院外心停止後の低体温療法は、24時間でよい

脳神経学的な障害は、院外心停止の主要な死因であり、低体温療法により生命予後と神経学的予後が改善する。高体温は死亡率上昇と神経学的予後の悪化を招くため、避けるべきである。

低体温療法の目標体温は33℃と36℃でアウトカムに差はない(1)。そのため、低体温療法の目標体温は32−36℃で少なくとも24時間継続することが推奨されている(2)。ただ、より低い体温が脳浮腫を改善する効果があり、深い昏睡(体動の消失、脳幹反射の消失)が認められる症例には、ターゲットを33℃にすると良いかもしれない(3)。

脳幹反射は、対光反射、角膜反射、毛様脊椎反射(頚部への痛み刺激で散瞳)、眼球頭反射(人形の目現象:顔を回旋させると、逆方向に眼球が動く)、咽頭反射(咽頭後壁への刺激で吐き出すような反射)、咳嗽反射を確認する。

低体温療法は24時間以上に継続することが推奨されているが、それを検証したRCTはなく、これが初めてのRCTである。

Targeted Temperature Management for 48 vs 24 Hours and Neurologic Outcome After Out-of-Hospital Cardiac ArrestA Randomized Clinical Trial
JAMA. 2017;318(4):341-350.

◇この論文のPICOはなにか
P:院外心停止
I:33±1℃で48時間の低体温療法
C:33±1℃で24時間の低体温療法
O:6ヶ月後の神経学的アウトカム(Cerebral Performance Categories score:CPCスコアで評価)

inclusion criteria:心原性と思われる心停止、ROSCして20分以上自己心拍を維持、GCS<8、shockable rhythm/nonshockable rhythm
exclusion criteria:目撃のない心静止

Intervention:冷却装置、冷却した輸液などを用いて、33±1℃をターゲットに体温を管理する。体温は膀胱・直腸・食道・血管内で測定。低体温療法は、34℃以下になった時点から24−48時間継続する。復温は37℃になるまで、最大で0.5℃/時間の速度とする。重大な出血・致死的不整脈・難治性の心拍出低下があった場合は主治医判断で、36−37℃に戻す。

◇患者背景

(本文から引用)

witness、bystanderCPR、初期波形、AEDの使用、BLSやACLSまでの時間、使用した薬剤など、神経学的アウトカムに影響するような要因に差はない。


(本文から引用)

24h群で、ROSCから目標体温に到達するまでの時間が長い。Invasive cooling catheterがポピュラーなアイテムらしい。

◇結果

(本文から引用)

神経学的アウトカムに差はない。adverse eventは48h群で多かった。adverse eventは、痙攣などの脳の異常、低血圧、不整脈、経管栄養投与困難、腎不全、感染、出血と定義。

◇批判的吟味
・予定されていた症例数に達しているが、結果に有意差なし。
・追跡率は高い。
・24h群で目標体温に到達するまでの時間が有意に長い(281分vs320分)のは、神経学的アウトカムの悪化へ働きそう。

◇感想
低体温療法の継続時間は、24時間と48時間で6ヶ月後の神経学的アウトカムに有意差はなかった。adverse eventは48h時間群で有意に多いが、然もありなんという感じ。なかでも、肺炎がウエイトを占めてそう。

基本的には、35-36℃、24時間で、高体温は絶対に避けるというスタンスでいいかなと思っています。

(1)N Engl J Med. 2013 Dec 5;369(23):2197-206.
(2)Circulation. 2015;132:S465-S482
(3)Post-cardiac arrest management in adults(UpToDate)

TAVR vs SAVR 中等度以上のリスクがある大動脈弁狭窄症

手術リスクが高い大動脈弁狭窄症(AS)を対象に始まったTAVRだが、PARTNER2試験で中等度リスクの患者でもTAVRのSAVRに対する非劣勢が証明された。実際には、そのデータが出てくる前にすでに、中等度リスクの患者に対しても適応が広げられていたみたい。

これは、中等度以上のリスクを有するASの、TAVRとSAVRを比較した実臨床でのデータ。

Transcatheter Versus Surgical Aortic Valve Replacement : Propensity-Matched Comparison
J Am Coll Cardiol. 2017;70(4):439-450

◇この論文のPECOは?
P:中等度〜高度のリスクがあるAS
E:TAVR
C:SAVR
O:死亡、脳梗塞(30日、1年)

<デザイン、セッティング>
・米国
・多施設レジストリ
  TAVR25786例(2014年1月1日〜2015年9月30日)
  SAVR198077例(2011年7月1日〜2013年12月31日)
・9464例(propensity score matched cohort)
・観察期間:SAVR 169.5日、TAVR 328日
・プロペンシティスコアマッチ

<患者背景>


(本文から引用)

冠動脈疾患の合併が半分あるが、SAVR群では1/3がCABGも行われている。

<結果>
○院内死亡率(TAVR vs SAVR)
3.0% vs 5.0%(P<0.001)

○院内脳梗塞発症率
2.5% vs 2.7%(P=0.40)

○ペースメーカ・ICDが必要になった患者
12.8% vs 6.3%(P<0.001)

○新たに透析が必要になった患者
1.7% vs 3.2%(P<0.001)

○1年死亡率
17.3%vs 17.9%(P=0.40)


(本文から引用)

サブグループによらず、ほぼ一貫しているが、心臓手術の既往で交互作用あり(P<0.10)。

○30日時点での脳梗塞
2.8% vs 2.8%(P=0.13)

◇批判的吟味
・SAVR+CABGが1/3入っているが、CABGも行なった患者は除外しておくべきでは?
・プロペンシティスコアマッチではあるが、選択バイアスは排除できない。TAVRでもSAVRでも試行可能と判断された患者が対象ではあり、もちろんどちらを選んでも同じというようなケースは含まれているだろうが、臨床医は一方がより良いと判断しているはずで、そこにバイアスが生じている。
・脳梗塞に差がないというのも、選択バイアスによるものかもしれない。
・サブグループによらずほぼ一貫した結果だが、心臓手術の既往があると、SAVRの分が悪い。

◇感想
中等度以上のリスクがあるASでも、SAVRに対するTAVRの非劣勢がRCTで証明され、リアルワールドのデータでも、1年死亡率は同程度という結果。選択バイアスはあるだろうけど、現状の適応・患者選択を支持するデータかなと思います。

NSTE-ACSへの早期侵襲的治療にベネフィットはあるのか

Early Invasive Versus Selective Strategy for Non-ST-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome: The ICTUS Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017 Apr 18;69(15):1883-1893

◇この論文のPICOはなにか
P:非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)
I:early invasive strategy
C:selective invasive strategy
O:10年間での全死亡、心筋梗塞

early invasive strategy
ランダム化から24−48時間以内に冠動脈造影を行い、血行再建を行う。

selective invasive strategy
退院前の検査で誘発虚血がある、もしくは難治性狭心症であれば、血行再建を行う。

inclusion criteria:次の3つすべてを満たす:20分以上続く胸痛、トロポニンT上昇(≧0.03g/l)、心電図での虚血性変化(ST低下、一時的なST上昇、陰性T波)または冠動脈疾患の既往(OMI、PCIまたはCABGの既往)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢62歳、75%が男性。

入院中のCAG試行率、血行再建率はそれぞれ
early invasive strategy 98%、76%
selective invasive strategy 53%、40%

◇結果

(本文から引用)

PCIに関連したMIだけが、early invasive strategyで有意に多いが、自然発生のMI、心臓死、全死亡に差はない。

◇感想
日本の現状であれば、この試験の対象になっているようなNSTE-ACS(20分以上胸痛が続いて、トロポニン陽性で、心電図変化あり)だと、即CAG・PCIという感じになるだろう。生命予後が短いとか、大きな手術の直後とか、高齢・寝たきりみたいな場合には、カテをやらないこともある。

この試験同様、NSTE-ACSを対象にearly invasive strategyとselective invasive strategyを比較した試験に、FRISC Ⅱ試験、RITA-3試験がある。この3つの試験で結果が一致しているわけではないが、early invasive strategyに長期的なbenefitがないというICTUS試験の結果は、ちょっと考えさせられる。

ただ、低分子ヘパリンやGPⅡb/Ⅲaなど、日本では使用できない薬剤も使われているので、そこらへんで違いはあるかもしれない。

妊娠関連冠動脈解離

Spontaneous Coronary Artery Dissection Associated With Pregnancy
J Am Coll Cardiol. 2017;70(4):426–435.

<デザイン、セッティング>
・Mayo Clinicの多施設レジストリ
・323例(P-SCAD:54例、NP-SCAD:269例)
  P-SCAD:妊娠関連冠動脈解離
  NP-SCAD:妊娠非関連冠動脈解離
・観察期間:P-SCAD:4.3年、NP-SCAD:2.0年(中央値)

<発症時期>

(本文から引用)

54例中・・・
4例:妊娠中
48例:出産後12週以内(生存可能な新生児)
1例:妊娠初期の流産
1例:36週で死産のあとに

48例のうち、29例が経膣分娩(自然分娩22例、誘発分娩7例)、10例が帝王切開、9例は詳細不明。

70%が出産・死産から1ヶ月以内に、50%が1週間以内にSCADを発症。

<患者背景>
平均年齢35歳。MarfanやEhlers-Danlosなどの結合組織疾患はない。


(本文から引用)

経産婦がほとんどで、2人以上産んでいる。妊娠高血圧やpreeclampsiaの割合が多いというわけではない。30%で不妊治療が行われていた。初産の年齢が比較的高め。

<clinical presentation>

(本文から引用)

LM病変、多枝病変、STEMIが多い。そのためか、LVEFは悪い。薬物療法が選択されることが多いが、60%で血行再建が試みられている。しかし、PCI不成功が30%と多い。

◇まとめ・感想
P-SCADは、LM病変、多枝病変、STEMIが多く、NP-SCADより重症。不妊治療や妊娠高血圧腎症(preeclampsia)を伴う多胎で多く、発症のタイミングは妊娠中・出産後いつでもありえるが、出産後1ヶ月以内がほとんどで、特に1週間以内が多い。

褥婦の胸痛では、念頭に置いておかないといけない。

5年間の再発率は10%で、全例で別の部位に解離が生じていた。NP-SCADと有意差はないが少なめ。

SCADはPCIを行なっても解離の進展しやすく、PCIは難渋することが多いと言われている。そのためか、40%は薬物療法が選択されている。

このレジストリーでは、PCIの30%が不成功に終わっている。若年であるため、ステント留置のデメリットは考えなければならない。LM病変、多枝病変、太い血管径、長い病変長などでは、CABGまでもっていくことができる状況なら、それも考えないといけないだろう。

糖尿病合併冠動脈多枝病変へのCABG 抗血小板療法はアスピリン単剤で

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin Monotherapy in Diabetics With Multivessel Disease Undergoing CABG: FREEDOM Insights.
J Am Coll Cardiol. 2017 Jan 17;69(2):119-127.

◇この論文のPECOは?
P:糖尿病を有する冠動脈多枝病変でCABGを行なった患者
E:DAPT(アスピリン+クロピドグレル)
C:アスピリン単剤療法(ASA)
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

exclusion criteria:CABG後30日以内の死亡、アスピリンを内服していない、ワーファリンの内服

<デザイン、セッティング>
・FREEDOM試験(糖尿病を有する冠動脈多枝病変を対象に、PCIとCABGを比較したRCT)のpost hoc解析
・795例(DAPT群544例、ASA群251例)
・DAPT期間は0.98年(中央値)
・観察期間:平均5年
・COX比例ハザードモデル

<結果>

(本文から引用)

◇批判的吟味と感想
AHAのガイドラインでは、off-pump CABG(OPCAG)後の1年間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はclassⅠで推奨されており、on-pump CABGでは、DAPTを支持するデータが乏しく、classⅡbとなっている(1)。

糖尿病では、グラフト開存率の低下や死亡率上昇と関連があるが、糖尿病合併症例でもCABG後の1年間のDAPTは、5年での死亡率、心筋梗塞、脳梗塞を減少させなかった。

AHAのガイドラインではCABG後にDAPTが推奨されているとは言え、DAPT処方率は2/3と過去の観察研究よりも多かった。FREEDOM試験では、割付に関わらずクロピドグレルが提供されていたためかもしれない。1年間のDAPTでもASA単剤と出血に差はなかったが、この研究では、30日以内の死亡は解析から除外されているため、DAPTの出血リスクを過小評価するかもしれない。

post hoc解析なので結論めいたことは言えないが、DAPTがon-pumpCABGのアウトカムを改善しないという過去の報告と矛盾しない結果だった。

(1)Circulation. 2015;131:927-64

心不全 ACE阻害薬/ARB、β遮断薬の内服量と予後

Determinants and clinical outcome of uptitration of ACE-inhibitors and beta-blockers in patients with heart failure: a prospective European study
Eur Heart J. 2017 Mar 11. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:HFrEF(<40%)
E/C:ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬の内服量(0%、1−49%、50−99%、≧100%)
O:死亡、心不全入院

inclusion criteria:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬が未投与、ガイドライン推奨量の半分未満

登録から3ヶ月をoptimization periodとして、その期間に主治医の判断でACE阻害薬/ARB、β遮断薬を増量する。optimization periodを終えた患者のみ解析に含める。

ガイドライン推奨量

<デザイン、セッティング>
・ヨーロッパ11ヶ国、69施設
・前向きコホート研究
・2100例(2516例のうち、optimization periodで151例が死亡、23例がイベントはなかったが脱落、242例はEF≧40%のため除外)
・観察期間:21ヶ月(中央値)
・COX比例ハザードモデル

ARBの20%、ACE阻害薬の27%、β遮断薬の12%が推奨量に到達。

<患者背景>

(本文から引用)


(本文から引用)

ほとんど白人で、平均年齢は60代後半、虚血が半分、AFも半分弱、腎機能は比較的保たれている。

<結果>
ACE阻害薬/ARBが低い容量となる予測因子:女性、低いBMI、低いeGFR、高いALP
β遮断薬が低い容量となる予測因子:高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候


(本文から引用)


(本文から引用)
ACE阻害薬/ARBは推奨量の50%に達しているか、β遮断薬は容量依存的に死亡率が異なるという、わりとキレイな曲線になる。


(本文から引用)
この研究では、増量できない理由についても調べられている。
A)推奨量まで到達
B)症状、副作用、心臓以外の臓器障害
C)その他

B、Cの容量がどれぐらいだったかはわからない。

◇感想
ACE阻害薬/ARBでは、推奨量の半分以下の場合、死亡のハザード比が1.5−1.7倍に。β遮断薬では、容量依存的にハザード比は増加する。

増量できない予測因子としては、ACE阻害薬/ARBでは、女性、低いBMI、低いeGFR、高いALPが挙げられているが、女性やALPになぜ関連があるかはわからない。また、β遮断では、高齢、低い心拍数(HR)、低い拡張期血圧(DBP)、うっ血兆候があげられており、これはまさに実臨床通りといった感じ。

白人を対象にしていることや、日本での最大容量は欧米より少ないという点に違いはある。この研究ではACE阻害薬/ARB推奨容量の50%以上で推奨量と同程度の死亡率だったが、日本人ではそれがどれくらいの量なのかわからない。

まあ、ACE阻害薬/ARBやβ遮断薬は副作用がなければ増やしていくというスタンスでよいだろう。

高齢者の心血管疾患一次予防のためスタチン

Effect of Statin Treatment vs Usual Care on Primary Cardiovascular Prevention Among Older Adults: The ALLHAT-LLT Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2017 Jul 1;177(7):955-965.

◇この論文のPECOは?
P:75歳以上の高齢者で、冠動脈疾患の既往のない高血圧患者
E:新規のプラバスタチンの内服
C:通常治療
O:全死亡

secondary outcome:死因が明確な死亡、心血管疾患イベント(非致死的心筋梗塞、致死的心血管疾患)

<デザイン、セッティング>
・ALTTHAT-LLT試験のpost hoc解析
・北米 513施設
・2867例(プラバスタチン1467例、通常治療1400例)
・平均観察期間:プラバスタチン4.63年、通常治療4.77年
・COX比例ハザードモデル

<患者背景>

(本文から引用)

<結果>

(本文から引用)

有意差はないが、全死亡や冠動脈疾患死など増える傾向に傾いている。

◇感想
高齢者へスタチンの使用は、冠動脈疾患を減少させる可能性があるが、全死亡の減少とまでは至らない(1)。それは、高齢者では横紋筋融解症が起こりやすいこと、転倒リスク、認知機能の悪化などさまざまな負の影響があるからだと推測される。

これはALLHAT-LLT試験のpost hoc解析だが、いままでの報告同様、全死亡を減少させる効果はなかった。

冠動脈疾患のリスクが高い欧米人でこのデータなので、よりリスクの低い日本人では、まずメリットはなさそう。処方するなら、negative effectについても十分考えてから。

(1)N Engl J Med. 2016 May 26;374(21):2021-31.

CVD-REAL SGLT2阻害薬のリアルワールドデータ

EMPA-REG試験で、冠動脈疾患の既往がある患者を対象に、エンパグリフロジン(ジャディアンス)はプラセボと比較し、14%の心血管イベント(心臓死、心筋梗塞、脳梗塞)の抑制効果を認めた。また、心不全入院を35%、心臓死を38%低下させた(1)。

サブ解析では、心不全の既往のないサブグループでも、心不全入院、全死亡、心血管死の有意な低下が認められている(2)。

ジャディアンス以外のSGLT2阻害薬や、冠動脈疾患の既往がない患者でも、同様の効果があるかは明らかではない。

Lower Risk of Heart Failure and Death in Patients Initiated on SGLT-2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs: The CVD-REAL Study.
Circulation. 2017 May 18. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病
E:新規のSGLT2阻害薬の追加
C:新規の血糖降下薬(SGLT2阻害薬以外)の追加
O:心不全入院

6ヶ国のhealth recordを解析。

secondary endpointは、全死亡、心不全入院+全死亡(ドイツは死亡データがないため除外)。

観察期間は、新規の糖尿病薬が処方されてから、その治療の終了まで(on treatment解析)。

◇患者背景

(本文から引用)
プロペンシティスコアがマッチした集団。
87%で心筋梗塞や心不全の既往がない。IDDMが30%。
アウトカムに影響を与えうる薬剤であるチアゾリジンや利尿薬を含め、内服薬に差はない。

SGLT2阻害薬の内訳は、
○心不全入院
カナブリフロジン(カナグル) 53%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 42%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 5%

○全死亡
カナブリフロジン(カナグル) 42%
ダパグリフロジン(フォシーガ) 51%
エンパグリフロジン(ジャディアンス) 7%

◇結果
○SGLT2阻害薬追加群
心不全入院:0.51/100人年
全死亡:0.87/100人年
心不全入院または全死亡:1.38/100人年

心不全入院(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院(ITT解析)

(本文から引用)

全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

心不全入院、または全死亡(On Treatment解析)

(本文から引用)

◇感想
2型糖尿病で、経口血糖降下薬やインスリンなどそれなりに投与していて、かつ心血管疾患の既往がない人がほとんどという集団で、新規のSGLT2阻害薬の追加は、それ以外の血糖降下薬の追加と比べ、心不全入院と全死亡を低下させた。

心不全入院は39%、全死亡は49%のリスク減少。

心不全の発症率は、EMPA-REG試験のサブ解析とほとんど変わらず、全死亡はEMPA-REG試験が二次予防を対象にしているためか、あちらの方が2倍ぐらい多い。

このCVD-REALのデータは、EMPA-REG試験のデータがリアルワールドでも確認できたとか、ジャディアンスだけじゃなく、カナグルやフォシーガでも心血管イベント抑制効果が確認できた、と喧伝されそうです。

個人的には、全死亡が半分になるというのは、すごく出来すぎているように思うけど、発生頻度が少ないので処方していても実感はできそうにない。死亡率が半分になるというのは、それが事実なら夢のような薬。

心不全入院だけでなく全死亡も減らしているので、これは単なる利尿効果では説明がつかないので、他の要因(レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系を賦活させないとか、ケトンの産生などの説明を耳にするが)が関与していると考えればいいのか。

EMPA-REG試験で増加傾向だった脳梗塞がどうなのかとか、安全性のデータについては、この論文からはわからないので要注意。

(1)N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.
(2)Eur Heart J. 2016 May 14;37(19):1526-34.

カナグリフロジン 心血管アウトカム

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病
I:カナグリフロジン100mg or 300mg
C:プラセボ
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞

inclusion criteria:HbA1c7.0−10.5%、心血管疾患の既往あり、ない場合はそれ相応のリスクがあること(糖尿病罹患歴10年以上、コントロール不良の高血圧、喫煙者、低HDL血症など)など

◇試験の概要
デザイン:RCT 非劣勢試験(非劣勢マージン1.3)
地域:30ヶ国、667施設
観察期間:126.1週(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:記載なし 688イベント発生するまで
症例数:10142例(カナグリフロジン5795例、プラセボ4347例)
追跡率:99.6%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen社)

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
内服薬は不明。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointとしては差がついてるが、心臓死、心筋梗塞、脳梗塞のぞれぞれでみるとどれも有意差はついていない。

アルブミン尿の抑制だとか、腎機能保護効果については、EMPA-REG試験と同じような感じ。


(本文から引用)

足趾と足の切断、骨折、男性器感染症、女性器真菌感染症は、カナグルで有意に多い。あと、光線過敏症が多い傾向。

◇感想
動脈硬化性の心血管疾患の既往、またはそれ相応のリスクがある2型糖尿病患者を対象とし、カナグリフロジンの心血管イベント抑制効果を検証したRCT。

結果としては、primary endpointである心臓死+心筋梗塞+脳梗塞は有意に減少したが、それぞれで見てみると、どれも有意な減少は認められなかった。EMPA-REG試験では、プラセボと比べエンパグリフロジンで脳梗塞が増加傾向にあったが、カナグリフロジンではその傾向は認められなかった。

primary endpointに対するNNT(1年)は218になる。今の薬価は205円なので、1630万円で1件イベントが減るが、下肢切断や感染症は増える。それをどう捉えるか。

自分は真菌感染とか診たことがないので、そもそもSGLT2阻害薬を使ってそういう副作用を起こされても困る。自分が対処しきれないことが起こりうる薬剤は処方しにくい。

RCTで有害事象まで調べることはできないので(primary endpointより発生率が低いからパワーが足りない)、これからコホート研究やメタ解析で明らかになっていくだろう。

【総説】冠動脈バイパス術 (CABG)とFFR EHJ

Fractional flow reserve to guide and to assess coronary artery bypass grafting
Eur Heart J (2017) 38 (25): 1959-1968.

【FFR】
・0.014インチ(0.35mm)のプレッシャーワイヤーを使用。

・狭窄部の遠位まで進め、血管拡張薬を冠注もしくは静注する。

・FFR<0.75なら100%の精度で心筋虚血が存在し、FFR>0.80なら95%以上の精度で心筋虚血はない

【CABG】
・動脈硬化の進展リスクは動脈グラフトより静脈グラフトで高い。しかし、生存率への影響は大規模のレトロスペクティブなレジストリーでは認められなかった。

・内胸動脈(ITA)の内径と冠動脈狭窄の程度とは強い関連がある。血流の調整が働く。

・伏在静脈(SVG)のグラフト開存率は、還流域の大きさと冠動脈径による。LCxやRCAへの吻合より、LADへの吻合の方が開存率が高い。

・橈骨動脈(RA)の閉塞メカニズムは明確ではないが、スパズムが関与している。

・RAの開存率は、冠動脈の狭窄の程度に依存する。>90%ではよいが、それ以下であれば開存率は低下する。

・適切な血管を選択すれば、RAの開存率はRITAと同等であり、SVGより優れている。

【左主幹部病変】
・病変が短い場合や入口部病変では、狭窄度の評価が難しくなる。

・狭窄が50%未満だった患者の23%で、FFR<0.80だったという報告があり、LM病変は過小評価のリスクがある。

・LM病変でもFFR>0.80なら、至適薬物療法で5年までの臨床的アウトカムは良好である。

・入口部に病変がなくても、ガイドカテーテルが機能的な狭窄になり得る。

・サイドホール付きガイドカテーテルは使用しないこと。

【多枝病変】
・FFRで病変を評価するfunctional syntax scoreを用いると、治療法が変わるかもしれない(多枝病変でfunctional syntax score<23、LM病変で<32なら)。

・多枝病変(MVD)でのFFR-guided PCIと外科的血行再建を比較するためのFAME3試験が進行中である。1年間のMACE(心血管イベント)をアウトカムとした非劣勢試験である。

・LM病変+MVDのFFRは難しい。LM病変に加え、LADもしくはLCxに有意狭窄があるなら、冠動脈内イメージングを使用した方がよい。

【弁膜症の合併】
・ASでは25−50%で冠動脈疾患の合併あり。

・AS+CADで症状があれば、AVR+CABGが推奨される。

・著しい低血圧の避けるため、アデノシンは静注より冠注が良い。

・左室肥大は狭窄の過小評価(FFRの上昇)に繋がるかもしれない。

【グラフトに対するFFR】
・グラフトへのPCIは冠動脈へのPCIより、MACE(心筋梗塞と再血行再建)が多い。

・グラフトへのPCIでは、DESはBMSと比べ、より低い再血行再建率と死亡率に関連がある。

・グラフトへのFFRに関するデータは少ないが、レトロスペクティブなレジストリーデータでは、FFR-guided PCIは心血管イベントの減少とコスト削減に関連があった。ただ、動脈グラフトに限られ、SVGではその限りではない。

・冠動脈が閉塞している場合、FFRの結果は通常のFFRの解釈通りである。冠動脈が開存している場合、吻合部の遠位部で測定しFFR<0.80なら冠動脈とグラフトの両方でも十分な冠血流がないことを意味する。

【CABG前のFFR】
・グラフトの1年開存率は、FFRと関連がある。FFR陰性の冠動脈に対するグラフトは、陽性の場合より2倍の閉塞率で、それは動脈グラフトでも静脈グラフトでも同様であった。

・angio-guided CABGとFFR-guided CABGの1年開存率を比較するGRAFFITI試験が進行中である。