バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用は急性腎障害を増加させる

Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Med. 2018 Jan;46(1):12-20.

【概要】
VCM + PIPC/TAZと、VCM単独、VCM + 他のβラクタム薬、PIPC単独の腎毒性・AKI発症率を比較したSR。
AKIは、それぞれの試験での定義に則る (ほとんどの試験でAKIN、RIFLE、KDIGO、vancomycin consensus guidelineが使われている)。
RCTと観察研究を統合。
random effect model。

VCM=バンコマイシン
PIPC/TAZ=ピペラシリン/タゾバクタム
CFPM=セフェピム

【結果】
AKI (primary endpoint)
VCM + PIPC/TAZ vs VCM単独
I2=53%
OR:3.40 (95%CI:2.57-4.50)

VCM + PIPC/TAZ vs CFPMまたはカルバペネム
I2=78%
OR:2.68 (95%CI:1.83-3.91)

VCM + PIPC/TAZ vs PIPC/TAZ単独
I2=56%
OR:2.70 (95%CI:1.97-3.69)

重症例に限ると、VCM + PIPC/TAZとVCM + CFPM、VCM + PIPC/TAZとPIPC/TAZ単独ではAKI発症率に差はなかったが、VCM + PIPC/TAZとVCM単独では有意差あり (OR:9.62 [95%CI:4.48-20.68] I2=0%)。

AKI発症までの時間は、VCM + CFPMとVCM + PIPC/TAZを比較した試験が5つあった。それを統合するとVCM + CFPMよりVCM + PIPC/TAZの方が早めだが、有意差はなかった (−1.3日、95%CI:-3.0to0.41)。

【まとめ】
VCM + PIPC/TAZの併用では、AKIが増えるかもしれない。異質性はそこそこ。Discussionには出版バイアスが否定できないと。

重症例に限ると、VCM単独よりVCM + PIPC/TAZでAKIが増加したが、他の薬剤 (VCM + CFPMやPIPC/TAZ単独) とは差がなかった。うーん、VCM単独で投与する患者群とVCM + PIPC/TAZを投与する患者群では、そもそも集団の性質自体、別な気がするが。

VCM + PIPC/TAZがAKIを増やすかもしれないということは、念頭に置いておいた方がいい。

LVEF>40%以上のSTEMIでも、抗アルドステロン薬は有効なのか

アルドステロンは心筋の線維化を促進し、心筋リモデリングを引き起こすと言われている。心不全では血清レニン活性や血中アルドステロン濃度は上昇しており、それが予後の悪化に繋がる。

STEMI発症後、LVEFが40%を下回る場合には、標準治療に抗アルドステロン薬を加えることで生命予後改善効果が示されている (EPHESUS試験)(1)。LEVF>40%のSTEMIで抗アルドステロン薬の有効性を検証したRCTでは、死亡率の低下を認めたものは1つしかなく、その効果は決定的と言えなさそう (ALBATROSS試験)(2)

Aldosterone Antagonist Therapy and Mortality in Patients With ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Heart Failure
A Systematic Review and Meta-analysis

JAMA Intern Med. Published online May 21, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.0850

【概要】
心不全のない、あるいはLVEF>40%のSTEMIに対する抗アルドステロン薬の有効性を検証したSR。
RCTのみ統合 (臨床的なアウトカムや生化学データがないものは除外)。
統合した試験の観察期間は、6ヶ月〜1年。
random effect model。

P:心不全のない、またはLVEF>40%のSTEMI
I:標準治療 + 抗アルドステロン薬の内服 (スピロノラクトン・エプレレノン・カンレノ酸カリウム)
C:標準治療 ± プラセボ
O:死亡、心筋梗塞、新規のうっ血性心不全、心室性不整脈、LVEFの変化、血清Cr値、血清K値

出版バイアスは、funnel plotを視覚的に判断。死亡というアウトカムのみ評価し、出版バイアスは認めなかった。他のアウトカムに関しては、統合した試験の数が少なかった (<10試験) ので評価していない。

【結果】
抗アルドステロン薬 vs 対照
死亡
I2=0%
2.4% vs 3.9% HR:0.62 (95%CI:0.42-0.91)

心筋梗塞
I2=0%
1.6% vs 1.5% OR:1.03 (95%CI:0.57-1.86)

うっ血性心不全
I2=0%
4.3% vs 5.4% OR:0.82 (95%CI:0.56-1.20)

心室性不整脈
I2=13%
4.1% vs 5.1% OR:0.76 (95%CI:0.45-1.31)

死亡は有意に減少。ひとつひとつのRCTのサンプルサイズ・イベント数が少なく、2つの試験で全体に占めるウエイトが67%あり、それに引っ張られている可能性はあるが、I2=0%で視覚的に見ても一貫性はありそう。ちなみに上述のALBATROSS試験のウエイトは9%。

他の心筋梗塞・うっ血性心不全・心室性不整脈といったアウトカムに有意な差はなかった。

LVEFは1.8%とわずかではあるが有意に改善しており、血清Cr値や血清K値には差はなかった。

【まとめ】
LVEF<40%のSTEMIでは、抗アルドステロン薬の有益性が示されていたが、LVEF>40%でも生命予後改善効果が示された。

ただし、この結果は鵜呑みにはできない。

対照 (標準治療) の死亡率が高いようで、一番ウエイトを占しめていたRCT (45%) では、標準治療群での6ヶ月死亡率が10%近くあり、日本の実臨床からとは違い過ぎる。I2=0%で視覚的にも一貫性はありそうなんだけど・・・。

あと、死亡のハザード比が0.62と効果が高いが、LVEF<40%を対象としたEPHESUS試験での全死亡のハザード比が0.85ということを考えると、そこまでの効果があるのか。

また、LVEF>45%のHFpEFを対象としスピロノラクトンの効果を検証したTOPCAT試験では、3400例も症例数を集めたが、全死亡・心血管死に有意差がなかった。なのに、STEMIに限れば死亡率が改善するのか、という疑問はある (TOPCAT試験にもOMIが25%含まれている)(3)。もしこの効果が真実なら、心筋梗塞発症早期から抗アルドステロン薬を使用することが良い結果をもたらしたのかもしれない。

死亡の他に有意差があったものはLVEFの改善だが、これは1.8%と小さく誤差範囲と言っていい。統合されたRCTの観察期間はすべて1年未満だったので、長期のデータが必要になるが、長期的に見れば抗アルドステロン薬により心筋リモデリングが抑制され、LVEFやうっ血性心不全などのアウトカムが、臨床的にも意味のある改善を示す可能性はある。

CrやKには差がなかったようだが、標準治療としてACE阻害薬やARBを使用しているなら、抗アルドステロン薬の併用はCrやKは上昇を招くので、より注意して見る必要がある。

(1) N Engl J Med. 2003;348(14):1309-21.
(2) J Am Coll Cardiol. 2016;67(16):1917-27.
(3) Engl J Med. 2014;370(15):1383-92.

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

心原性心停止で、偶発的低体温になった患者で予後が良かったり、心原性心停止の犬で軽度低体温療法が脳障害を減少させたという報告があった。人を対象とし軽度低体温療法の有効性を検証したRCTは、2002年に初めて報告された (HACA試験)。(1)

心室細動 (VF) による院外心停止を対象とし、32−34℃・24時間の体温管理を行う群と、体温管理を行わない群に無作為化。体温管理にはTheraKoolという冷気が出るマットレスを使用。目標体温に到達するまでの時間は8時間 (中央値) で、復温は受動的に行い、36℃以上になるのに8時間 (中央値) かかっている。標準治療群では、体温は37℃台で推移。

登録が進まず、かつ資金が不足したことにより早期中止になっているが、273例が登録され、6ヶ月死亡率は低体温療法群で41%、通常治療群で55%であった (リスク比:0.74、95%CI:0.58−0.95)。

さらに小規模のRCTではあるが、VFによる心停止を対象とし、32−34℃・12時間の低体温療法と通常体温と比較。低体温療法群で神経学的予後が有意に改善することが示された (49% vs 26%)(2)

この2つのRCTの結果を受け、VFによる院外心停止で体温管理療法 (TTM) が標準治療としてガイドラインで推奨されるようになった。

ただ、TTMの脳保護効果について、遅発性細胞死の抑制、脳代謝抑制、フリーラジカル産生抑制などによるものと推測されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。実は、低体温にすることに生命予後や神経学的予後を改善させる効果はないのかもしれない。

ある観察研究では、ROSC後48時間以内に体温が37℃から1℃上昇するごとに、神経学的予後が悪化することが示されている (オッズ比:2.26)(3)。生命予後や神経学的予後の改善が示された上の2つのRCTでも、通常体温群の体温 (中央値) は37℃台になっていたことから、低体温がアウトカムの改善をもたらしたのか、あるいは37℃を超える体温が予後の悪化をもたらしたのかはわからない。

32−34℃の低体温が生命予後や神経学的予後を改善したのではなく、高体温を避けることがそれらのアウトカムの改善につながったことを示唆したのが、TTM試験である(4)

993例の院外心停止を、目標体温33℃と36℃に無作為化し、72時間は両群とも発熱を避けるという方法が取られた。primary endpointは試験終了 (中央値256日) までの全死亡、secondary endpointは180日時点の神経学的予後不良と死亡とし、いずれも両群に有意差はなく同程度だった。

全有害事象は33℃群で多い傾向で、低K血症は有意に、肺炎や穿刺部出血などは多い傾向が見られた。

この結果から、36℃の体温管理を行うことは妥当と考えられるが、すべての患者で33℃が無益かどうかについては明らかではなく、例えば、より重症な患者 (体動がない・脳幹反射消失・頭部CTですでに虚血性変化を認めるなど) では、33℃を目標としたTTMが良いかもしれない。

TTMの目標体温は少なくとも24時間維持することが推奨されているが、24時間と48時間を比較したRCTでは、両群で神経学的予後に差はなく、48時間で有害事象が有意に多かった (そのメインは肺炎)(5)。このRCTは目標体温を33℃としており、低体温による細胞性免疫の低下や筋弛緩薬投与による喀痰排出不全が原因と推測する。

まとめると、VFによる院外心停止には目標体温32−36℃とし24時間以上のTTMが推奨されているが、基本的には35−36℃程度での体温管理を行い (それ以上下げようとすると多くの場合で筋弛緩薬が必要になる)、72時間以内の発熱は避けるというスタンスで良いだろうと思います。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) Arch Intern Med. 2001;161(16):2007-12.
(4) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.
(5) JAMA. 2017;318(4):341-350.

カテーテル挿入時・ドレッシング交換時の消毒は、ポビドンヨードより0.5%以上のクロルヘキシジンアルコールで

カテーテル挿入時の消毒は、ポビドンヨード (PVI) より2%クロルヘキシジン (CHG) の方が、カテーテル関連血流感染 (CRBSI) を減らすことができる(1)。ただ、日本ではCHGは、0.5%か1%のものしかなく、この結果をそのまま適応できるかは疑問があった。

IDSAのガイドラインでは、ヨードチンキより0.5%以上のCHGで消毒するよう推奨されており、CDCガイドラインでも0.5%以上のCHGの使用が推奨されている(2-3)。下の論文の著者によると、0.5%CHG、1%CHG、10%PVIの有効性を検証した臨床試験は今までなかったらしい。

Comparison of the efficacy of three topical antiseptic solutions for the prevention of catheter colonization: a multicenter randomized controlled study
Crit Care. 2017 Dec 21;21(1):320.

0.5%CHGと1%CHGは、10%PVIよりもカテーテルコロナイゼーションを減らせるか検証したRCT。CRBSIは発生率が低いので、カテーテルコロナイゼーションをサロゲートエンドポイントとしている。

【PICO】
P:CVカテーテルと動脈カテーテルを留置した患者
I/C:0.5%CHG、1%CHG、10%PVIによる消毒 (カテ挿入時とドレッシング交換時)
O:カテーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション
secondary outcome:CRBSI

カテーテルコロナゼーションの定義:roll plate法で培養し24時間後のコロニーが15CFU以上。sonication法では、それぞれの施設の検査室基準で。
CRBSIの定義:血液培養は末梢静脈とカテーテルからそれぞれ1セット以上採取する。1) 末梢静脈から培養された菌とカテ先培養で検出された菌が合致した場合。2) 末梢静脈とカテーテルから採取した血液培養で菌が合致した場合 (または血液培養陽性化までの時間差)。3) 2つのカテーテルルーメンから血培を採取した場合は、一方のコロニー数が他方の3倍以上であれば、たぶんそう。

inclusion criteria:18歳以上
exclusion criteria:ICU入室前のカテーテル挿入、中心静脈栄養や化学療法のため7日以上留置する患者、いずれかの消毒にアレルギーがある患者

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:日本 16施設
登録期間:2012年12月1日〜2014年3月31日
観察期間:カテーテル挿入から抜去まで (中央値3.8日)
症例数:1132例 (0.5%クロルヘキシジン群377例、1%クロルヘキシジン群387例、10%ポビドンヨード群368例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり (丸石製薬、吉田製薬)

【患者背景】
3群とも有意差なし。年齢66歳、男性63%、SOFA7.2点、免疫不全5%、ステロイド11%、糖尿病19%、AKI30%、CKD17%、内科系81%、手術症例19%、カテーテル留置前の感染56%、感染源 肺24%、腹部11%、尿路5%、カテーテル留置前の抗菌薬投与55%、CV35%、Aライン65%、内頸静脈93%、鎖骨下静脈4%、大腿静脈3%、留置期間3.8日、カテ培養 maki法83%、sonication法17%。

【結果】
0.5%CHG vs 1%CHG vs 10%PVI
テーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション (primary outcome)
3.7 vs 3.9 vs 10.5 /1000カテーテル日 P=0.03

CRBSI (secondary endpoint)
3.0 vs 2.0 vs 4.9 /1000カテーテル日 P=0.41

CRBSIは3群で有意差はないが、カテーテルコロナイゼーションは0.5%CHGと10%PVI、1%CHGと10%PVIの間で有意差あり (HRはそれぞれ0.33、0.35)。

【まとめと感想】
カテーテルコロナイゼーションは、10%PVIより0.5%CHGと1%CHGで低かった。CRBSIについてはパワー不足なので統計学的な差はなかったが、0.5%CHGと1%CHGで低い傾向は見て取れた。

(1) Lancet. 2015;386(10008):2069-2077
(2) http://www.idsociety.org/Guidelines/Patient_Care/IDSA_Practice_Guidelines/Other_Guidelines/Other/Management_of_Catheter-Related_Infections/
(3) https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/bsi/index.html

鉄の経口での補充は、鉄欠乏を有するHErEFの運動耐容能の改善には効果がない

心不全患者では貧血の合併はよく見られ、ヘモグロビン (Hb) の値に関わらず、鉄欠乏は運動耐容能・QOL・死亡率の低下と関連がある。

カルボキシマルトース鉄の静注は、心不全症状や運動耐容能 (6分間歩行距離) の改善に有効である(1-2)。経口の鉄剤でも同様の効果があるかはわかっていない。

Effect of Oral Iron Repletion on Exercise Capacity in Patients With Heart Failure With Reduced Ejection Fraction and Iron Deficiency: The IRONOUT HF Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017 May 16;317(19):1958-1966

【PICO】
P:鉄欠乏を有するNYHAⅡ-ⅣのHFrEF (EF≦40%)
I:iron polysaccharide 150mg×2の内服
C:プラセボの内服
O:最大酸素摂取量の変化量 (16週後)

鉄欠乏=フェリチン15−100ng/ml、またはフェリチン100−299ng/ml + TSAT<20%

secondary endpoint:6分間歩行距離、NT-proBNPなど

exclusion criteria:神経筋疾患や整形外科的疾患など心肺運動負荷試験 (CPET) ができない患者、CPXでガス交換比 (RER) 1.0以上

【試験の概要】
デザイン:DB-RCT
地域:米国23施設
登録期間:2014年9月3日〜2015年11月18日
観察期間:16週間
症例数:225例 (鉄投与群111例、プラセボ群114例)
解析:ITT解析
スポンサー:NHLBI (企業の関与なし)

【患者背景】
両群に統計学的な差はない。NYHAⅡ:Ⅲ=7:3だが、プラセボ群では6:4。心不全と診断されてから5−6年。虚血が3/4。βblocker95%、ACE阻害薬/ARB80%、ループ利尿薬80%、高アルドステロン薬60%で内服。NT-proBNP1100、フェリチン70、Hb12。最大酸素摂取量1180ml/min・13ml/kg/min。

【結果】
鉄投与群はベースラインでは、フェリチン75ng/ml、TSAT19%だったが、16週後ではそれぞれ95ng/ml、22%で、フェリチンは有意ではなかったものの (P=0.06)、TSATはプラセボに比べ有意に改善していた。ただ、16週後のHbのデータはなかった。

鉄投与群 vs プラセボ群
最大酸素摂取量の変化量 (primary endpoint)
23ml/min vs -2ml/min 変化量の差21ml/min (-34to76)

6分間歩行距離、NT-proBNPなども有意差なし。

【まとめと感想】
経口の鉄剤では、最大酸素摂取量、6分間歩行距離、NT-proBNP, 心不全症状 (質問表への回答) は改善しなかった。フェリチンやTSATなど鉄のパラメータはそこそこ改善したにも関わらず、これらの指標に変化がなかったということは、単純に鉄を補充してもダメということ。

以前のRCTで6分間歩行距離や心不全症状の改善を認めていて、IRONOUT試験と同じように鉄欠乏のあるHFrEFを対象としていて、baselineのHbとかフェリチンとかそれほど代わりのに結果に違いがでるのは、カルボキシマルトース鉄自体の効果なのだろうか。

経口の鉄剤にしろ、カルボキシマルトース鉄の静注にしろ、長期的な効果と、死亡率・心不全の増悪といった臨床的なアウトカムについてはデータがないため、今後に期待。

(1) N Engl J Med 2009; 361:2436-2448
(2) Eur Heart J. 2015;36(11):657-668.

ADDリスクスコアとDダイマーで大動脈解離を否定する

大動脈解離の診断は難しい。胸痛を訴える患者など、大動脈解離が鑑別にあがる状況で、全員にCTを撮るわけにはいかないし、CTのハードルが高いと見逃してしまう。

肺血栓塞栓症では、D-dimerが陰性であれば除外できるが、大動脈解離の場合はそうはいないない。感度が高い検査方法ではあるが、除外する目的では使えない(1)

ADDリスクスコアというものもあるが、これもそれだけでは大動脈解離を否定することには使えず、このスコアをIRAD databeseに当てはめると、大動脈解離2538例のうち108例 (4.3%) がlow risk (ADDリスクスコア=0) だった。

ADDリスクスコア
次の3つのカテゴリで、カテゴリ内の項目をひとつでも該当すれば1点とし、0−3点で評価する。
①マルファン症候群、大動脈疾患の家族歴、既知の大動脈弁疾患、既知の胸部大動脈瘤、大動脈の治療 (手術)
②突然、激痛、引き裂くような痛み
③血流障害 (脈拍の欠損、収縮期血圧の左右差、局所的な神経学的異常)、拡張期逆流性雑音、低血圧・ショック

ただし、ADDリスクスコアとD-dimerの組み合わせは、大動脈解離の除外に有用かもしれない。

Diagnostic Accuracy of the Aortic Dissection Detection Risk Score Plus D-Dimer for Acute Aortic Syndromes: The ADvISED Prospective Multicenter Study.
Circulation. 2018;137(3):250-258

2014年〜2016年に登録された、4ヶ国、6施設の前向き観察研究。

発症14日以内の胸痛、腹痛、背部痛、失神、灌流障害の症状・徴候で救急外来を受診した患者1850例が対象。ADDリスクスコアとD-dimerについて評価し、急性大動脈症候群 (AAS) があやしければCTA・TEE・MRAを行う。

これらの検査をしなかった患者、手術あるいは剖検によるASSの診断がついていない患者、ASSを除外された患者では、14日間のフォローアップを行う。本人または家族に電話をするか、再診外来にきてもらい、質問表に答えてもらう。

ASSの定義は、Stanford AとBの大動脈解離、大動脈壁在血腫 (IMH)、penetrating aortic ulcer (PAU)、大動脈破裂。確定診断は、CTA・TEE・MRA・手術・剖検により、ASSの所見が確認できること。

primary endpointは、ASSを除外する上での、ADDリスクスコア (0または≦1) とD-dimer陰性を組み合わせのfailure rate。

【結果】
1850例のうち、835例は画像検査が行われ、234例がAASであった。画像検査が行われなかった1015例は14日のフォローアップが行われ (lost follow up 2例)、うち30例で画像検査が行われ、AASは7例だった。

ADDリスクスコア=0 + D-dimer陰性
 感度:99.6% (97.7%-100%)
 特異度:18.2% (16.4%-20.2%)
 陽性的中率:15.4% (13.7%-17.3%)
 陰性的中率:99.7% (98.1%-100%)

ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性
 感度:98.8% (96.4%-99.7%)
 特異度:57.3% (54.9%-59.7%)
 陽性的中率:25.8% (23%-28.7%)
 陰性的中率:99.7% (99.1%-99.9%)

【まとめと感想】
ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性であれば、99.7%で急性大動脈症候群を除外できる。もちろん、対象となる集団が異なればこの数字は変わってくるわけだけど、否定できる根拠があると助かる。

(1) Ann Emerg Med 2015;65:32-42

せん妄リスクのある重症患者への予防的ハロペリドール投与は無益

Effect of Haloperidol on Survival Among Critically Ill Adults With a High Risk of Delirium: The REDUCE Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018;319(7):680-690.

【PICO】
P:ICUに2日以上滞在予定の患者
I:予防的ハロペリドール1mgまたは2mg 1日3回静注
C:プラセボ 1日3回静注
O:28日間の生存日数

secondary endpoint:90日生存率、せん妄発生率、delirium free time (28日間)、coma free time (28日間)、人工呼吸器装着期間、ICU滞在日数、入院日数

exclusion criteria:すでにせん妄になっている、パーキンソン病、認知症、アルコール乱用、急性神経疾患、精神疾患の既往、抗精神病薬の使用、重大な心室性不整脈の既往、QTc500ms以上など

【試験の概要】
デザイン:DB-RCT
地域:オランダ
登録期間:2013年7月〜2016年12月
観察期間:90日間
症例数:1789例 (ハロペリドール1mg群350例、ハロペリドール2mg群732例、プラセボ群707例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。ざっくりとした背景は、66歳、外科と内科疾患が半々、緊急入院80%、人工呼吸器70%、APACHE-IIスコア20、PRE-DELIRICスコア26、QTc440。

【結果】
ハロペリドール1mgは無益のため早期中止。

ハロペリドール2mg vs プラセボ
28日間の生存日数 (primary endpoint)
28日 vs 28日、difference:0日、HR:1.003 (95%CI:0.78-1.30)

せん妄の発生
33.3% vs 33.0%、difference:0.4% (95%CI:-4.6to5.4)

28日生存率、delirium free days、ICU滞在日数、入院日数にも差はなかった。

【まとめと感想】
ハロペリドールの予防投与は、28日生存日数を改善しなかった。今まで小規模のRCTでせん妄が減ったというデータはあったが、確たるエビデンスではなかったので、生存日数をアウトカムにしたのはちょっと無理があるかも。残念ながら、せん妄の発生率も差がなかったので、予防的投与にメリットはない。

ステント留置後の非心臓手術 周術期のアスピリン内服は有益

AHAのガイドラインでは、非心臓手術の周術期の抗血小板療法については、こう記載してある。
classI
・DESもしくはBMSを留置後4−6週間以内に手術する場合は、出血リスクがステント血栓症リスクを上回らない限りDAPT継続。
・ステント留置後の患者で、P2Y12阻害薬を中止しなければならない場合は、アスピリンのみ継続し、術後早期にP2Y12阻害薬を再開。

classIIb
・ステント留置していない患者に非緊急手術を行う場合、出血リスクより心血管イベントリスクが高いなら、アスピリン継続は妥当かも。

classIII:No Benefit
・待機的非心臓手術で頸動脈手術でない場合で、かつステントが留置されていない患者では、アスピリンの開始・継続は有益ではない。

非心臓手術の抗血小板療法では、ステント留置後か否かに分けて考える。ステント留置後であれば、それがBMSでもDESでも留置後早期 (4-6週) だと、周術期にステント血栓症を起こしやすいため、基本的にはDAPT継続。

DESは6ヶ月までには安定するとされている。しかし、アスピリンもしくはDAPTを継続するかどうかのデータは十分ではないため、ステント留置から多少時間が経っていても、ステント血栓症を含めた心血管イベントと出血リスクを考慮し、周術期抗血小板療法どうするか決めなければならない。

ステントを留置していない患者では、アスピリンの有効性を検証した2つの大規模RCTがある。股関節手術13356例をアスピリン160mgとプラセボに無作為割付したPEP試験と、心血管疾患ハイリスク患者10010例をアスピリン200mgとプラセボに無作為割付したPOISE-2試験で、いずれもアスピリンのメリットは示されなかった。POISE-2試験では、BMS留置6週間以内、DES留置1年以内の症例は除外されており、冠動脈疾患を有する症例は23%しか含まれておらず、また頸動脈手術は除かれていたため、そのような患者群ではDAPT継続が妥当かもしれない。

というようなことが書かれてあった。

ざくっとまとめると、ステント留置早期は基本DAPT継続で、ステントを留置していない患者ではアスピリンは不要。ステント留置から多少時間が経った症例は、心血管イベントリスクと出血リスクを個々に判断って感じ。

個々に判断って、それが難しいんだけど・・・。

これはPOISE-2試験のサブ解析。

Aspirin in Patients With Previous Percutaneous Coronary Intervention Undergoing Noncardiac Surgery.
Ann Intern Med. 2018;168(4):237-244.

【PICO】
P:PCI後で非心臓手術を受ける患者
I:周術期のアスピリンの内服
C:周術期のプラセボの内服
O:30日後の死亡・非致死的心筋梗塞

secondary endpoint:出血

exclusion criteria:6週間以内のBMS留置、1年以内のDES留置

【デザイン、セッティング】
・POISE-2試験は、非心臓手術におけるアスピリンとクロニジンの単剤、あるいは併用の効果を比較した多施設RCT。
・そのPOISE-2試験のサブグループ解析 (post hoc)
・470例 (アスピリン群234例、プラセボ群236例)
・COX比例ハザードモデル

【結果】
アスピリン群 vs プラセボ群
全死亡と心筋梗塞 (primary endpoint)
6.0% vs 11.5% 絶対リスク差:5.5 (0.4 to 10.5)

全死亡
0.9% vs 1.3% 絶対リスク差:0.4 (-1.4 to 2.3)

非致死的心筋梗塞
5.1% vs 11.0% 絶対リスク差:5.9 (1.0 to 10.8)

大出血と生命を脅かす出血
5.6% vs 4.2% 絶対リスク差:-1.3 (-5.2 to 2.6)

【まとめと感想】
BMS留置から6週間以上、DES留置から1年以上経過している患者では、非心臓手術の周術期にアスピリンを内服すると、出血は少し増える傾向があるが、心筋梗塞は有意に抑制される。ステント留置後やそれに準ずる冠動脈疾患がある場合には、非心臓手術周術期にアスピリンを内服させることは有益だろう。

SVGに対するPCIにおいて、第1世代DESのBMSに対する優位性は5年で消失

大伏在静脈 (SVG) に対するPCIにおいて、DESとBMSの有効性を比較したISAR-CABG試験では、1年の心血管イベント (全死亡、心筋梗塞、TLR) は有意にDESで少なかった (15.0% vs 22.1%, HR:0.64 [95%CI:0.44-0.94])。この差は、DESによってTLRが抑えられたためだった。

このISAR-CABG試験は、2011年にLancetに掲載されており、SVGへのPCIでDESとBMSを比較した最も大きなサンプルサイズの試験だったらしい。これは、その5年のフォローアップの結果である。

Efficacy Over Time With Drug-Eluting Stents in Saphenous Vein Graft Lesions
J Am Coll Cardiol 2018;71;1973-1982.

【PICO】
P:SVGに新規の50%以上の狭窄を有する狭心症
I:DES留置 (Taxus, Cypher, Yukon)
C:BMS留置
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、TLR

secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、TLR、ステント血栓症

inclusion criteria:症状もしくは客観的な心筋虚血があること
exclusion criteria:心原性ショック

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、評価者のみブラインド)
地域:ドイツ
登録期間:2007年11月〜2010年2月
観察期間:5年
症例数:610例 (DES群303例、BMS群307例)
解析:ITT解析
スポンサー:記載なし

【患者背景】
ざっくりと。年齢71歳、DM35%、そのうち1/3がIDDM、UAP40%、13年物のSVG、EF49%、LADとLCxとRCAが1/3ずつ、reference3.3mm、病変長15mm。

【結果】
すべてのアウトカムで有意差なし。

DES vs BMS
全死亡
27.5% vs 28.9% HR:0.94 (95%CI:0.69-1.28)

心筋梗塞
8.2% vs 9.9% HR:0.76 (95%CI:0.44-1.36)

TLR
33.1% vs 25.5% HR:1.20 (95%CI:0.87-1.64)

ステント血栓症
2.0% vs 0.4% HR:5.11 (95%CI:0.60-44.72)

【まとめと感想】
1年時点で有意差があったprimary endpoint (全死亡、心筋梗塞、TLR) は、その後徐々に差が縮まり、Kaplan-Meier曲線は5年でほぼ重なった。両群の差になっていたのはTLRで、1年時点でDES群はBMS群の半分だったが (HR:0.49, 95%CI:0.28-0.86)、1−5年のランドマーク解析では倍発生しており、DES・BMSともに曲線の傾きはほぼ一定で差は開く一方である (HR:2.02, 95%CI:1.32-3.08)。

最初の1年では第1世代DESに軍配が上がったが、その差は5年間で消失してしまった。Cypher (SES) はすでに市場から消え、Taxus (PES) は第2世代・第3世代DESに劣る。第2世代・第3世代DESではlate catch upは抑えられ、BMSよりTLRは少ないとされているため、今のDESではここまで極端な結果にはならないだろう。

潜在性甲状腺機能異常と心疾患

Subclinical thyroid dysfunction and cardiovascular diseases: 2016 update.
Eur Heart J. 2018 Feb 14;39(7):503-507.

甲状腺機能低下
・潜在性甲状腺機能低下症=TSHが正常上限以上でFT4が正常範囲
・高齢者の10%、女性に多い
冠動脈疾患、心不全、脳梗塞と関連あり。
・TSHの範囲・上限については議論あり。
TSHは年齢とともに低下するが、年齢調整したカットオフ値は標準化していない
・甲状腺機能低下症は次のような異常をきたす。リズムの異常 (徐脈や房室ブロック)、心筋の異常 (収縮能低下、拡張能低下、LVEDV増加、肺高血圧、心嚢水)、血管内皮障害と低血圧。
・よりTSHが高い甲状腺機能低下症で、異常を認めやすく、特に拡張障害が起きやすい。
・65歳以上でTSH≧10mIU/Lの症例3044例を観察したCardiovascular Health Studyでは、peak E velocityが0.80m/sとTSHが正常範囲の群よりも有意に高かった (0.72m/s, P=0.002)。
・潜在性甲状腺機能低下症は心血管死のリスクである。
 TSH:4.5-6.9mIU/L → HR:1.09 (95%CI:0.91-1.30)
 TSH:7.0-9.9mIU/L → HR:1.42 (95%CI:1.03-1.95)
 TSH>10mIU/L → HR:1.58 (95%CI:1.10-2.27)
・ただし、全死亡は増やさない。
・高いTSH (TSH:10-19.9mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.89, 95%CI1.23-2.80)。
・潜在生甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充が、心機能を改善させたという小規模のデータがあるが、limitationは多い。
・甲状腺機能が正常化すると、頸動脈IMTが薄くなり、LDLが下がる。

甲状腺機能亢進
・潜在性甲状腺機能亢進症=TSHが低下or検出できない、FT3とFT4が正常範囲
心房性・心室性期外収縮、AF、心血管疾患と関連あり。
・潜在性甲状腺機能低下症は、次のようなリスクがある。
 全死亡 HR:1.24 (95%CI:1.06-1.46)
 心血管死 HR:1.29 (95%CI:1.02-1.62)
 心房細動 HR:1.68 (95%CI:1.16-2.43)
・低いTSH (TSH<0.1mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.94, 95%CI:1.01-3.72)。

甲状腺機能のスクリーニング
・甲状腺疾患の既往、視床下部・下垂体機能異常、自己免疫疾患の既往がある場合は、TSHのモニタリングが有用。
脂質異常、低Na血症、原因不明のCK上昇、貧血、甲状腺機能に影響を与える薬剤の使用などでは、TSHの検査が有用。
・ACPでは、50歳以上の女性では定期的な検査を推奨している。
・ATAとAACEでは、60歳以上でTSHの測定を推奨している。

治療
・甲状腺ホルモン補充の閾値は、観察研究と短期間の臨床試験に基づく。
・ATAとAACEでは、TSH≧10mIU/Lで甲状腺ホルモンの補充を推奨しており、TSH<10mIU/Lではリスクなどを勘案し個々に判断するとしている。
・議論が分かれるところであるが、心血管疾患では早期の治療が有用かもしれない。
・高齢者では特に、過剰な治療が行われやすく、心不全増悪や不整脈のリスクになる。
・ATAとAACEでは、TSH<0.1mIU/Lで、不整脈を有する症例、骨粗鬆症の既往やリスクがある閉経後の女性に対する治療はリーズナブルとしている。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。