が確認できるまで待つ。

VA-ECMO下でのHIT発症率

Prevalence and outcome of heparin-induced thrombocytopenia diagnosed under veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: a retrospective nationwide study.
Intensive Care Med. 2018 Sep;44(9):1460-1469.

VA-ECMOとHIT(ヘパリン起因性血小板減少症)との関連を調べたもの。

フランスの20施設のICUの後向きのデータ。

2012年1月から2016年12月までにICUへ入室し、心原性ショックでVA-ECMOを装着した患者で、臨床的にHITを疑いヘパリン血小板第4因子複合体抗体(HIT抗体)陽性だった患者をスクリーニング。

HITの診断は、HIT抗体陽性と少なくとも1つ以上の機能的検査が陽性であること。機能的検査は血小板凝集法、SRA法、HIPA法のいずれか。HIT抗体も機能的検査も陰性であれば、HITではないと診断。

HIT抗体が陽性になったのは39/5797例で、うちHITと診断がついた(機能的検査も陽性)だったのは21/5797例(0.35%、95%CI:0.12-0.52)。

だいたい300人に1人くらい。そんなもんなんですね。ちなみに、HITでもHITが除外された症例でも血小板はbaselineから70%ぐらい低下していて、4Tスコアは5点でした。HIT抗体とか調べてみないとわからないということですね。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。