2型糖尿病への早期介入とメトホルミンの重要性

2型糖尿病では、HbA1cの上昇は心血管疾患や死亡を増加と関連があり、HbA1cが1%上昇するごとに、心血管疾患の発症が18%増える(1)。

HbA1cを低下させることが微小血管障害の抑制に有効であるが、HbA1cを下げれば大血管障害を抑制できるかというと、必ずしもそうではない。UKPDSでは、発症早期の2型糖尿病に対し厳格な血糖コントロールを行うことで、全死亡を有意に減少させたが、ACCORD試験、VDAT試験、ADVANCE試験など他のRCTでは、厳格な血糖コントロールの有効性は示されなかった(2−5)。

UKPDSでは発症早期の2型糖尿病を対象としており、その他のRCTはそれよりも罹患期間が長かった。つまり、発症早期に厳格な血糖コントロールをすることで心血管イベントは抑えられるが、動脈硬化がある程度進行してしまった糖尿病では、厳格な血糖コントロールは心血管イベントの抑制に繋がらない。

また、厳格な血糖コントロールの効果は数年のスパンで行う介入研究では現れないが、介入研究終了後に血糖コントロールに差がなくなっても、10年単位のスパンでみると心血管イベントを抑制し始める。これは”metabolic memory”、”legacy effect”と呼ばれている。

罹患期間が長い症例、高齢者では重大な低血糖を起こすリスクが高く、厳格な血糖コントロールが、生命予後を悪化させる可能性があるため、注意を要する。

薬剤に関しては、RCTで全死亡を抑制させることができたものは2つ。メトホルミンとエンパグリフロジンで、メトホルミンは一次予防、エンパグリフロジンは主に二次予防を対象とした試験であった。

メトホルミンは、血糖効果作用(FGBが20%、HbA1cが1.5%低下)、体重増加や低血糖がないこと、忍容性の高さ、コストから2型糖尿病の第一選択薬として推奨されている。

メトホルミンは、肝臓からのグルコース放出を抑制したり、筋肉や肝臓へ作用しインスリンを介した糖の利用を高める効果がある。また、脂質への作用もあり、血中中性脂肪、遊離脂肪酸、LDLが低下し、ごくわずかだがHDLが上昇するという、副次的な効果がある。

日本人は、肥満によるインスリン抵抗性がメインの糖尿病ではなく、肥満のないインスリン分泌不全の糖尿病が多いためか、あるいは乳酸アシドーシスを忌避されてか、実臨床ではメトホルミンは第一選択になっていない。おそらく、DPP4阻害薬が経口血糖降下薬として一番処方されている薬剤だろう。

欧米人ほどインスリン抵抗性が高くないアジア人でもメトホルミンの有効性は確認されている。中国人の2型糖尿病304例を対象に、メトホルミンとSU薬に無作為に割り付けたSPREAD-DIMCAD試験(平均年齢63際、観察期間5年)で、HbA1c7.0%と両群で差を認めなかったが、メトホルミン群で心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、冠動脈血行再建)の有意な低下を認めた。

また、多施設の入院データベースを利用したレトロスペクティブなデータではあるが、日本人でもSUと比べメトホルミンで有意に心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、頭蓋内出血)を抑制していた。そして、SUに対する優位性が示されたのはメトホルミンのみで、αGIやDPP-4阻害薬でもSUと差はなかった(7)。

メトホルミンと比べSUで心不全が増える理由としては、体重増加があげられる(8)。その点では、DPP-4阻害薬よりメトホルミンの方が望ましく、さらにHbA1c低下作用(これが心血管イベント抑制につながるとは言えないが)、コストの面ではメトホルミンに軍配があがる(9)。

メトホルミンを使用する上で注意すべき副作用として、もっとも多いのは消化器症状。金属の味がする、食欲低下、嘔気、腹部不快感、下痢など。これらの症状は軽度、一過性で、減量・中止により消失する。

メトホルミンはVitB12の吸収も抑えるため、5−10%で血清VitB12濃度の減少が見られるが、巨赤芽球性貧血はまれである。巨赤芽球性貧血に先行し末梢神経障害が起こることがあり、糖尿病性神経障害と誤診されることがある。

また、よく知られた副作用には、乳酸アシドーシスがある。症状は非特異的で、食欲不振、嘔気・嘔吐、腹痛、傾眠、過換気、低血圧である。血中乳酸値は重要ではない。高齢だからといって乳酸アシドーシスが増えるわけではなく、腎機能によるものでもない。腎機能障害があっても安全に使えるというデータもある。ただ、腎機能がどこまで悪いとだめなのかわからないが、すくなくともeGFR30以下はダメ。30−45は半分に減量が望ましい(10、11)。ただ、日本人でのデータはないので、添付文書には従った方が無難ではある。

■reference
(1)Ann Intern Med. 2004;141(6):421-31.
(2)Lancet. 1998 Sep 12;352(9131):854-65.
(3)Diabetes Care. 2014; 37: 634-43.
(4)N Engl J Med 2009; 360: 129-139.
(5)N Engl J Med 2008; 358: 2560-2572.
(6)Di­abetes Care 2013; 36: 1304-1311
(7)BMC Endocrine Disorders 2015, 15:49
(8)J Am Heart Assoc. 2017;6(4):e005379.
(9)Ann Intern Med. 2016;164(11):740-51
(10)Cochrane:Risk of fatal and nonfatal lactic acidosis with metformin use in type 2 diabetes mellitus
(11)Ann Intern Med. 2017;166(3):191-200.
UoToDate:Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus(last updated: Apr 06, 2017.)

エゼチミブはTRS2°Pを参考に

IMPROVE-IT試験では、冠動脈疾患二次予防において、シンバスタチンにエゼチミブを加えることで、心血管イベントが抑制することが示された。

7年間の観察期間で、心臓血管死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、無作為化から30日以降の再血行再建、非致死的脳梗塞の複合エンドポイントが、エゼチミブ群34.7%、シンバスタチン単独群32.7%と、ARR2%とわずかであるが、統計学的には有意な差を認めた。


(N Engl J Med. 2015;372(25):2387-97より引用)

死亡率に差はないが、非致死的心筋梗塞、脳梗塞、血行再建を減らしている。

では、どのような患者でより効果が高いのか。

Atherothrombotic Risk Stratification and Ezetimibe for Secondary Prevention.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(8):911-921

ここでは、TRS2°Pというスコアが使われている。慢性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、陳旧性脳梗塞、CABGの既往、末梢動脈疾患、eGFR<60、喫煙の9つの項目をいくつ満たすかというもの。最小はゼロ、最大で9点ということになる。

0−1点がlow、2点がintermediate、3点以上がhighというカテゴリに分けられる。TRS2°P≧3点であれば、エゼチミブによるリスク減少が期待できる。


(本文から引用)

IMPROVE-IT試験では、TRS2°P:1点は45%、2点は30%、3点以上は25%であった。自分が診ている患者だと、0−1点というのはそれほど多くない気がする。


(本文から引用)

Cが心筋梗塞、Dが脳梗塞、Aが心血管死+心筋梗塞+脳梗塞。単純な足し算・引き算はできないが、TRS2°Pが3点以上のハイスコアでも心血管死は減ってなさそう。

TRS2°Pが0−2点なら、エゼチミブはいらない。3点以上のハイリスクでは、スタチンを十分量内服してそれでもリスクが高いと考えるなら、エゼチミブを考慮してもいいだろう。

ASVは睡眠時無呼吸がある心不全の死亡や入院を減らすことができない CAT-HF試験

Cardiovascular Outcomes With Minute Ventilation-Targeted Adaptive Servo-Ventilation Therapy in Heart Failure: The CAT-HF Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(12):1577-1587.

《要約》
背景
睡眠時無呼吸は入院した心不全患者によくみられ、死亡率の上昇と関連がある。

目的
CAT-HF試験は、minute ventilation adaptive servo-ventilation(MV-ASV)が中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者の心血管アウトカムを改善するか調べた試験である。

方法
心不全で入院し、中等度から高度の睡眠時無呼吸がある患者を、ASV+至適薬物療法(OMT)とOMT単独の治療に無作為に割り付けた。主要評価項目は、6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率である。

結果
126/215例が無作為化され、SERVE-HF試験の結果が発表されたため、早期に登録中止となった。平均デバイス使用時間は2.7時間/夜間であった。6ヶ月時点でのAHIは、ASV群では35.7/時間から2.1/時間へ、OMT単独群では35.1/時間から19.0/時間へ減少し、有意差を認めた。主要評価項目はASV群とOMT単独群で有意差はなかった。主要評価項目のコンポーネントでも有意差はなかった。治療とEFとの間に交互作用はなかったが、事前に設定したサブグループ解析では、HFpEFへのポジティブな効果が示唆された。

結論
中等度から高度の睡眠時無呼吸を有する心不全患者では、OMTにASVを加えても6ヶ月後の心血管アウトカムは改善しなかった。HFpEFに対するASVの効果を判定するにはパワーが不足しているが、追加の試験の根拠になりえる。

◇この論文のPICOはなにか
P:AHI15以上の睡眠時無呼吸を有する急性心不全
I:ASV+OMT(ASV群)
C:OMTのみ(OMT単独群)
O:6ヶ月時点での死亡、心血管疾患による入院、6分間歩行の変化率

inclusion criteria:21歳以上、急性心不全(HFrEF、HFpEF)で、安静時あるいは軽労作での呼吸困難があり、BNP≧300pg/ml、またはNT proBNP≧1200pg/mlで、かつ1つ以上の所見(起座呼吸、ラ音、肺うっ血、PCWP≧25mmHg)があること
exclusion criteria:本文には記載なし

◇baselineは同等か
同等。年齢は62歳ぐらいで、BMI32と肥満。NYHAⅡ-Ⅲが多く、平均LVEF30%、心房細動40%、薬剤の使用率に差はない。

(本文から引用)

◇試験の概要
地域:アメリカ、ドイツ
登録期間:2013年12月〜2015年5月
観察期間:6ヶ月
無作為化:HFpEF(EF>45%)・HFpEF(EF≦45%)、施設で層別化した上で、ブロックランダム化する。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:215例(死亡と心血管死による入院はASV群25%、OMT単独群で35%、6分間歩行の改善はASV群40%、OMT単独群20%と仮定し、αlevel0.05、power80%で算出)
症例数:126例(ASV群65例、OMT単独群61例)
追跡率:フォローアップ不能や同意の撤回などのため、ASV群87%、OMT単独群90%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ResMed社)

◇結果
ASV群の6ヶ月時点での平均デバイス使用時間は2.7時間/日。


(本文から引用)

◇批判的吟味
・パワー不足のため、ASVに効果がないとは言えない。
・HFpEFだとポジティブな結果だが、信頼区間が広い。これも症例数が少ないためか。
・6ヶ月時点での死亡と入院が、足して40%というのは少し多いように思う。

◇感想
AHI>15/hの睡眠時無呼吸がある心不全へのASVの導入は、死亡・心血管疾患による入院・6分間歩行の変化率を改善しなかった。ただ、SERVE-HF試験の結果から試験が早期中止になっているため、パワー不足であり、本当に差がないかどうかは判断が難しく、すっきりしない結果。

そもそもASVとは、PEEPと患者の呼吸に合わせた調節呼吸を行うもの。それにより、前負荷の軽減や、交感神経の抑制を介した後負荷の減少が期待でき、心血管アウトカムを減少させることができると言われてきた。

しかし、中枢性無呼吸がメインのEF35%以下の心不全を対象にしたSERVE-HF試験では、primary endpointに差がなく、むしろ心血管死を増加させた。圧のかけすぎ、クロスオーバーが多いなどが試験の問題点としてあげられていたが、前負荷に依存した血行動態(脱水、心房細動合併)では、ASVにより血行動態が悪化し、それにより心血管死が増加した可能性が指摘されている。

HFrEFでも閉塞型がメインの場合、あるいは睡眠時無呼吸がないか軽度の場合には、SERVE-HF試験の結果をそのまま当てはめることはできない。しかし、HFrEFであれが心房細動の合併や利尿薬による脱水リスクは高くなるので、ASVが前負荷に依存した血行動態を悪化させるのであれば、睡眠時無呼吸のタイプや程度によらずASVによる心血管イベントリスクが上昇する可能性がある。

HFrEFでもASVが有効な症例もあるだろうが、どのような症例が良いのか、あるいはどのような設定が良いのかが現時点ではわからないので、害になりうる治療は避けた方が無難だろう。

SERVE-HF試験ではHFpEFは含まれておらず、またこのCAT-HF試験ではHFpEFでポジティブな結果が出ていたので、ASVがHFpEFの心不全増悪を抑えるかもしれない。今のところHFpEFではエビデンスのある薬剤がないため、もしそうだとしたらおもしろい。

潜在性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法に症状改善効果なし

Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism.
N Engl J Med. 2017 Apr 3. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
潜在性甲状腺機能低下症に対し、レボチロキシンを使用するかは議論が分かれる。我々は、高齢者の潜在性甲状腺機能低下症において、レボチロキシンの臨床的効果があるか調べた。

方法
二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験に、潜在性甲状腺機能低下症(fT4が正常範囲で、TSH:4.60−19.99mIU/L)を有する65歳以上の高齢者737例を組み入れた。レボチロキシン群に368例、プラセボ群に369例を割り付けた。レボチロキシン開始量は50μg/日とし、体重50kg未満や心血管疾患を有する場合は25μgから開始し、TSH値に応じて容量調整する。primary endpointは、Hypothyroid Symptoms scoreとTiredness score on a thyroid-related quality-of-life questionnaireの1年後の変化である(いずれも症状に基づくスコア評価)。

結果
平均年齢74.4歳、396例(53.7%)が女性であった。baselineの平均TSH値:6.40±2.01mIU/Lで、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/L、レボチロキシン群で3.63mIU/Lであった(P<0.001)。レボチロキシン投与量の中央値は50μgであった。Hypothyroid Symptoms scoreは、プラセボ群:0.2±15.3、レボチロキシン群:0.2±14.4、Tiredness scoreは、プラセボ群:3.2±17.7、レボチロキシン群3.8±18.4と、いずれも有意差はなかった。secondary outcomeでもレボチロキシンの効果は認めなかった。重大な有害事象にも有意差はなかった。

結論
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症において、レボチロキシンはベネフィットがなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:65歳以上の潜在性甲状腺機能低下症
I:レボチロキシンの内服
C:プラセボの内服
O:Hypothyroid Symptoms scoreとTiredness scoreの1年後の変化

inclusion criteria:過去3ヶ月〜3年の間で2回以上TSH:4.60−19.99mIU/Lであること、fT4は正常範囲
exclusion criteria:レボチロキシン・抗甲状腺薬・アミオダロン・リチウムの内服、12ヶ月以内の甲状腺手術やアイソトープ治療

◇baselineは同等か
同等。

(本文から引用)

◇試験の概要
地域:イギリス
登録期間:不明
観察期間:12ヶ月
無作為化:国、性別、開始容量で層別化。ブロックランダム化。
盲検化:二重盲検
必要症例数:750例(プラセボとの差がHypothyroid Symptoms score:3ポイント、Tiredness score:4.1ポイント、power80%、αlevel0.05)、540例(プラセボとの差がHypothyroid Symptoms score:3.5ポイント、Tiredness score:4.9ポイント、power80%、αlevel0.05)
症例数:637例(レボチロキシン群368例、プラセボ群369例)
追跡率:レボチロキシン群:86.4%、プラセボ群:86.7%
解析:mITT解析
スポンサー:レボチロキシンとプラセボはMerk社が提供。

◇結果

(本文から引用)

(本文から引用)

心血管イベントにも差がない。

◇批判的吟味
潜在性甲状腺機能低下症に対してレボチロキシンを投与しても、症状や握力、認知機能などに変化はない。なので、特に心血管疾患の既往のない方では、投薬なしに経過観察してよいだろう。

ただ、心血管疾患の既往がある方では慎重に考えた方がいいかもしれない。甲状腺機能低下症は、拡張期血圧を上昇させ、脂質代謝の面ではLDLコレステロールや中性脂肪を上昇させる。なので、1年間では差がなかったが長期的には心血管系へのリスクになりえるかもしれない。

個人的には、血圧や脂質がコントロールされていれば、潜在性甲状腺機能低下症(TSHが高くなっているというだけで)に対しあえて投薬をしなくてもよいと思う。

◇感想
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法は、症状・認知機能・握力などに影響をおよぼさない。心血管イベントに関しては、より長期の観察が望まれる。

FOURIER試験 PCSK9抗体エボロクマグは心筋梗塞と脳梗塞を減少させる

Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease
N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
エボロクマブはPCSK9を阻害するモノクローナル抗体で、LDLコレステロールを約60%低下させる。これが、心血管イベントを抑制するかはわかっていない。

方法
無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行なった。動脈硬化性心血管疾患があり、スタチンを内服しているにも関わらずLDLコレステロール70mg/dl以上の患者27564例を組み入れた。患者は、エボロクマブ皮下注(140mgを2週に1回、または420mgを月に1回)か、プラセボ皮下注に割り付けた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建の複合エンドポイントである。副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞である。フォローアップの中央値は2.2年である。

結果
48週時点で、エボロクマブ群のLDLコレステロールは、ベースラインの92mg/dlから30mgmg/dlと59%低下していた。プラセボに対しエボロクマブは主要評価項目を有意に減少させた(9.8%vs11.3%、HR:0.85、95%CI:0.79−0.92)。副次評価項目も有意に減少させた(5.9%vs7.4%、HR:0.80、95%CI:0.73−0.88)。結果は、もっともLDLコレステロール値が低かったサブグループ(中央値74mg/dl)を含め、主要なサブグループでも一貫していた。注射部位の反応はエボロクマブ群で多く見られたが(2.1%vs1.6%)、新規の糖尿病の発症や神経認知的なイベントを含め有害事象に有意差はなかった。

結論
この試験では、スタチンにエボロクマブを加えることで、LDLコレステロールが30mg/dl(中央値)になり、心血管イベントリスクを減少させた。これの結果は、動脈硬化性心血管疾患ではLDLコレステロールを現在の目標値からさらに低下させることが有効であることを示している。

◇この論文のPICOはなにか
P:動脈硬化性心血管疾患
I:エボロクマブ皮下注(140mgを2週に1回、または420mgを月に1回)
C:プラセボ皮下注
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建

inclusion criteria:40−85歳、動脈硬化性心血管疾患(陳旧性心筋梗塞、陳旧性脳梗塞、症候性末梢動脈疾患、心血管疾患リスクが高い患者)、至適資質低下療法(アトルバスタチン20mg以上相当の高強度スタチン±エゼチミブ)にも関わらずLDLコレステロール70mg/dl以上またはnonHDL100mg/dl以上、
exclusion criteria:記載なし

◇baselineは同等か

(本文から引用)
エボロクマブ群で、わずかに体重が軽くて抗血小板薬の内服が多い。

アジア人は13%、80%がOMI、70%が高強度のスタチンを、5%でエゼチミブを内服。

◇試験の概要
地域:49ヶ国、1242施設
登録期間:2013年2月〜2015年6月
観察期間:26ヶ月(中央値、四分位範囲:22−30ヶ月)
無作為化:中央コンピュータシステム、LDL(85mg/dl)と地域で層別化
盲検化:二重盲検
必要症例数:副次評価項目に対し必要症例数を設定。power90%、15%の相対リスク低下を検出するために1630イベントが必要。
症例数:27564例(エボロクマグ群13784例、プラセボ群13780例)
追跡率:99.6%(早期の試験中止は12.5%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amgen社)

◇結果

主要評価項目のうち、血行再建によるリスク低下が最も大きい。心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイント(副次評価項目)だと、リスク減少は全体で1.5%と絶対値としては小さい。心血管死は減らず、減る傾向もない。

◇批判的吟味
二重盲検試験だが、エボルクマブ投与によりLDLが著しく下がるので(中央値で92→30mg/dl)、どちらの群に割り付けられたかはある程度わかる。そのため、盲検化の維持が難しく、主要評価項目に含まれている「血行再建」については、バイアスがかかる可能性がある。

そして、主要評価項目のうち、絶対リスク減少が最も大きいのが血行再建である。普通の薬なら複合エンドポイントに含めるのは妥当かもしれないが、これほど高価な薬剤なので治療効果の判定には血行再建は含めず、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞だけ(副次評価項目)をみる方がいいだろう。

副次評価項目では、エボロクマブの投与による絶対リスク減少は、心血管死では全く差がない。心筋梗塞では1.2%、脳梗塞では0.4%とそれぞれ有意に低下しているが、絶対値としては小さく、これはサンプルサイズがかなり大きいために統計学的有意差がついたと考えられる。

NNTは74であり、日本での薬価は22948円なので、約8830万円かけて1件の心筋梗塞または脳梗塞を減らすという計算になる。それだけの大金をかけても、心筋梗塞か脳梗塞が1件減るだけで、死亡率を減少させることはできない。PCSK9抗体の適応がある家族性高コレステロール血症と早発性心血管疾患の患者すべてにPCSK9抗体を使用すると、5年間で心血管治療費が290億ドル削減できるが、薬剤費は5920億ドルに増加するというデータもあり、決して費用対効果に見合ったものではない(JAMA.2016;316(7):743-53)。

心血管イベントを抑制する効果が高い薬剤であるということは理解できるが、問題は誰に用いるべきかということだと思う。この試験では、当初最大耐用量のスタチン内服下の患者が対象となっていたが、試験途中でプロトコールの変更があり、アトルバスタチン20mg以上の至適薬物治療という条件に変更されている。もし、心血管イベントの発生がLDLの値に比例して低下するなら(the lower,the betterなら)、まずはスタチンを最大耐用量内服させるべきだろう。

スタチンを開始・増量する上で、肝障害と筋症状がでてくる場合があるが、それが原因でスタチンが内服できないことは多くない。

スタチンによる肝酵素上昇は0.5−2.0%で認められ、容量依存的で、スタチンの減量・中止で良くなる。そして、薬剤の再開や他のスタチンに変更しても、再発することはあまりない。肝酵素の正常上限の3倍までの上昇は、フォローは必要だが薬剤を中止する必要はない。なお、肝不全は非常にまれ。正常上限の10倍以上のCK上昇が起こる頻度は、約0.09%。その場合は、スタチンを中止する。正常上限の3−10倍の上昇なら、CKのフォローとスタチンの減量・一時的な中断を考慮する(Circulation.2002;106(8):1024-8)。

心血管リスクが高い患者ならなおさら、肝酵素上昇やCKが上昇したからといって、安易に中止すべきではない。

IMPROVE-IT試験でもスタチンにエゼチミブを併用することで、LDLは50mg/dl台に低下し、心血管イベントは減少しているため、最大耐用量のスタチンで十分LDLが低下しなければ、費用対効果を考えるとエボロクマブを使うより、まずエゼチミブの併用を考慮すべきだろう(本試験では5%しか併用されていなかった)。

家族性高コレステロール血症、早発性心血管疾患のうち、費用対効果の高い集団(より心血管リスクが高い患者)がわかれば、その集団に限って使用するというのはreasonableだと思う。サブグループ解析などのデータが役立つかもしれない。

◇感想
心血管疾患二次予防において、PCSK9抗体であるエボロクマブにより、心筋梗塞及び脳梗塞が有意に低下した。最大耐用量のスタチンとエゼチミブを内服しているがLDLコレステロールが十分低下しない患者に対しては、エボロクマグを考慮してもいいかもしれない。

急性心膜炎の診断と治療 システマティックレビュー

Evaluation and Treatment of PericarditisA Systematic Review
JAMA. 2015;314(14):1498-1506.

◇疫学
欧米では80−90%が特発性とされていて、多くがウイルスによるもの。
悪性腫瘍5−10%、全身性炎症疾患または外傷2−7%、結核性4%、化膿性<1%
発展途上国では、結核性が多く予後が悪い。6ヶ月死亡率はHIVなしで25%、HIVありだと40%。

◇臨床所見
鋭い胸痛。座位や前傾で軽快する。
心膜摩擦音は1/3で聴取。
心嚢液貯留(約60%で認める)
予後因子:>38℃の発熱、亜急性、高度心嚢液貯留(>20mm)、心タンポナーデ、NSAID無効
上記の所見があれば、入院が必要。


心電図では、広範囲なST上昇(>60%で認める)と、PR低下が特徴的。

◇診断
・診断基準

心嚢穿刺の適応は、高度な心嚢液貯留(>20mm)、心タンポナーデ、内科的治療抵抗性、細菌性や悪性腫瘍が疑われる場合。

◇特発性、ウイルス性、免疫介在性心膜炎の治療
・アスピリン、またはNSAIDs(イブプロフェン、インドメタシン)
内科的治療の中心
治療効果は、解熱、胸痛や心膜摩擦音の消失

・コルチコステロイド
以前は、第一選択と考えられていたが、罹患期間の延長や再発が多いことなど有害事象が多いことが明らかになった。
高容量プレドニゾン(1mg/kg/day)と低容量〜中等量プレドニゾン(0.2−0.5mg/kg/day)を比較した研究では、高容量プレドニゾンで重大な有害事象、再発、入院が有意に多かった(ハザード比3.61、95%CI:1.96−6.63)。

・コルヒチン
急性心膜炎、再発性心膜炎のいずれでも、NSAIDsにコルヒチンを併用することで、1週間後の寛解率が上昇し、再発が減少する(エビデンスレベルA)。
コルヒチンの最も多い有害事象は消化管症状で、特に下痢である(7−10%)。
投与量は体重で調整(>70kgなら0.5mgを1日2回、≦70kgなら0.5mgを1回)

・コルヒチンによる治療後の再発
確立された治療はない。
アザチオプリンや免疫グロブリン静注が試みられているがエビデンスは不十分。

◇予後
病態により異なる。
収縮性心膜炎は、以下のような確率で起こる。
 特発性、ウイルス性で0.76/1000人年
 膠原病、外傷で4.40/1000人年
 悪性腫瘍で6.33/1000人年
 結核性で31.65/1000人年
 細菌性で52.74/1000人年

心膜炎に心筋炎が合併するのは20−30%。
トロポニンが上昇する。
心膜心筋炎389例、31ヶ月の観察では、3.5%で左室機能低下が残存したが、心不全はゼロ。13.0%で再発したが、その90%以上が心膜炎のみの再発で、心タンポナーデや収縮性心膜炎は1%未満だった。
再発した特発性心膜炎の予後は良い(230例、61ヶ月の観察で、心タンポナーデ3.5%、収縮性心膜炎や左室機能低下はなかった)。

STEMI+多枝病変 完全血行再建は緊急血行再建のみ減少させる

Complete or Culprit-Only Revascularization for Patients With Multivessel Coronary Artery Disease Undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Pairwise and Network Meta-Analysis of Randomized Trials.
JACC Cardiovasc Interv. 2017 Feb 27;10(4):315-324

多枝病変を有するSTEMI患者の予後が悪いことは知られているが、primary PCIを行なった後に残存した狭窄に対しどのような治療戦略(薬物療法のみか、PCIも行うか、PCIを行うならそのタイミングはいつが良いか)が最適かどうかはわかっていない。

◇論文の概要
多枝病変を有するSTEMIを対象としたメタ解析である。

10個のRCT(2285例)を組み入れ、残存狭窄に対する治療を、薬物療法のみと完全血行再建(primary PCTと同時、入院中、退院後)に分けている。


(本文から引用)
責任病変のみと完全血行再建を比較。完全血行再建を行なっても、死亡率や再梗塞率はかわらない。死亡のI2統計量は1.8%と異質性は低く、信頼性が高いデータ。減少するのは、緊急血行再建のみ。いずれの試験もオープンラベルなので、緊急血行再建はバイアスが入る余地がある。

ちなみに、心筋梗塞を減らしているPRAMI試験では、primary PCI時に残存病変の治療も行なっているため、手技に関連した心筋梗塞はマスクされる可能性がある。


(本文から引用)
PCIのタイミングについて、責任病変のみ、primary PCIと同時、入院中、退院後の4つのストラテジーでの比較。死亡率は責任病変のみでも完全血行再建でも変わらない。緊急血行再建は、完全血行再建を行なった群で有意に少ないが、完全血行再建の中では、primary PCIと同時、入院中、退院後のいずれのタイミングでも、差はない。

◇感想
STEMIの残存病変に対する完全血行再建は、緊急血行再建は減らすが、死亡率、再梗塞率は減らさない。治療の性質上オープンラベルなので、血行再建というソフトエンドポイントはバイアスが入る余地がある。

以前publishされているメタ解析(J Am Coll Cardiol 2011;58:692–703)では、責任病変のみ、primary PCIと同時、staged PCIを比較し、staged PCIが短期予後と長期予後を改善させたと報告している。ただ、このメタ解析には観察研究を含んでいて、primary PCIと同時に残存狭窄の治療を行なった群に、Killip Ⅳやショックが多く含まれているので、選択バイアスや無イベント時間バイアスが入っている可能性がある。

STEMIの残存狭窄の治療対象となるのは、安定狭心症と同様、angiographicalではなくFFR guideが良いと、DANAMI3-PRIMULTI試験で決着が付いている。では、PCIのタイミングはというと、このメタ解析が示すように、primary PCIと同時でも、入院中でも、退院後でも、いつでも変わらない。

そして、残存狭窄に対するPCIのベネフィットは、緊急血行再建の減少のみ。死亡率や再梗塞率の減少という恩恵を受けている患者もいるかもしれないが、集団でみた場合にはその有効性は示されていない。

MRI非対応デバイス(ペースメーカ、ICD)でのMRI撮像

Assessing the Risks Associated with MRI in Patients with a Pacemaker or Defibrillator
N Engl J Med 2017; 376:755-764

◇論文の概要
心臓植込み型電気的デバイス(ペースメーカやICD)はMRIは禁忌とされてきた。MRI非対応のペースメーカやICDで、MRI(1.5T)を撮像することの影響を調べた前向き研究。

MRI撮像の前に設定の変更を行い、終わったら元に戻す。
・ペースメーカの場合
無症候または自己脈≧40/minなら、no-pacing mode(ODO、OVO=ペーシングせず、センスのみ)
症候性または自己脈<40/minなら、asynchronous pacing mode(DOO、VOO=自己脈に関係なく設定されたレートでペーシングし続けるモード)

・ICDの場合
ペーシングに依存していない患者なら、徐脈・頻脈に対する治療のすべてを解除する。
ペーシングに依存している患者は、MRIの撮像はしない。

MRIの撮像が終わったら、もとの設定に戻す。
 
アウトカムは、死亡、交換を要するジェネレータまたはリード不全、ペーシング不全、新規の不整脈、ジェネレータの電気的なリセット

MRI撮像回数
ペースメーカ:1000回
ICD:500回


ペースメーカ依存の患者は28%、撮像時間は40分ちょっと、1回以上撮像している患者はおよそ20%、撮像部位は頭・首・腰が多い。


ICDで1件、ジェネレータ不全のため交換が必要になっている。


ジェネレータやリードの不全とまではいかなくても、ジェレネータやリードには多少影響はある。

◇感想
今までも少数の報告や、胸部MRIを含めた500例ぐらいの報告はあったよう。MRI非対応のペースメーカやICDが留置されている患者で、1.5TのMRIで非胸部の撮像なら、比較的安全に施行できる可能性を示唆している。

非典型的たこつぼ心筋症の臨床像と転帰

Differences in the Clinical Profile and Outcomes of Typical and Atypical Takotsubo Syndrome: Data From the International Takotsubo Registry.
JAMA Cardiol. 2016;1(3):335-40.

◇論文の概要
<背景>
心尖部バルーニングは古典的なたこつぼ型心筋症(TC)と認識されている。非典型的なTCも存在しており、全症例の20%を占める。今まで、非典型的TCの臨床像と転帰についてはほとんど調べられていない。

<目的>
大規模なコホートで、典型的、非典型的TCの臨床像と転帰を調べること。

<デザイン、セッティング、患者>
・9ヶ国、26施設
・後向き(1998年〜2014年)
・1750例(典型的TC1430例、非典型的TC320例)


(本文から引用)
一番左が典型的なTC。右の3つは非典型的なTCで、中間部、基部、局在的なバルーニングが見られている。


(本文から引用。この論文では、たこつぼ型心筋症=TTSで表記されていますが、このブログではTCで統一しています。)
年齢は統計的には差があるが、SDも大きく、臨床的には差はなさそう。トリガーは身体的なものか感情的なものかで、バルーニングのパターンが異なるという報告もあり、このコホートでも非典型的TCで感情的なトリガーが多い傾向にあるが、有意差はない。典型的TCではST上昇がみられ、非典型的TCではST低下がみられる。非典型的TCの方が若く(ただしSDは大きい)、若干EFが良く、神経学的疾患が多い。

<結果>

(本文から引用)
1年後からのランドマーク解析では差が出ていないが、1年以内の死亡率は典型的TCで有意に多い。しかし、交絡因子の調整をすると差はなくなった。LVEF(<45%)、af、神経学的疾患が独立した危険因子である。

◇感想
非典型的TCは、典型的TCより若年発症で、ST低下が多く見られ、神経学的疾患の合併が多く、LVEFの低下が少なく、入院時のBNPが低い。典型的TCが一番血行動態への影響が大きそうだが、交絡因子の補正をすると典型的TCと非典型的TCでは、予後は変わらない。予後を規定するのは、LVEF(<45%)、af、神経学的疾患。

AMACING試験 生食投与でも造影剤腎症は防げない

Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2017 Feb 20. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
ガイドラインでは、腎機能低下症例での造影剤腎症予防に生食投与が推奨されている。しかし、予防的ハイドレーションの有無での、臨床的な有効性と費用対効果は十分に検証されていない。これが、AMACING試験の目的である。

方法
AMACING試験は前向き、無作為化、第3相、パラレルグループ、オープンラベル、非劣性試験である。対象は、現在のガイドラインで造影剤腎症のリスクがあるとされる患者である。オランダのマーストリヒト大学メディカルセンターでヨード造影剤の投与を受ける18歳以上の高リスクの患者(eGFR30−59ml/min/1.73m2)を、無作為に0.9%生理食塩水群と非予防群に割り付けた。eGFR30以下、血液透析は除外した。事前に設定したリスク因子で層別化し無作為化を行なった。主要評価項目は、造影剤腎症の発症(造影剤投与2−6日で、血清Crがベースラインから25%以上、または0.5mg/dl以上上昇すること)と、予防をしないことの費用対効果である。血清Crは造影剤投与前、2−6日後、26−35日後に測定した。解析者は盲検化した。有害事象と資源の使用は記録した。非劣勢マージンは2.1%とした。intention-to-treat解析とper-protocol解析を行なった。

結果
2014年6月17日から2016年7月17日までで、660例が無作為に割り付けられた(非予防群332例、生食投与群328例)。2−6日後の血清Crは非予防群では307/332例(92%)で、生食投与群では296/328例(90%)で測定された。造影剤腎症は非予防群では8/307例(2.6%)、生食投与群では8/296例(2.7%)で認めた。絶対的な差異は−0.1%(片側95%CI:-2.25to2.06)であった。非予防は生食投与より費用が削減された。35日以内に血液透析や死亡は観察されなかった。18/328例(5.5%)で生食投与により合併症が生じた。

結論
造影剤腎症の予防において、生食を投与しないことは生食投与と比較し非劣勢であり、費用を削減できる。

◇この論文のPICOはなにか
P:ヨード造影剤を用いた検査・治療を行う予定の腎機能障害患者(eGFR30−59)
I:生食を投与しない(非予防群)
C:生食を投与する(生食投与群)
O:造影剤腎症の発症(造影剤投与2−6日で、血清Crがベースラインから25%以上、または0.5mg/dl以上上昇すること)と、非予防群の費用対効果

inclusion criteria:待機的検査を行う連続症例、18歳以上
exclusion criteria:eGFR30未満、腎代替療法、緊急検査、集中治療が行われている患者

◇baselineは同等か

同等。生食は検査前に822ml投与されていて、オランダ人の男性の平均身長は1.8mぐらいらしいのでBMI28だと体重が90kgほどになるが、それでも十分な量が投与されていると考えていいだろう。

◇試験の概要
地域:オランダ
登録期間:2014年6月17日〜2016年7月17日
観察期間:最長35日
無作為化:糖尿病、eGFR、投与ルート(動脈or静脈)、診断か治療かで層別化あり。ALEAを用いたコンピュータによる無作為化。
盲検化:オープンラベル。解析者は盲検化されている。
必要症例数:生食投与群で造影剤腎症が2.4%発症し、非劣性マージン2.1%、power80%、one-sided alpha5%と仮定して1300例と算出。2015年12月に必要症例数を改定し600例としているが、その根拠は不明。
症例数:660例(非予防群332例、生食投与群328例)
追跡率:非予防群307/332例(92%)、生食投与群296/328例(90%)
解析:ITT解析とper-protocol解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果

糖尿病では生食投与寄り。逆に治療行為があると非予防群の方がいい。

生食投与による合併症を18例(5.5%)で認めた。利尿薬の投与や入院の延長13例、低Na血症1例、不整脈4例。

26−35日だと・・・
eGFR10以上の低下は
非投与群で11/260例(4.2%)、生食投与群7/260例(2.7%)

(費用対効果の図表はよくわからないので、ここでは割愛。とりあえず、費用対効果もよくなるらしい。)

◇批判的吟味
・患者背景は、自分の実臨床にも応用できるだろう。
・事前に設定されたサンプルサイズは1300例で、結局660例なのでパワー不足は否めない。
・費用対効果が非予防群でよかったといっても、それはせいぜい1ヶ月程度までの話で、eGFRが10以上悪くなった症例が非予防群で多い傾向にあるのでそれが長期的にどうなるかはわからない。

◇感想
生食投与では造影剤腎症を予防できないという結果。治療行為のサブグループだと、生食の予防投与をやらない方がいい傾向にある。26−35日の時点だと、eGFRが10以上低下する割合が生食投与群で少ない。

パワー不足っぽいので結果は鵜呑みにはできないですが、確かに生食投与でデコっちゃう人はたまーにいるので(心機能が悪いと)、そこらへんに注意しながらって感じでしょうか。もちろん、費用対効果の問題もありますが、自分の中では、この研究で生食を投与しないということにはなりません。