PCSK9阻害薬エボロクマブの費用対効果

Updated Cost-effectiveness Analysis of PCSK9 Inhibitors Based on the Results of the FOURIER Trial
JAMA. 2017 Aug 22;318(8):748-750

2005−2012年のNational Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)で、FOURIER試験のクライテリア(動脈硬化性冠動脈疾患を有する米国の成人40-80歳、スタチン内服下でLDL-C ≥70 mg/dL)を満たす症例に、PCSK9阻害薬エボロクマブを使用すると仮定して、その費用対効果について検証。

890万人がFOURIER試験のクライテリアを満たし、平均年齢は66歳、平均LDLコレステロール104mg/dl、33%で糖尿病あり。

スタチンへのPCSK9阻害薬の追加はエゼチミブの追加より、MACEを289万3500減少させる。ICERは45万ドル。

ICERとは、Wikipediaによると・・・

1QALYを伸ばすために要するコストを incremental cost-effectiveness ratio(ICER)と呼び、多くの場合、この値が医療行為の是非の基準となる。

ということらしい。

QALY(quality adjusted life years)は質調整生存年で、クオーリーと読むらしい。

経済評価を行う際に、評価するプログラムの結果の指標として用いられる。単純に生存期間の延長を論じるのではなく、生活の質(QOL)を表す効用値で重み付けしたものである。QALYを評価指標とすれば、生存期間(量的利益)と生活の質(質的利益)の両方を同時に評価できる。効用値(utility)は完全な健康を1、死亡を0とした上で種々の健康状態をその間の値として計測される。たとえばAという治療をうけた場合、5年間生存期間が延長すると仮定し、その後の効用値0.8とすると、QALYは5(年)×0.8=4(QALY)となる。
http://canscreen.ncc.go.jp/yougo/08.htmlより引用


(本文から引用)

FOURIER試験では、エボロクマブにより心筋梗塞が有意に減少した。それにより、1094億7800万ドルの医療費削減が見込めるが、それは非心血管ケアによって相殺され、かつ、2兆4856億8400万ドルという莫大な薬剤費がかかることになる。

薬価を71%下げないと、費用に見合った効果がないと結論づけている。

日本だと最低でも薬価の70%は税金で賄う必要があるわけだから、まあこれを使って一番恩恵を受けるのはメーカーだろうな。

ROOBY試験 OPCABの5年生存率はon-pump CABGに劣る

CABGの方法としては、心拍動下で行うoff-pumpCABG(OPCAB)と人工心肺を用いたon-pumpCABGがある。周術期の脳梗塞はoff-pumpで少なくなることが期待できるが、グラフト開存率はon-pumpの方が良いと言われている。

off-pumpとon-pumpのCABGを比較したRCTはいくつかある。ドイツの75際以上の高齢者を対象としたGOPCABE試験では、早期の血行再建はoff-pump群で多いものの、1年後の死亡率に差はなく、CORONARY試験でも同様に早期の血行再建はoff-pumpで多かったが、5年生存率に差はなかった(1−2)。

このROOBY試験では、1年後のMACEはoff-pump群で有意に多く(9.9%vs7.4%)、グラフト開存率も悪いことが以前報告されていた(3)。これは、その5年のフォローアップ。

Five-Year Outcomes after On-Pump and Off-Pump Coronary-Artery Bypass.
N Engl J Med. 2017;377(7):623-632

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:全死亡とMACE(全死亡、再血行再建、非致死的心筋梗塞)

inclusion criteria:緊急もしくは待機的なCABG、CABGのみ行う症例
exclusion criteria:臨床的に有意な弁膜症

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:アメリカ
登録期間:2002年2月〜2007年6月
観察期間:5年
盲検化:患者のみ
必要症例数:2200例(詳細不明。死亡率はoff-pump15%, on-pump群10%?)
症例数:2203例(off-pump群1104例、on-pump群1099例)
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
婚姻状況も調べられている。

◇結果
外科医のoff-pumpCABG経験数は、平均120例(中央値50例)。


(本文から引用)

全死亡もMACEもoff-pump群で有意に多い。


(本文から引用)

conversionした症例を除外した感度分析(PP解析)。off-pump群で137例、on-pump群で40例がconversion。両群ともにconversionした症例でのイベントの発現が多いため、有意差がなくなる。

◇批判的吟味
・独身男性だと予後は悪くなるが、characteristicsで婚姻状況も調べられている試験はあまり見かけない。
・off-pump群でon-pumpへのconversionが多く、5年後の死亡率は27.0%(37/137例)と高い。術中のconversionが多かったのだろうか。
・off-pumpCABGの経験数は、CORONARY試験やGOPCABE試験と比べると少ない。

◇感想
このROOBY試験では、5年死亡率率はoff-pumpで有意に高く、それはconversion(on-pumpへの切り替え)が多いことが影響していそう。conversionした症例の5年死亡率は27.0%と高く、おそらく術中のconversionが多かったと考えられる。

一方、CORONARY試験では、conversionは両群で6−7%程度であり、5年生存率には差がなかった(年齢、心機能、糖尿病など患者背景は、ROOBY試験の方が軽い印象)。

つまり、術者の経験が十分であれば、off-pumpでもon-pumpでも5年生存率に差はないと考えていいかもしれない。ただ、より長期のアウトカムについてはまだわからず、今後検証されるだろう。

(1)N Engl J Med 2013;368:1189-1198
(2)N Engl J Med 2016;375:2359-2368
(3)N Engl J Med 2009;361:1827-1837

透析患者の心房細動へのワーファリン

透析患者に心房細動が見つかった場合、抗凝固療法を行なった方がいいのか、控えるべきなのか、非常に悩ましい。

AFを有する透析患者を対象としたRCTは存在しない。観察研究の結果も一貫しているわけではなく、CHA2DS2-VASc≧2点ではワーファリンにより死亡率が低下するというデータはある。(1−2)。

ガイドラインをみてみると、AHAでは、CHA2DS2-VASc≧2点の透析患者へのワーファリン投与はreasonableとしているが、ESCでは明言を避けている(3−4)。

これは、韓国のレジストリーデータ。

Warfarin Use in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Hemodialysis: A Nationwide Population-Based Study.
Stroke. 2017 Aug 11.[Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:心房細動を有する透析患者
E/C:ワーファリンの内服の有無(VKA群、non-user群)
O:急性心筋梗塞、虚血性脳梗塞、末梢血管疾患、出血性脳卒中、消化管出血

exclusion criteria:僧帽弁狭窄症、僧帽弁手術例

<デザイン、セッティング>
・韓国のレジストリー
・2009年1月1日〜2013年12月31日
・9974例(VKA群:2921例、non-user群:7053例)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコア
・プロペンシティスコアがマッチしたのは2774例ずつ
・PT-INRの推移はわからない

<結果>

(本文から引用)

心筋梗塞、脳梗塞はワーファリンの使用の有無に関わらず同程度で、出血性脳卒中はVKA群で有意に多い。

出血性脳卒中 HR1.56(95%CI:1.10−2.22)


(本文から引用)

VKA群の方が出血性脳卒中が多いが、number at riskはnon-user群で減少が早い。


(本文から引用)

交互作用の統計学的解析はされていないが、見た目では一貫性がありそう。

◇感想
透析患者では、AFに対するワーファリンの使用は、出血性脳卒中を有意に増やしてしまうが、虚血性脳梗塞や心筋梗塞は減らせないという結果。以前、死亡リスクの減少が報告されたようなCHA2DS2-VAScのhigh scoreの患者でも、ワーファリンの有効性は乏しかった。

同じアジア人でのデータなので、日本人でも同様に、透析患者には抗凝固療法を控えるというのはreasonableかもしれない。

ただ、ワーファリンを処方するかどうかの選択バイアスが大きいことと、日本の透析患者は海外と比較すると予後が良いということは考慮に入れないといけない。

選択バイアスについては、Kaplan-Meierのnumber at riskをみると、non-user群の減少が大きい。イベントはVKA群の方が多いので、non-user群で死亡が多いということだろう(ロストフォローアップも含まれるが死亡の方が多いはず)。つまり、予後が短いことが予想される患者では、そもそもワーファリンが処方されないという選択バイアスを反映しているように思う。

あと日本人透析患者の予後が良さについては、DOPPS研究から示されている。生命予後が長いということは、それだけ出血リスクに晒されるわけで、上記のような選択バイアスがあればなおさら。

この研究では、PT-INRの推移やTTRはわからないので、そこがlimitation。

抗凝固療法をやるにしろ、やらないにしろ、慎重に。

(1)Circulation. 2014;129(11):1196-203.
(2)J Am Coll Cardiol. 2014;64(23):2471-82.
(3)Circulation. 2014;130:e199-e267
(4)Eur Heart J. 2016;37(38):2893-2962.

カフによる血圧測定(NIBP)の不確かさ

Accuracy of Cuff-Measured Blood Pressure: Systematic Reviews and Meta-Analyses.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 1;70(5):572-586.

大動脈圧、橈骨動脈圧とNIBP(聴診法とオシロメトリック法)を同時計測している試験を組み入れたSR。

大動脈圧とNIBPの比較も行なっているが、ここでは割愛(動脈圧は、末梢に行くほど反射波によって収縮期血圧は上昇する。なので、橈骨動脈と大動脈ではそもそも圧波形は異なるため、あまり比較できなそう)。


(本文から引用)

橈骨動脈圧と比較した場合、NIBPは収縮期血圧を過小評価する。
  −5.7mmHg(95%CI:ー8.0 to -3.5mmHg)

バラツキは少しありそうだけど、全体としては過小評価するという傾向はある。


(本文から引用)

拡張期血圧は過大評価する。
  5.5mmHg(95%CI:3.5 to 7.5mmHg)

聴診法でもオシロメトリック法でも、収縮期血圧を過小評価し、拡張期血圧を過大評価するというのは、理屈に合う。


(本文から引用)

マクロでみた場合には、収縮期血圧を5.5mmHg過小評価し、拡張期血圧を5mmHg過大評価するが、それが個々の症例に当てはまるわけではない。

収縮期血圧の差が、5mmHg以内に収まっているのは1/3。
1/4は15mmHg以上の差がある。

◇感想
NIBPは非間歇的に血圧を測定するもっともポピュラーな方法だが、その正確性はいまいち。平均するとSBPは5mmHg低く、DBPは5mmHg高くなるが、個々の症例ではその差は大きく異なる。

血管拡張性ショックに対するアンギオテンシンⅡの昇圧効果

Angiotensin II for the Treatment of Vasodilatory Shock.
N Engl J Med. 2017 Aug 3;377(5):419-430.

ATHO-3 trial 適切な輸液・NAD0.2γ以上投与下にある血管拡張性ショックに対し、アンギオテンシンⅡの有効性を検証したRCT

◇この論文のPICOはなにか
P:血管拡張性ショック
I:アンギオテンシンⅡ
C:プラセボ
O:開始3時間後のMAP≧75mmHg、またはベースラインから10mmHg以上の上昇

血管拡張性ショックの定義は、cardiac indexが2.3以上、またはScvO2≧70%でCVP8mmHg、MAP55−70mmHg

inclusion criteria:25ml/kgの輸液を行なっているにも関わらずショックが持続、ノルアドレナリン0.2γ以上
exclusion criteria:重症熱傷、ACS、大動脈瘤、腸管虚血など

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:北米、オーストラリア、ヨーロッパの75施設
登録期間:2015年3月〜2017年1月
観察期間:primary endpointは3時間、adverse eventを28日まで観察
盲検化:二重盲検
必要症例数:300例
症例数:344例(各群172例)
追跡率:93.3%
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(La Jolla Pharmaceutical Company社)

◇患者背景


(本文から引用)

80%が敗血症、30%でARDS合併。

◇結果

(本文から引用)

◇感想
ACS、心原性ショックは除外されているし、まあ、循環器疾患ではアンギオテンシンⅡは使いづらいだろうな。

日本人、急性冠症候群二次予防でのゼチーア併用の効果

Low-density lipoprotein cholesterol targeting with pitavastatin + ezetimibe for patients with acute coronary syndrome and dyslipidaemia: the HIJ-PROPER study, a prospective, open-label, randomized trial.
Eur Heart J. 2017 Apr 18.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:ACS
I:ピタバスタチン2mg+エゼチミブ10mg(エゼチミブ併用群)
C:ピタバスタチン2mg(プラバスタチン単独群)
O:全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、不安定狭心症、PCIまたはCABGによる血行再建

inclusion criteria:LDLコレステロール100mg/dl以上、中性脂肪400mg/dl以上など
exclusion criteria:ショック、心不全、僧帽弁閉鎖不全症などを合併したACSなど

LDLコレステロールの目標値は、エゼチミブ併用群では70mg/dl、ピタバスタチン単独群では90−100mg/dlとする。

登録時とランダム化後12週時点で、シトステロール・カンペステロール・ラトステロールを用いて、コレステロール吸収について評価する。

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:日本
登録期間:2010年1月〜2013年4月
観察期間:3.86年(中央値)
盲検化:オープンラベル
必要症例数:3000例(ピタバスタチン単独群で10%のイベント発生、エゼチミブ併用群で20%の相対リスクリ減少)
症例数:1734例
追跡率:99.3%(ロストフォローアップ13例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし(Japan Research Promotion Society for Cardiovascular Diseases)

◇患者背景


(本文から引用)

両群に差はない。半分がSTEMIで、ほとんどの患者でPCIがやられていて、心機能はそこそこ保たれている。

◇結果
【LDLコレステロール】
ピタバスタチン単独群vsエゼチミブ併用群

○登録時
135.6±30.0mg/dl vs 134.8±29.3mg/dl

○3ヶ月後
85.7±23.0mg/dl vs 66.1±22.2mg/dl(P<0.001)

○36ヶ月後
88.5±21.6mg/dl vs 71.3±24.8mg/dl(P<0.001)

LDLコレステロールは、3ヶ月時点で有意に下がる。
その後も、両群とも36ヶ月までほぼ維持。


(本文から引用)

primary endpointに有意差はなく、大きなウエイトを占めるのは血行再建。心筋梗塞と脳梗塞では全く差がない。なぜか、全死亡は有意ではないものの結構差がついている。

◇感想
日本人では、心筋梗塞二次予防というハイリスクな患者を対象としても、ゼチーア(エゼチミブ)の効果は示せなかった。IMPROVE-IT試験でも、18000例というサンプルサイズでも観察期間を7年に延長して、やっと統計学的有意差が示せたのだから、日本人を対象としてこのサンプルサイズだと統計学的な差が出ないのは当然だろう。

そもそもだが、介入群と対照群でLDLコレステロールの目標値が異なるのは、おかしいのではないか。純粋にゼチーアの上乗せ効果を見るのであれば、LDLコレステロールの目標値は同じにすべきで、例えばピタバスタチン単独群でその目標値を達成できないなら、ピタバスタチンの増量をするようにすべきじゃないか。

対照群に手加減させておいて、ゼチーアを勝とうとしているとしか思えない。しかし、LDLコレステロール低下の恩恵を強く受けるであろう心筋梗塞を含め、ゼチーア併用でイベントは抑えられていない。

サブグループ解析では、コレステロールの吸収が亢進しているグループで、ゼチーア併用で効果があったとしている。ゼチーアの作用機序を考えると、理屈にあってそうな感じはするが、それが実臨床で安価で簡便にわらかなければ、ちょっと使えない。

まあ、これを検証するには、コレステロールの吸収が亢進している症例を対象にゼチーアの効果をみなければ結論は出せない。

ピタバスタチン2mgでLDLコレステロールが下がらない、あるいはハイリスクのためより下げたい場合には、ゼチーアを追加するより、ピタバスタチンを4mgに増量する方が、エビデンスとしても価格としてもリーズナブルだと思うが。

家族性高コレステロール血症の診断基準

家族性高コレステロール血症(成人)の診断基準はいろいろ。

以下の3つが知られている。
・Simon Broome(1)
・Dutch Lipid Clinic(2)
・American Heart Association(3)

・Simon Broome

a+b、またはc → 確定
a+d、またはa+e → ほぼ確定

・Dutch Lipid Clinic

>8点 → 確定
6−8点 → ほぼ確定
3−5点 → 可能性あり

・American Heart Association
LDLコレステロール190mg/dl以上で、一親等の者がLDLコレステロール190mg/dl以上または早発の冠動脈疾患(男性<55歳、女性<60歳)

角膜輪は、角膜の周りの灰色のリング。

黄色腫は、アキレス腱にもっとも起こりやすい。日本動脈硬化学会は、アキレス腱の肥厚(>9mm)も診断基準に組み入れている。黄色腫は、柔らかく、通常は痛みはない。手掌や足底にできることがあり、しばしば痛みがある。



(4)より引用

関節の伸側にできやすい。

FHと疑うのは、LDLコレステロール190mg/dl以上、FHの家族歴、腱黄色腫、早発の冠動脈疾患を診たとき。早発の冠動脈疾患(男性<55歳、女性<60歳)では、Dutch lipid clinicのアルゴリズムを用いると4.8%がFHという報告があり、意外と多い(5)。ちなみに、一般人口ではホモ接合体は30−40万人に1人、ヘテロ接合体は日本では500人に1人、ヨーロッパでは300人に1人、アメリカでは200−250人に1人と言われている。

治療としては、LDLコレステロールを少なくとも100mg/dl未満を目標に、最大耐用量のスタチン(リスクが高いなら70mg/dl未満)。ダメならゼチーアを加える。それでもダメなら、PCSK9抗体の使用を考慮。

(1)Atherosclerosis. 1999 Jan;142(1):105-12.
(2)Atherosclerosis. 2016 Oct;253:281-344.
(3)Circulation. 2014 Jun 24;129(25 Suppl 2):S1-45.
(4)N Engl J Med 2017; 377:e7
(5)Eur Heart J. 2015 Sep 21;36(36):2438-45.

糖尿病とグラフト開存率

Influence of Diabetes on Long-Term Coronary Artery Bypass Graft Patency.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 1;70(5):515-524.

◇この論文のPECOは?
P:CABG
E:糖尿病あり
C:糖尿病なし
O:グラフト開存率

inclusion criteria:糖尿病の治療内容、術前の冠動脈所見、再血行再建前の冠動脈造影所見、グラフトの狭窄の程度がわかる症例のみ組み入れ

<デザイン、セッティング>
・1972年1月1日〜2011年1月1日
・米国
・単施設(Cleveland Clinic)
・retrospective
・糖尿病あり:1372例(ITA:1132、SV:2512、その他:152)
 糖尿病なし:11519例(ITA:6771、SV:17554、その他:339)
・CABG後の冠動脈造影
 1回:8387例、2回:2267例、3回:623例、>4回:242例
・プロペンシティスコアマッチ

<結果>

(本文から引用)

・ITA
糖尿病ありでは、85%は狭窄なし。閉塞は4.6%。
糖尿病なしでは、86%が狭窄なし。閉塞は6.7%。
調整前のデータだが、差はない。

・SV
これも調整前で、差はない。
1/3は狭窄ゼロ。半分は閉塞する。


(本文から引用)


(本文から引用)

調整後。
糖尿病ありで、早期の開存率が有意に高い。
遠隔期では、差がない。
SVでは有意差なし。

propensity matched cohort
5年、10年、15年、20年生存率はそれぞれ
糖尿病あり 93%、73%、51%、35%
糖尿病なし 96%、83%、69%、58%
(P<0.0001)

◇感想
CABG後のグラフト開存率は、ITAもSVも糖尿病の有無で差がない。冠動脈造影自体が定期的にルーチンで行われているわけではないため、そのタイミングや回数にバイアスが入ってしまうが、BARI試験など以前の報告との一貫性はある。

糖尿病がある方が、冠動脈自体の動脈硬化が進みやすいため、内胸動脈はより閉塞しにくいのかもしれない。でも、そうだとすれば、なぜSVでも開存率に差がないのかはわからない。

CABG後でも糖尿病がある方が予後は悪い。グラフト開存率に差がないなら、それは非冠動脈死を反映しているのかと思ったが、この研究では心臓死、非心臓死に、両群で差はなかった(BARI試験では、5年間の心臓死に差はないが、非心臓死は糖尿病で有意に多い)。

生体吸収性スキャフォールド システマティックレビュー

2-year outcomes with the Absorb bioresorbable sca old for treatment of coronary artery disease: a systematic review and meta-analysis of seven randomised trials with an individual patient data substudy
Lancet. 2017 Jul 18. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:Absorb(生体吸収性スキャフォールド)
C:金属製薬剤溶出性ステント
O:心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建の複合エンドポイント

安全性エンドポイントとして、デバイス関連血栓症を評価。

<データ収集>
・文献データベース:MEDLINE、Cochrane database、TCTMD、ClinicalTrials.gov、Clinical Trial Results、CardioSource
・検索語:“randomized trial”, “drug-eluting stent”, “everolimus- eluting stent”, “Xience”, “bioabsorbable scaold”,
“bioresorbable scaold”, “bioabsorbable stent”, “bioresorbable stent”, “BVS”, “BRS”
・期間:〜2017年4月1日
・研究の種類:RCTのみ
・除外基準:nonRCT、観察期間2年以内、Absorb以外のBVS
・重複した研究:除外

<データの統合>
・Cochrane toolで、各研究の質の評価
・7試験(ABSORB Ⅱ試験、ABSORB Japan試験、ABSORB China試験、ABSORB Ⅲ試験、EVERBIO Ⅱ試験、TROFI Ⅱ試験、AIDA試験)をメタ解析。
・fixed effect model

◇結果

(本文から引用)
どのアウトカムもheterogeneityは低い。
心臓死に差はないが、デバイス関連血栓症、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建はBVSで有意に増える。

◇感想
施設は限られているが、日本でも使用可能になったBVS。生体吸収性なので溶けてなくなって内皮機能も改善するはずなのに、実際は・・・。

2年のシステマティックレビューがでた。7試験を組み入れ一貫性があるデータで、デバイス関連血栓症、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建が有意に増加。

デバイスがもっと改良されないと、普及は難しそう。

院外心停止後の低体温療法は、24時間でよい

脳神経学的な障害は、院外心停止の主要な死因であり、低体温療法により生命予後と神経学的予後が改善する。高体温は死亡率上昇と神経学的予後の悪化を招くため、避けるべきである。

低体温療法の目標体温は33℃と36℃でアウトカムに差はない(1)。そのため、低体温療法の目標体温は32−36℃で少なくとも24時間継続することが推奨されている(2)。ただ、より低い体温が脳浮腫を改善する効果があり、深い昏睡(体動の消失、脳幹反射の消失)が認められる症例には、ターゲットを33℃にすると良いかもしれない(3)。

脳幹反射は、対光反射、角膜反射、毛様脊椎反射(頚部への痛み刺激で散瞳)、眼球頭反射(人形の目現象:顔を回旋させると、逆方向に眼球が動く)、咽頭反射(咽頭後壁への刺激で吐き出すような反射)、咳嗽反射を確認する。

低体温療法は24時間以上に継続することが推奨されているが、それを検証したRCTはなく、これが初めてのRCTである。

Targeted Temperature Management for 48 vs 24 Hours and Neurologic Outcome After Out-of-Hospital Cardiac ArrestA Randomized Clinical Trial
JAMA. 2017;318(4):341-350.

◇この論文のPICOはなにか
P:院外心停止
I:33±1℃で48時間の低体温療法
C:33±1℃で24時間の低体温療法
O:6ヶ月後の神経学的アウトカム(Cerebral Performance Categories score:CPCスコアで評価)

inclusion criteria:心原性と思われる心停止、ROSCして20分以上自己心拍を維持、GCS<8、shockable rhythm/nonshockable rhythm
exclusion criteria:目撃のない心静止

Intervention:冷却装置、冷却した輸液などを用いて、33±1℃をターゲットに体温を管理する。体温は膀胱・直腸・食道・血管内で測定。低体温療法は、34℃以下になった時点から24−48時間継続する。復温は37℃になるまで、最大で0.5℃/時間の速度とする。重大な出血・致死的不整脈・難治性の心拍出低下があった場合は主治医判断で、36−37℃に戻す。

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2013年2月〜2016年7月
観察期間:6ヶ月
無作為化:中央割付(web-based)、置換ブロック法、層別化(年齢、初期波形)
盲検化:試験の性質上、open label。評価者のblindあり。
必要症例数:338例
症例数:355例(48h群176例、24h群179例)
追跡率:99%
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

witness、bystanderCPR、初期波形、AEDの使用、BLSやACLSまでの時間、使用した薬剤など、神経学的アウトカムに影響するような要因に差はない。


(本文から引用)

24h群で、ROSCから目標体温に到達するまでの時間が長い。Invasive cooling catheterがポピュラーなアイテムらしい。

◇結果

(本文から引用)

神経学的アウトカムに差はない。adverse eventは48h群で多かった。adverse eventは、痙攣などの脳の異常、低血圧、不整脈、経管栄養投与困難、腎不全、感染、出血と定義。

◇批判的吟味
・予定されていた症例数に達しているが、結果に有意差なし。
・追跡率は高い。
・24h群で目標体温に到達するまでの時間が有意に長い(281分vs320分)のは、神経学的アウトカムの悪化へ働きそう。

◇感想
低体温療法の継続時間は、24時間と48時間で6ヶ月後の神経学的アウトカムに有意差はなかった。adverse eventは48h時間群で有意に多いが、然もありなんという感じ。なかでも、肺炎がウエイトを占めてそう。

基本的には、35-36℃、24時間で、高体温は絶対に避けるというスタンスでいいかなと思っています。

(1)N Engl J Med. 2013 Dec 5;369(23):2197-206.
(2)Circulation. 2015;132:S465-S482
(3)Post-cardiac arrest management in adults(UpToDate)